投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【11/15-11/19週の世界のリスクと経済指標】〜悲観と楽観の混在〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +9点(60点):良化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

欧州で新型コロナが再拡大し、オーストリアはロックダウン、ベルギーは週4日の在宅勤務義務付けなど行動制限も拡大してきました。

欧州経済の要であるドイツでも過去最大の感染者数増加から行動制限待ったなしとなっており、欧州経済が再び停滞する可能性が出てきました。

 

 また中国では、コロナの感染拡大自体は収まりつつあるものの、北京五輪に向けてゼロコロナを目指すために行動制限が続いており、経済活動への影響も広がっています。ただでさえ、不動産や脱炭素で規制を統制を強めてきている中で、経済成長率見通しもさらに低下する可能性があります。

 

また先週は日米の財政政策に関する動きがありました。

米国では1.75兆ドルにも上るビルド・バック・ベター法案が下院で可決され、成立へ向け前進しました。

また日本では岸田政権が財政支出が55.7兆円となる経済対策を決めました。

短期的な影響は限定的となりそうですが、景気の下支えとはなりそうです。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス9ポイントの良化となりました。

中国の10月小売売上高はガソリンなどの燃料代が高騰したことで大幅増加となりました。また2月をピークに切り下げてきた鉱工業生産ですが、5G対応のスマートフォン需要に支えられて前月比で僅かに戻し上振れしました。

 

また米小売売上高も予想1.2%に対して1.7%と上振れしました。オンラインストア、自動車・部品やガソリンスタンドなどが強く、インフレの影響が出ながらもクリスマス商戦に向けて消費が堅調に推移していることが示されました。

 

一方でドイツの生産者物価指数が急激に上昇しており、ドイツは今後、インフレ高進とコロナの行動制限による停滞が同時に来る可能性があるため注意が必要です。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数はまちまちな動きとなりました。

ナスダックは好調な小売売上高、NVDAの好決算や長期金利の低下に連れて1.24%上昇、最高値高進となりましたが、一方でダウ平均は欧州での新型コロナの再拡大での景気後退懸念から1.38%下落しました。

 

また米を中心に多国間で戦略備蓄放出の検討が進んでいることを背景に、原油価格が80ドル台から75ドル台まで下落したことで、資源国であるロシアとブラジルの株価は大きく調整しました。

 

 先週は原油の下落とともに、石炭価格も中国国内での増産と価格統制により大きく調整し、中国原料炭先物価格は30%下落しました。一方で各国のカーボンニュートラル政策も相まって天然ガスは未だ高い位置で推移しており、資源高の懸念は収まっていません。

 

 

〜悲観と楽観の混在〜

先週の株価指数は方向感の見えない週でした。

米国企業の決算も終盤に近づき当面の楽観材料が消えつつある中で、悲観と楽観がそれぞれ違うマーケットの捉え方をしている様子が散見された印象でした。

 

まず株式市場と債券市場ですが、株式市場はS&P50018日、ナスダックが19日に最高値を更新し楽観が続きました。一方で債券市場は前週末比で16日にはややスティープ化したものの、週としてはフラット化して景気後退を織り込み、悲観が続いています。

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  次に米国株式ですが、ナスダックが1.24%高、S&P5000.32%高となった一方で、ラッセ20002.85%安、ダウは1.38%安となりました。

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労働者賃金高や原料高の影響が少なく、長期金利安が好感されるナスダックの大型ハイテク株は楽観的で高値を追いかけました。

一方でラッセル、ダウなどの景気敏感株は、労働者賃金高や原料高、長期金利安の影響を受け景気後退を悲観し下落しました。

 

  先週発表された米銀行大手のS&P500の22年末の見通しでも、モルガン・スタンレーは利益成長の鈍化と金利の上昇で4400ポイントに下落すると弱気を示しましたが、GSは21年よりも上昇率は鈍化するものの5100ポイントと強気の姿勢を示しました。

モルスタ:https://jp.reuters.com/article/usa-stocks-morganstanley-idJPKBN2I01YU

GS: https://jp.reuters.com/article/usa-stocks-goldman-sachs-idJPKBN2I11TS

 

また先週はFRB高官のタカ派発言が目立ちましたが、利上げを急ぐスタンスと慎重なスタンスで割れている印象です。

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11月FOMCからのメンバーの発言をまとめると、おおよそ半分半分になっています。

 

こうして見ると、現在の状況はマーケットに対して悲観と楽観の両方の捉え方が同じように混在し、より見通しが立ちにくい状況であることを改めて示しています。

 

私自身はインフレ高止まり継続と早期利上げで景気後退が起こると考え、10月初旬以降弱気スタンスを貫いていますが、その間は楽観が勝ちS&P500は9%上昇し見通しは外れています。

ここで挙げている内容同様、見通しの難しさを痛感しています。

 

