投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【3/7-3/11週の世界のリスクと経済指標】〜3月FOMCでの利上げを前にして〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +3点(51点):良化 (基準点48点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

ウクライナ情勢は停戦協議が散発的に行われながらも妥結せず、戦況は膠着状態が続いています。

多くの欧米企業がロシアでの事業停止もしくは撤退を決め、かつ米英はロシア産の化石燃料の輸入を禁止するなど、ロシア経済を孤立させ圧力をかけています。またロシア側も外資企業に対して事業停止した場合は資産押収する報復措置の検討に入ったと報道されています。

 

一方でポーランド旧ソ連製戦闘機を米軍経由でウクライナに供給する動きがありましたが、ロシアを必要以上に刺激することを警戒しバイデン政権は一転反対する方針を示しました。またバイデン大統領は、NATO加盟国の領土は守るが、ウクライナでロシアと戦うことで紛争を拡大させるリスクはとらないと言明し、ウクライナが求める飛行禁止区域は設定しないとの考えも示しました。

ここにきて、やや矛盾を感じさせる米政権の弱腰姿勢が改めて散見されました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス3ポイントの良化となりました。

米CPIは前回7.5%、予想7.9%に一致の7.9%となり、40年振りの伸びとなりました。ウクライナ侵攻で原油価格がさらに大幅に伸びる前の時点でもインフレが高まっており、次週のFOMCでの利上げを後押しする形となりました。

日本の国内企業物価指数も予想8.7%に対して9.3%と大幅に上振れとなり、我々の足元でも急速にインフレが影響を及ぼしてきていることが示されました。

 

またECBはPPEPを予定通り今月末で終了すると共に6-9月期にもAPPも終了する方針を示しました。これで強い緩和継続を明言しているのは日銀のみとなり、円安が加速し117円に突入しました。

 

次週は米小売売上高、3月FOMCBOE政策金利に注目です。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は前週からのウクライナ情勢の悪化を織り込み全体的に下落基調でしたが、ここ数週間下落の激しかった欧州株は3/7を底に反発し、大きくプラスして週を終えました。

一方で欧米が手放したロシア資産を買い進めている中国企業への不安が高まり、上海総合と香港ハンセン指数は下落を強めました。

米国株指数は3/7を底に一旦は反発したものの、CPIの伸びにより週末にかけて下落していますが、下げを先導していた欧州株式の反発は支えとなると思われます。

 

 

〜3月FOMCでの利上げを前にして〜

下記は先週の米国債イールドカーブの変化です。

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 前週はウクライナ情勢の懸念が高まりからイールドカーブは景気後退を織り込み、下方向へのブルフラットニングを示していましたが、先週はこれまで通りの「景気過熱・将来利上げ」のセオリー通りの上方向へのベアフラットニングとなっています。

つまり債券市場はロシアのSWIFTからの排除、米英のロシア産化石燃料の禁輸で当面の大きな悪材料が出尽くしたことでウクライナ情勢を織り込んだと考えられます。

他の指標を見ても3/7の原油価格の頭打ち、独DAXの底打ち、ユーロドルの底打ちが確認され、マーケットの注目の的は米国のインフレ対策に戻っているものと考えられます。

 

次週は15−16日に3月FOMCがあります。

前週に3/1にパウエル議長が議会証言で発言したように、既に今月からの利上げは確実です。

そしてその議会証言後にマーケットがポジティブに反応したように、今月からの利上げは既にマーケットは織り込み済みだと考えます。

 

また今回のFOMCではFRBメンバーによるドットチャートが示されます。

下記のFedWatch金利先物が示す通り、3/12現在マーケットは2022年に7回の利上げを織り込んでいます。

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12月FOMCのドットチャートでは22年は3回の利上げが示されていました。

今回その中心値がマーケット予想の7回と一致するのかが注目されますが、ウクライナ情勢による景気悪化が懸念される中では、7回でもややタカ派な印象です。同時に7~9月からのQTも示唆されているため、FRB当局者の予想がこれ以上にタカ派に振れることは少ないのではないかと推測します。

 

 強いインフレに対する強い利上げ懸念に、ウクライナ情勢の悪化からの一層の資源高も加わって年初から株価調整は加速し、特にナスダックは最高値より20%減となり割高感は収束してきました。

また上述した様にウクライナ情勢は既に織り込んでいると思われます。

そのため、今回のFOMCは既にコンセンサスとなっている内容が明示されマーケットの不透明感が払拭されることで無難に通過し、今後は株式は徐々に上方向に反応する可能性が高いと考えます。

 

ついては先週、長期投資のポートフォリオを昨年10月から継続していた「弱気」を「強気」に変更しました。具体的にはMSCIコクサイ30%、ナスダック100 30%、国内債券25%、現金15%としました。

 

