投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【4/4-4/8週の世界のリスクと経済指標】〜大胆な金融緩和から大胆な金融引き締めへ〜

先週の評点:

 

リスク   -7点(26点): 大幅悪化 (基準点33点) 

経済指標  +3点(42点):良化 (基準点39点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス7ポイントの大幅悪化でした。

ウクライナ巡っては、ロシア軍がキーウから撤退した市街地で多くの民間人の遺体が発見され、ロ軍が民間人の殺害も行っていた可能性が高まりました。そのため西側諸国はロシアへの非難を強め、G7はロシア産石炭の輸入を禁止し、石油の輸入も段階的に減少させることで制裁を加速する方針を示しました。

 

一方で国連総会にて、国連人権理事会でのロシアの理事国としての資格停止が可決されましたが、前回の非難決議と比較すると賛成に回る国が大幅に減り、反対・棄権・無投票の数が100ヶ国となり賛成国数を上回りました。

 戦争が長引くにつれ、冷静さを取り戻した加盟国の中で徐々に一枚岩でない状況が見え始めました。

 

そして中国では上海市を中心に新型コロナが再拡大しています。中国当局が厳しい統制をかけているため企業活動が停滞しサプライチェーンにも影響が大きくなりそうです。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス3ポイントの量化でした。

ISM非製造業景況指数は予想には届かなかったものの前月より改善し、米国景気の底堅さを示しました。

一方で中国の3月財新サービス業PMIは大幅な悪化となり、当局の不動産やハイテク企業に対する統制で不安定だったところに新型コロナによるロックダウンの影響が重なって景気が大幅に悪化していることを示されました。

 

FRBの3月FOMC議事要旨では0.5%の利上げのみならず、QTに関しても積極的に議論されていた事が判明しました。

またECB理事会の議事要旨でも早期のAPP停止及び7-9月期での利上げが議論されたことが示されました。ECBは14日理事会の結果が公表されますが、金融引き締めに関する強目の姿勢が確認される可能性があります。

 

豪準備銀行も政策金利は据え置きでしたが、金融引き締めに「忍耐強く」取り組むとしていた文言を削除し、ややタカ派に傾倒してきました。

従来ハト派スタンスを貫いてきた中銀が徐々に金融引き締めにスタンスを変えつつあります。

 

次週は米CPI、PPIの発表があります。CPIは予想では8.4%と先月からさらに0.5%上昇となっていますが、ウクライナ情勢悪化からのインフレ高進がどこまで影響するか注目しています。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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  先週の主要株価指数軟調な展開となりました。

週初はテスラのイーロンマスクのTwitter株の9.2%保有や、テスラの1Qの納車台数がこの時期の過去最高を記録したことでハイテク株を中心に大幅反発しました。しかし、4/5FRBのブレイナード理事の5月でのQT開始のタカ派発言が伝えられ、また4/6には3FOMC950億ドルのQTが議論されたことが公表されると、10年債利回りが急上昇しハイテク株を中心に反落しました。

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セクター別ではハイテク(情報技術、コミュニケーションサービス、一般消費財)、景気敏感セクター(資本財、素材、不動産)が下落した一方で、ヘルスケアや生活必需品、公益などのディフェンシブセクターやエネルギーセクターが伸び、セクターローテーションが行われた印象です。

 

 

〜大胆な金融緩和から大胆な金融引き締めへ〜

 先週はFRBの金融政策が大きな転換期に差し掛かっていることが示されました。

従来のFRBの政策スタンスは、パウエル議長が3/21にコメントしていた「5月に0.5ポイント利上げの可能性」「QTを5月の次回会合にも打ち出す可能性があるが、まだ決定は下していない」とう内容がコンセンサスとなっていました。この時点ではQTの規模や開始時期は明確になっていませんでした。

 

しかし、4/5にハト派のブレイナード理事が5月にも早いペースでQTを進めることを示唆したことで、QTが予想以上に急速に押し進められることが意識されました。また翌日に発表された3月FOMCの議事要旨では、「5月会合終了後にも月額950億ドルのQT開始」と具体的な規模も議論されていたことが判明しました。

 

そして先週はQTがフォーカスされたことで、短い金利よりも長い金利が意識され10年債利回りが強く上昇し、イールドカーブは前週の強いフラットニングから一転して強くスティープニングしました。

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 今年の1月第1週にも、12月FOMC議事要旨で初めてQTに関して議論がなされたことが発表されてイールドカーブは一瞬だけ強くスティープニングしたことがありました。

https://minarai-tousan.hatenablog.com/entry/2022/01/09/215809

当時は「利上げとQTが併用されることで利上げのペースを緩める」ということが期待されFRBがまだインフレ率をコントロールしようと余裕があったように感じます。
しかし、今回の局面はその時とは違い、既にコントロールを失いかけたインフレ率に対して、利上げもQTも総動員し、なりふり構わず抑えにかからないといけないというFRBの強い焦りが感じられます。

 

