投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【9/28-10/2週の世界のリスクと経済指標】〜ドイツのファーウェイ排除から見る欧州の対中政策の変化〜

先週の評点:

リスク   -14点(37点):大幅悪化 (基準点51点) 

経済指標  +6点(111点):良化 (基準点105点)

 

 

【リスク】

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先週は様々なリスクが悪化した週でした。

主な内容は下記の通りです。

トランプ大統領COVID-19に感染。またその周辺でもクラスター発生。大統領執務の停滞と大統領選に向けた活動に不透明感が漂う。

②欧州のCOVID-19感染が拡大し欧州主要国でロックダウン再導入。

③米経済対策が期限までに合意ならず。協議は継続も経済指標は徐々に悪化。

ブレグジットに絡む英・EUFTA交渉が最後の交渉ラウンドでもまとまらず。

アルメニアアゼルバイジャンにて紛争勃発。米仏露が停戦介入するもトルコを後盾としたアゼルバイジャンは拒否。シリア、リビアに続きトルコの介入により混乱が深まる。

 

やはり大きかったのはトランプ大統領COVID-19感染でしょう。

超大国の大統領が治療法の確立されていない未知の感染症にかかってしまうのは前代未聞です。

しかも世界中でこれだけ対策が施されている中、政権自らが対策の甘さでクラスターを発生させてしまったことは脇の甘さを指摘されても仕方のないことです。

COVID-19対策、米中対立と重要課題を抱える政権にとって今後の政策決定のプロセスはもちろん大統領選に大きく影響を及ぼし、不透明感を高めました。

 

全体としては上述のリスク悪化が大きく、マイナス14ポイントの大幅悪化となりました。

 

 

【経済指標】

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先週は注目の米国のISM製造業景況指数、雇用統計がありました。

ISM製造業景況指数は予想56.3に対して55.4と、分岐点である50は上回ったものの、4月を底に右肩上がりを続けてきた数値が鈍化を示しました。

また、雇用統計では失業率は前月8.4%から7.9%まで回復しましたが、非農業部門雇用者数は前回148.9万人から66.1万人に鈍化、平均時給も0.3%から0.1%に減少しました。

労働参加率も下落しており、雇用の回復が鈍化していることを示しています。

これらは遅れている追加経済対策の影響が現れ始めている事を示しています。

 

また、欧州ではユーロ圏、ドイツのCPIが下落傾向となっています。こちらも金融緩和を行い経済対策を打っても順調に需要が回復せず、インフレしていない事を示しています。

 

全体としてはその他の主要でない米国指標は比較的良かった事もあり、プラス6ポイントの良化としました。

しかし、印象としては鈍化傾向が見られました。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は週足では米国3指数やDAXFTSEなどの欧州指数は上昇しました。

米株指数は3指数共に週明け日足50MAを回復した事もあり、追加経済対策を巡るヘッドラインに揺さぶられながら上昇しました。

しかし、10/2日本時間にトランプ大統領COVID-19感染が伝えられると一気にリスクオフとなり下落して終わりました。

また先週は原油需要の後退懸念から原油価格が下落した事もあり、露RTS指数、ボベスパが下落しました。

 

次週はトランプ大統領の容体、および追加経済対策を巡る合意のヘッドラインに揺さぶられることが予想されます。

一方で10/2NY市場で寄付きでは一時400ドル以上下げたのが引けにかけて戻したように、既にマーケットは大統領選でのバイデン氏の勝利を織り込み始めている印象もあり、追加経済対策の行方の方が重要になってくる気がします。

 

 

 

~ドイツのファーウェイ排除から見る欧州の対中政策の変化~

先週は様々な過激なニュースで溢れましたが、その陰に隠れながらも注目したニュースがありました。

「ドイツが5Gについてファーウェイ製機器の採用を制限する方向で検討に入った」というニュースです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64457000R01C20A0000000/

 

COVID-19発生後も親中姿勢を崩していなかったドイツですが、9/2閣議決定したインド・太平洋外交のガイドラインで「中国離れ」を示唆するアジア政策を打ち出したことは記憶に新しいです。

そして今度はそのドイツが具体的に中国排除に動き出したことは欧州の対中政策には大きな出来事です。

ここで最近の欧州各国の中国を巡る対応の変化をまとめてみます。

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もちろん欧州と中国の経済的な繋がりは強く、特に中国との貿易の多いドイツでは、先月のサービス業PMI50を下回り急速に鈍化を見せるのとは対照的に、先月の製造業PMIは中国向けの輸出の影響で大きく伸長しています。

しかし、630日の香港国安法採択をきっかけに、人権や表現の自由といった民主主義に基づく考えを重視する欧州各国は、中国の強権政治を脅威として強烈に認識し、徐々に対中関係を軌道修正してきている印象です。

 

このドイツの対中政策の方針転換は欧州の対中政策の転換を加速し、さらには対中政策で協力を強めるクアッド(日米豪印)の枠組みとの今後の連携を予感させる動きです。

また11月の大統領選で同盟国との連携を重視するバイデン候補が勝利する事となれば、さらにその動きは加速されるものと思われます。

対中包囲網の連携は、これまで静観していた欧州の方針転換で徐々に準備が整いつつあり、その意味でも米大統領選の行方には注目しています。

 

以上