2020年3月にゼロ金利となって以来、わずか2年での利上げ局面となります。

激動の2年間でしたが、自らの金融リテラシーの向上を目指す私にとっては、絶好の学びの機会となっています。

ウクライナでは人々の苦しい状況が続いており日々心が痛みますが、一方でマーケットの大きな変化の局面を冷静に観察していきたいと思います。16日はPCの前に正座して発表を見守りたいと思います。

 

以上

【2/28-3/4週の世界のリスクと経済指標】〜リアリズムを貫くインド〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +18点(126点):大幅良化 (基準点108点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化でした。

先週はロシアのウクライナ侵攻に対し欧米各国が経済制裁を強めました。欧州で最も親露派で依存が大きかったドイツの方針転換の影響が大きく、ウクライナEU加盟議論も進むほど一枚岩になってきました。それと共にロシアの銀行に対するSWIFT排除やプーチン大統領本人や側近への個人資産凍結、また企業によるロシア事業からの撤退やロシアへの輸出停止、スポーツの世界でもロシア排除の動きが加速しています。

 

一方で先週はロシアとウクライナによる停戦交渉も2回行われましたが、ロシアは武装解除ウクライナは全面撤退を求めて平行線を辿っており、依然ウクライナへの攻撃は継続しています。

戦闘が長期化していますが、ウクライナおよびロシア経済共に消耗は激しく、今後どのような展開となるのか予想がつきません。ウクライナからの周辺国への難民は120万人を越えました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス18ポイントの大幅良化となりました。

景気を図る重要なソフトデータである米ISM製造業景況指数は上振れ、非製造業指数は下振れとなりました。供給制約や労働力不足による影響で指標に統一性がなく判断が難しいですが、スタグフレーションに向かっているかどうかを確認する指標として今後も注目したいと思います。

 

一方で米雇用統計はNFPは67.8万人と大きく上振れ、失業率は3.8%で完全雇用となりFRBの使命である雇用の最大化を達成しました。

これでFRBはもう一つの使命である「適切なインフレ率」を保つため、躊躇なくインフレ対策を行う準備が整いました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数ウクライナ情勢の悪化を受け、全体的に大幅反落となりました。特に今回の戦争の舞台となっている欧州株の下落が激しく、独DAXは1週間で10%の下落となりました。また通貨でもユーロドルが1.12ドルから1.093ドルまで急落しています。

 

先週の米国市場では2つの注目点がありました。

一つ目は3/2のパウエル議長の議会証言で、「3月FOMCでの0.25bpsの利上げを支持」「インフレ指標次第では大幅な利上げの可能性を閉ざさない」という具体的な利上げに関する明言がありました。

3月FOMCで利上げがされるのかどうか、また利上げ幅は0.5bpsが有り得るのかという市場の不安に対して「利上げはするが0.25bps」と予告したことで不透明感が払拭されました。それによりマーケットは金利高となりながらも株高となり、利上げをうまく織り込まれた可能性を示しました。

 

二つ目は米国債イールドカーブで、私がイールドカーブに注目したここ半年は概ね上方向へのベアフラットニング(景気過熱/金融引き締め)が続いていましたが、先週は明確に下方向へのブルフラットニング(景気減速/将来金融緩和)となり、景気減速を織り込み始めました。

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FRBによる金融引き締めを織り込み業績相場への移行を示唆しつつも、ウクライナ情勢の悪化による資源等のインフレ懸念も手伝い景気後退も懸念される微妙な状態が示されています。

それでも株価は最高値から一時ナスダックは20%、S&P500は10%調整され、かつ利上げの織り込みが示唆されて上方向に動く可能性が増えたと考えられるため、長期投資のポートフォリオを変更し、株式30%→35%に修正しました。

MSCIコクサイ20%、ナスダック100 ETF 10%、三菱地所5%、国債25%、現金40%)

 

 

 

〜リアリズムを貫くインド〜

 さて、前週に開催された国連安保理では常任理事国であるロシアが拒否権を発動したため、ロシアに対する非難決議が否決されましたが、今週はさらにロシアの完全撤退を求める緊急国連総会が開催されました。

国連総会決議に法的拘束力はありませんが、国際社会の軍事行動を許さない意志を表すために重要な意味があります。

結果は加盟国193カ国中、141カ国が賛成、ロシアを含む5カ国が反対、35カ国が棄権、12カ国が無投票で採択されました。

 

賛成以外の国々を世界地図で色分けすると以下のようになります。

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総会決議が採択されたことで、国際社会がロシアの暴挙を許さないという意思を示せたことは、一定の効果があったと思います。

一方でここまで合理性に欠けた軍事行動が行われたにも関わらず、「非難決議に賛成しなかった国々」も一定数いることが気になります。

それらの「決議に賛成しなかった国々」はアジア諸国(中国、中央アジア、南アジア)、アフリカ諸国に偏っている印象です。

中国は対米国の協力関係、中央アジア旧ソ連圏であり政治的、経済的な強い関わりがあることで、ある程度納得ができます。それに加えアフリカ諸国や南アジア諸国が賛成していなことに、やや意外な印象を受けました。おそらくアフリカ諸国や南アジア諸国は武器供与など、ロシアとの何らかの軍事的な利害を抱えていることが考えられます。