FRBは2020年3月23日にコロナショックに対応して「何でもやる」という大胆な金融緩和策で市場を落ち着かせ、それが2年間マーケットを支えてきました。

今度はその政策を一気に逆回転し、「何でもやる」という大胆な金融引き締め策でインフレに対抗しようという姿勢が示されたと言えます。

 

そうなると株価にとって支援的であるとは言えません。

先週はQTによって直接的な影響を受ける10年債利回りは先週14.3%も上昇し2.7%となりました。

今後もFRBの強いタカ派転換で10年債利回りの上昇が予想され、特に金利感応度の高いハイテク株には重しになってくると思われます。

ついては長期投資ポートフォリオから、保有していた30%のナスダック100 ETFを全て売却しました。新ポートフォリオMSCIコクサイ30%、国内債券25%、現金45%と再び弱気へと変更、様子を伺いたいと思います。

 

個人的には次週は米国の銀行株に注目したいと思います。

1Q決算の発表がありますし、イールドカーブスティープニングへの転換で前週末に株価が反発していますので、今後も上昇が続くのか確認したいと思います。

 

以上

【3/28-4/1週の世界のリスクと経済指標】〜逆イールドだからリセッションか〜

先週の評点:

 

リスク   1点(34点): 良化 (基準点33点) 

経済指標  -3点(96点):小幅悪化 (基準点99点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス1ポイントの良化としました。

ウクライナとロシアの停戦協議でロシアのキーウでの軍事作戦縮小の方針が伝えられていましたが、ウクライナ政府はキーウ州全域をロシア軍から奪還したと発表しました。一方でロシアは東部のドンバス地域や南東部に軍を再配置し、同地域の制圧し5月初めに勝利宣言することに注力すると伝えられています。クリミアに続き、またしても領土をロシアに奪われることになりそうですが、ウクライナ全土での攻撃は収束する可能性が高いです。どんな形であれ、そろそろ一旦の戦争休戦の形が見えてきそうです。

 

新型コロナは世界的には減少傾向となり規制緩和へ向かっていますが、中国内での感染が拡がっており、ゼロコロナ政策の外出禁止令の影響で職場へ向かえず、生産現場の停止が増えてきました。収束せずに感染拡大が続けば、再び世界のサプライチェーンにも影響が出てくることが心配されます。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス3ポイントの小幅悪化としました。

2月のPCEデフレーターは6.4%となりインフレの高進が示された一方、個人消費支出(PCE)は前月2.1%、予想0.5%に対して結果0.2%と物価高による支出の減速が示されました。

またISM製造業景況指数は前月58.6、予想59に対して結果57.1と下振れ、仕入れ価格指数が11.5ポイント上昇の87.1となり原材料高が示された一方、新規受注や生産指数は低下しました。

これらの指標からは、インフレによる不透明感の高まりから需要が軟化していることが示されました。

 

米国雇用統計ではNFPが予想49万人に対して43.1万人と下振れしましたが、失業率が3.6%と上振れ、平均時給も0.4%上昇し、完全雇用を達成していることを示しました。これによりFRBがインフレ対策を躊躇なく行うことが改めて正当化されました。

 

また、他の中央銀行に連れて日本の10年債利回りが上限の0.25%に近づいたため、再び日銀が連続指値オペで金融緩和措置を行いました。利回り上昇は抑えられましたが、その副作用で円安が進み一時ドル円が125円にタッチしました。

一方でユーロ圏のHICPが7.5%と急進したことから、ECB高官からも9月までにQEを終了させ利上げを行う議論が出てきました。

欧米と日本の金融政策の違いが浮き彫りになった週となりましたが、日本のインフレ指標も4月からは上昇することが予想され、今後も同様の事態となった際に緩和策を続けられるか疑問が残ります。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週のダウ、ナスダック、S&P500の主要米国株式指数は3週連続でプラスに推移しました。

先週はウクライナでの停戦交渉の進展を巡って一喜一憂しつつ、PCEデフレーターや雇用統計などの指標によって金融正常化のペースを探る展開となりました。

また原油は中国のロックダウンによる需要減や、米国が5月以降、半年に渡る戦略石油備蓄の放出を決定したために大幅に下落し、先週末に比べて14ドル安の99ドルとなりました。

 

〜逆イールドだからリセッションか〜

 先週の雇用統計では失業率が前回3.8%から3.6%と改善し、完全雇用状態が示されました。

これを受けてFRBがインフレ対策を躊躇なく行えるとして、5FOMCでの0.5%の利上げ観測が高まり短い金利が上昇してフラット化、2年最利回りと10年債利回りが逆転し逆イールドが発生しました。

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FRBはまだ利上げを開始したばかりですが、インフレ率が高すぎるために金融引き締めが急激になるとの観測から将来の景気後退が織り込まれ、短期金利は上昇、長期金利は低下しています。

 