しかし、その楽観も10月CPI以降勢いに陰りを感じられ、主要企業決算の終了と共に当面良材料がなくなるため調整するのではないかと考えます。

いくら企業決算が好調と言えども、目標2%に対して6.2%という高過ぎるインフレ指標が出ている状況では経済が正常に推移しているとは考えられません。

従ってそろそろ悲観が勝る可能性が高いと考え、引き続き弱気スタンスを継続していきます。

 

以上

【11/1-11/5週の世界のリスクと経済指標】〜ハト派の先進国とタカ派の新興国〜

先週の評点:

 

リスク   +2点(38点): 良化 (基準点36点) 

経済指標  +19点(121点):大幅良化 (基準点102点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス2ポイントの良化としました。

新型コロナは、冬の本格到来を前にドイツや東欧地域を中心に感染者が急増し再拡大の兆しが見え始めました。一方でファイザーが開発中の経口コロナ薬が入院と死亡確率を9割近く減らす効果があることが発表され、今後より簡易に新型コロナ拡大を防ぐ手段としてポジティブニュースとなりました。

 

また米がEUからのアルミや鉄鋼の輸入に掛けている関税の一部免除を決め、EUとの関係修復に向かいました。一方で英国はブレグジットでの仏との漁業権問題が激化し、報復合戦となっています。

一方では関係修復が進みながらも他方では関係悪化が進み、西側諸国のまだら模様が続きます。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス19ポイントの大幅良化となりました。

先週はインフレ圧力が高まる中、豪準備銀行、FRBBOEによる金融政策発表があり、そのスタンスに注目が集まりましたが、総じてハト派に推移しました。(詳細は後述します。)

また米雇用統計ではNFPは上振れして雇用の回復を示しながらも、平均時給は前月比0.4%の伸びとなり、人手不足の状況も示しました。

米ISM景況指数も製造業は供給制約の影響でやや低下しましたが、非製造業は新型コロナの感染の落ち着きも相まって活発な需要に支えられ過去最高値となりました。

 

次週は米10月CPIの発表に注目します。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、好調な米国企業業績に加え、豪準備銀行、FRBBOEがそれぞれハト派なスタンスを貫いたことで金利が低下、カネ余り継続となりハイテク株を中心に先進国株式が大幅上昇しました。

また米雇用統計も堅調に雇用回復していることが示されたことや、ファイザーの経口コロナ薬に高い効果が見られたことで景気回復が意識され後押ししました。

全般的に見ると株式市場にとって良いことづくめの週となりました。

 

 一方で債権市場では、中銀のハト派スタンスにより利上げ観測後退から金利が低下しつつも、長短金利差は縮小しイールドカーブはフラット化を深めました。

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金利低下により、足元は高PERのハイテク株には追い風となっていますが、やはり債権市場は早期利上げによる将来の景気減速を見込んでいます。

 

 

ハト派の先進国とタカ派新興国

 先週はRBA(豪中央銀行)、FRBBOE政策金利発表があり、インフレ圧力が高まる中、各国中銀がどのような運営を行うのか注目されました。

結果としてはRBAはYCCを撤廃したものの23年末まで利上げしないとし、FRBもテーパリングは開始するもの「インフレは一過性」とし利上げに対しても「辛抱強くなれる」と見通しは崩しませんでした。

また利上げがコンセンサスだったBOEは、据え置きとするサプライズを示し、各国中銀のハト派姿勢を印象付けました。

 

下記は主要先進国と最近金利に動きのあった国の現在の政策金利を一覧化したものです。

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こうして眺めてみても、日米欧豪などの経済規模の大きな先進国はハト派で緩和継続、一方でその周辺新興国はインフレ耐性が弱いためにタカ派で引き締めを開始しています。
※中国は金融面では緩和的ですが、政治による統制強化から実質引き締められていますので、ここでの議論では中国はタカ派に含めます。

 

次に日本を含む先進国の株式インデックスであるMSCI World Index新興国株式インデックスであるMSCI Emerging Indexの値動きを見てみます。

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インフレが意識され始めた今年の春先から新興国株式は低下傾向となっていますが、先進国株式はその後も上昇し、特にインフレ圧力の急速に高まった10月以降急伸しています。

経済規模が大きく経済力が強い国は「インフレは一過性である」と緩和姿勢を貫き株式資産が膨張する一方、経済規模が小さく経済力が弱い国はインフレやそれに対する締め付けで資産が縮小している傾向にあることが示されています。

つまり新興国タカ派転換で行き場を失ったマネーが、未だハト派を貫く先進国へ移動していると考えられます。

 

そして先週の先進国の株高は、10/28のECB、先週のRBA、FRBBOEにより示された連日のハト派姿勢により加速され演出された結果と考えます。

そしてそれは先進国株にバブルを引き起こしていると思います。

もちろん企業業績は好調ですが、そうでなければひどい3Q決算だったAMZNの現在株価が決算前を上回っていることを説明できません。

 