 

 中でもインドは、3/25の国連安保理でロシアの避難決議に対して非常任理事国としても棄権しており、その姿勢は注目に値すると考えます。

 

インドは元々、どの国とも同盟しない「中立国」であり「全方位外交」を明言していますが、自由民主主義国であり、本来は西側諸国と近い考えを持っていると考えられます。

しかし、今回インド側は、安保理および国連総会では事態を非難し、平和を望むとしながらもロシアを名指しするコメントはせず、いずれも投票棄権としています。

 

インドとロシアの関係は深く、1971年に旧ソ連と締結した「インド・ソ連平和友好協力条約」を基に永らくソ連およびロシアからの武器供給がトップシェアを続けています。

昨年11月にもロシアから地対空ミサイルシステム「S400」の供給が始まり、12月には新たに2031年までの軍事協定を結んでいます。それらのことからインドとロシアは軍事的に切っても切れない関係であることは事実です。

つまりはインド自由民主主義陣営でありながら、ロシアの他国に対する侵略行為を諌めるよりも自国の利害が重要だと考え、リアリズムを取ったと言えます。

 

インドは「自由で開かれたインド太平洋」戦略の中で要であり、日米豪印による「QUAD」の一員としても重要なパートナーです。3/3にも日米豪印の4カ国によるオンライン協議が行われましたが、ここでもロシアへの避難を強める日米豪に対して、「対話の道に戻ることが必要」とロシアに対する姿勢を変えることはありませんでした。

 

インドはこれまでのクアッドでの対中連携に関しても、中国を明確には名指しせず対立をエスカレートさせない態度を示してきました。今回の一件では、秩序を一変するような有事であってもあくまでも自国の利害を重視しリアリズムを貫くインドの姿勢がより明確となりました。

今後のインド太平洋における安保連携においては、如何にインドに利害を示して取り込んでいくかが重要です。一方で有事においてインドは必ずしも西側諸国に同調するとは限らず、対中連携の足枷となる可能性も否定せずに副案を講じていく必要があると思います。

 

以上

【2/21-2/25週の世界のリスクと経済指標】〜既存秩序の無力さ〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +6点(93点):良化 (基準点87点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

先週はロシアがウクライナへ全面侵攻しました。現代社会で大国が隣国へ侵略戦争を仕掛けたことに衝撃を受けています。ロシアは首都キエフを陥落させ、現政権を打倒することを目標としています。それに対してウクライナでは総動員令が出され、国民を挙げての抵抗戦が展開されています。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス6ポイントの良化となりました。

欧州のPMIは製造業はサプライチェーンの問題が依然残るのか、やや低調さを見せましたが、サービス業は概ね好調でオミクロン株のピークアウト共に回復傾向が示されました。

米国のPMIも製造業、サービス業共に上振れし、こちらも景気の持ち直しを示しました。

PCEコアデフレーターはCPI同様、依然高い水準を維持していることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数はロシアのウクライナ侵攻懸念により週の前半は大幅に落ち込みましたが、侵攻開始と共に反転し、米株指数を中心に反発して週を終えました。

「戦争は買い」のアノマリーなのか、ウクライナ情勢悪化により景気が悪化し米金融引き締めの手が緩められるとの観測なのかわかりませんが、戦争により強い反発が示されました。

しかしながら、今回の戦争によりさらに物流が滞ることは確実であり、インフレに拍車がかかると思われます。インフレに対するFRBの金融引き締め姿勢は変わることは無いと思います。

イールドカーブも一時大幅に下方向に下がりましたが、結局前週末からは大幅に上方向にシフトし、フラット化しています。

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こうしてアウトプットを書いている最中に、欧米がロシアのSWIFTからの排除を決定したため、次週はリスクオフから始まると想定します。

 

 

〜既存秩序の無力さ〜

先週はロシアがウクライナに侵攻を開始し、国連常任理事国でもある大国が隣国の主権を崩そうとしていることで世界に衝撃が走りました。今回の侵攻は首都を含むウクライナ全土への一斉攻撃で、クリミアのような部分侵攻とは訳が違いました。

冷戦後に西側諸国の作り上げた秩序に対して突然反旗を翻したのです。

 

しかし、今回の侵攻に対して、西側諸国が支援はすれども直接的な介入は行わないという異例の状態となっています。

それは以下の理由によるものだと考えられます。

  1. ウクライナNATO加盟国ではないため、NATOウクライナを防衛する義務はない。
  2. 国連常任理事国であるロシアが当事国であるため、国連安保理で非難決議が採択できず、国連としての抑止力が機能しない。
  3. 反撃による自国への甚大な被害が想定されるため、核保有国であるロシアに対して攻撃できない