下記は米国10年債利回りから2年債利回りを引いた金利差の過去からのチャートです。

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 金利差ゼロのピンクのラインを下に突っ込むと逆イールドを意味しますが、過去の発生時の2年以内に必ずリセッションとなっています。そして現在、「逆イールドが発生した」という事実がそのアノマリーに該当することから、リセッションが近いと考えられています。

 

 これまでの逆イールド発生時は利上げがかなりの段階まで進んだあと、「これ以上の利上げは許容できない」というシグナルとして起こっていました。しかし今回は3月にゼロ金利からの利上げを開始したばかりであり、強すぎるインフレからのスタグフレーションを懸念して起こっています。

つまりはまだ何も見えていない利上げの効果を悲観して起こっているのであり、それはこれからどうなるかまだわかりません。そこに大きな違いがあると考えます。

 

 株価は3/17の3月FOMC後に一旦底を打ったことから、既にFRBが強い姿勢で金融正常化に立ち向かうことは織り込まれています。4/1の雇用統計でも、良好な結果から改めてFRBの強い金融正常化を正当化されることなりましたが、株価はプラスで終えたことでそれが証明されています。

ここからは正常化の結果、一定の景気を維持しながらインフレ率を抑え込んでいけるかどうかが重要な指標となってきます。そしてその結果が出るのは半年先です。

その間、ISM製造業景況指数が直近5年の平均値である56程度、非製造業景況指数が57程度の水準を維持できるかどうかにも注目しながら、インフレ指標を見守る必要があります。

 

逆イールドの発生はシグナルとしては警戒すべきものだと思いますが、それは現時点での重要なインジケーターではありません。

 

ついては現時点では少なくとも半年先までのリセッションはないと想定し、次週も引き続き強気のポートフォリオを継続します。

 

以上

【3/21-3/25週の世界のリスクと経済指標】〜ウクライナ難民の周辺国への影響〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  0点(60点):中立 (基準点60点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化でした。

先週もウクライナ情勢は膠着が続きましたが、週末にロシアが軍事作戦の第一段階を完了し、ドンバス地域の開放に焦点を当てると方向転換の姿勢を見せました。ややロシアが後退した印象ですが、一方で決定打がないまま戦闘が長引く様相になってきました。

 

また先週は岸田首相が訪印し、モディ首相に対ロシアで協調を促しましたが、日印共同宣言ではロシアに関する言及はありませんでした。一方で中国の王毅外相もインドを電撃訪問し、対ロシアで「対話重視」とすることで一致したと報道がありました。ロシアに対して制裁を強める日米欧に対して距離を置く中印の姿勢が鮮明となりました。インドの中立姿勢は今後のインド太平洋安保にも影響してくると思われ、動向に注意が必要です。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標は0ポイントの中立でした。

欧米PMIが発表されましたが、欧州ではウクライナ情勢の悪化を反映してやや悪化の傾向となりました。一方で米国PMIは製造業、サービス業共に上振れとなり米国景気の底堅さを印象付けました。

 

次週は米国PCEデフレーター、雇用統計、ISM製造景況指数の発表があります。

雇用統計で前月に落ち着きを見せた平均時給の伸びが再び上昇するのか、また先週のPMIで底堅さを示した米国景気がISM製造業景況指数でも底堅さを見せるのか、注目しています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は概ね堅調に推移しました。

欧米株式は先週に比べるとさすがに推進力が落ちた印象ですが、日経平均は9連騰となり、4.93%高と強い伸びを見せました。米長期金利が2.48%まで上昇したことと日銀の緩和政策継続により円安が進み、1週間でドル円は119円→122円となりました。それを背景に輸出銘柄を中心に日経平均は大きく続伸しました。

米株指数はS&P500が日足200MAを明確に抜け、ここをサポートにして次は2月に2回ほとトライして抜け切れなかった4600辺りを狙った動きとなると思います。

一方でここ最近米株に先んじた動きを見せていた独DAXがやや足踏みしており、米国株も今週は足踏みの展開を予想します。

 

 

ウクライナ難民の周辺国への影響〜

さて、ロシアがウクライナへ侵攻開始してから1ヶ月が経ちましたが、西側諸国からのウクライナへの軍事支援もあり膠着状態が続いています。

一方でこの1ヶ月で戦禍を逃れるため、ウクライナから370万人以上の難民が主に東欧諸国を中心として発生しています。

 

下記はウクライナ難民の流出先をまとめたものです。

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基本的に周辺国への流出していますが、中でも圧倒的に多いのがポーランドです。ポーランドを経由して20万人程度が中欧諸国へ向かったと言われていますが、それでもポーランドには半数以上の200万人程度が留まっていることとなります。

また自国民の人口に対する流入難民の割合が多いのはモルドバで、総人口262万人の小国でありながら38万人の難民が流入しています。

 

ウクライナの近隣各国は人道的見地から避難民の受け入れを積極的に続けており、戦闘の激化が進むにつれ、今後も増加していくと思われます。

ここで気になるのが、受け入れる側の近隣各国の状況です。

戦争が長引くにつれ、今後予想されるのは避難民の避難先での生活基盤の構築です。

そして、それにはウクライナ避難民が避難先での職を必要とすることになります。

 