現在先進国の株式市場は非常に楽観的ですが、それが試されるのは各国中銀がタカ派に振らざるを得なくなる時だと思います。

次週は米国の10月CPIの発表があるので非常に注目です。

インフレが強く実感され始めた10月の数値が予想の5.8%を上振れた場合、マーケットは再び早期利上げを意識せざるを得ません。

 

株高が続いていますが、自身のポートフォリオは引き続き弱気スタンスで警戒しながら様子を見ていきます。

 

以上

【10/25-10/29週の世界のリスクと経済指標】〜債券市場と株式市場で見方が分かれた10月〜

先週の評点:

 

リスク   3点(39点): 良化 (基準点36点) 

経済指標  +13点(103点):大幅良化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス3ポイントの良化となりました。

米仏首脳会談が行われ、豪潜水艦問題に関してバイデン大統領が米国の対応を「まずい対応だった」と認め、関係修復を強化することとなりました。またインド太平洋での欧州への軍事支援の強化も共同声明が出され、米欧の関係が一旦は修復されたことが示されました。

 

また、先週は台湾での米軍の駐留事実をツァイ総統が認め、米軍による台湾軍の訓練が公となりました。

欧州ではEUの議員団が訪台することで調整が進み、スロバキアを訪問中の台湾外交トップが演説し、欧州の台湾への関与が進みました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス13ポイントの大幅良化となりました。

インフレが進む中、米国の消費者信頼感指数は上振れし、米国の消費の底堅さを示しました。

一方で9月PCEコアデフレーターは予想は下回ったものの、前月と同様の最高値の3.6%で推移しインフレ圧力の継続が示されました。4月に3%を超えて以降、高止まりが続いています。

 

カナダ中央銀行、ECBが政策金利を発表し、両行とも超低金利を維持したものの、カナダ中銀はQE終了、ECBは超緩和政策の維持を決定しました。

世界的に引き締め傾向が強くなる中、各国中銀による微妙な舵取りが続きます。

次週のFOMCは、これまでのFRB高官のコメントから推測すると、11月でのテーパリング開始はほぼ決定事項ながら、利上げに対してはハト派スタンスとなると思われ、市場の反応も限定的かと思います。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価は先進国は堅調に推移しながらも、新興国軟調となりました。

米国株価指数は比較的好調な決算を受け、ハイテクグロース株を中心に大幅に上昇しました。

特にテスラは大手レンタカー会社ハーツが10万台発注したとの報道も後押しし22.46%も上昇しました。

一方で新興国はインド、タイ、韓国、インドネシアなどの株価指数も先週は概ね軟調となっており、弱いところから資金が抜け始めている感じもあり、やや警戒が必要かと思われます。

 

 

〜債券市場と株式市場で見方が分かれた10月〜

さて、先週末で10月が終わったため、改めて債券市場と株式市場の総括をしてみたいと思います。

 

以下は1ヶ月前の9/30と10/29の米国債イールドカーブです。

債券市場は高いインフレ圧力から早期の金利上昇を見込みながら将来の景気減速も織り込み、ベアフラット化しています。また先週20年利回りと30年利回りが逆転し、より景気減速の織り込み傾向が強くなっています。

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一方、株式式場は大型株へ資金が集中しながら大幅に上昇しています。

ナスダックは7.27%、S&P500は6.91%、S&P500は6.91%上昇しました。

下記はS&P500の構成比率上位10銘柄の10月騰落率と構成比率です。

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 上昇率トップのTSLAはローテク半導体を使わない設計が功を奏し、半導体不足をうまく乗り切り好決算で10月に43%上昇しました。

またNVDAが23%、MFSTが17%も好決算で大型株とは思えないほど急騰しました。

一方でAMZNは賃金上昇によるコスト増、AAPLは半導体不足の影響で決算を落としたとは言え、月次ではしっかりと上昇しました。

S&P500の構成比率上位10銘柄のうち5銘柄(10/29時点の合計構成比率14.45%)で10%以上上昇しています。

ナスダック100に至っては上位の10銘柄中6銘柄(10/29時点構成比率28.8%)が10%を超えて上昇し、指数の底上げを牽引しました。

この傾向はわかりやすい一部の大型銘柄への偏りを示し、カネ余りによるバブルの匂いが感じられます。

 

 足元の雰囲気としては、債券市場は強いインフレ圧力の継続に対する早期利上げを見込み、スタグフレーションによる景気後退を意識し始めています。

一方で株式市場は、インフレ圧力は一過性で早期利上げを見込まず、業績相場を織り込みバブリーに上昇しているとの印象です。

債券市場と株式市場で真逆のシナリオが混在し、今後の見通しが非常に難しい状況が示されています。

 

私は米企業の3Q決算において、元々高い決算ハードルにインフレ圧力の高まりからのコスト増が加わり、AMZNやAAPLの様な取りこぼしが増え、株価は大幅に調整するのではないかと考えていました。