今回のロシアのウクライナ侵攻は、隣国の体制変更を求める明らかな暴挙でありますが、その対抗を裏付ける「大義」が西側諸国にはなく、かつ核保有国特有の「抑止力」によって守られて西側諸国は強く出れません。

またこれまでのグローバリゼーションによってロシアから安いエネルギーを調達し、経済依存していることが、西側諸国の対抗への躊躇に拍車をかけています。

 

一方で、このロジックはそのまま中国の台湾侵攻にも当てはまります。

台湾は1971年のアルバニア決議において国連常任理事国の座を現在の中国に奪われ、「中国の一部」として扱われ国連にも加盟していません。

つまりはいくら台湾が異を唱えようとも、国際的な台湾の地位は「中国の一部」であり、本来であれば他国が介入できる話ではありません。西側が軍事介入してしまえばロシアがクリミア侵攻した時の理由と同じです。西側諸国にとっては、ウクライナ以上に台湾を防衛する「大義」がないのです。

 

国連安保理にかけたくても台湾は承認されていません。それに常任理事国である中国が拒否権を発動すればどんな決議も採択されません。

西側諸国は、核を保有する中国本土に対して軍事行動もできません。

そしてロシアに対するSWIFT排除を躊躇した西側諸国が、より経済的な結び付きの強い中国に対して、即座に強い経済制裁を行えるか疑問です。

 

今回のウクライナ侵攻は、核保有国で国連常任理事国である独裁国家が暴力に訴えた場合に、既存秩序は無力であるということを証明しました。

これで中国はいつでも台湾を取りに行くことができます。

 

そしてその次は日本の領土が侵攻されるかもしれません。

今回のロシアの行動によって、これまでの西側諸国が中心となって作り上げられた冷戦後の秩序が否定され、世界が近代の混沌の歴史に巻き戻された印象を持ちます。

唯一原爆を落とされ、苦い経験をした国としての日本の反戦思想は大事にするべきものです。

一方で「憲法9条があるから侵略されない」「日米安保があるから大丈夫」という幻想に頼るのではなく、暴力で既存秩序が覆された現実を見ていく必要があると思います。そして再び戦争に巻き込まれない様に抑止力としての自己防衛能力強化を考える時期に来ていると思います。

 

連日ウクライナのゼレンスキー大統領の国民に対するメッセージや、一般市民も巻き込んだ抵抗戦の様子がSNSを通じて流れてきます。そして「何としても祖国を守る」という彼らの強さを感じています。

彼らがロシアに屈せず、主権を失わずに無事に生き抜くことを祈ります。

 

少しでも彼らの力になればとわずかばかりの寄付をしました。

ご参考までに寄付先情報を添付します。

https://twitter.com/UKRinJPN/status/1497100158693416961?s=20&t=cZvvQHTZ7F0mN0xDYrW3lA

 

以上

【2/14-2/18週の世界のリスクと経済指標】〜欧州エネルギー安保で拡がる経済的分断〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -9点(62点):大幅悪化 (基準点71点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。

先週はウクライナ情勢を巡る様々な情報が行き交いました。

ロシア側は侵攻するつもりはないと言いながらも国境付近への軍備増強の手を緩めず、一方で米国はロシア側から発せられるニュースをフェイクだと言い、バイデン大統領はプーチン大統領ウクライナ侵攻を決断したと確信し、数日中にも攻撃を始めるとしています。

真偽のわからないヘッドラインに振り回され何が正しいのがわかりませんが、2/20で北京五輪が閉幕するタイミングも重なることから緊張感が一層高まっていることは事実です。

次週情勢が大きく動き、それに対して西側諸国がどのように対応するのか、引き続き注目したいと思います。

 

 

【経済指標】

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   先週の経済指標はマイナス9ポイントの大幅悪化となりました。

 前週に議論した日本の総合CPIは前回0.8%、予想0.6%に対して0.5%と低下しましたが、エネルギー全体で17.9%増(前月16.4%増)、生鮮食品以外の食品が1.3%増(前月1.2%増)といずれも原材料の輸入価格の高騰を受け上昇を強めました。一方で携帯電話料金が53.6%減となり総合指数を1.47%押し下げているため、実質的には2%に近い水準を保っている状況です。

今春も企業による商品の値上げ予定が相次ぐため今後の推移に注意が必要です。

 

またFOMC議事要旨の発表がありましたがサプライズなし、米1月小売売上高は予想外の3.8%と強さを見せ、高インフレの中でも米消費が堅調に推移していることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、ウクライナ情勢のヘッドラインに振り回され全体的に軟調となりました。

