【5/18-5/22週の世界のリスクと経済指標】〜米中対立激化でも反応が薄い株価〜
先週の評点:
リスク -1点(41点):小幅悪化 (基準点42点)
経済指標 +16点(94点):大幅良化 (基準点78点)
短期の相場観:やや弱気
長期の相場観:強気
【リスク】
先週はCOVID-19に関して、週明けに米バイオ企業であるモデルナが開発中のCOVID-19ワクチンが臨床試験のPhase 1にて有効性が確認されたとの報道があり、ワクチン開発への期待感が高まりました。
また、米国は50州にて経済活動規制が解除され、日本でも前週に緊急事態宣言解除となった39県に続き、都市圏である関西3県も解除となりポジティブな雰囲気となりました。
一方で米中対立は、22日に始まった中国の全人代で香港の民主派デモに対する締め付けを強化する「香港国家安全法」を制定する表明されたことにより、対立がより激化してきそうな様相です。
また、COVID-19の影響で進捗していなかったブレグジットに関わるEUと英国の交渉ですが、漸く第3回目の交渉が行われましたが、平行線を辿り「無秩序な離脱」のリスクが再燃しています。
全体としてはCOVID-19関連のポジティブを米中対立と香港情勢、ブレグジットのネガティブが打ち消し、マイナス1ポイントの小幅悪化としました。
【経済指標】
先週は欧米のPMIの発表がありました。
4月に過去最大の悪化を見せた各国PMIですが、絶対値としての数値は悪いながらも経済活動の再開からの明るい兆しで各数値とも4月の底からは改善を示しています。
今後経済活動の再開が拡大していく中で、基準である50をいつ上回ることになるのか、注目して行きたいと思います。
全体としてはほぼどの国もPMIが改善したことでプラス16ポイントの大幅改善としました。
【先週の振り返りと次週の展望】~米中対立激化でも反応が薄い株価~
米国3指数は全て3%以上の上昇、独DAXは前週に大きく下落していたこともあり5%を超える回復となりました。
また産油新興国である露RTS指数、伯ボベスパ指数も揃って大幅回復しました。
これまで世界的な石油需要の減少から原油価格が下落していましたが、5月に入り中国の経済活動の再開により需要が戻ったことで上昇し、30ドルを超えて安定してきました。
それにより産油新興国の通貨、株価が戻ってきています。
特にブラジルはCOVID-19の対策を巡る政治的な問題もあり通貨安が続いていましたが、ようやく底打ちして上昇を確認できました。
原油安によるリスクが落ち着いたことが示されていると思います。
一方で、前週から引き続き米中対立によるリスクが激化してきました。
ここで先週の米中対立に関するトピックをまとめてみます。
特に大きなトピックとしてはWHO総会での台湾のオブザーバー参加の先送り、そして何と言っても中国の全人代にて香港国家安全法が制定される方針が示されたことです。
自らの国から発生した疫病に世界中が苦しみ弱っている最中で、WHO総会での政治を優先する誠意のない対応や、間隙をついて香港への関与を強める中国の強権な態度に対し、民主主義を掲げる先進国が警戒感を強めています。
中でも米国の反発は強く、WHOへは中国寄りのスタンスを改める様に圧力をかけ、国内では中国企業が米国株式市場での上場を廃止する法案を上院を可決、また香港国家安全法に対して中国制裁法案を提出する準備が行われている報道もありました。
特に香港への中国当局の関与の強化は、民主主義への侵害だけでなく、中国市場やアジア市場への金融の窓口としての香港が機能しなくなり、中国市場やアジア市場に自由にアクセスできなくなることも意味します。
5/22の香港ハンセン株価指数の6%近い急落は、それを懸念した下落だったと思います。
そのため、これまでは「米国VS中国」だった対立が他の先進国の利害へも広がり「先進国VS中国」に拡大してきた印象です。
そしてこのように激しい米中の対立が起これば、リスクオフとなり株価が下落するのがこれまでのパターンです。昨年の米中貿易摩擦懸念が起きていた際には、これらの米中対立の事象にいちいちマーケットが下方向へ反応していました。しかし、先週は激化する米中対立のヘッドラインにもそれほど反応が見られなかった印象で違和感を感じています。
ここで改めて現在のポジティブ要因とネガティブ要因を整理します。
【ポジティブ要因】
①各国中央銀行による大規模な金融緩和政策(QE)および各国政府による財政政策による下支え
②COVID-19の経済活動制限の解除
③ワクチン開発への期待
【ネガティブ要因】
①米中対立の激化
②COVID-19の第二波懸念
先週はモデルナがワクチン開発の臨床試験でポジティブな結果を残したとの報道があり、ワクチン開発へに期待感が高まった事や、先進国でのCOVID-19の感染拡大が鈍化し経済活動制限の解除が広がってきた事も大きなポジティブ要因でした。
しかし、昨年と大きく違うのは、やはり各国中央銀行による金融緩和政策と各国政府による財政政策が出来る限りの最大限で行われているという強い下支えです。
昨年の米中貿易交渉の最中にトランプ大統領がFRBに対して求め続けた金融緩和が、COVID-19という別のリスク要因によって実現化しています。
COVID-19によって経済活動が制限され、企業収益も弱っていますが、一方でマネーの高い流動性が無制限に保たれており、行き場を失ったマネーが株式市場へ向かい易い状況であることは間違いありません。
その下支えにより株式市場には米中対立の様に強いネガティブ要因にも耐性ができている様に感じます。
そして恐らくこの強い下支えが、株価を気にするトランプ政権が強硬に出やすい環境を作り出し、後押していると思われます。
COVID-19で苦しむ国民感情と相まってトランプ政権および米議会はここぞとばかりに中国に強硬な対応を先鋭化していくでしょう。
そして米国VS中国から先進国VS中国に対立の軸が拡大していることからも、米国を中心とした国民の自由を重んじる「民主国家陣営」と、中国を中心とする独裁的な政権が力を持ち国民を縛る「強権国家陣営」という真逆の価値観を持った二極化が、益々進んでくると考えます。
次週の相場観は下記の通りです。
[短期] やや弱気
上述の通り、米中対立はより激しさを増して来ると思われます。
COVID-19関連の新しいポジティブニュースは当面出尽くし感があるため、短期的には米中対立のニュースでやや下押しすると思われます。
次週東京を中心とした首都圏も緊急事態宣言が解除される見込みであるため、日経は底堅いと見てダウショートを中心に見ていきます。
[長期] 強気
長期投資のポートフォリオは引き続き、強気のスタンスとします。
米中対立問題はあるものの、前述の各国中銀の金融緩和の下支えにより、トレンドが大きく下に崩れる可能性は薄いと思われます。
ポートフォリオは変らず下記の通りです。
米国株式(楽天VTI)32%、米国株式(ナスダック)8%、日本株式25%、国内債券29%、金6%
以上