そのため10月初旬に資産ポートフォリオの株式比率を30%に減らし、弱気姿勢をとっていましたが、その予想は外れ10月の上昇局面にはうまく乗れませんでした。

しかし、それは結果論であり、リスクが高まっている中で資産を減らすことなく株式30%分でも上昇を取れたことに、ベストではありませんでしたがベターな選択ではあったと納得しています。

 

また今後に関しても債券市場が景気減速を見ている事実や、実生活でも感じ始めたインフレを目の当たりにすると、株式市場は楽観的過ぎると感じ、更なる株価の上昇に強気でついて行く気にはなれません。

 

引き続き、現在のポートフォリオを維持し、金利と商品価格、インフレ指標を注意深く観察していきたいと思います。

 

以上

【9/27-10/1週の世界のリスクと経済指標】〜米欧の綻びが見えた9月〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(44点):小幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  +2点(89点):小幅良化 (基準点87点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

新型コロナは世界的に新規感染者数が減少傾向になっている中で、米メルクが経口治療薬の良好な結果を発表したことで、医療資源を圧迫することなく治療できる可能性が高まりました。

 

一方で中国の統制強化の影響で電力不足が恒常化してきており、影響が拡大してきました。世界の工場である中国の製造業の稼働率が電力不足から低下しており、今後更なる供給不足からの世界的なインフレ圧力を生む可能性が出てきました。

 

また政治面ではドイツで総選挙が行われ、メルケル首相の所属するCDU・CSU中道左派SPDに第一党の座を譲ることとなりました。今後各政党による連立交渉が行われますが、SPDによる政権樹立が有力視され、内向き志向が強まる可能性が高まりました。

 

また、リストには記載していませんが、米政権の債務上限問題も依然解決されず、米債務がデフォルトとなる期限が10/18に迫ってきました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標は注目の8月PCEコアデフレーターは予想3.6%に対し3.6%と予想通りとなりました。

FRBはこれまで高いインフレ率は一時的というスタンスを主張してきましたが、4月に2%を超えて以降、5ヶ月連続で3%を超える数値が示されています。

主に半導体不足や原料高、輸送費高、人手不足などの供給サイドの目詰まりが原因となりますが、中国当局の統制強化による人為的な要因も重なり、今後もインフレ圧力が高止まりする可能性があります。

そうなると利上げタイミングが早くなり景気の下押し圧力となる可能性もあるため、引き続きインフレ指標には注意が必要です。

 

またISM製造業景況指数は前月59.9に対して予想59.6と低下が予想されていましたが、結果は61.1と意外にも堅調な数値となりました。堅調な消費需要やそれに対する在庫の増加が主な要因となり、企業が原材料の枯渇に備えて必要以上のものを購入していることが示されました。

 

次週はISM非製造業景況指数と、注目の雇用統計があります。

米金融政策の基準となる雇用統計において上乗せ給付金が9/6で終了した影響がどのように出るか注目されます。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の主要国株式指数は大きく調整しました。

先週は債券市場が「インフレは一時的なもの」とならない可能性を織り込み始めたことで長期金利が一時1.55%まで急激な上昇を見せ、その圧力に押されたハイテクグロース株が激しく下落しました。

また、中国景気の減速や電力不足、中国恒大集団などの不動産問題、米国の債務上限問題や3.5兆ドルのインフラ法案の行き詰まりなど、重しとなる課題が山積みとなり終始重苦しい雰囲気となりました。

金曜日にはISM製造業景況指数の上振れや米メルクの経口コロナ治療薬の明るいニュースでやや戻したものの、引き続き不透明感が残ります。

金利も足元では落ち着きを見せ1.5%を下回っていることから、次週は一旦は戻りを試す展開となると思われますが、雇用統計が上振れる結果となった場合は再び下目線となると思われます。

 

 

〜米欧の綻びが見えた9月〜

トランプ政権時にEUで進んだ「安全保障上の米国からの自立」議論ですが、バイデン政権が発足直後から米欧同盟重視として関係回復に努めてきたため、落ち着きを見せていました。

しかし、この9月は米国側からは「インド太平洋重視、EU軽視」、EU側からは「米国からの自立」の姿勢が公になり、両陣営の溝が再び鮮明になりました。

 

まず米国側ですが、9/15にAUKUSとして英豪との安全保障上枠組みを発表しました。

そして9/24には立て続けに日豪印とのクアッド首脳会議をワシントンで開催しました。

私はこれを見て、米国のインド太平洋戦略は、①強力な安全保障は米英豪の「AUKUS」、②豪に日印を加えたより広範囲な協力は「クアッド」とし、この二つの枠組みを中心に進めるのが基本戦略であると理解しました。

そして現在の米国にとって最重要とされているのはインド太平洋戦略であり、AUKUSでフランスが軽視されたように、優先されるのはその地域にある国々との連携である、という認識を持ちました。