当事国である露RTS指数、またロシアからのエネルギー供給不安で独DAXの下落が顕著となりました。

ナスダックは昨年末来13.4%減で50MAが200MAを下抜けるデッドクロスの状態となり、下降相場に入ったことが示されました。

米国債イールドカーブウクライナ情勢の悪化から安全資産への逃避と、3月50bpsの利上げ観測がやや落ち着いたことで2年債利回りが低下しスティープ化しました。

また原油ウクライナ情勢の悪化に伴い一時95ドルまで上昇する一方、イランの核合意交渉の前進で原油供給が増えるとの観測から一時90ドルを割るなど、ウクライナとイランのヘッドラインによる綱引きで大きく動きました。

 

次週もウクライナ情勢に振り回される相場が予想されます。

 

 

〜欧州エネルギー安保で拡がる経済的分断〜

 ロシアの天然ガス輸出の39.2%(2021年6月時点)が欧州向けと言われていますが、ロシアは現在、欧州に対してウクライナ情勢での揺さぶりをかけるために供給量を絞っています。

ロシア国営のガスプロムは欧州向けで21年に前年比8%減、足元の22年1月は全体の輸出量が前年同月比41%減で欧州向けの減少が顕著となっていることが見て取れます。

足元の天然ガス価格の高騰で高い利益を得られていることを背景に、ロシアは政治的な圧力を優先して強気になっていると思われます。

 

一方でそれに対抗するべく、アメリカとEUは1/28に欧州への天然ガス安定供給を維持するため連携するという共同声明を出しました。

そしてその声明の通り、米国が欧州向けLNGの輸出を増やしています。

1年前には全体の1割だった欧州向けのLNGの輸出割合が今年1月には6割にも上っています。

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日本経済新聞2/19朝刊1面より転載

 LNG輸送は、海上輸送が基本となるため輸出元での液化設備、輸出先での気化設備が必要となります。そのため、ガスのまま直接輸送できるパイプラインに対してコスト競争力がありません。

しかし、欧州での天然ガス価格自体の高騰や安全保障上の問題から急速に米国産LNGの競争力が上がってきています。

米国では液化能力を年内に2割増強する予定とされ、また新たなLNGプラントの設備投資も再開される模様です。米国から欧州向けの供給力は増加が見込まれ、米国が急速にロシアに取って代わろうとしています。

 

今後仮にロシアがウクライナを侵攻せずに撤退したとしても、ロシア産エネルギーに対する不安はなくなりません。

ロシアへのエネルギー依存の危険性を認識してしまった欧州は、多少コストはかかったとしてもロシア産エネルギーからの依存脱却を図り、米国を中心とした西側諸国からの導入に切り替えると思います。

 

一方でロシアも、欧州の減少分を補完するため、今年に入り中国向けで年100億立方メートル、ハンガリー向けで10億立方メートルなど権威主義国向けの新規追加契約を増やしています。特に中国は2019年にパイプラインが開通したため、供給量を増やしやすい状況となっています。

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WSJ 2/18記事より転載

 

これらが示唆するのは、経済的分断です。

これまではグローバリズムの中で経済的な効率が優先され、西側東側関係なく最適調達が行われていました。

しかし、中国を中心とした権威主義国の台頭で、世界は大きく変わってしまいました。

これまでは米中個別での経済的な分断が目立ちましたが、今回、それにロシアと欧州の問題が加わったことでエネルギー安保での民主主義陣営、権威主義陣営それぞれの連携に発展しました。それにより、より広範な経済的分断につながってきている気がします。

 

経済的効率よりもそれぞれの陣営の安全保障が優先される冷戦時の世界に戻りつつあると感じます。

そして分断により衝突の可能性が高くなると共に、経済的効率が下がる事によってインフレ下での私たちの生活コストをさらに押し上げることにもつながってくると思います。

 

以上

【2/7-2/11週の世界のリスクと経済指標】〜日本にも迫る高インフレの兆し〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(32点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -1点(35点):小幅悪化 (基準点36点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化となりました。

緊張が続くウクライナ情勢は、米独が首脳会談を行い、またプーチン露大統領とマクロン仏大統領の5時間に渡る首脳会談を行ってロシアに対する圧力と交渉が続きました。しかしながら、事態は好転せずロシアはベラルーシとも共同軍事演習を開始し、実質的にベラルーシ国内にも軍の展開を開始しました。

 

11日にはサリバン米大統領補佐官が北京五輪開催中のロシアのウクライナ侵攻の可能性に言及し、ウクライナに滞在する米国人に48時間以内に退避するように勧告したため、一気に緊張が高まりました。

アメリカ時間12日に急遽バイデン大統領がプーチン大統領と電話会談しましたが、米国はこれまでのように経済制裁の警告を繰り返しただけで事態は解決の方向へ向かっていません。

 

今度は15日にショルツ独首相がプーチン大統領と会談予定ですが、NATOとしての何らかの譲歩の方針を固めない限り各国首脳が単独で会談しても意味をなさないと思います。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

