投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/2-8/6週の世界のリスクと経済指標】〜テーパリング機運の高まり〜

先週の評点:

 

リスク   -5点(31点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +1点(94点):小幅良化 (基準点93点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。

新型コロナはデルタ株の蔓延に収束が見えず、日本も新規感染者数が15,000人を超え、米国も再び16万人台となってきました。

米国ではワクチン接種完了者が50%を超え死者数が抑えられていることから今のところはロックダウンを行わない方針となっていますが、今後の状況次第では経済回復状況への影響が懸念されます。

また、ファイザー、モデルナの両社がワクチン効果持続のために3回目のブースター接種の必要性を示しました。

世界的に需要の高い欧米製のワクチンですが、途上国への配分が減る可能性があり、中国およびロシアが途上国へつけ入る隙を与え、格差問題となる可能性があります。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化となりました。

米雇用統計はNFPが予想87万人に対して94.3万人と大幅に上振れ、前回値も85万人から93.8万人に修正され、雇用の強い回復が示されました。

失業率も前月の5.9%から5.4%へ大きく改善が見られました。

 

またISM景況指数は、製造業は半導体不足からの「作りたくても作れない」という状況を表し鈍化しましたが、非製造業は人々の活動再開からリベンジ消費などが活発になったことで予想60.5に対し64.1と大幅な改善を示しました。

 

次週は中国7月CPI、米7月CPIの発表があります。

中国CPIは中国景気を左右する消費活動を図る上で、米CPIはテーパリングの時期を決めるための重要指標となるため注目します。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の主要株価指数は全体的に堅調に推移しました。

特に日経平均は前週の落ち込みからの自律反発と好調な1Q決算から買いが先行し2%弱の強含みとなりました。

米株指数も好調な2Q決算が多く、金曜日には雇用統計が上振れたことも手伝い上昇しています。

一方でAMZNやトヨタに代表されるように日米共に好調な決算ながら、今後の見通しに鈍化傾向が見えると既に高いバリュエーションによって株価が下落する銘柄も目立ちます。

それによって業績好調な企業が多い中でも金融相場で過度に上昇した株価に業績が追いつかず、上値が重い印象です。

 

 

〜テーパリング機運の高まり〜

さて、先週はテーパリングに対する機運が高まった週でした。

7/27-28でFOMCが終わったため、再びFRB高官の発言が相次ぎました。

下記は最新のFRB高官の発言を更新したものです。

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 7月のFOMC後に発言がメディアに取り上げられたメンバーは赤字で記載しているパウエル議長含め9名ですが、そのうち6名がタカ派発言をしています。

7月のFOMCにおいてテーパリング議論がなされマーケットでもコンセンサスが形成されたことで、FRBメンバーも当然の如く早期テーパリング開始への発言を行なっています。

特にウォラー理事、クラリダ副議長の発言の影響が大きかった印象です。

これまでFOMCの常任メンバーである副議長や理事からの発言は比較的少なかった上に、加えてテーパリングに対してタカ派発言となったため、早期のテーパリングを連想させました。

 

また、FOMC前からタカ派発言をするようになったシカゴ連銀総裁に加え、FOMC後にはウォラー理事、ミネアポリス連銀総裁の3人がここ最近ハト派からタカ派へスタンス転換しています。

これによりFOMC議決権を持つメンバーの11人のうち6人がタカ派スタンスとなり、ほぼテーパリングは間違いない状況かと思います。

 

そして、8/6の雇用統計にてNFPが94.3万人と予想を上振れ、失業率が5.4%と大きく改善したことで、それを後押しする形になりました。

FRBメンバーからは「緩和後退には雇用統計の数値が重要」とのコメントが相次いでいましたが、雇用統計にて明確な改善が続いたため、テーパリングに向けた動きが肯定されることとなりました。

 

足元ではデルタ株が拡大していますが、米国ではデルタ株が再拡大してもロックダウンしない見通しであり、今後短期的に景気が急激に後退する可能性は薄いと考えます。

ついては9月の雇用統計を確認した後の9月のFOMCでのテーパリング発表に向けて突き進む機運が確実に高まってきていると考えます。

そしてまた、先週の株価の反応に大きな影響がなかったことを見ても、マーケットは既にテーパリングを織り込んでいることが伺え、今後も大きな変動なく粛々と移行していくと思われます。

 

以上