すなわちインド太平洋地域からは遠く離れ、地政学的な利害が薄く対中姿勢も曖昧なEU諸国との連携は、もはや必要条件ではないのだと思います。

 

一方でEU側でもフランスを軸に動きが加速しました。

9/15にはEUのフォンデアライエン委員長が、加盟国間で安保情報を共有する新組織を立ち上げ、EUの安全保障分野での統合を進める意向を表明しました。

兼ねてから「欧州統合強化」を主張するフランスが22年前半には議長国となるため、米国に依存するNATOとは別の「EU軍」設置の議論も加速する見込みとなっています。

 

9/26にはドイツの総選挙が行われ、第二政党であったSPDドイツ社会民主党)が第一政党に躍進しました。

今後SPDを中心に連立政権樹立の交渉が行われていきますが、SPDも「欧州の強化」を公約に掲げており、ショルツ氏が首相となればマクロン大統領が重視する統合強化路線の追い風となると言われています。

 

また9/28には仏がギリシャに対してフリゲート艦を供給する契約を結んだと発表しました。

その席上でマクロン大統領は、欧州は国防の自律性を高めるべきであると発言し、米国依存からの脱却を示唆しました。
NATOに加盟するギリシャとトルコは東地中海でのエネルギー資源で対立していますが、 フランスがEU加盟国であるギリシャを優遇することは、NATOよりもEU重視を示唆するものとなります。

 

今回の両陣営の綻びは、アフガン撤退を始めとした米国のEUに対する配慮に欠けた行動に端を発すると思われます。しかし、それに対抗してEU側でもフランスに煽られる形で米国依存からの自立への動きは止まらなくなっています。

そうなると今後、お互いにNATOとしての同盟が軽視されることで対中政策で足並みが揃わなくなる可能性があり、中国に対する西側諸国としての圧力が弱まることは間違いありません。

 

戻りかけた西側諸国の連携に再び綻びが見え始め、国際政治の難しさを意識させられた月となりました。

 

以上

【9/20-9/24週の世界のリスクと経済指標】〜国際問題の舞台と化したTPP〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(42点):悪化 (基準点45点) 

経済指標  -15点(72点):大幅悪化 (基準点87点)

 

 

【リスク】

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※新型コロナ関連を項目1にまとめ、新たなリスクとして中国の統制強化を項目2に加えました。

 

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

不動産開発大手の中国恒大集団の社債に対する利払いが行われず、デフォルトリスクが高まりました。

仮にデフォルトしたとしても影響は限定的で、世界的な金融危機には繋がらないとの見方が大勢ですが、中国当局の関与も見えづらいなか、同様に負債を抱える他の不動産開発会社へ波及が心配されます。

 

米欧関係では、欧州軍の創立への支持を条件に、国連安保理常任理事国のポストをEUに引き渡すことを仏大統領が検討しているとの報道がありました。

仏政府は即座に否定しましたが、そのような報道が出るほど仏政府の米国からの独立志向が高まっています。

今週はドイツで総選挙が行われますが、下馬評通りSPDドイツ社会民主党)が第一党となった場合、ドイツでも欧州軍の創立に向けた動きが活発化してくると思われます。

 

また前週に中国がTPPへの参加申請を表明しましたが、先週は台湾も表明し、一気に国際問題化してきました。※こちらは後述します。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

欧米PMIが全て下振れとなり、足元での景気減速が鮮明となりました。

特にドイツのPMIの低下が大きく、半導体不足からの自動車減産の影響や中国景気の急減速が示されました。

 

注目の米FOMCは、次回11月FOMCでのテーパリング決定、22年半ばでの完了の可能性が示唆されました。またFRB当局者の金利見通しのドットチャートでは、22年中の利上げ予想者が半数となり前回より利上げ時期が前倒しとなりました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、週明けに中国恒大集団に対するデフォルト懸念から株価が下落し、S&P500は50日線を大きく割りましたが、その後反発し終わってみれば堅調に推移しました。

心配されたFOMCもほぼコンセンサス通りとなったため、株価指数は大きく反発し無難に乗り切った印象です。

一方で中国恒大集団などの不動産株を中心に売りが激しかった香港ハンセン指数は、2週連続で大幅安に沈みました。

 

今回のFOMCでは、テーパリングに関する時期が11月開始、22年半ばに終了と明確化されたにも関わらずマーケットの反応は下向きではありませんでした。そのことから当面の不透明感が払拭されテーパリングが織り込まれたと解釈しました。

そのため長期投資では、待機資金としていた現金20%のうち10%分を、FOMC後にMSCIコクサイインデックスへ振り分けました。

今後長期金利が急激に上昇する場面には気を付ける必要はありますが、基本的にはまだ金融相場であり、FRBによる利上げ発表までは株式60%のポートフォリオを維持、また下押しする場面では押し目を拾ってもう少し株式の割合を増やしていきたいと思います。

 

 

