投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/21-6/25週の世界のリスクと経済指標】〜FOMCの議決権の仕組み〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(32点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +4点(88点):良化 (基準点84点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化でした。

新型コロナは先進国では欧米製ワクチンの接種が拡大し新規感染者数の減少が続きますが、中国製ワクチンを接種しているブラジル、チリなどの新興国ではワクチン接種は拡大しているものの、新規感染者数が高止まりしている傾向にあります。

中国製ワクチンはデルタ株に対しての有効性が低下するとの報道もあり、今後より欧米製のワクチンの需要が高まってくる可能性があります。

 

また香港では民主派メディアのアップルデイリーが廃刊に追い込まれ、中国当局の民主派への徹底統制する姿勢が浮き彫りになりました。

台湾と香港との出先機関も業務停止となり、中国当局の統制強化が進みました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス4ポイントの良化となりました。

欧州のPMIは予想が高かったこともありまちまちでしたが、概ね好調な水準を維持しました。

米国のインフレ指標であるPCEコアデフレーターは予想の3.4%に一致し、高いインフレを示したもののサプライズはなく、無難に通過しました。

 

また先週は、BOE政策金利発表がありましたが、事前に予想されていた金融正常化への示唆はなく、現在のインフレは一時的として緩和政策の維持を決めました。

一方でメキシコ中銀が4.00%から4.25%に利上げするサプライズがありました。6月前半のCPIが6.02%となりインフレ目標上限である4%を大きく上回ったためです。

先週はハンガリーも利上げに踏み切っており、経済が不安定な国から徐々に利上げ気運が高まってきています。

 

次週は米ISM製造業景況指数と米雇用統計の発表があります。

今後の米金融政策を占う意味でも雇用統計の重要さが増していますが、予想は69.5万人となっています(前回55.9万人)。5月下旬から大手自動車メーカーの工場では半導体不足による操業停止から再稼働しており、前回薄かった労働力需要に強い戻りが期待されるため、上振れると思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数は概ね堅調に推移しました。

前週末にはFOMCでのタカ派寄りな姿勢への転換により下落していましたが、米10年国債利回りの低下に加え、パウエル議長の「インフレは一過性」というコメントも後押しし、今後のインフレ圧力が緩やかになるとの観測から落ち着きを取り戻しました。

米10年国債利回りは、6/21の日本時間に一時1.3%台まで低下しましたが、その後は概ね1.43%-1.52%のレンジで推移し、株式市場全体に適温な金利状態を醸成しました。

またバイデン政権が超党派グループとの間で8年間で1.2兆ドルのインフラ投資計画に合意したことで景気の先行きが楽観視され、景気敏感銘柄に追い風となりました。

 

次週は金利が安定しVIXも15台と落ち着いている中で、先週のバイデン政権のインフラ投資計画の影響を引き継ぎ、7/2の雇用統計まではダウの上目線を予想します。

雇用統計が予想と一致か下回った場合は金利低下でナスダック上昇、予想より上回った場合は金利がやや上昇しナスダックが下落することを予想します。

 

 

FOMCの議決権の仕組み〜

  さて、6月のFOMCが終了したこともあり、先週はFRB高官の発言が相次ぎました。

18名のFRBメンバーの内、10名の発言がありました。

FOMCFRB自体のスタンスがタカ派に変化した事もあり、アトランタ連銀総裁、サンフランシスコ連銀総裁、ボストン連銀総裁が、発言内容をFOMC前のハト派スタンスからタカ派スタンスへ変えてきました。

 

ここで、改めてFOMCの仕組みについて説明してみたいと思います。

FOMCはFRS(Federal Reserve System:連邦準備制度)のうちの一つの組織です。FRB米連邦準備制度理事会)もFRSの組織に含まれます。

FOMC連邦公開市場委員会の略称で、年8回行われるFRBの金融政策を決定する会議です。

18名のFRBのメンバーが参加し議論しますが、政策決定は議決権を持ったメンバーの意思で決定されます。

議決権はパウエル議長を含む7名のFRB理事(現在1名空席)と5名の連銀総裁が持ちます。

連銀総裁の議決権はNY連銀総裁が固定で、その他の4名は11名の連銀総裁が毎年輪番で持ち回ります。

つまり11票のうち4票は毎年スタンスが変わる可能性があります。

 

下記はこれまで何度かお見せしているFRB高官の発言内容を更新し、22年、23年の議決権の変化を加えたものです。

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今年の議決権を持つメンバーでは、アトランタとサンフランシスコ連銀総裁の2人がFOMC後にタカ派スタンスに変えています。

22年の議決権を持つメンバーでは、FOMC前からタカ派スタンスを見せているセントルイスカンザスシティ連銀総裁に加え、新たにボストン連銀総裁がFOMC後にスタンスを変え、3人がタカ派となっています。

つまり、現時点で言えることは今年のタカ派が増えただけでなく、22年には輪番制により議決権を持つタカ派がさら増えることとなり、22年の金融政策がよりタカ派寄りになる可能性があるということです。

 

このように、スタンスを変えたメンバーがどの時期の議決権を持っているかによって、金融政策の変更時期に影響してくると思われます。

具体的には21年の議決権メンバーはテーパリング政策への影響、22年の議決権メンバーは利上げの時期への影響が考えられます。

 

 すなわち先週のFRB高官の相次ぐスタンスの変化は、FOMCからコンセンサスとなりつつある年末からのテーパリング、22年末もしくは23年での利上げの浸透に向け、ややタカ派に傾倒し足場を固めつつある状況だと思います。

 

CPI、PCEデフレーターなどの指標の推移と共に、FRB高官の言動をそれぞれの立場に注意して見ていくと、少し予想の助けになってくるのではないかと思います。

 

以上