投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【7/5-7/9週の世界のリスクと経済指標】〜指標から見える中国経済の陰り〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(30点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  -14点(37点):大幅悪化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス6ポイントの悪化となりました。

新型コロナはデルタ株の蔓延で世界的な新規感染者が再び増加傾向に変わりました。

インドネシア、タイなどの東南アジアではかつてない急拡大に見舞われ、欧州でもイギリスやスペインなどで再拡大し、景気回復の先行きに不透明感が出ています。

一方でワクチンの効果も出ており、イギリスでは感染者は増えているものの死者数が低位となっているため、ロックダウンの解除に踏み切りコロナとの共存を図る試みが行われます。

 

政治面では中国当局が自国企業である滴滴出行のアプリのダウンロードを停止し、同時に自国のハイテク企業に対して海外上場の規制強化を発表しました。米上場の中国企業に対して米政府が監視を強める中、中国当局が情報流出に警戒を示した形となっています。これにより米中の分断が貿易や技術分野だけでなく資本市場にまで及んできました。

 

一方でG20財務相会議において、最低法人税率15%や国際的な法人課税の新たなルールの大枠を合意しました。米中を中心に分断が進む中、国際ルール作りにおいては一定の協力体制が残されていることが示されました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標は米欧中とどれも景気減速から悪化を見せ、マイナス14ポイントの大幅悪化でした。

個人的には中国指標に注目しましたが、詳細は後述します。

 

先週は各国中銀の政策発表も相次ぎ、ECBは物価目標をこれまでの「2%に近いかそれを下回る水準」から「2%」へ引き上げ一時的な上振れの容認姿勢を明確にしました。

一方で豪中銀は政策金利を現行のままに維持しながらもQEの額を減額しテーパリング開始することを示しました。

 

次週は米CPI、パウエル議長発言、NZ中銀政策発表が注目されます。

米CPIは一時的な強いインフレは既にコンセンサスとなっているため、大きく揺れることは少ないと思います。またパウエル議長の発言もサプライズなく従来スタンスの発言になると思われます。

NZ中銀政策発表は、向こう数ヶ月でQE終了が予想される中で、豪中銀に続きテーパリングにどこまで踏み込まれるか注目です。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数は欧米指数は小幅上昇、アジア及び新興国株式が大きく下落しました。

デルタ株によってコロナが世界的に再拡大する中で、ISM非製造業景況指数が60.1と下振れしたことにより景気回復の遅れが意識され、安全資産である米債券が買われ長期金利は一時1.25%まで低下しました。

それと共に株価が調整しましたが、金曜日には長期金利も1.36%まで急回復し、終わってみれば欧米株式は上昇し、米株3指数は最高値を更新しました。

 

先週の米株下落の原因は長期金利のオーバーシュートでしたが、金曜日にすぐに落ち着きを見せたことから、高値圏で敏感になっている市場の「くしゃみ」だったと考えられます。

次週も米株は引き続き適温相場の中、堅調に推移すると思われます。

 

 

〜指標から見える中国経済の陰り〜

 さて、前週に私は中国当局の締め付け強化による政治的なリスクから中国株式の伸び悩みを予想しましたが、先週はそれを裏付けるような指標や政策が見えてきました。

 

下記はここ直近1年間の中国のPPI(生産者物価指数)とCPI(消費者物価指数)の推移を示したものです。

PPIは生産者サイドから見た原料コストなどの物価変動の数値を表します。

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青軸のPPIは、最近の中国当局のインフレ抑制策の影響で6月に若干頭をもたげていますが、昨夏から急激に上昇してきています。

一方でオレンジ軸のCPIは昨夏からから低下→横ばい傾向となっており、PPIとCPIのギャップが広がっています。

 

これは、モノの生産にかかる原料コストは商品価格の上昇により強い上昇を示しているものの、消費者需要の低迷によりそれが消費者価格に転嫁されていないことを表しています。

つまり足下では生産者と消費者の間に入る中間業者(サービス業者)の収益が圧迫されて苦しい状況に陥っている可能性が考えられます。

それを表してか、6月サービス業PMIは前回55.1、予想54.9に対して結果50.3と辛うじて基準の50をキープしたものの14ヶ月振りの低水準に落ち込み景気回復の鈍化を示しました。

 

そしてそれに受けてか、中国人民銀行は9日に預金準備率の0.5%の引き下げを発表し、主に中小企業を対象に1兆元(約17兆円)の資金が供給されることとなりました。

各国がインフレ抑制のために緩和後退に向けて動く流れに逆行する追加金融緩和は、これまでの中国経済の楽観姿勢がやや後退している状況を表しているように感じます。

 

 堅調に推移していると見られる製造業でも、半導体不足に足を引っ張られて自動車生産が低迷しており、自動車販売台数は5月が前年実績比3%減、6月は12%減と鈍化傾向にあります。

総じて見ると、前週論じた当局の締め付け強化などの政治的リスクに加え、資源高や半導体不足が重荷となり指標面でもやや陰りが伺え、警戒度を高める必要があると感じます。

 

短期的には資金の流動性が増したことで停滞していた中国株には後押しとなることが考えられますが、一方でこのタイミングでの緩和は不動産などの更なる高騰要因にもなる可能性があります。

次週は4-6月期の中国GDPの発表がありますが、資源高がどこまで影響しているか注視していきます。

 

以上