注目の1月の米CPIは予想7.3%に対して7.5%、CPIコアは予想5.9%に対し6.0%となり、上振れしました。これにより、2年債利回りは一時1.6%、10年債利回りも2%を超え、さらにイールドカーブフラットニングを強め、金利が上昇する前から将来の景気後退を織り込みました。

インフレはまだ収まりを見せず、今後の金融引き締めに対するFRB当局者のタカ派姿勢を強める結果となりました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は好調な決算発表を受けて2/10の米CPIまでは堅調に推移しましたが、強い米CPIの結果により米国債利回りが金利が急上昇、それを受けてハイテク株を中心に大幅に売られました。

加えて2/11のNY時間にロシアのウクライナ侵攻の可能性が高まったことにより米株指数は大きく売られ、米国株のみ指数を大幅に下げ週を終えました。

先週は米CPIからの金利の上昇とウクライナ情勢の悪化のダブルパンチとなり、激動の1週間となりました。

次週もウクライナ情勢の動静により神経質な展開が続くと思われます。

 

 

〜日本にも迫る高インフレの兆し〜

さて、先週は日本国債利回りがYCCの上限である0.25%に達したことから、日銀が無制限買いオペ発動を発表し、利回り上昇を抑えにかかる緩和姿勢を示しました。

一方で米国では強いCPIの発表を受けてFRB当局者からも利上げペースの加速が叫ばれており、日本ではCPIが上昇しないとの理由で緩和傾向が続いていることにやや違和感を覚えます。

 

先週金曜日に発表された日本の企業物価指数を見ると、前月比+0.6%、前年比+8.6%と大きく上昇しています。

下記はここ1年間の企業物価指数の推移です。

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綺麗に右肩上がりで上昇しており、特に昨年10月からは世界的なインフレ高進から水準が一段上がっています。こう見ると日本もしっかりと影響は受けています。

 

一方で下記は消費者物価指数の推移です。

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日本は良いものを安く提供することが是とされる文化であるため、一般的には消費者への価格転嫁が難しいと言われています。

消費者物価指数は右肩上がりに回復して来ているものの、未だ目標である2%を大きく下回って低水準で推移しています。

 

従って現在は、企業はかなり強いコスト上昇圧力にさらされているものの、企業努力によって消費者市場にはまだそれが転嫁されていないと言えます。

もしくは、2020年4月からの携帯電話料金値下げの効果で21年10-12月の3ヶ月は毎月通信費が前年同月比53.6%減と足を引っ張っているため実態通りに反映されていない可能性があります。

 

しかし世界的な資源高、穀物高の影響から、足元ではインフレが私たちの実生活を徐々に侵食してきています。

原油高からガソリン価格は21年2月に136.1円だったものが22年2月には165.6円で21.6%上昇しています。また穀物高から近所のスーパーで買う食パンも、以前は高くても128円だったものが158円以下に値段が下がらなくなっています。

また外国人労働者流入してこない中で、単純作業分野で人手不足となり、アルバイトの人件費も上昇してきました。

今後もコスト上昇に耐えきれなくなった企業は、急激に消費者に転嫁し値上げしてくるでしょう。

 

今回日銀が示した無限買いオペでの緩和姿勢は、ゼロ金利に慣れてしまった日本の経済状況を考えると金利上昇の負の影響に対して正当化されるため、それはそれで正しい判断であると思います。

しかし、他国が利上げ傾向にある中での緩和は長期的な円安を招き、その対価として輸入物価の上昇でコストプッシュインフレを加速すると思います。

現時点では日本のCPIは低位で推移していますが、世界的に強いインフレ状況にある中、この状態がこのまま続くとは思えず、隠れていたものが急に表面化してくるのは時間の問題だと思います。

 

対岸の火事だと思っていた米国や欧州でのインフレが、いよいよ我々の間近にも迫ってきた感じがあります。他国同様、一般市民の生活は苦しくなる可能性が高いです。しかも日本の場合は賃金上昇が追いついていません。しかし、耐えるしかありません。

 

今後は日本の指標の変化にも注意を払いながら、政府や日銀の政策を注意深く見守っていきたいと思います。

まずは2月18日の日本のCPIに注目です。

 

以上

【1/31-2/4週の世界のリスクと経済指標】〜最後の緩衝地帯としてのウクライナの重要性〜

先週の評点:

 

リスク   -5点(31点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -1点(102点):小幅悪化 (基準点103点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。

北京五輪開幕に先立ち、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平主席が会談し、ウクライナ、台湾に対するお互いの姿勢を支持して蜜月さをアピールし、民主主義陣営との対決姿勢を示しました。

また前回北京五輪では幅広く80近い国から首脳が開会式に参加しましたが、ここ最近の中国の独善的な振る舞いと新型コロナの影響もあり、主に権威主義国からの参加に止まり民主主義国との溝が鮮明になりました。

 

