投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【7/26-7/30週の世界のリスクと経済指標】〜中国政府のマーケット重視からの訣別〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +9点(99点):大幅良化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

新型コロナは世界的にデルタ株が拡大し、米国でも再び1日あたり感染者が12万人を超え、日本でも1万人を超えました。米東部で発生したクラスター感染では3/4がワクチン接種者で、自身は重症化しなくてもウィルスを保有し他者へ感染させるリスクが懸念され始めました。

またイスラエルでは減少しているワクチンの予防効果に対して3回目のブースター接種開始しました。

効果が確認されれば有効な手段となるも世界的なワクチン不足が拡大する可能性があります。

 

政治面ではシャーマン米国務副長官が訪中し王毅外相と会談しましたが進展はなく、米中首脳会談の目処も立ちません。

一方でオースティン国防長官が東南アジア訪問しフィリピンとの軍事協定存続を決め、ブリンケン国務長官はインド訪問しワクチン生産支援を行うとともにクアッドでの協力を確認しました。

アジアでの対中プレゼンスを高めるために米国の対アジアの外交が活発化しています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス9ポイントの大幅良化となりました。

注目のFOMCでは「テーパリング向けて経済が進展した」としつつも、テーパリング開始については「今後複数回の会合」での経済の進捗を評価するとの声明を発表しました。

一方でパウエル議長は記者会見で「その時期はまだ当分先」という認識を示し、ややタカ派な声明とハト派の記者会見でうまくバランスをとった印象で、市場も荒れることなく無難に通過しました。

 

 一方で米国の4-6月期GDPは結果6.5%と予想の8.5%を大きく下回り、またPCEコアデフレーターも予想を下回り、やや景気の減速感を感じる結果となりました。

デルタ株によりワクチンを接種しても手放しで経済活動再開とならない状況や恒常化する半導体不足などからの在庫不足が足を引っ張っている印象です。

今後もFRBは難しい舵取りを迫られそうです。

 

次週は米ISM景況指数、豪準備銀行政策金利、英中銀政策金利、米雇用統計があります。

景気にやや減速感が感じられるようになった中で豪英中央銀行がどのような舵取りを行うのか注目です。

また雇用統計はFRBの今後の金融政策の指標になるため注目しています。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は週明けから中国政府の民間教育企業への規制で中国株が暴落しました。

米国株式指数は2Q決算の本格化とFOMC軟調な動きながらも大崩れしなかった印象です。

一方で個別の米ハイテク企業の2Q決算は、好調な業績を示すも今後の見通しでの鈍化傾向が示されると高い期待から利確売りを誘うものが多かった印象です。

特にAMZNの売上高が11四半期ぶりに市場予想に下回ったことで決算発表後に7.56%安となり、大型ハイテク株全体の成長鈍化の懸念を誘い足を引っ張りました。

 

今回の大型ハイテク株の下落を「調整過程」と見るのか「押し目」と見るのか判断が難しいところですが、ハイテク株以外の決算自体も概ね好調なものが多く、次週も軟調ながらも大崩れはしない相場が続くのではないかと推測します。

しかし日本企業は好決算を出しながらも通期の上方修正がないとすぐに利確売りに晒される傾向があり、さらに中国政府の規制強化も相まって下落傾向にあるため日経は下目線で見ています。

 

 

〜中国政府のマーケット重視からの訣別〜

さて、先週は上海総合指数が4.31%安、香港ハンセン指数が4.98%と中国株式が暴落しました。

私は7/4に投稿したように中国当局の締め付け強化から中国株式に強い懸念を持っていましたが、先週になってさらに当局の締め付けが強化されました。

 

具体的には下記の通りです。

 

①民間教育産業を非営利化し外国からの投資や株式公開を禁止

 

中国人民銀行が上海の銀行に対して住宅購入者への金利を1軒目4.65%→5%、2軒目5.25%→5.7%
 に引き上げを指示し不動産部門の加熱抑制策を強化

 

③上場予定企業の海外上場に対する管理監督を強化

 

これまでも金融市場に対して様々な規制を強化していましたが、さらにその傾向が強まりました。

下記はその規制の一覧です。

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 中国も不動産価格や原材料価格の高騰に苦しんでおり、それらに対する抑制策はある程度理解できます。

しかし、赤字で記してあるような企業活動に直接介入し、増して上場企業を勝手に非営利化する行為はさすがに金融市場のルールを根底から覆すものです。

 

 これまでは経済発展優先で欧米の資本主義のルールに則りマネーを集めてきた中国ですが、これで共産党による統制優先に切り替えてきたことが明白になりました。

中国政府による突然の規制強化や政策変更により投資家が損害を被る可能性高くなってきた今、そこまでのリスクを負って海外投資家が中国に投資するメリットがなくなってきたと言えます。

米SECも米国市場への中国企業の迂回上場を監視するため審査を厳格化すると発表しました。

これで経済面でも米中の分断が進み、最大のマーケットである米国からのマネーの流入が減少する流れとなると思われます。

 

私個人としても、そのような政治的リスクのある国に投資することはできませんので、保有していた中国株式を多く含む新興国株式インデックス(MSCIエマ)の投資信託は全て売却しました。

 

外国からの影響を受けずに独自の発展を作り上げていくため、中国は今後さらに統制強化することが予想されます。それらが世界的な金融市場に悪影響を及ぼさないか注意深く見ていきたいと思います。

 

以上