投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【4/5-4/9週の世界のリスクと経済指標】〜新自由主義の終焉〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(30点):悪化 (基準点33点) 

経済指標  +2点(38点):小幅良化 (基準点36点)

 

 

【リスク】

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 先週はマイナス3ポイントの悪化としました。

新型コロナは変異株の拡大で再び勢いを増し、6週連続で増加しました。特にインドでは9月のピークを超え足元では145千人を超えました。ワクチン接種は進みますが、人口が多いため変異株の感染拡大スピードに追いつきません。

一方でイスラエルではワクチン接種が進むことによって急速に感染者が減少し、また無症状者にも効果があることが濃厚であるとされています。

英国でも減少傾向は続いており、国ごとのワクチン接種の進捗によってコロナからの回復度合いの格差が明確になってきています。

 

米中対立では米議会上院にて超党派で中国への対策案を列挙した新法案がまとめられ、今週から議論が始まることとなりました。また、バイデン政権は台湾に対する関わりを強めるため、政府建物内での会合を行うなど交流拡大する指針を発表しました。

16日には初の対面での日米首脳会談を控え、米側の対中工作が連日続いています。日本が日米首脳会談にてどのような共同声明を発表するのか注目しています。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス2ポイントの良化としました。

先週の注目指標は米ISM非製造業景況指数、中国の財新サービス業PMI、中国CPIでした。

ISM非製造業景況指数は予想58.5に対して63.7と驚異的な数値を叩き出し、ワクチン接種拡大による米国の景気回復期待の強さを示しました。

また中国の財新サービス業PMIも予想52.1に対し54.3と3ヶ月ぶりに回復を見せました。CPIも2か月ぶりにプラスに浮上し、消費者心理の回復を示しました。

 

次週は4/13(月)の欧州、独4月ZEW景況感調査、米3月CPI、4/14(水)のRBNZ政策金利、パウエル議長発言、4/15(木)の米小売売上高、4/16(金)の中国1-3月期GDP、欧州消費者物価指数などの指標が発表されます。

注目は米CPI、小売売上高で、景気回復を織り込む中で足元のインフレ指標が上振れると再び金利高になる可能性があります。

 

 

【先週の振り返りと考察】

先週の株価指数は米株指数が伸長しました。

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ダウ平均、S&P500は最高値を更新、ナスダックも2月の最高値まで残り1.39%まで戻ってきました。

米株は長期金利が1.6%に落ち着いてきたこともあり、ハイテクグロースを中心にゆっくりと伸びています。私は先週はナスダックに下目線でしたが、見事に逆の動きとなりました。

また、DAXやFTSE100などの欧州株も順調に伸び、DAXは最高値を更新しています。

 

 一方で日経平均はシクリカルとしての役割がすっかり欧州株へ移った感があり、DAXなど高値を更新する欧州株価指数を横目に小幅下落で終えました。

日経は日銀の実質テーパリングに加え、米中対立で中国の影響を最も受ける地理的な問題と、先進国の中でもワクチン接種率が最も遅れている中で感染が拡大していることもあり、3万円の値固めができない状況が続いています。

先週の決算発表のあったファーストリテイリングの株価の動きを見ると、好調な決算だったにも関わらず強く売られており、今週も引き続き3万円を挟んで上値は重い展開となると思います。

ついては日経に下目線です。

 

 

新自由主義の終焉〜

 さて、先週は先週はイエレン米財務長官がG20に対して最低税率を導入し、法人税の引き下げ競争に終止符を打つことを呼びかけました。

そして米国にとっては今後バイデン政権が計画している2.25兆ドルにも登るインフラ投資の財源とするとしています。

そのインフラ投資は米国内での新しい雇用を生み、かつ新しいイノベーションを生み出すものと思います。

これはこれまでは大企業に集中していた富を一般国民に還元する流れと言えます。

 

 私はこのバイデン政権の方針を強く支持します。

大企業に対する課税は、企業利益の減少を意味し、特にここ数年間においてトランプ前大統領の減税政策により恩恵を受けてきた米企業の株価は、上昇を抑えられる原因となるでしょう。

外国株式に投資している私の資産も将来的にはその影響を受けるものと思います。

  しかし、何よりもその政策は、広がり続ける経済格差を解消し、資本主義及び民主主義を今後も持続するための具体的な一手としてとても重要であると考えます。

 

ここ最近、経済格差は拡大の一途を辿っています。

ちょうど4月7日の日経新聞に世界の長者番付の記事が出ました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06EBS0W1A400C2000000/

ここには、コロナによる金融緩和、財政政策の影響で株価が伸びたことにより、資産10億ドル以上の超富裕層が2755人と昨年より660人増えたと書かれています。

 

1980年台のレーガン大統領の時代から始まった新自由主義により、政府の介入を極力なくし規制を緩和した自由放任主義が取られました。それにより弱肉強食の世界が容認され、多くの成功者を生み出しました。

そして、2000年代に入ってからはITという武器が加わったことで成功者たちは簡単に国境を跨ぎ、グローバル企業として更に効率的に富を築けるようになりました。

しかし、それと同時に効率化によって雇用が賃金の安い新興国に流出し、多くの敗者も産み出し中間層が消失しました。

それがトランプ政権を支えたポピュリズムの礎になり、さらにコロナ禍により民主主義の根幹を揺るがす不満に繋がったと考えます。

 

私は再び民主主義を復活させるには、行き過ぎた放任主義を抑制し、経済格差を縮小する必要があると考えています。

その意味では、これまで新自由主義を推進し体現してきた米国が、それを翻して大きな政府を目指し増税を発表したことは大きな転換点だと思います。
かつ単独ではなく経済主要国に対して最低税率を導入して同調するように呼びかけたことも、世界規模で社会構造を変革し、持続可能なものとしていく決意であると考えます。

そして米国から広がった「新自由主義」が米国自身により終えられ、新たな民主主義の形が作り上げられようとしていることに強く期待しています。

 

以上