投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/22-6/26週の世界のリスクと経済指標】〜設備産業の先行き〜

先週の評点:

 

リスク   -7点(35点):悪化 (基準点42点) 

経済指標  +19点(103点):大幅良化 (基準点84点)

 

 

【リスク】

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先週は米国にてCOVID-19の感染者再拡大が明確なトレンドとなり、アリゾナ、フロリダ、テキサス、カリフォルニアなどの南部の州を中心に26日は45,000人の過去最高の新規感染者数を記録しました。

それを受けてテキサス州フロリダ州ではバーやレストランへの制限措置が再開しました。

今後さらなる感染拡大と共に経済活動が後退する措置が取られる見込みで、回復し始めていた米国経済が再び低迷する可能性が高いです。

 

今週は中国の全人代にて2回目の香港国家安全法の審議が行われる予定であり、採択を巡って米中対立が激化する可能性があります。各国首脳の発言にも注目していきたいと思います。

 

全体としてはポジティブ要因が見当たらず、マイナス7ポイントの悪化としました。

 

 

 

【経済指標】

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先週は欧米のPMIが発表されました。

各国とも経済活動規制の緩和で景況感は大幅に回復していることを示しました。

特に欧州はその傾向が顕著で、全ての国において製造業/サービス部門で予想を上回り、かつ改善・悪化の境目である50を超える数値も散見されるようになってきました。

一方で米国PMIは、先月に比べて改善はしていますが、抗議デモの影響もあるのか予想値には届かない数値となっており、やや重さを感じる内容となっています。

今週は米国ISM景況指数、雇用統計の発表があるのでそちらに注目したいと思います。

 

全体としては欧州PMIの改善が寄与し、プラス19ポイントの大幅良化としました。

 

 

【先週の振り返り】

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先週は日経は底堅い動き、米国3指数はCOVID-19の感染者の再拡大からの警戒感で金曜日に大きく下落しました。

これまで順調な回復を見せていたナスダックも週前半には最高値を更新しましたが、COVID-19の影響と共にユニリーバフェイスブックツイッターへの広告を停止すると発表された影響を受け下落しました。

米国でのCOVID-19の再拡大の影響は、経済再開を停滞させ、それどころか経済封鎖へと後戻りさせる可能性があるため、徐々に戻りつつあった景気が後退する懸念を引き起こしています。

ワクチンの開発も最速でも秋頃までかかる見通しであり、当面は上値の重い展開が続くのではないかと考えます。

 

 

 

【設備産業の先行き】

さて、先週に続き、また私が本業で関わっている機械設備を中心とした生産設備産業について考察してみたいと思います。

設備産業は製造業の根幹となる重要な産業ですが、半導体などの一部の限られた製品以外、世界全体でモノの需要が後退している中で強い不景気の波が押し寄せています。

 

今後の先行きを占う中で、前回の経済ショック時からの回復過程を振り返ってみたいと思います。

 

下記は日本の工作機械業界の内需と外需の推移です。

 ※設備産業は多種多様な機械を含むため全体を把握する明確な統計はありません。
  そのため業界として確立しており統計をしっかりと残している工作機械業界をモデル
として使用します。

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これを見ると日本の工作機械業界は2006年までは外国需要(橙色)よりも国内需要(青色)の方が強い傾向にありましたが、2007年のリーマンショック直前で外国需要比率(黄色線)が国内需要比率(灰色線)を上回りました。

そしてリーマンショックを経て、2010年からの回復期には外国需要(橙色)が一気に国内需要(青色)の2倍となる勢いで伸び、外需比率も急拡大していきました。

これは主に中国を中心としたアジアの新興国向けの需要により伸びた事を表しています。

リーマンショック後は、中国の4兆元(約60兆円)に及ぶ景気対策をきっかけにアジアが成長し海外での需要が急速に増えました。

そしてその後、外国需要に牽引され国内需要(青)も右肩上がりで回復してきた事がわかります。

つまりはリーマンショック時は設備業界は新興国の成長をエンジンとして回復し、成長してきました。

 

一方で今回のコロナショックからの回復過程を想像すると、既に中国は経済大国となりその他の東南アジアの国々も中所得国となってかつてのような成長力はありません。

そしてインドなどの次の成長を担う大国もCOVID-19の感染拡大の真っ只中にあり、当分経済的な回復は見込めません。

 

また、設備の立ち上げには通常エンジニアの派遣が必要ですが、例え辛うじて機械設備の販売はできたとしても、そもそもCOVID-19の影響で設備の立ち上げや修理などのためのエンジニアの海外への派遣ができません。

防護服で完全防護した日本人がベトナム向けの臨時便の飛行機に搭乗していくニュースが記憶に新しいですが、かつてのように気軽に役務提供ができなくなったことで、買い手売り手共になかなか積極的な行動に出れません。

また米中対立の影響で、中国などの特定の国に対して設備を販売できないかもしれません。

 

つまりは設備産業においては、今回のコロナショック後の世界ではリーマンショック時とは違いその回復のエンジンとして海外需要に期待できない可能性が高いです。

 

設備産業は従来から景気敏感で、経済が成長し新たな生産ラインを構築する必要がない限りは需要が発生しません。

そのため成長力に乏しい国内需要だけで賄うことは難しいでしょう。

海外の成長の取り込みが当面見込めない今回の状況では、V字回復ではなく低迷期が長く続くことを意味します。

苦しいながらもそれを想定した戦略を練っていく必要があると考えています。

 

以上