投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【3/8-3/12週の世界のリスクと経済指標】〜グロースからシクリカルへの移行完了か〜

先週の評点:

 

リスク   +2点(44点):良化 (基準点42点) 

経済指標  -1点(35点):小幅悪化 (基準点36点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス2ポイントの良化としました、

 先週はワクチン接種が猛烈な勢いで進む米国や英国では新規感染者の減少傾向が進む一方、変異ウィルスに見舞われているブラジル、イタリアなどでは再び増加が続き、ワクチン接種の成否により状況が明確に分かれてきていることが示されました。

 また米国ではワクチン接種拡大からの感染者減少に加えて1.9兆ドルの追加経済対策も成立し、景気回復への追い風が確実に強くなってきています。

 一方で欧州では米国に引っ張られた世界的な金利上昇で実体経済の回復に懸念が出ていますが、さらに7500億ユーロの復興基金をめぐり、加盟国の支出計画が不十分なことや、そもそも提出されていないなど足並みが揃っておらず、基金の実施時期が遅れる可能性が出てきました。

 

【経済指標】

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経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化としました。

米国の2月コアCPIは予想1.4%に対して1.3%と、ここ最近の期待インフレの伸びに対して追従しておらず足元ではやや軟調に推移していることを示しました。ただ、今回は加熱気味の期待インフレを抑える効果としてポジティブに捉えられました。

また、欧州政策金利は変わらず0%となりましたが、ECBのラガルド総裁は、ここ最近の長期金利の上昇に対して懸念を示し、次の四半期でのPPEPの国債購入を強めて金利を抑制する方針を示しました。

足元の消費者物価指数は回復傾向にありますが、コア指数で1.1%とまだ余裕を残しており、物価上昇よりも急激な長期金利の上昇による弱い地域の景気回復の腰折れを懸念しての難しい措置となりました。

これは南欧などの痛みの激しい地域とオランダ、ドイツなどの痛みの少ない地域の域内格差をはらむEU独自の悩みを示していると思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】〜グロースからシクリカルへの移行完了か〜

先週も米長期金利の動きに翻弄された週となりました。

長期金利は3/11(木)の日本時間には、前夜の米コアCPIが予想より下振れした事によりインフレ懸念が後退し1.475%まで低下しました。

しかし、その日の米国時間にバイデン大統領が1.9兆ドルの追加経済対策に署名し法案成立、またワクチン接種ペースをさらに加速することを表明し景気回復期待が加速されたことで金利は再び上昇し、最終的には1.625%で週を終えています。

 

 米市場はその長期金利の上下動に沿う形で振り回され、日によってハイテク株とシクリカル株で主役が入れ替わる激しい値動きでした。(以下はバンガードのセクター別ETFの日足推移です。)

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ただ、週足で見るとシクリカルを中心に、どのセクターでも強く上昇しました。

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また各国の主要株価指数としても概ね上昇しました。

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金利が上昇傾向にある中、シクリカル指数でありながら回復が遅れていた独DAXが4.18%と強さを見せ、同様にシクリカル指数であるダウ平均も4.07%と強く上昇しました。

DAXとダウは先週最高値を更新しています。

また前週は2%下落し弱かったナスダックもしっかりと反発しました。

全体的な印象として先進国株式は金利の上下動に引っ張られながらも、「金利上昇=グロース株売り」という方程式も限定的となり、マーケット全体がポジティブなニュースに素直に反応するようになってきたこと示していると思います。

グロースからシクリカルへの資金移行に伴った調整が完了しつつあり、シクリカル主導の上昇へ体制が整ったものと考えられます。

 

一方で上海総合指数は、2月最終週から3週続けて下落となりました。中国当局が株式バブルに警戒する姿勢を見せたことで調整局面に入っており、他の主要指数は大幅反発する中で調整が続きました。

ただ、今後欧米各国が景気回復し需要が遅れて戻ってくる中で、より一層増えるであろう輸出が実体経済を支えてくると思われ、短期的なガス抜きの可能性が高いと思われます。

 

今週は3/18(木)早朝に米FOMC、3/19(金)日銀金融政策決定会合を迎えます。

一足先にECBは先週、長期金利の上昇に対してPEPPの国債購入ペースを強めて抑えにいく方針を発表しており、それに続いて日米金融当局がどのような政策を取るのか気になるところです。

FOMCに関しては、急上昇する長期金利に対してパウエル議長がこれまでのスタンス通り容認するのか、テーパリング等緩和政策の変更を示唆してインフレ抑制を意識するのかが注目されます。

日銀金融政策決定会合では金融緩和政策の点検結果の公表されますが、高値圏で推移する株価に対してETFの購入方針変更がどのように示唆されるか注目されます。

 

今週の方向感は、米国の景気回復期待が大きくなっているため、素直にダウを上目線です。

個人的にはFOMCはこれまでのスタンス通り金利上昇を容認すると思われ、シクリカルの波は続くと思われます。

一方で日経は他の先進国に比べたワクチン接種の遅れや、マーケット時間の重なる中国株の下落トレンド、また日銀金融政策決定会合ETFの購入方針変更を睨みながらやや上値は重いと思います。

 

以上