投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/10-5/14週の世界のリスクと経済指標】〜CPIから見るインフレに対するFRBシナリオの納得性〜

先週の評点:

 

リスク   1点(34点):小幅良化 (基準点33点) 

経済指標  +3点(62点):小幅良化 (基準点59点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化となりました。

新型コロナは強い新規感染者拡大が続いていたインドにおいて、ようやくピークアウトの兆しが見えてきました。

世界的にはワクチンの接種の拡大により減少傾向が続いていますが、日本だけが変異株の拡大により強い上昇傾向を示しています。

米国では既にコロナワクチンが一般化し、予約を行わなくてもすぐに接種可能な状態となっており、今後は徐々に米国製ワクチンが拡大していくものと思われます。

 

 欧州では前週に行われたスコットランドの議会選挙において独立派が過半数を握ったたため、英国の分裂リスクが顕在化してきました。スコットランドスタージョン首相はコロナ危機が収束次第、住民投票を行うことを目標に掲げています。対中政策の体裁上、民主主義を立てて強引に拒否することができない英政権の今後の舵取りが注目されます。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス3ポイントの良化としました。

注目の米4月CPIコア指数は前年同月比予想2.3%に対し3.0%と大幅に上振れました。またそれに続く4月PPIコアも予想3.8%に対して4.1%とこちらも上振れました。

これらの強いインフレ指標の上昇により、テーパリングおよび利上げの早期化が意識され、株式市場は動揺して大きく下落しました。

一方で4月小売売上高は0.0%と先月からの横ばいを示し、+1.0%の予想に対して下振れましたが、消費が伸びなかった安心感からか株式市場は反発しました。

 

次週は中国4月小売売上高、米4月住宅着工件数、欧州4月消費者物価指数FOMC議事録要旨、欧米のPMIに注目です。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株式市場は総じて軟調に推移しました。

米国市場は、インフレ指標の強い上昇でテーパリングや利上げの早期化が意識され、金利上昇耐性の弱いハイテクグロース株を中心に下落しました。

週末には一旦落ち着きを見せて反発しましたが、週を通してはIT、通信、一般消費財、不動産などのインフレに弱いセクターが強く調整しました。

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また、日経は米国市場の影響を受けた上、決算発表にてコンセンサスを下回るものが多く、現在の高い株価の期待に応えることができない企業が多かった印象で、下落に拍車がかかりました。ここ最近は日経の弱さが目立ち、3月にポートフォリオから外したことが肯定されています。

 

〜CPIから見るインフレに対するFRBシナリオの納得性〜

さて、先週は4月の米国CPIコア指数が前年同月比3.0%、前月比0.9%上昇しましたが、改めてそのCPIの中身を見ていきたいと思います。

前月比で取り立てて大きく変動し上昇を引っ張ったアイテムは下記の通りです。

 

①Used car and Trucks(中古車) 前月比+10.0%

②Transportation Services (移動サービス)前月比+2.9%

③Commodity (商品)前月比+2.0%

※参考:Department of Labor, U.S.A 

https://www.dol.gov/newsroom/economicdata/cpi_05122021.pdf

 

こうして見てみると、CPIが大きく上昇したのは半導体不足から来る問題(半導体不足で新車が作れず中古車の値段が上がった)およびワクチン接種拡大による人の移動の再開が影響したことがわかります。

また、これらと現在考えられるインフレ要因を整理してみると下記の通りとなると思います。

 

[需要側要因]

  • ワクチン接種による経済活動再開→外食需要、旅行需要でホテル、移動サービス、自動車需要の高まり
  • 金利、リモートワークを背景とした住宅需要→木材価格など商品価格の高まり

[供給側要因]

  • 半導体供給停滞→米中対立での中国企業からの半導体購入禁止、日米半導体工場が寒波や火災で一時稼働停止
  • 上乗せ失業保険により低賃金の雇用に人が戻らない→労働コストの高まり(先日の雇用統計では平気時給が0.7%上昇)

 

現在米国は需要面、供給面の両面から物価上昇要因を抱えています。

しかし、供給側要因の半導体は、被災した半導体メーカーの体制が回復し、また中国外で新たに増強している工場が稼働すれば落ち着くと思われますし、雇用の問題も9月下旬に失業保険の上乗せの失効と共に解決に向かっていくものと思われます。

つまり現在のCPIコア指数の強い上昇の要因となっている供給面での要因が向こう数ヶ月で落ち着く可能性が高いと思われます。

特に今回のCPIで大きな影響を及ぼした中古車価格は新車よりも需給の影響を受けやすい特性があるため、半導体不足が解決し新車供給が正常化されれば自動車価格の上昇は限定的となると思われます。

 

CPIの発表のあと、FRBのウォラー理事は「今後サプライチェーンボトルネックの解消することから、インフレ指標の上昇は一過性となる」との見方を改めて示しています。

また金融政策の変更を検討する前に「さらに数ヶ月分のデータ」が必要と発言しています。


今回のCPIのサプライズは、サプライチェーンの問題が突出して強く現れた結果でありました。

そういう意味で向こう数ヶ月間にそれが落ち着くことで物価上昇は抑えられるというFRBのシナリオは、現時点では納得の行くものであると考えられます。

 

ただ、どちらにせよ半導体不足が解消がされ、自動車生産が軌道に乗りインフレ指標に現れて来るまでは、はっきりしない一進一退の株価推移が続くと思います。

 

以上