投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/25-5/29週の世界のリスクと経済指標】~S&P500指数3000ポイントは割高か~

先週の評点:

 

リスク   -3点(39点):悪化 (基準点42点) 

経済指標  -2点(64点):小幅悪化 (基準点66点)

 

 

【リスク】

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先週は中国が全人代にて香港国家安全法を採択したことにより波紋を呼びました。

米国はそれに反発し、①香港に対する関税や渡航、輸出許可などの優遇措置の廃止、②香港統制に関わる香港や中国当局者に対する制限(具体的には不明)を発表し、同時に中国寄りと指摘してきたWHOに対する拠出金停止および脱退を表明しました。

中国およびアジア地区に対する金融センターとしての香港の機能が薄るれることが、今後の経済に対してどう影響して来るか注目されます。

 

また、ブレグジットに絡む英国とEUの交渉ですが、第3回目の交渉で決裂したことを踏まえて英国はFTAなしでの離脱も想定し始めており、61日からの再交渉が注目されます。

6月末まで両者が合意すれば交渉期間を2年間延長できることになっていますが、英国側が強硬な態度に出る可能性があります。

 

全体としては香港国家安全法に絡む米中対立のネガティブの影響でマイナス3ポイントの悪化となりました。

 

 

【経済指標】

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先週は物価系の経済指標が注目されましたが、現在の実体経済の状況から総じてマイナスとなりました。

ただ、景況感系の指標は絶対値は低いものの、相対的には改善が見られたため、全体としてはマイナス2ポイントの小幅悪化となりました。

 

 

【先週の振り返り】~S&P500指数3000ポイントは割高か~

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先週は、全国的に緊急事態制限が解除され経済活動が戻ってくる期待を受けてか、日経22521000円を飛び越え一気に一時22000円に迫る勢いを見せました。

また、ダウも25000ドル台、S&P5003000ポイント台の大台を回復しました。

前週に続いて米中対立の強い悪材料がある中、経済再開の期待により全世界的に株価指数は上昇して終えました。

 

 

昨年、米国のS&P500指数が3000ポイントを初めて超えたのは7/12でしたが、その当時のフォワードPER(今後12ヶ月の予想利益から計算されるPER)が約17倍でした。

一方で今回の3000ポイント台回復の状況はと言うと、下記のように5/27時点ではフォワードPER24倍を超えたという情報もあり、同じ3000ポイント更新でありながら、状況は大きく違います。

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現在の実体経済は各国の国境封鎖や行動制限の影響で個人や企業が本来の状態で活動できていませんので20Q2S&P500EPS35.9%落ち込むとの予想もあります。つまりEPSの落ち込み分、現在の株価は割高な状況にあることが考えられます。

 

一方で現在の金融市場の状況を加味した場合、この株価が適正でないかと言うと、そうではないと言えます。FRBが債券市場の流動性確保のために316政策金利をゼロに利下げし、さらに無制限の量的緩和を行なっているため、そもそも昨年7月時点とはマーケットに供給されているマネーの量が圧倒的に違います。

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上記はFRBのバランスシートですが、昨年7/9時点では約3.8兆ドルであった資産が直近では7兆ドルを超え、量的緩和による資金供給量は約2倍になっていることを示しています。

また、下記は2019712日時点と現時点での主要国の政策金利比較の一覧です。

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元々ゼロ金利やマイナス金利政策を採用している国は変更ありませんが、その他の国は大幅な利下げを行っており、先進国はほぼゼロ近傍、新興国も自国の通貨安を招く恐れを抱えながらも過去最低の政策金利を設定しています。

 

これらの資金量の差を考えたときに、相対的に資産価値が上昇するのは当然のことであり、EPS落ち込み分をカバーしていると考えられます。そうするとPER17倍対24倍と言う数値もある意味適正であるとも言えると思います。

もちろんここ最近の経済活動制限の緩和傾向やワクチン・治療薬の開発期待から半年~1年後の企業収益の回復を見込んで上昇している側面もありますが、やはり金融緩和政策の嵩上げ効果が強いと考えます。

つまり過去とのPER比較で現在の状況が割高かどうかを語るのは前提が違うと言えます。

 

FRBのパウエル議長は5/19公聴会でも「COVID-19の感染拡大による乗り越えるまで金利をゼロ付近に維持する」ことを表明しているため当分この前提が恒常化し、株価は現在の水準で安定的に推移するのではないかと考えます。

つまり仮にCOVID-19の第二波が蔓延し、またワクチン開発が停滞することがあったとしても、二番底を探るような動きにはならないと思います。

 

以上