またウクライナ情勢では、米国が8500人の派兵準備及び3000人規模のドイツ・東欧への派兵を発表しました。抑止力としての意味合いが強いですが、緊張が高まっています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

RBA(豪準備銀行)、BOE、ECBの政策金利発表がありました。

RBAはQEを終了させながらも利上げには慎重姿勢を示しハト派BOEは0.25%→0.50%と利上げ+QT開始でタカ派、ECBは金利据え置きながら年内利上げの可能性を排除せずこれまでのハト派からタカ派への転換を示しました。

コロナショック前もマイナス金利政策をとっており、元々ハト派色の強いECBがタカ派転換したことは、今や世界的にインフレ対策が大きな課題となっている表れであり印象的でした。

 

また、米国指標ではISM景況指数と雇用統計の発表がありました。

ISMは製造業、非製造業共に前月から低下を見せ、インフレ高進が徐々に景況感を圧迫して来ていることが示されました。

スタグフレーションとなる可能性が高まって来ているため、今後景況感などのソフトデータに注目が必要です。

また雇用統計では平均時給が前回、前月比0.5%に対し0.7%と強い上昇を見せ、賃金インフレの継続を示しました。

 

次週は2/10の米CPIの発表に注目です。

 

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週は米国株式指数が前週に続いて続伸、日経平均を含むアジア株式も米国株に連れて上昇しました。(上海は休場)

米株指数は今週も大型ハイテク企業の決算発表に一喜一憂し、大きく上下に振られる展開となりました。

下記はこれまでの大型ハイテク株の決算直後の騰落率です。(赤枠が先週決算発表の銘柄)

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大型株にも関わらず、決算が良ければ急上昇し、悪ければ急落する場面が目立って来ました。

昨年までは全体が上昇していたため指数自体が伸びていましたが、より個別要因が重要となって来ています。

また、金融引き締め傾向ににある中で、PERが高いため上昇幅よりも下落幅の方が大きい印象です。

株式指数自体は戻っていますが、2/4には金利が上昇する中でもハイテク株が強かったりと激しいボラティリティの中で違和感の残る動きが続いているため、株式を買いに走る状況ではないと考えます。

大型ハイテク銘柄の決算がほぼ終了し、牽引役がいなくなる次週からはどのような動きになるか注目しています。

 

 

 

〜最後の緩衝地帯としてのウクライナの重要性〜

さて、今週は緊張が高まっているロシアのウクライナへの侵攻懸念に関して改めて振り返ってみたいと思います。

 

今回のロシアのウクライナ侵攻懸念は、拡大するNATOに対するロシアの危機感の表れであると考えます。

NATOは元々強大なソ連軍に対抗して西側諸国で作られた軍事同盟でした。そのため本来であればソ連崩壊と共にその役割は衰退していくはずであったと考えられます。

しかし、NATOソ連崩壊後にもその役割を終えず、西側諸国の象徴として逆に旧ソ連圏でありワルシャワ条約機構のメンバーであった東欧諸国を民主化で飲み込み拡大していきました。

その中で旧ソ連の中心国であったロシアが、自らの同胞と思っていた国々が取り込まれながら、かつての敵陣営が間近に迫ってくることに脅威を感じ続けたことは容易に想像できます。

 

今回、ロシアはウクライナ国境付近への軍隊集結と共に、NATOに対して「NATO不拡大」を要求する安全保障提案を提示しています。

下記はNATO加盟国と、現在NATOが加盟申請国として認識している国を表したものです。

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現在、ウクライナボスニア・ヘルツェゴビナと共に、同じくロシアと国境を接するジョージアNATOへの加盟を申請しています。

ウクライナと共にジョージアまでもが加盟するとなると、ベラルーシ以外ほぼ全面に渡りNATO加盟国及び西側諸国であるフィンランドが迫ることとなり、ロシアが感じる脅威は計り知れないものになります。首都モスクワにも近く接地面積の大きいウクライナは最後の緩衝地帯として非常に重要なのです。

 

従ってロシアの今回の主張自体は理にかなったものであると考えられます。そもそもNATOの設立の意義が対旧ソ連圏の軍事同盟であったのだとすると、ここまでの拡大路線が必要だったのかと疑問を感じます。

確かに西側諸国にとっては東欧諸国の民主化は歓迎すべきことでした。一方で緩衝地帯である東欧諸国を安易に「米国の同盟国」としての安全保障の枠組みにまで組み入れ過ぎた結果、強いロシアの警戒を招いたのだと考えます。

 

ウクライナジョージアNATO入りを巡っては、2008年にも独仏の反対によりは否決されています。外交上、弱腰を見せられない事情はありますが、両国の加盟はNATO内でも一枚岩にならないことから、NATOとしても「不拡大拒否」でなくもう少し融和姿勢を見せても良いのではないかと考えます。

 