〜国際問題の舞台と化したTPP〜

さて、9/16に中国がTPPへの加入申請を正式表明しましたが、続いて9/23に台湾も加入申請表明を行いました。そのため、TPPが一気に複雑な国際問題の舞台と化してきた印象です。

 

TPPへの参加は全加盟国の承認が必要ですが、加盟国は両国に対する態度を明確化しなればならず、対立する中国、台湾のどちらを取るか「踏み絵」状態となっています。

9/25時点での各加盟国の中国、台湾の加盟申請に対する反応は下記の通りです。

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日本、豪州などの中国と距離のある国は台湾を歓迎しながらも中国の参加には慎重な姿勢を示しています。

一方で中国と関わりの深い東南アジアの国々は、意外にも中国を歓迎しています。

 

台湾の参加表明は、中国の参加表明に釣られた感じありますが、そもそも中国のこのタイミングでの参加表明も目的が見えづらい状況です。

 

以前も書き記したRCEPTPPの関係性をまとめたものを添付します。

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 中国は自らが主導しながら既にRCEPの枠組みを作り上げていますが、そのRCEPでカバーできていないTPP加盟国はカナダ、ペルー、チリ、メキシコの4カ国です。

そして中国は、ペルー、チリとは既に二国間FTAを締結済みで必要ありません。

残るはカナダとメキシコですが、こちらは2018年11月に締結されたUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)によって「非市場経済国」(=中国)とのFTA締結を制限されています。

米国との関係性を考えると両国が中国とのTPPを含めたFTAを締結することは有り得ないと思います。

そう考えると、現状中国がなし得る貿易協定としてはRCEPの枠組みで十分であり、実務的には中国にとっても加盟国にとっても加入するメリットが見当たりません。

 

また、そもそもTPPは国有企業の優遇を禁止していますが、中国は国営企業重視の経済へと転換を図ろうとしている最中であり、そのルールとは逆行している状況です。

つまり今回の中国のTPP参加表明は実務的な需要はなく、単なる政治的なアピールであることは明白です。

 

中国のTPP参加表明に前後して、AUKUSにより豪州の原潜配備が発表され、EUもインド太平洋戦略を発表し、台湾との通商交渉や海路の確保を行うとされました。

恐らく、遠い西側諸国からの対中包囲圧力が徐々に拡大していることに反発し、「インド太平洋地域は中国の縄張りである」と主導権をアピールするためにTPPという枠組みが使われたのだと考えます。

 

そこに中国にとって最もセンシティブな台湾が予想外に参画したことによって、加盟国の支持獲得争いの様相を呈しています。

 

しかし、原点に立ち返れば、西側諸国にとっては対中包囲網の一環として作り上げたTPPであるため、日豪NZ、カナダ(メキシコ)の西側の国々は冷静に「中国はTPPのルールに適さない」と示し合わせて承認しなければ良い話だと思います。

 

同時に台湾に対しても、各国が取る「一つの中国」という原則に基づき、中国と合わせて「両国を承認しない」という選択肢が一番妥当だと考えます。

 

以上

【9/13-9/17週の世界のリスクと経済指標】〜AUKUSで広がった米欧の亀裂〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(43点):小幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -2点(52点):小幅悪化 (基準点54点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの小幅悪化となりました。

先週は政治的な動きが多かった週でした。

まず米英豪が新たな安全保障の枠組みである「AUKUS/オーカス」を発表し、同時に米英が豪に対して原子力潜水艦の技術を供与し、インド太平洋での中国抑止の強化に乗り出しました。

一方で2016年に豪州との潜水艦の共同開発者として選ばれていたフランスは突然の出来事に激怒し、マクロン大統領が駐米、駐豪大使の召還を指示する事態となっています。

 

EUも正式に「インド太平洋戦略」を発表し、EUとして対中を意識して同地域の安全保障に関わっていくことを示しました。

 

一方で中国はロシアと主導する上海協力機構の首脳会議で同枠組みでへのイランの加盟手続きを進めることを決め、インド、パキスタンなど含めた中央アジア地域での協力体制を強化しました。

また、TPPへの参加も表明しました。

 

積極的に外交を展開するも互いにギクシャクする欧米に対し、自らの協力体制を着々と拡大する中国が対照的な印象でした。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス2ポイントの小幅悪化となりました。

米8月CPIコア指数は予想4.2%に対して4.0%と下振れし、6月の4.5%をピークに7月4.3%、8月4.0%とピークアウトの様相を呈してきました。

しかし、絶対的に強い数値であるのは変わりなく、9月FOMCを前にどのように解釈されるか判断が難しいところです。

また、8月の小売売上高はデルタ株蔓延から-0.8%と減少が予想されていましたが、0.7%とポジティブサプライズとなりました。

 

次週はいよいよ9月FOMCが開催されます。

「パウエル議長によるテーパリング開始時期の言及」と「FRB当局者による利上げ予想時期のドットチャート」に注目です、

テーパリングのコンセンサスとしては9月FOMCでの決定はなされず11月FOMCまで持ち越しされることが予想されていますが、前週に論じたようにインフレ圧力の継続と求人環境の回復を背景に、9月FOMCでのテーパリング決定のサプライズも十分にあり得ると思います。

