投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【11/1-11/5週の世界のリスクと経済指標】〜ハト派の先進国とタカ派の新興国〜

先週の評点:

 

リスク   +2点(38点): 良化 (基準点36点) 

経済指標  +19点(121点):大幅良化 (基準点102点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス2ポイントの良化としました。

新型コロナは、冬の本格到来を前にドイツや東欧地域を中心に感染者が急増し再拡大の兆しが見え始めました。一方でファイザーが開発中の経口コロナ薬が入院と死亡確率を9割近く減らす効果があることが発表され、今後より簡易に新型コロナ拡大を防ぐ手段としてポジティブニュースとなりました。

 

また米がEUからのアルミや鉄鋼の輸入に掛けている関税の一部免除を決め、EUとの関係修復に向かいました。一方で英国はブレグジットでの仏との漁業権問題が激化し、報復合戦となっています。

一方では関係修復が進みながらも他方では関係悪化が進み、西側諸国のまだら模様が続きます。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス19ポイントの大幅良化となりました。

先週はインフレ圧力が高まる中、豪準備銀行、FRBBOEによる金融政策発表があり、そのスタンスに注目が集まりましたが、総じてハト派に推移しました。(詳細は後述します。)

また米雇用統計ではNFPは上振れして雇用の回復を示しながらも、平均時給は前月比0.4%の伸びとなり、人手不足の状況も示しました。

米ISM景況指数も製造業は供給制約の影響でやや低下しましたが、非製造業は新型コロナの感染の落ち着きも相まって活発な需要に支えられ過去最高値となりました。

 

次週は米10月CPIの発表に注目します。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、好調な米国企業業績に加え、豪準備銀行、FRBBOEがそれぞれハト派なスタンスを貫いたことで金利が低下、カネ余り継続となりハイテク株を中心に先進国株式が大幅上昇しました。

また米雇用統計も堅調に雇用回復していることが示されたことや、ファイザーの経口コロナ薬に高い効果が見られたことで景気回復が意識され後押ししました。

全般的に見ると株式市場にとって良いことづくめの週となりました。

 

 一方で債権市場では、中銀のハト派スタンスにより利上げ観測後退から金利が低下しつつも、長短金利差は縮小しイールドカーブはフラット化を深めました。

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金利低下により、足元は高PERのハイテク株には追い風となっていますが、やはり債権市場は早期利上げによる将来の景気減速を見込んでいます。

 

 

ハト派の先進国とタカ派新興国

 先週はRBA(豪中央銀行)、FRBBOE政策金利発表があり、インフレ圧力が高まる中、各国中銀がどのような運営を行うのか注目されました。

結果としてはRBAはYCCを撤廃したものの23年末まで利上げしないとし、FRBもテーパリングは開始するもの「インフレは一過性」とし利上げに対しても「辛抱強くなれる」と見通しは崩しませんでした。

また利上げがコンセンサスだったBOEは、据え置きとするサプライズを示し、各国中銀のハト派姿勢を印象付けました。

 

下記は主要先進国と最近金利に動きのあった国の現在の政策金利を一覧化したものです。

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こうして眺めてみても、日米欧豪などの経済規模の大きな先進国はハト派で緩和継続、一方でその周辺新興国はインフレ耐性が弱いためにタカ派で引き締めを開始しています。
※中国は金融面では緩和的ですが、政治による統制強化から実質引き締められていますので、ここでの議論では中国はタカ派に含めます。

 

次に日本を含む先進国の株式インデックスであるMSCI World Index新興国株式インデックスであるMSCI Emerging Indexの値動きを見てみます。

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インフレが意識され始めた今年の春先から新興国株式は低下傾向となっていますが、先進国株式はその後も上昇し、特にインフレ圧力の急速に高まった10月以降急伸しています。

経済規模が大きく経済力が強い国は「インフレは一過性である」と緩和姿勢を貫き株式資産が膨張する一方、経済規模が小さく経済力が弱い国はインフレやそれに対する締め付けで資産が縮小している傾向にあることが示されています。

つまり新興国タカ派転換で行き場を失ったマネーが、未だハト派を貫く先進国へ移動していると考えられます。

 

そして先週の先進国の株高は、10/28のECB、先週のRBA、FRBBOEにより示された連日のハト派姿勢により加速され演出された結果と考えます。

そしてそれは先進国株にバブルを引き起こしていると思います。

もちろん企業業績は好調ですが、そうでなければひどい3Q決算だったAMZNの現在株価が決算前を上回っていることを説明できません。

 

現在先進国の株式市場は非常に楽観的ですが、それが試されるのは各国中銀がタカ派に振らざるを得なくなる時だと思います。

次週は米国の10月CPIの発表があるので非常に注目です。

インフレが強く実感され始めた10月の数値が予想の5.8%を上振れた場合、マーケットは再び早期利上げを意識せざるを得ません。

 

株高が続いていますが、自身のポートフォリオは引き続き弱気スタンスで警戒しながら様子を見ていきます。

 

以上