一方で、ロシアもNATOの不拡大を訴えるのであれば、なぜ軍事行動に訴える必要があるのか疑問です。クリミア併合やウクライナ東部での独立運動への支援などの前科がある以上、軍事行動で訴えれば訴えるほど、近隣諸国は軍事的保護を求めてNATO加盟への傾倒を深めます。またNATO自体も警戒を高め拡大を強める結果となり自らの首を絞めることとなります。

 

地政学上、緩衝地帯は非常に重要です。

今回は、米国の対中傾倒や、欧州への影響力の衰退、また欧州のロシアへのエネルギー依存の高まりなどから、ロシアがここぞとばかりに緩衝地帯存続への警告として踏み込んできた感があります。

現在は互いに落とし所を模索していますが、最終的には互いにこれ以上踏み込むことはせず、ウクライナの中立性が保たれる様に暗黙の内に同意することでしか解決方法はないと考えます。

 

以上

【1/24-/1/28週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -1点(102点):小幅悪化 (基準点103点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。

先週はウクライナを巡るロシアの侵攻問題が緊迫感を増してきました。

ウクライナ国境周辺への10万人規模の軍隊の展開を続けるロシアに対し、米国は欧州に8500人規模の部隊を派遣する準備があるとしています。在ウクライナ大使館職員の退避も開始し、ロシアのウクライナ侵攻がいつ起きてもおかしくないと緊張を高めています。

また米欧はロシアが求めていたNATOの東方不拡大の合意を拒否を表明し、お互いの主張の妥協点が見えず外交的交渉は暗礁に乗り上げています。

ウクライナNATOに加盟することによって西側の影響力が目前に迫り、緩衝地帯がなくなることを恐れるロシアが実力行使に出る可能性を否定できなくなっています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化でした。

欧米のPMIはまちまちで、供給制約の緩和の影響を受けたドイツが製造業、サービス業ともに上振れた一方で、米国はオミクロン株やインフレの影響が重く、失速状態にあることが示されました。

12月PCEコアデフレーターは前回4.7%、予想4.8%に対して4.9%と上振れし、インフレの継続を示しました。

FOMCに関しては後述します。

 

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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  先週の株式指数は、前週に下げ幅の大きかった米国株が回復した一方、前週に下げ幅の少なかったアジア株(日経、上海総合、香港ハンセン)、欧州株(DAX、FTSE)などが引き続き下落しました。

中国株はFRBの引き締め政策から外国人投資家が売りに走ったのに加え、中国当局が不公正競争を取り締まる法整備を完成させるとの報道からハイテク株を中心に下落しました。

 

〜戻る株価と続くフラットニング

さて、先週は米FRBFOMCが開催され注目を集めました。

資産買入プログラムの3月終了と共に3月利上げ開始の方針が示され、毎会合での利上げの可能性も排除せず、利上げ開始後にQTを開始することも示唆されました。

これらはややタカ派ですが、事前に予想されていた内容の範囲となった印象です。

一方で利上げ幅や利上げペースに関しては明言されず、不透明感が残ったまま3月のFOMCまで持ち越しとなりました。

それを受けて、直近の大きなイベントを乗り越えた安心感からか、28日には株式指数は大きく反発し、ナスダック3.13%、S&P500が2.44%高、ダウ平均が1.65%高となり、週間でもプラスで終えています。

 

一方で、これで安心して再び株を買い向かえるのかと言うと、そうではないと考えます。

先週は一旦株高となったとは言え、イールドカーブは相変わらずフラットニングを強めています。

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チャートで見ても、一旦切り返したS&P500に対し、US10Y-US2Yの長短金利差は縮小傾向を強め、昨年10月上旬には1.3%弱あったものが0.6%4ヶ月弱で半分以下の水準になってきました。

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今回のFOMCで、FRBは次回会合から利上げを開始し、今後高いインフレ率が収束するまで辛抱強く続けていくことが明確になりました。

それにより利上げを反映して短い2年債利回りが上昇していますが、一方で利上げによって抑えられる将来の景気を反映して10年債利回りが上昇しない状態が続いています。

イールドカーブフラットニングを続けるからと言って、株価が急落するわけではないと思いますが、債券市場は強い引き締め姿勢から来る影響を正確に織り込んでいるものと思われます。

 

先週は大型ハイテク株の決算発表が行われ、AAPL、MFSTなどは好決算が素直に受け止められ決算発表後からそれぞれ7%弱上昇しています。

半導体不足やインフレから減速する可能性も考えられましたが、足元では見事に業績を伸ばし株価も回復しています。

 

ただ、利上げやQTの作用によって景気が実際に冷やされるのはこれからであり、従来よりも高いインフレ率が収束するまで辛抱強く続けられる引き締めに対し、今後も企業の業績が耐えられるかは未知数です。

そう考えると、やはり当分は株式を買い向かうタイミングではなくインフレと景気のバランスをじっくりと観察していく状況か思います。

 

以上