現在、コロナ禍からの回復での人手不足から東欧各国は比較的失業率が低い状況にあり、足元ではウクライナ難民が職を求めても労働力として許容する能力は高いと思われます。

避難民は女性と子供が中心とされていますので、実際に就労可能なのは半分以下かと考えられます。仮にポーランドにおいて200万人の半分の約100万人の避難民が職を求めると、1,743万人のポーランドの就業人口に約5.7%の労働力が追加されることになります。モルドバに至っては14.5%の追加になります。

また、ウクライナの一人当たりGDPは3,741ドルと周辺諸国と比較すると圧倒的に低いです。

そして女性や子供が多いことからサービス業などの軽作業が主体となることが考えられます。

つまり、周辺各国の底辺層の雇用がウクライナ難民によって大きな影響を受けることが考えれます。

 

2010年から欧州に大量に流入したシリアを中心とした難民により、欧州社会にはイスラムを中心とした異文化による自らの伝統の破壊や雇用の喪失に対する恐れが発生しました。それが欧州でのポピュリズムの台頭を増長させた訳ですが、今回のウクライナ難民の大量流入も東欧での同様の流れを作る可能性を否定できないと推測します。

もちろん、シリア難民とは違い、ウクライナと東欧諸国は民族的、言語的にも近くかつ宗教も東方正教会をベースとしていることから、文化的な障壁は低いと思います。しかし今後、景気後退も予想される中で、自国民の雇用の喪失が意識され始めると、避難民に対する反対意識も生まれてくると想像します。

 

今回の東欧諸国を中心とした避難民の受け入れは、人道的見地から称賛されるべき行動であることは間違いありません。しかし一方で東欧諸国が急に大量の新たな住人を抱えることとなってしまったことは事実であり、その影響も考える必要があると思います。

個人的にはEU全体で分散し、東欧諸国への影響を薄めていくしかないと思います。しかし、避難民の祖国の近くに留まりたいという意志や、経済的な格差や文化的な違いがさらに拡がる西欧、南欧地域での受け入れがどこまで進むか未知数な部分も多いと考えます。

難しい問題ですが、その課題を今後欧州がどのように受け入れ、どのように変化していくのか注目したいと思います。

 

以上

【3/14-3/18週の世界のリスクと経済指標】〜FRBが示した将来のハト派姿勢〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(32点): 小幅悪化 (基準点36点) 

経済指標  -13点(70点):大幅悪化 (基準点83点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化でした。

ウクライナ情勢は、一時停戦合意が近いとの報道もありましたが、その後の続報がなく難航しているものと思われます。ロシア側は超音速ミサイルで軍事施設を破壊し、最新兵器の投入で圧力を強めています。ウクライナ難民は3/15に300万人を超えたとの報道も出ており、今後周辺諸国への難民による様々な影響が露見してくると思われます。

 

また中国がロシア支援を強めるとの観測から米中首脳会談がオンラインで行われましたが、中国の方針は明確に示されませんでした。

引き続き出口の見えない状況が続きます。

 

 

【経済指標】

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  先週の経済指標はマイナス13ポイントの大幅悪化としました。
注目のFOMCは0.25%-0.50%への0.25%の利上げ、ドットチャートでは22年の7回の利上げが示されました。また5月の会合でのQTの可能性も示唆されました。
BOE政策金利でも予想通りの0.75%への25bpsの利上げが発表されましたが、追加の利上げに関してはインフレによる景気減速も意識されてややトーンが和らぎました。
 

 その他の指標は米小売売上高や米NY連銀製造業景気指数、ドイツやユーロ圏のZEW景況感調査などの景況系指標が低調に推移し、高インフレやウクライナ情勢の悪化からやや景気の低下を印象づけられました。

次週は欧米PMIが発表されますが、資源高やウクライナ情勢の影響がどれほど現れるのか注目します。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の主要株式指数は強い反発となりました。

DAXは前週に続き大幅反発となり強い上昇局面を継続しています。

また先週はFOMCを前にして3/15に米国株も底打ちし、FOMCを挟んで大幅反発となりました。特にこれまで利上げを前にして下落が激しかったナスダックが大きくアウトパフォームしました。

 中国株も大きな動きを見せました。週初はロシアとの緊密な関係が懸念されて売り込まれましたが、3/16に中国副首相が「資本市場に好ましい政策措置」を打ち出す方針を示し急騰しました。

中国株も底打ちを見せ、市場全体の雰囲気を楽観的にさせる要因となりました。

 

 

FRBが示した将来のハト派姿勢〜

 さて、先週は注目の3月FOMCがありました。

結果は0.25%の利上げ、ドットチャートは22年に利上げ予想7回となりました。またQTに関しても5月の会合で開始について検討することが示されました。

ウクライナ情勢の悪化で世界経済の不透明感が増していることもあり、ややハト派に出るのを予想していましたが、コンセンサス通りながらややタカ派の結果となりました。

 

