投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【3/15-19週の世界のリスクと経済指標】〜日米欧の緩和姿勢の違い〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(29点):悪化 (基準点33点) 

経済指標  +3点(90点):小幅良化 (基準点87点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化となりました。

 一時落ち着きを見せていたコロナですが、欧州を中心に変異株によって再拡大してきました。フランス、イタリアでは再ロックダウンの措置が取られることとなりました。一方で、ワクチン接種が急速に進む米、英などでは順調に感染者減少が進んでいます。

 

 また先週は米中外交トップ会談が行われました。

序盤から非難の応酬が続き、互いの政治体制や国家観にも言及されました。前トランプ政権の時代の対中協議はどこかショー的で最終的には実利を取りに行っていた印象ですが、バイデン政権は中国を真正面から潰しにかかっている印象です。

それに対して中国側もがっぷり四つに対抗しており、激しい覇権争いが改めて明確に示されました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス3ポイントとなりました。

 米国の指標は、景況指数系が足元のコロナ禍からの経済正常化を織り込み大幅良化を見せる一方、2月小売売上高、鉱工業生産、住宅着工件数などの遅行指数系は2月の寒波の影響から大幅な悪化を見せました。

 

 また日英米中央銀行による政策金利の発表があり、引き続きゼロ金利を維持しましたが、日米の緩和政策の姿勢には違いが示されました。(詳細は後述します。)

 

 次週は欧米各国のPMIと米国のPCEデフレーターの発表があります。

注目は米国のインフレ度合いを示すPCEデフレーターです。予想ではコア指数が1.5%となっていますが、これを上回ると更なる金利上昇に繋がると思われるため注視します。

 

 

【先週の振り返りと考察】〜日米欧の緩和姿勢の違い〜

 先週も米長期金利の上下動に振り回された週でした。

FOMCを前に一時は1.6%を切る場面もありましたが、FOMC会見にてパウエル議長が改めて金利上昇を容認するスタンスを見せたことによりその後1.75%まで上昇しました。

ダウ平均やS&P500は3/17に最高値を更新しましたが、その後は金利の急上昇に合わせて下落し、米国3指数はマイナスで週を終えています。

 日経225は一時3万円台に戻すも金曜日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて上げ幅を縮めました。

上海総合指数は前週に続いて1.4%減と下落しました。米中会談での激しい非難の応酬も警戒感を強めました。

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また、先週は原油が急落しました。米国での製油処理能力が安定せず在庫が増加するとの観測に加え、欧州での再ロックダウンが重しとなり、65ドル台から61ドル台まで下落しました。

それにより特にエネルギーセクターの下落が激しい週でした。

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為替は週足では主要通貨は動きの少ない週でしたが、トルコが1週間レポ金利17%から19%に上げることを発表したためトルコリラが急騰し、対円で4.71%の上昇を見せました。

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しかし、この週末に低迷する経済のために低金利を求めるトルコのエルドアン大統領がトルコ中銀総裁を解任する報道があり、週明けに急落することが予想されます。

 

 

 さて、先週はFOMCにてパウエルFRB議長の会見、日銀金融政策決定会合にて黒田日銀総裁の会見がありました。

前週のECBのラガルド総裁による会見での方針説明と合わせて下記の通りまとめています。

 

[ECB] 長期金利の急上昇を抑えるためにPPEP(パンデミック緊急購入プログラム)の債券買い入れペース
           を前倒し。
   ⇨緩和○/金利抑制○

[FRB] 23年いっぱいはゼロ金利政策の継続を示唆。金利上昇は容認スタンス。
   ⇨緩和○/金利抑制×

[日銀] ETFの買い入れ目安の6兆円を削除。長期金利の変動幅を0.20%から0.25%へ拡大。
          ⇨緩和×/金利抑制×

 

 ここ最近の金利上昇に関してECBは抑制、FRBは容認の姿勢を見せていますが、金融緩和に関してはECB、FRB共に緩和姿勢を継続しています。

 

 一方で日銀は、コロナ禍で設定された上限12兆円は維持したものの2016年7月から続けてきた年間6兆円の目安を撤廃し、緩和姿勢の変更を示しました。これは日銀の買い支えが大きく減少する可能性を意味します。

また長期金利の変動幅も-0.20%から0.20%と認識されていた幅を-0.25%から0.25%に拡大し明確化しました。これはいざという時のマイナス金利の深掘りを可能にしていますが、同時に金利の上昇も容認することを意味します。

つまり日銀は欧米金融当局が強い緩和姿勢を継続している中、逆にテーパリングを示唆しています。

 

 日銀はインフレ率2%に向け2010年から強い金融緩和を行なっていますが、インフレ率が上がらないままにその環境に慣れ切ってしまっており、どこかで出口戦略を考える必要はあります。

しかし、実体経済はコロナの収束も見えず未だ回復途上です。

日本の消費者物価指数は昨年10月からマイナス圏(2月は-0.4%)に沈んでおり、足元のBEI(ブレークイーブンインフレ率:期待インフレ率)も0.207%と米国の様に2%を超えるものでありません。

なぜ日米欧の金融政策発表が重なるこのタイミングで、日銀だけがテーパリングと印象づけられるような政策を打ち出したのか理解に苦しみます。

 

 マーケットは常に相対比でお金の流れを変えていきます。

これまでは経済正常化期待と共に、シクリカル傾向が強い日本株式にお金が流入していました。

しかしながら、今回の日銀の政策変更で欧米との緩和姿勢に差が生まれており、その差により今後は日本株式に資金が流入しづらくなると思われます。

 

 ついては週明けに長期投資資産から日本株式の割合を27%→10%に減らし、主に米国株と欧州株で構成されるMSCIコクサイの先進国株式ファンド(7%)とキャッシュ(10%)に振り分けます。

これで先進国株式42%、日本株式10%、新興国株式12%、日本国債26%、現金10%となります。

 

今週の短期の方向感はダウ平均は横ばい、ナスダックは金利高止まりで下目線、日経は日銀の緩和引き締め+上海総合の下落トレンド継続で下目線です。

 

以上