投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【1/18-1/22週の世界のリスクと経済指標】〜中央銀行当局の楽観への変化〜

先週の評点:

 

リスク   0点(42点):中立 (基準点42点) 

経済指標  +1点(124点):小幅良化 (基準点123点)

 

 

【リスク】

f:id:minarai_tousan:20210125083828p:plain

先週は予想された反対派の乱入などはなく、スムーズに米大統領就任式が行われ、バイデン新政権が誕生しました。

バイデン大統領は国民に結束を呼びかけ、更に早速パリ協定への復帰やWHOからの脱退の撤回、マスクの着用の義務化などのトランプ政権からの政策を転換示しました。

一方でCOVID-19は引き続き拡大しましたが、欧米では新規感染者数の伸びがやや鈍化してきました。

プラスマイナスゼロの中立としました。

 

 

【経済指標】

f:id:minarai_tousan:20210125083905p:plain

先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化となりました。

中国10−12月期GDPは予想6.1%に対して6.5%と好調を示し、中国は2020年に唯一プラス成長した国となりました。

また欧州各国のPMIはロックダウンの影響で概ね前月より悪化となりました。

中国景気を反映しやすいドイツの製造業PMIも高い水準にありながらも低下を示したことがやや気掛かりです。半導体の不足からの自動車の生産調整の影響かも知れません。

一方で米国のMarkitPMIは製造業、サービス業共に上振れとなり、活動制限中でも好調を維持しました。

カナダ、日本、EU政策金利発表がありましたがサプライズはなく現状の金利維持となりました。

 

【株価と為替】

f:id:minarai_tousan:20210125083948p:plain

先週の株価は金利の上昇の落ち着きと、ネットフリックスの好決算から大型巣篭もり銘柄に期待が集まりナスダックが4%の上昇を見せました。

今週はマイクロソフト、アップル、FBキャタピラーJNJなど米国大手企業決算が本格化するため、決算結果によって大きく動いてくると予想されます。ハードルが高くなっている大型ハイテク企業決算に注目です。

 また、香港ハンセンは中国本土から大量の投資資金が流入し、一時30,000にタッチし3%上昇しました。

一方で米国での原油在庫量の増加から原油先物価格が下落したことに釣られてか、ロシアRTS指数、ボベスパ指数は大幅に下落となりました。

 

為替はドル安傾向となりました。

イエレン次期財務長官が為替介入を行わない方針を示し、公聴会にて大規模な経済対策の必要性を訴えたことから金利が低下しドル安傾向となりました。

 

 

【先週の振り返りと考察】~中央銀行当局の楽観への変化~

さて、先週は先進国におけるBOEECBBOC、日銀の中央銀行総裁の会見が相次ぎました。

以下は各中央銀行総裁の発言です。

f:id:minarai_tousan:20210125084019p:plain

現在欧州、カナダ、日本においては年末からのCOVID-19感染者が激増に対し、欧州では各国で都市部のロックダウンや緊急事態宣言を行っており、主に飲食店や旅行業などのサービス業を中心に経済が冷え込んでいる状況です。

一方、巣篭もり需要やいち早く回復した強い中国経済の影響でハイテク企業や半導体や自動車などの製造業は回復し、金融政策、財政政策の下支えによりそれらの株価も過熱感が意識されています。

つまり冷え込んでいる分野と過熱感のある分野とが共存している状況です。

また、ワクチン接種が開始されたことにより、経済が正常な状態に戻ることが期待され始めています。

それを反映してか、会見前に発表された各国政策金利も全てサプライズなく据え置きで、足元の各国経済はロックダウン等によりサービス業が冷え込んでいることに慎重さを見せながらも、過熱感も意識され中央銀行総裁の発言にも楽観的な見方がなされるようになっています。

 

米国でも1月上旬からFRB高官から金融緩和を徐々に収束させていく「テーパリング」に関する発言が続き、1/14にパウエル議長が「今は出口戦略について話す時ではない」と火消しを行ったように、各国金融当局の意識が徐々に変化しつつあるように感じます。

雇用状況やインフレ率などの指標は停滞を示し続ける中で金融緩和を収束させていくことはできなものの、製造業やハイテク企業の企業業績や株価は順調であり、更にアクセルを踏み込んで緩和に動く状況ではない、と言う雰囲気でしょうか。

そしてに金融緩和の副作用を検証しながら、過熱感に対する緩和の縮小を意識し始めているように感じます。

 

1/21に発表された日本の12月コアCPIは前月より悪化し-1.0%となっていますが、黒田日銀総裁は「原油価格変動の影響やGoTo(トラベル)の影響など一時的要因がかなりあり、それを除くと依然として小幅ながらプラスだ」と示し、デフレの進行の可能性を否定しています。

 

またブルームバーグエコノミストへの調査によれば、40人中88%が次のFRBの動きは債券購入プログラムを巡る連邦準備制度の次の動きは購入のペース加速ではなく、テーパリング(段階的縮小)だと回答した模様です。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-22/QNBUCBDWX2PS01

 

冷え込みと過熱感が共存する中で、中央銀行当局の舵取りが難しくなってきていますが、この「楽観」に傾き始めた雰囲気がこれからどのように醸成され、実際に政策に反映されていくのか引き続き注意深く観察していきたいと思います。

 

以上