下記はドットチャート中間値の前回(2021/4Q)と今回(2022/1Q)の変化です。

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前回のドットチャート中間値は2022年から長期に至るまで右肩上がりで将来の景気回復を織り込みながら金利が上昇していくことを示していました。

一方で今回のドットチャートでは、2022年に強く金利上昇した後2023年-2024年でピークを打ち、2025年以降の長期では景気に配慮してか再び利下げが行われることが示されています。

22年に7回(1.875%)という利上げ回数自体はタカ派でしたが、私はこの長期の中間値の利下げ姿勢が、マーケットに安心感をもたらしたのではないかと考えます。

 

実際に政策金利発表直後は、7回というタカ派な利上げ回数に反応、株は下方向へ反応しました。

しかし時間が経つにつれと徐々に落ち着きを取り戻し、特に大型ハイテク株で構成されるナスダック100は前日比3.7%高の大相場となりました。

そしてその後も株式市場は続伸し、ナスダック100は週足8.41%高と他の指数を大きくアウトパフォームして週を終えました。

 

もちろんこれまでハイテク株の落ち込みが激しかったため、単純にその反発が強かったとも考えられます。しかし、この金利感応度の高いハイテク株の強い動きは、長期のドットチャートで示された将来の利下げが加速させたことを表していると思います。

つまり、今回のドットチャートでは、「インフレ退治で一時的にはタカ派にならざるを得ないものの、将来に対してはハト派に行く」というメッセージが示され、それにマーケットが反応したと考えられます。

 

 今回のFOMCで利上げを織り込み、一旦株式市場は底打ちしたと思われますが、ここから更に上昇していくには業績の確認が必要かと思います。ナスダック及びナスダック100は日足50MA、S&P500も日足200MAの節目に差し掛かっており、1Q決算まではここを挟んでフラフラとした動きが続くのではないかと想定します。

 

私にとって、今回のFRBの利上げはサロンで金融リテラシーを学び、仕組みを理解してから初めての利上げでした。

当日は久しぶりに午前3時前に起床し、FOMC中継をリアルタイムで固唾を飲んで見守りました。

FRBの利上げ転換という歴史的な瞬間に立ち会えたことは非常にエキサイティングな経験となりました。

 

以上

 

【3/7-3/11週の世界のリスクと経済指標】〜3月FOMCでの利上げを前にして〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +3点(51点):良化 (基準点48点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

ウクライナ情勢は停戦協議が散発的に行われながらも妥結せず、戦況は膠着状態が続いています。

多くの欧米企業がロシアでの事業停止もしくは撤退を決め、かつ米英はロシア産の化石燃料の輸入を禁止するなど、ロシア経済を孤立させ圧力をかけています。またロシア側も外資企業に対して事業停止した場合は資産押収する報復措置の検討に入ったと報道されています。

 

一方でポーランド旧ソ連製戦闘機を米軍経由でウクライナに供給する動きがありましたが、ロシアを必要以上に刺激することを警戒しバイデン政権は一転反対する方針を示しました。またバイデン大統領は、NATO加盟国の領土は守るが、ウクライナでロシアと戦うことで紛争を拡大させるリスクはとらないと言明し、ウクライナが求める飛行禁止区域は設定しないとの考えも示しました。

ここにきて、やや矛盾を感じさせる米政権の弱腰姿勢が改めて散見されました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス3ポイントの良化となりました。

米CPIは前回7.5%、予想7.9%に一致の7.9%となり、40年振りの伸びとなりました。ウクライナ侵攻で原油価格がさらに大幅に伸びる前の時点でもインフレが高まっており、次週のFOMCでの利上げを後押しする形となりました。

日本の国内企業物価指数も予想8.7%に対して9.3%と大幅に上振れとなり、我々の足元でも急速にインフレが影響を及ぼしてきていることが示されました。

 

またECBはPPEPを予定通り今月末で終了すると共に6-9月期にもAPPも終了する方針を示しました。これで強い緩和継続を明言しているのは日銀のみとなり、円安が加速し117円に突入しました。

 

次週は米小売売上高、3月FOMCBOE政策金利に注目です。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は前週からのウクライナ情勢の悪化を織り込み全体的に下落基調でしたが、ここ数週間下落の激しかった欧州株は3/7を底に反発し、大きくプラスして週を終えました。

一方で欧米が手放したロシア資産を買い進めている中国企業への不安が高まり、上海総合と香港ハンセン指数は下落を強めました。

米国株指数は3/7を底に一旦は反発したものの、CPIの伸びにより週末にかけて下落していますが、下げを先導していた欧州株式の反発は支えとなると思われます。

 

 

〜3月FOMCでの利上げを前にして〜

下記は先週の米国債イールドカーブの変化です。

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 前週はウクライナ情勢の懸念が高まりからイールドカーブは景気後退を織り込み、下方向へのブルフラットニングを示していましたが、先週はこれまで通りの「景気過熱・将来利上げ」のセオリー通りの上方向へのベアフラットニングとなっています。