ドットチャートは「23年末までに少なくと1回の利上げが半数以上」となった前回予想がさらに前倒しとなりタカ派に転ずるのか注目です。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、前週に続き米国の9月FOMCを前にテーパリングが意識され、弱含みで推移しました。

米株式指数は9/3の米雇用統計をピークに2週連続で下落となりました。

また、中国・香港株は中国恒大集団の債務問題の影響が波及するとの懸念で不動産株や銀行株を中心に売られました。香港ハンセン指数は9/16には10ヶ月振りの安値を記録しました。

 

次週は米FOMCを迎え、為替、株価共に大きく動くと予想します。

タカ派に出た場合はドル高株安でナスダックの下げが大きく、ハト派に出た場合はドル安株安でダウの下げが大きいと予想します。

ここ最近のグズグズした値動きを見る限りテーパリングを消化できておらず、短期的にはどちらに転んでも株安につながると考えています。

 

 

〜AUKUSで広がった米欧の亀裂〜

さて、先週はインド太平洋地域を巡り、西側諸国での重要な安全保障上の政策が発表されました。

 

まず15日に米英豪による新しい安全保障の枠組みである「AUKUS/オークス」の発表されました。

米英の技術供与により豪州に原子力潜水艦が配備され、インド太平洋地域における中国に対しての抑止力が強化されることとなりました。

 

時をほぼ同じくして、16日にはEUから「インド太平洋戦略」が正式に発表されました。

「中国の軍事力の増強による緊張の高まりでヨーロッパの安全保障に直接的な影響を及ぼす可能性がある」との認識を示し、「海上交通路の安全確保のために、加盟国による海軍配備に力を入れる」という姿勢が示されました。

 

米英豪、EUが西側諸国として、安全保障上の対中政策を前進させたのは歓迎すべき出来事です。

しかし、その背景を見ると西側諸国の連携が徐々に一枚岩ではなくなってきていることに危機感を感じます。

アフガニスタン撤退を境に、米バイデン政権の欧州同盟国軽視が目立ち、欧州の米国離れが加速しています。

 

今回のAUKUSでの豪州への原潜技術供与に関しても、通常潜水艦の技術供与の豪州との契約を破棄されたフランスには、米英豪から事前に充分な説明や協議がなされなかった模様です。

激怒したフランスのマクロン大統領は、駐米大使、駐豪大使の召還を指示する事態となりました。

 

また、EUにも事前に相談はなかった様で、今回のAUKUSの発表を受けて「EUは独自の防衛・安全保障戦略を策定する必要がある」との認識が表明されることとなりました。

元々アフガン撤退において、欧州の延期要請を顧みずに米国が部隊撤収を断行したことで、EUでは米国に依存しないEUの独自部隊の創設が叫ばれる様になっていましたが、それを煽る形となりました。

 

フランスを含め多くのEU加盟国はNATOの枠組みの中で米国とは同盟国です。

それを軽視した今回の行為は、アフガニスタン撤退で失ったバイデン政権の欧州からの信頼をさらに失墜させるものです。

これでEUは安全保障における米国との共同路線から距離を置くことになると思われます。

 

トランプ政権時代に同盟国との協力体制がないと中国に対抗できないと理解し、バイデン政権は発足から欧州の同盟国との関係改善に努めてきたはずです。

しかし、ここ最近のバイデン政権の稚拙な政策の進め方は理解ができません。

多国間の繋がりである以上は細部へ配慮し、ある程度の合意を得てから動くことが必要なはずですが、短期的な成果を急ぐあまり、その配慮がすっぽり抜け落ちているような気がします。

 

多国間では物事が拙速に政策決定できないのは分かりますが、合意形成を否定することはそもそも民主主義を否定することにもなりかねません。

米国には民主主義陣営のリーダーとして、より同盟国に配慮しながらの行動が求められます。

 

以上

【9/6-9/10週の世界のリスクと経済指標】〜9月FOMCでのテーパリング決定の可能性〜

先週の評点:

 

リスク   1点(46点):小幅良化 (基準点45点) 

経済指標  0点(56点):中立 (基準点56点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化としました。

政治面では米中首脳が7ヶ月ぶりに電話会談を行いました。米中対立が激しさを増していますが、形式上は「お互いに緊張緩和に向けて努力する」ということで一致し、途絶えていた米中の対話ルートが回復したことでやや安心感を生みました。

 

一方でアフガン撤退での米軍の混乱を機に、EUではNATOに頼らない独自の防衛機能の態勢強化が謳われるようになりました。バイデン政権誕生以来、欧州との協力関係の強い回復が見られていましたが、アフガン撤退で米軍に対する信頼感が揺らいだことを早速示す形となっています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラスマイナスゼロの中立となりました。

