投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/17-5/21週の世界のリスクと経済指標】〜FRB高官のテーパリングに関する発言のまとめ〜

先週の評点:

 

リスク   +5点(38点):良化 (基準点33点) 

経済指標  +5点(98点):小幅良化 (基準点93点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス5ポイントの良化としました。

新型コロナウィルスは最大の新規感染者数が続いていたインドで40万人を天井にピークアウトし26万人規模まで減少してきました。一方で台湾やタイなどで変異株が原因で再拡大となっています。半導体生産で重要なポジションを担う台湾での再拡大で半導体生産が停滞することが懸念されています。

 一方で欧米諸国ではワクチン接種からの制限緩和が続き、NY市ではレストランや小売店などでの人数制限が撤廃されました。またフランスではルーブル美術館が開館され、徐々に通常モードに戻ってきています。

 

 また先週は米韓首脳会談が行われ、共同声明に「台湾海峡の平和と安全の重要性」が盛り込まれました。

これまで韓国は経済的な依存が大きい中国へ配慮して米中対立では中立的な態度をとっていましたが、日本と同様のスタンスの声明が出されたことに少々驚きました。米国でのサムスン半導体工場の新設など経済的な連携強化も発表され、米国側へ引き戻されたことが鮮明となりました。

今後中国がどのような反応を見せてくるか注目です。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス5ポイントの良化としました。

注目はFOMC議事要旨と欧米PMIでした。

FOMC議事要旨の発表では一部参加者が今後のテーパリングの協議開始を否定しない姿勢を見せたことが示され、FOMCでもテーパリングが意識され始めたことが明らかになりました。

 

欧米のPMIは前月に続いて概ね好調が示されました。

ドイツおよびEUの製造業PMIは半導体不足から自動車が減産されている影響から4月に比べて若干低下しましたが、サービス業はコロナワクチンの拡大から制限措置の緩和により昨年7月以来の高水準となりました。

米国は製造業PMIも4月から上昇しましたが、サービス業PMIは予想64.5に対して70.1と大幅に上昇し、こちらも制限措置の緩和により強く景気回復していることが示されました。

 

今週は米国の4月新築住宅着工件数、PCEコアデフレーターの発表があります。特にPCEコアデフレーターはCPIに続き強い指標が示されるか注目されます。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の主要株価指数はまちまちで小動きとなりました。

先週は、中国当局が国内の金融機関に対して仮想通貨の取引サービスの提供を禁止したことをきっかけに仮想通貨が暴落しました。それに連れて米株指数も一時調整しましたが、好調な経済指標の発表もあり株式市場への影響は限定的で週足では軽微となりました。

日経は、週前半に新型コロナ変異株の拡大により台湾株が大きく下げたことに連れて下げましたが、押し目買いで反発して週足としては0.83%上昇しました。

今週も米国のPCEコアデフレーターを睨みながら一進一退の動きで、週足としては横ばいを予想します。

 

 

FRB高官のテーパリングに関する発言のまとめ〜

さて、先週は19日に4月末のFOMCの議事録要旨の発表がありました。

その中には「幾人かの参加者は経済が委員会の目標に向けて急速な進展を続ければ、今後の会合のいずれかに資産購入ペースの調整に関する計画を協議し始めるのが適切になるかもしれないと提案した」との内容が示されました。

これまでFOMCメンバーは一貫して早期のテーパリングへ慎重な発言を繰り返していましたが、マーケットが意識しているようにFOMC内でも明確に意識され始めています。

 

ここでFRBメンバーのテーパリングに関する発言内容を整理してみたいと思います。

下記は主に5月に入ってからのFRB高官の発言内容です。

水色がテーパリング慎重発言、オレンジがテーパリング容認発言と色分けしています。(白は中立的コメントか発言なし)

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日々ニュースを読んでいる中では、複数人のメンバーが早期テーパリングの容認発言をしていた印象でしたが、実際にはダラス連銀総裁のカプラン氏の発言回数が多かっただけで、カプラン氏以外では5/21にフィラデルフィア連銀総裁が初めて容認発言をしています。意外とまだ容認派は少ない印象です。

ただ、ダラス連銀総裁もフィラデルフィア連銀総裁も現在FOMC議決権を持たないため、直接的に金融政策に影響を及ぼしません。前回のFOMCでは両氏以外の議決権を持つ別のメンバーがテーパリングを議題に出したことになります。

 

 テーパリングが行われることは既に既定路線であり、インフレと雇用を天秤にかけながらそれがいつ行われるのかがマーケットに意識されるところです。

前週に考察したように、これまでのFRB高官の発言内容同様、私はCPIの伸びは一時的になる可能性が高いと考えているため、テーパリングは当分先になると見ています。一方でいずれ来るテーパリングに対してマーケットの拒絶反応が出ないように、FRBはテーパリングへの意識をじわじわと浸透させていくものと思われます。

 ついては21日に新たにフィラデルフィア連銀総裁が容認した様に、今後新たにどの高官から容認発言が出てくるか、特にFOMCメンバーの発言内容に注目しています。

現在のFOMCメンバーにはタカ派がおらずハト派が多いですが、中立的立場と言われるクオールズ副議長、リッチモンド連銀総裁、アトランタ連銀総裁はタカ派にも振れやすいと思われるため、発言には特に注意が必要かと思われます。

 

今週の5/24(月)には早速、ブレイナード理事、アトランタ連銀総裁カンザスシティ連銀総裁、クリーブランド連銀総裁の講演があり、さらに5/25(火)にはクオールズ副議長の議会証言がありますので注目されます。

 

以上