つまり債券市場はロシアのSWIFTからの排除、米英のロシア産化石燃料の禁輸で当面の大きな悪材料が出尽くしたことでウクライナ情勢を織り込んだと考えられます。

他の指標を見ても3/7の原油価格の頭打ち、独DAXの底打ち、ユーロドルの底打ちが確認され、マーケットの注目の的は米国のインフレ対策に戻っているものと考えられます。

 

次週は15−16日に3月FOMCがあります。

前週に3/1にパウエル議長が議会証言で発言したように、既に今月からの利上げは確実です。

そしてその議会証言後にマーケットがポジティブに反応したように、今月からの利上げは既にマーケットは織り込み済みだと考えます。

 

また今回のFOMCではFRBメンバーによるドットチャートが示されます。

下記のFedWatch金利先物が示す通り、3/12現在マーケットは2022年に7回の利上げを織り込んでいます。

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12月FOMCのドットチャートでは22年は3回の利上げが示されていました。

今回その中心値がマーケット予想の7回と一致するのかが注目されますが、ウクライナ情勢による景気悪化が懸念される中では、7回でもややタカ派な印象です。同時に7~9月からのQTも示唆されているため、FRB当局者の予想がこれ以上にタカ派に振れることは少ないのではないかと推測します。

 

 強いインフレに対する強い利上げ懸念に、ウクライナ情勢の悪化からの一層の資源高も加わって年初から株価調整は加速し、特にナスダックは最高値より20%減となり割高感は収束してきました。

また上述した様にウクライナ情勢は既に織り込んでいると思われます。

そのため、今回のFOMCは既にコンセンサスとなっている内容が明示されマーケットの不透明感が払拭されることで無難に通過し、今後は株式は徐々に上方向に反応する可能性が高いと考えます。

 

ついては先週、長期投資のポートフォリオを昨年10月から継続していた「弱気」を「強気」に変更しました。具体的にはMSCIコクサイ30%、ナスダック100 30%、国内債券25%、現金15%としました。

 

2020年3月にゼロ金利となって以来、わずか2年での利上げ局面となります。

激動の2年間でしたが、自らの金融リテラシーの向上を目指す私にとっては、絶好の学びの機会となっています。

ウクライナでは人々の苦しい状況が続いており日々心が痛みますが、一方でマーケットの大きな変化の局面を冷静に観察していきたいと思います。16日はPCの前に正座して発表を見守りたいと思います。

 

以上

【2/28-3/4週の世界のリスクと経済指標】〜リアリズムを貫くインド〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +18点(126点):大幅良化 (基準点108点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化でした。

先週はロシアのウクライナ侵攻に対し欧米各国が経済制裁を強めました。欧州で最も親露派で依存が大きかったドイツの方針転換の影響が大きく、ウクライナEU加盟議論も進むほど一枚岩になってきました。それと共にロシアの銀行に対するSWIFT排除やプーチン大統領本人や側近への個人資産凍結、また企業によるロシア事業からの撤退やロシアへの輸出停止、スポーツの世界でもロシア排除の動きが加速しています。

 

一方で先週はロシアとウクライナによる停戦交渉も2回行われましたが、ロシアは武装解除ウクライナは全面撤退を求めて平行線を辿っており、依然ウクライナへの攻撃は継続しています。

戦闘が長期化していますが、ウクライナおよびロシア経済共に消耗は激しく、今後どのような展開となるのか予想がつきません。ウクライナからの周辺国への難民は120万人を越えました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス18ポイントの大幅良化となりました。

景気を図る重要なソフトデータである米ISM製造業景況指数は上振れ、非製造業指数は下振れとなりました。供給制約や労働力不足による影響で指標に統一性がなく判断が難しいですが、スタグフレーションに向かっているかどうかを確認する指標として今後も注目したいと思います。

 

一方で米雇用統計はNFPは67.8万人と大きく上振れ、失業率は3.8%で完全雇用となりFRBの使命である雇用の最大化を達成しました。

これでFRBはもう一つの使命である「適切なインフレ率」を保つため、躊躇なくインフレ対策を行う準備が整いました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数ウクライナ情勢の悪化を受け、全体的に大幅反落となりました。特に今回の戦争の舞台となっている欧州株の下落が激しく、独DAXは1週間で10%の下落となりました。また通貨でもユーロドルが1.12ドルから1.093ドルまで急落しています。

 

先週の米国市場では2つの注目点がありました。

一つ目は3/2のパウエル議長の議会証言で、「3月FOMCでの0.25bpsの利上げを支持」「インフレ指標次第では大幅な利上げの可能性を閉ざさない」という具体的な利上げに関する明言がありました。

3月FOMCで利上げがされるのかどうか、また利上げ幅は0.5bpsが有り得るのかという市場の不安に対して「利上げはするが0.25bps」と予告したことで不透明感が払拭されました。それによりマーケットは金利高となりながらも株高となり、利上げをうまく織り込まれた可能性を示しました。