中国では先月に続き、CPIは1.0%と低調ながら、PPIは9.5%と上振れ生産者サイドの強いインフレ圧力が継続していることが示されました。主に中小企業で構成される中間業者のコスト吸収力に厳しさが増す中、中国人民銀行は5兆円に上る中小企業支援枠を設定し、低利での借り換えを促すと発表しました。

 

 米国でもPPIが上振れて6.7%となり、こちらも生産者側からの強いインフレ圧力が継続していることを示しました。次週は9/14に米CPIの発表がありますが、後述の考察も含めて注目したいと思います。

 

また、ECB、カナダ銀行による政策金利発表がありました。

ECBは「テーパリングでない」としながらもPPEPの購入ペースを減速させることを表明、カナダ銀行は7月に減額決定した国債購入額を20億ドルのまま維持することを表明しました。

引き締めに傾きながらもデルタ株の影響に配慮し、強くは踏み込まない政策となりました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の株式指数は欧米指数が軒並み軟調に推移する中、日経平均と中国株は前週に続き大きく伸びました。

日経平均は新政権の財政政策期待で買いが買いを呼び、8/20の直近底値から15営業日で12.47%の上昇となりました。

上海総合指数は、中国人民銀行の5兆円規模の中小企業に対する借換え融資枠設定や、預金準備率の更なる引き下げなどの金融緩和政策が続く期待から内需関連株を中心に伸び、7ヶ月振りに年初来高値を更新しました。

欧米株は金融引き締めに向け利確売りされる中、日中は財政、金融の緩和期待で資金が流れる構図となっています。

ただ、既に日経平均も年初来高値を狙えるポジションにあり、これ以上を臨むには更なるエネルギーが必要だと思われ、欧米株が軟調に推移する状況では難しいように思います。

 

 

〜9月FOMCでのテーパリング決定の可能性〜

 9/3の米雇用統計のネガティブサプライズによって、9月FOMCでのテーパリング決定が遠のいたと想定されましたが、予想に反して先週もFRB高官による早期テーパリング開始を肯定する発言が相次ぎました。

特にパウエル議長に倣いこれまでハト派として見られていた、NY連銀総裁とボウマン理事が初めて年内テーパリングを容認する発言を見せました。

 これを見て、私は9月FOMCでのテーパリング決定の可能性も低くはないと思い始めました。

 

データで現状を振り返ってみます。

下記は米CPIコア指数を1年前まで遡り平均したものです。

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 現在、FRBは「期間平均で2%をやや超えることを容認する」という政策を取っていますが、その「期間平均」が1年であると仮定して表にしてみるとこのような推移となります。

既に1年平均では目安である2%は超えており、仮に8月のCPIコア指数が予想値である4.3%で推移すると、さらにその上昇傾向は強くなります。(4.3%だと2.57%)

 

また先週、CPIに先んじて生産者側から見た物価指数である8月PPIコア指数が発表されましたが、前回6.2%、予想6.6%に対して結果6.7%と強い数値となっています。

下記は米CPIコア指数とPPIコア指数の推移を並べてみたものです。

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足元では7月のCPIコア指数は減速傾向を見せていますが、PPIコアは強い右肩上がりを続けています。
PPIコアの数値がそのままCPIコアの数値に繋がるわけではありませんが、生産者の出荷時点での価格が上昇していることは、コスト起因の好ましくないインフレ圧力が継続することを意味していると考えられます。

 

また、先週発表されたJOLT求人件数からは、求人数は急増しているものの採用者数が追従していない、求人と採用のアンマッチが拡大していることが示されました。

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求人数と採用者数のアンマッチから、9/3の雇用統計の弱さは、南部でのデルタ株の蔓延や現在失業者の多くが受けている緊急パンミック失業者支援による一時的なもの、と考えられます。

特に失業者支援は9月に終了することを考えると今後は労働者が雇用市場に戻り、徐々に改善されると考えられます。

 

すなわち現在の状況は様々なノイズによって正確に捉えにくいものの、インフレ圧力は継続し、かつ雇用需要も順調に回復しており、テーパリングへの環境が整いつつあると言えます。

 

9/3の雇用統計の予想外に弱かったことから、現在は9月FOMCでのテーパリング開始決定がないことが市場のコンセンサスとなっている気がします。

しかし、上記に述べた指標的な環境と、止まらないFRB高官のテーパリング発言から、私は9月FOMCでのテーパリング決定、10月ないし11月開始のサプライズも十分有り得るのではないかと思います。

 

これらのテーパリング懸念を反映してか、堅調に推移すると思われた欧米株式は軟調となっています。日本株が好調さを見せていますが、FRBがテーパリング決定を発表すれば日本株も調整となると思われ、敢えてリスクを取りに行く必要はないと考えます。現状の先進国株式50%、債券30%、現金20%のポートフォリオを維持して様子を見たいと思います。

 

以上