投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【7/19-7/23週の世界のリスクと経済指標】〜主要国の金融政策スタンス〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(35点):小幅悪化 (基準点36点) 

経済指標  +1点(70点):小幅良化 (基準点69点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化としました。

デルタ株の猛威は収まらず、東南アジアでは工場停止に追い込まれ、サプライチェーンの停止からトヨタなど日本の製造業にも影響が出始めています。

またファイザーはデルタ株にも効果があると発表しつつも、イスラエルではファイザーワクチンの予防効果が39%まで低下していると発表しました。ワクチンを接種しても手放しで経済活動に戻れないことが懸念され始めました。

 

政治面では独露のガスパイプライン「ノルドストリーム2」が容認されました。

ノルドストリーム2は長年米独間での懸案となっていましたが、米国側に対中戦略においてドイツだけでなくロシアとの距離を近づけたい思惑が働いたのか、一転容認となりました。

 

また、東京で初の無観客でのオリンピックが開幕しました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化でした。

米国の6月住宅着工件数は、ここ最近の原材料高を反映してブレーキがかかるかと思いきや予想1.2%に対して6.3%と大幅な増加を見せました。インフレ圧力が高まりながらも引き続き需要が旺盛であることが示されました。

 

 ECBは7/8に中期インフレ目標をこれまでの「2%に近いかそれを下回る水準」から「2%」へ引き上げることを発表していましたが、これを持続的に達成するまで超緩和政策を継続することを新たなガイダンスとしました。

 

欧米のPMIはドイツが製造業、サービス業共に前回値、予想値を上振れました。

ここ最近陰りが見え追加金融緩和を行なった中国経済ですが、中国経済の側面指標であるドイツ製造業PMIから推測すると未だ好調さは継続している様に見えます。一方で7/21に発表された日本の工作機械受注では、中国向けが前月比27.6%減の280億円と急激に鈍化しており気になるところです。

 

次週は米FOMC、米4-6月期GDP、米PCEコアデフレーターが注目指標です。

FOMCは8月のジャクソンホールでのテーパリング示唆がコンセンサスとなっていますが、直前のFOMCで議論される内容が注目されます。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 週明けはデルタ株の急拡大による景気回復の遅れが懸念され、安全資産である米国債券への逃避が強まって長期金利は一時1.2%を割り、それと共に主要株式指数は大幅に下落しました。

しかしその後は押し目買いの反発から好調な企業決算を経て楽観が戻り、最終的には米株3指数は最高値を更新し、ダウも史上初の35,000ドルに乗せて週を終えました。

 

S&P500採用銘柄のうち120社が決算発表済みですが、その88%がコンセンサスを上回っている模様です。

金融相場の底堅さと米国企業の業績好調さが目立った週となりました。

 

 次週はテスラ、アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、ボーイング、フォード、キャタピラーシェブロンエクソンなどの大手企業の決算が続きます。

先週はナスダックがアウトパフォームしましたが、次週もこのまま上昇基調に乗りながら、ハイテク株の決算好調を背景にナスダックがアウトパフォームすると予想します。

 

 

〜主要国の金融政策スタンス〜

さて、次週は7/27-28にて米FOMCが開催されます。

テーパリングが示唆されるとコンセンサスとなっているジャクソンホール会議前の最後のFOMCとあって会議の内容が注目されます。

先進国の景気回復からインフレ圧力が高まっている中で、米国の金融政策に注目が集まっていますが、米国以外の各国も様々な政策を打っています。

下記は各国の7/24現在の金融政策の一覧です。

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オレンジ色がタカ派スタンスの政策、青色がハト派スタンス、緑色がハト派拡大スタンスです。

 

これらの現状を整理すると下記の通りとなります。

 

インフレ目標をCPIが上回り、景気回復を背景にテーパリングしている国
 →NZ、カナダ、豪州(先進国)
インフレ目標をCPIが上回り、景気回復が弱いながらもインフレ抑制で利上げしている国
 →トルコ、ロシア、ブラジル、メキシコ(新興国

インフレ目標をCPIが上回っているが景気回復に不安があり利上げできない国
 →南アフリカ、インド、韓国(新興国

インフレ目標をCPIが下回っているため現状維持、もしくは緩和拡大傾向の国
 →イギリス、EU、日本、中国(先進国+中国)


米国の22年からのテーパリングおよび23年中の利上げは既にコンセンサスとなっていますが、今後より詳細な時期や規模が示されることとなります。

その際にコンセンサスとのズレがどの程度発生してくるかによって、各国の金融政策への影響が出てくると思われます。

 

 仮に米国のテーパリング時期や利上げ観測が早まるのであれば、自国通貨安とインフレ高進の防止のために、既に利上げに踏み切っている②のトルコ、ロシア、ブラジル、メキシコは更なる利上げに踏み切らざるを得ないでしょう。

また利上げ予備軍である③の南アフリカ、インド、韓国などは未だ経済回復途上であり、できる限り緩和を維持したい状況ですが、こちらも利上げに踏み切らざるを得ないと思います。

 

もちろん米国のテーパリング開始や利上げ観測が米国自身や先進国の株式市場を冷やさずに軟着陸できるかどうかが最も気になるところです。

一方でそれに連動して各国の経済にどのように作用し、その国の金融政策にどの様な変化をもたらすのか、というところも注意して見ていきたいと思います。

 

以上