 

二つ目は米国債イールドカーブで、私がイールドカーブに注目したここ半年は概ね上方向へのベアフラットニング(景気過熱/金融引き締め)が続いていましたが、先週は明確に下方向へのブルフラットニング(景気減速/将来金融緩和)となり、景気減速を織り込み始めました。

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FRBによる金融引き締めを織り込み業績相場への移行を示唆しつつも、ウクライナ情勢の悪化による資源等のインフレ懸念も手伝い景気後退も懸念される微妙な状態が示されています。

それでも株価は最高値から一時ナスダックは20%、S&P500は10%調整され、かつ利上げの織り込みが示唆されて上方向に動く可能性が増えたと考えられるため、長期投資のポートフォリオを変更し、株式30%→35%に修正しました。

MSCIコクサイ20%、ナスダック100 ETF 10%、三菱地所5%、国債25%、現金40%)

 

 

 

〜リアリズムを貫くインド〜

 さて、前週に開催された国連安保理では常任理事国であるロシアが拒否権を発動したため、ロシアに対する非難決議が否決されましたが、今週はさらにロシアの完全撤退を求める緊急国連総会が開催されました。

国連総会決議に法的拘束力はありませんが、国際社会の軍事行動を許さない意志を表すために重要な意味があります。

結果は加盟国193カ国中、141カ国が賛成、ロシアを含む5カ国が反対、35カ国が棄権、12カ国が無投票で採択されました。

 

賛成以外の国々を世界地図で色分けすると以下のようになります。

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総会決議が採択されたことで、国際社会がロシアの暴挙を許さないという意思を示せたことは、一定の効果があったと思います。

一方でここまで合理性に欠けた軍事行動が行われたにも関わらず、「非難決議に賛成しなかった国々」も一定数いることが気になります。

それらの「決議に賛成しなかった国々」はアジア諸国(中国、中央アジア、南アジア)、アフリカ諸国に偏っている印象です。

中国は対米国の協力関係、中央アジア旧ソ連圏であり政治的、経済的な強い関わりがあることで、ある程度納得ができます。それに加えアフリカ諸国や南アジア諸国が賛成していなことに、やや意外な印象を受けました。おそらくアフリカ諸国や南アジア諸国は武器供与など、ロシアとの何らかの軍事的な利害を抱えていることが考えられます。

 

 中でもインドは、3/25の国連安保理でロシアの避難決議に対して非常任理事国としても棄権しており、その姿勢は注目に値すると考えます。

 

インドは元々、どの国とも同盟しない「中立国」であり「全方位外交」を明言していますが、自由民主主義国であり、本来は西側諸国と近い考えを持っていると考えられます。

しかし、今回インド側は、安保理および国連総会では事態を非難し、平和を望むとしながらもロシアを名指しするコメントはせず、いずれも投票棄権としています。

 

インドとロシアの関係は深く、1971年に旧ソ連と締結した「インド・ソ連平和友好協力条約」を基に永らくソ連およびロシアからの武器供給がトップシェアを続けています。

昨年11月にもロシアから地対空ミサイルシステム「S400」の供給が始まり、12月には新たに2031年までの軍事協定を結んでいます。それらのことからインドとロシアは軍事的に切っても切れない関係であることは事実です。

つまりはインド自由民主主義陣営でありながら、ロシアの他国に対する侵略行為を諌めるよりも自国の利害が重要だと考え、リアリズムを取ったと言えます。

 

インドは「自由で開かれたインド太平洋」戦略の中で要であり、日米豪印による「QUAD」の一員としても重要なパートナーです。3/3にも日米豪印の4カ国によるオンライン協議が行われましたが、ここでもロシアへの避難を強める日米豪に対して、「対話の道に戻ることが必要」とロシアに対する姿勢を変えることはありませんでした。

 

インドはこれまでのクアッドでの対中連携に関しても、中国を明確には名指しせず対立をエスカレートさせない態度を示してきました。今回の一件では、秩序を一変するような有事であってもあくまでも自国の利害を重視しリアリズムを貫くインドの姿勢がより明確となりました。

今後のインド太平洋における安保連携においては、如何にインドに利害を示して取り込んでいくかが重要です。一方で有事においてインドは必ずしも西側諸国に同調するとは限らず、対中連携の足枷となる可能性も否定せずに副案を講じていく必要があると思います。

 

以上

【2/21-2/25週の世界のリスクと経済指標】〜既存秩序の無力さ〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +6点(93点):良化 (基準点87点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

先週はロシアがウクライナへ全面侵攻しました。現代社会で大国が隣国へ侵略戦争を仕掛けたことに衝撃を受けています。ロシアは首都キエフを陥落させ、現政権を打倒することを目標としています。それに対してウクライナでは総動員令が出され、国民を挙げての抵抗戦が展開されています。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス6ポイントの良化となりました。

