投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【4/26-4/30週の世界のリスクと経済指標】~米ハイテク企業への高い決算ハードル~

先週の評点:

 

リスク   -4点(29点):悪化 (基準点33点) 

経済指標  +8点(110点):良化 (基準点102点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化でした。

米、英などのワクチン接種が進む国では感染者減による経済活動再開が進みますが、インドでは変異コロナウィルスが猛威を振るい1日あたりの新規感染者数が40万人を超えています。病床の不足のみならず酸素不足にも陥っており、酸素を使用する自動車工場の停止にまで影響が及んでいます。

 

 また先週はバイデン大統領による議会演説が行われ、対中姿勢を明確にし「インド太平洋地域での強力な軍事力を維持する」と明言しました。そして議会演説に先立って法人増税を財源とする「米国雇用計画」に続き、富裕層に対するキャピタルゲイン増税を財源とする「家族計画」を発表し、格差是正へ取り組むこととしました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス8ポイントの良化としました。

注目はFOMCでしたが、パウエル議長は景気の現状認識を上方修正したものの、依然インフレは一過性のものであるという認識を示し、テーパリングを否定しました。

一方でFOMCでの議決権を持たないダラス連銀のカプラン総裁は「緩和調整の議論を始めるのが適切」という考えを示し、テーパリングの必要性を匂わせ始めました。

今後FRB高官からテーパリングをマーケットに意識させる発言が続いていくと思われるため注目します。

 

米国の1-3月期GDPは予想6.1%に対して6.3%と上振れ、PCEコアデフレーターも前回1.4%から1.8%へと上昇し景気回復からの物価の上昇を示しました。

 

今週は米ISM製造業景況指数、サービス業景況指数、雇用統計に注目です。雇用統計の強い回復が示されれば、よりテーパリングに向けた議論が進むと思われます。

 

 

【先週の振り返りと考察】~米ハイテク企業への高い決算ハードル~

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先週の株式市場は総じて軟調に推移しました。

日経は変わらずの下落、米国市場は大手ハイテク企業の決算発表があり、総じてコンセンサスを上回る決算を示しましたが、株式指数はどれも軟調に推移しました。

 

 以下はこれまで発表のあった米主要ハイテク銘柄の売上高、EPSと決算前/翌日の株価騰落率です。

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グーグルは巣ごもり需要でクラウドサービスやYouTubeが好調となり、EPSが予想$15.82に対して$26.29と大幅に伸びたことから決算後に株価を伸ばしました。

またフェイスブックも、アップルの広告向けプライバシー規約変更が重しとなるも企業の広告支出拡大が追い風となり7.3%上昇しました。

 

 一方でネットフリックスは売上高、EPS共にコンセンサスを上回りましたが有料準加入者数が予想620万人に対して398万人と減速したため7.4%安となりました。

また、ツイッターも売上高、EPS共にコンセンサスを僅かに上回りましたが、平均アクティブユーザー数について今後数四半期で伸びが低い数字になるとの見方が示されたため15.16%安となりました。

マイクロソフトは売上高が予想通りでEPSは予想を上回りましたが、市場では極めて好調な決算結果が期待されていためにバリュエーションの高さが意識され2.83%安となりました。

アップルやアマゾンも売上高、EPS共にコンセンサスを上回り好調な決算を示しましたが、株価は微減となっています。

 

 これらを受けて個人的には米企業決算のハードルの高さを改めて認識しました。これまでの株価の高騰で期待を先取りしている分、その期待を強く上回れるピカピカな内容ではない限りは強い売りに晒されるということです。

加えてこれらの主要ハイテク企業は課税逃れを指摘されることが多く、3月末にバイデン政権が表明した「米国雇用計画」の財源となる連邦法人増税や海外収益課税、ミニマム税などの負担が今後重くのしかかってきます。

そして半導体不足や、これまでハイテク企業を支えてきた巣篭もり需要の落ち着きなども不安材料として意識されます。

 

 経済指標も好調な数値が続き、主要ハイテク企業の決算も好調な中でこれ以上の良材料が見当たらず、やはりここで一服感を覚えます。

今後はこれまでの様に全体的にマーケットが上昇していくのではなく、高いハードルに対する企業ごとの決算の優劣の差が明確に株価に現れてくるのではないかと考えます。

従って、当面米国株も上値が重くなるのではないかと思っています。特にハイテク銘柄が多いナスダックには短期的に下目線です。

ただ、金融緩和は続いており、また今後強い財政政策も控えているため、2Q決算後がボトムでそれらの効果とマーケットの慣れで3Q決算辺りには再び緩やかな上昇基調に戻るのではないかと想像しています。

 

以上