投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/7-6/11週の世界のリスクと経済指標】〜G7の復活〜

先週の評点:

 

リスク   +7点(43点):大幅良化 (基準点36点) 

経済指標  +2点(60点):良化 (基準点58点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはプラス7ポイントの大幅良化でした。

新型コロナは新規感染者は増加しているものの、世界的なワクチン接種の広がりにより鈍化しています。一方でワクチン接種の進まない新興国では変異株の影響もあり一進一退の状況が続いています。

その中でG7サミットでの新興国への10億回分のワクチンの寄付への合意は、世界的なコロナ禍からの回復を後押しするための大きな成果だと思われます。

 

 また、先週の政治的な話題ではやはりG7サミットが大きいですが、こちらは後述します。

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス2ポイントの良化でした。

注目の米5月コアCPIは市場予想も3.4%と高かったものの、さらにそれを上回って3.8%となりました。内訳を見てみると中古車が29.7%と前月の10.0%よりも更なる強い伸びを見せました。これは依然半導体不足にと労働者不足により新車が生産できず、供給サイドの問題からインフレが促されていることを示しています。それを反映して「インフレは一時的」というFRBの主張が正当化され、長期金利は1.4%台で落ち着いています。

 

 次週はFOMCがあります。FRBは「インフレは一時的」としてハト派スタンスを崩していませんが、一方でFOMCメンバー内でテーパリングが意識されているもの事実です。前回のFOMCの議事内容によると「幾人かの参加者が早期テーパリング協議開始を示唆」したことが明らかになっています。今回のFOMCでどこまでその声が大きくなり、パウエル議長の発言内容に織り込まれてくるか注目したいと思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数はナ米雇用統計の下振れに加え、米CPI後の長期金利の落ち着きにより、ナスダックに有利な展開となりました。

また、ハイテク株の上昇に連れてじわじわとS&P500は最高値を更新しました。

原油が70ドル台に乗せたことにより、原油生産国であるロシアRTS指数も強く上昇しました。

次週はCPIを乗り越え一時的なインフレ懸念も織り込まれた感があり引き続きナスダックに上目線ですが、FOMCでのサプライズも想定しておく必要があるかと思います。

 

 

〜G7の復活〜

 さて、今週末は英国にてG7サミットが開催されています。

G7サミットは1975年から続く、先進国首脳が1年に1回集まって政治、経済課題について議論する会合です。

しかしここ最近はその機能が低下し、この枠組み事態の存続が危ぶまれていました。

フランス開催の2019年は保護主義に走る米国の独善的な主張により各国の主張がまとまらず、毎回必ず行われてきた首脳宣言の見送りという前代未聞の事態が起こりました。また米国開催予定だった2020年はコロナ禍や欧州と米国の溝により延期され、オンライン開催すらなく中止されました。つまり米国やブレグジットを抱えた英国での保護主義の高まりから先進国内での結束が失われていたのです。

 

 しかし、今回のG7サミットは、これまで報道されている議事の内容を見る限り、その結束を取り戻し、再び世界を主導しようとしつつあると考えられます。

下記は日経新聞の6月13日朝刊からの転載です。

 

[G7サミットの議論・合意事項(12日時点)]

・インフラ投資の枠組みを創設、一帯一路に対抗

・新型コロナ禍からの経済回復に向け財政出動の継続を支持

・医療分野のサプライチェーン(供給網)を拡大

・ワクチン開発やWHO改革など感染症に備える行動原則を宣言

・ワクチン10億回分を途上国などに提供

 

特筆すべきは「インフラ投資の枠組みを創設」「ワクチン10億回分を途上国などに提供」の2点だと考えます。

ただ先進国の結束が回復しただけに止まらず、自らの痛みを伴って新興国に対してインフラ投資支援やワクチン支援を行うこととしています。それは先進国が再び世界に対して強く関わりを持って主導していくことの決意表明であると思います。

 

もちろん、同じく世界中でインフラ投資やワクチン援助を行い影響力を拡大する中国を意識した話であるのは言うまでもありません。

しかし、中国、新型コロナウィルスという共通の外敵の台頭により、瓦解しかけていたG7が再び結束と前向きの推進力を取り戻したことは大きな変化であり、純粋に嬉しく思います。

 

そしてG7の復活は、結束を掲げたバイデン大統領が米国民によって選ばれ、その影響力が欧州各国にも拡がったものだと考えられます。

この民意の反映と修正能力こそが民主主義の最大の強みであると思います。

 

以上