欧州のPMIは製造業はサプライチェーンの問題が依然残るのか、やや低調さを見せましたが、サービス業は概ね好調でオミクロン株のピークアウト共に回復傾向が示されました。

米国のPMIも製造業、サービス業共に上振れし、こちらも景気の持ち直しを示しました。

PCEコアデフレーターはCPI同様、依然高い水準を維持していることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数はロシアのウクライナ侵攻懸念により週の前半は大幅に落ち込みましたが、侵攻開始と共に反転し、米株指数を中心に反発して週を終えました。

「戦争は買い」のアノマリーなのか、ウクライナ情勢悪化により景気が悪化し米金融引き締めの手が緩められるとの観測なのかわかりませんが、戦争により強い反発が示されました。

しかしながら、今回の戦争によりさらに物流が滞ることは確実であり、インフレに拍車がかかると思われます。インフレに対するFRBの金融引き締め姿勢は変わることは無いと思います。

イールドカーブも一時大幅に下方向に下がりましたが、結局前週末からは大幅に上方向にシフトし、フラット化しています。

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こうしてアウトプットを書いている最中に、欧米がロシアのSWIFTからの排除を決定したため、次週はリスクオフから始まると想定します。

 

 

〜既存秩序の無力さ〜

先週はロシアがウクライナに侵攻を開始し、国連常任理事国でもある大国が隣国の主権を崩そうとしていることで世界に衝撃が走りました。今回の侵攻は首都を含むウクライナ全土への一斉攻撃で、クリミアのような部分侵攻とは訳が違いました。

冷戦後に西側諸国の作り上げた秩序に対して突然反旗を翻したのです。

 

しかし、今回の侵攻に対して、西側諸国が支援はすれども直接的な介入は行わないという異例の状態となっています。

それは以下の理由によるものだと考えられます。

  1. ウクライナNATO加盟国ではないため、NATOウクライナを防衛する義務はない。
  2. 国連常任理事国であるロシアが当事国であるため、国連安保理で非難決議が採択できず、国連としての抑止力が機能しない。
  3. 反撃による自国への甚大な被害が想定されるため、核保有国であるロシアに対して攻撃できない

今回のロシアのウクライナ侵攻は、隣国の体制変更を求める明らかな暴挙でありますが、その対抗を裏付ける「大義」が西側諸国にはなく、かつ核保有国特有の「抑止力」によって守られて西側諸国は強く出れません。

またこれまでのグローバリゼーションによってロシアから安いエネルギーを調達し、経済依存していることが、西側諸国の対抗への躊躇に拍車をかけています。

 

一方で、このロジックはそのまま中国の台湾侵攻にも当てはまります。

台湾は1971年のアルバニア決議において国連常任理事国の座を現在の中国に奪われ、「中国の一部」として扱われ国連にも加盟していません。

つまりはいくら台湾が異を唱えようとも、国際的な台湾の地位は「中国の一部」であり、本来であれば他国が介入できる話ではありません。西側が軍事介入してしまえばロシアがクリミア侵攻した時の理由と同じです。西側諸国にとっては、ウクライナ以上に台湾を防衛する「大義」がないのです。

 

国連安保理にかけたくても台湾は承認されていません。それに常任理事国である中国が拒否権を発動すればどんな決議も採択されません。

西側諸国は、核を保有する中国本土に対して軍事行動もできません。

そしてロシアに対するSWIFT排除を躊躇した西側諸国が、より経済的な結び付きの強い中国に対して、即座に強い経済制裁を行えるか疑問です。

 

今回のウクライナ侵攻は、核保有国で国連常任理事国である独裁国家が暴力に訴えた場合に、既存秩序は無力であるということを証明しました。

これで中国はいつでも台湾を取りに行くことができます。

 

そしてその次は日本の領土が侵攻されるかもしれません。

今回のロシアの行動によって、これまでの西側諸国が中心となって作り上げられた冷戦後の秩序が否定され、世界が近代の混沌の歴史に巻き戻された印象を持ちます。

唯一原爆を落とされ、苦い経験をした国としての日本の反戦思想は大事にするべきものです。

一方で「憲法9条があるから侵略されない」「日米安保があるから大丈夫」という幻想に頼るのではなく、暴力で既存秩序が覆された現実を見ていく必要があると思います。そして再び戦争に巻き込まれない様に抑止力としての自己防衛能力強化を考える時期に来ていると思います。

 

連日ウクライナのゼレンスキー大統領の国民に対するメッセージや、一般市民も巻き込んだ抵抗戦の様子がSNSを通じて流れてきます。そして「何としても祖国を守る」という彼らの強さを感じています。

彼らがロシアに屈せず、主権を失わずに無事に生き抜くことを祈ります。

 

少しでも彼らの力になればとわずかばかりの寄付をしました。

ご参考までに寄付先情報を添付します。

https://twitter.com/UKRinJPN/status/1497100158693416961?s=20&t=cZvvQHTZ7F0mN0xDYrW3lA

 

以上