【11/15-11/19週の世界のリスクと経済指標】〜悲観と楽観の混在〜
先週の評点:
リスク -3点(33点): 悪化 (基準点36点)
経済指標 +9点(60点):良化 (基準点51点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。
欧州で新型コロナが再拡大し、オーストリアはロックダウン、ベルギーは週4日の在宅勤務義務付けなど行動制限も拡大してきました。
欧州経済の要であるドイツでも過去最大の感染者数増加から行動制限待ったなしとなっており、欧州経済が再び停滞する可能性が出てきました。
また中国では、コロナの感染拡大自体は収まりつつあるものの、北京五輪に向けてゼロコロナを目指すために行動制限が続いており、経済活動への影響も広がっています。ただでさえ、不動産や脱炭素で規制を統制を強めてきている中で、経済成長率見通しもさらに低下する可能性があります。
また先週は日米の財政政策に関する動きがありました。
米国では1.75兆ドルにも上るビルド・バック・ベター法案が下院で可決され、成立へ向け前進しました。
また日本では岸田政権が財政支出が55.7兆円となる経済対策を決めました。
短期的な影響は限定的となりそうですが、景気の下支えとはなりそうです。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス9ポイントの良化となりました。
中国の10月小売売上高はガソリンなどの燃料代が高騰したことで大幅増加となりました。また2月をピークに切り下げてきた鉱工業生産ですが、5G対応のスマートフォン需要に支えられて前月比で僅かに戻し上振れしました。
また米小売売上高も予想1.2%に対して1.7%と上振れしました。オンラインストア、自動車・部品やガソリンスタンドなどが強く、インフレの影響が出ながらもクリスマス商戦に向けて消費が堅調に推移していることが示されました。
一方でドイツの生産者物価指数が急激に上昇しており、ドイツは今後、インフレ高進とコロナの行動制限による停滞が同時に来る可能性があるため注意が必要です。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数はまちまちな動きとなりました。
ナスダックは好調な小売売上高、NVDAの好決算や長期金利の低下に連れて1.24%上昇、最高値高進となりましたが、一方でダウ平均は欧州での新型コロナの再拡大での景気後退懸念から1.38%下落しました。
また米を中心に多国間で戦略備蓄放出の検討が進んでいることを背景に、原油価格が80ドル台から75ドル台まで下落したことで、資源国であるロシアとブラジルの株価は大きく調整しました。
先週は原油の下落とともに、石炭価格も中国国内での増産と価格統制により大きく調整し、中国原料炭先物価格は30%下落しました。一方で各国のカーボンニュートラル政策も相まって天然ガスは未だ高い位置で推移しており、資源高の懸念は収まっていません。
〜悲観と楽観の混在〜
先週の株価指数は方向感の見えない週でした。
米国企業の決算も終盤に近づき当面の楽観材料が消えつつある中で、悲観と楽観がそれぞれ違うマーケットの捉え方をしている様子が散見された印象でした。
まず株式市場と債券市場ですが、株式市場はS&P500が18日、ナスダックが19日に最高値を更新し楽観が続きました。一方で債券市場は前週末比で16日にはややスティープ化したものの、週としてはフラット化して景気後退を織り込み、悲観が続いています。
次に米国株式ですが、ナスダックが1.24%高、S&P500が0.32%高となった一方で、ラッセル2000は2.85%安、ダウは1.38%安となりました。
労働者賃金高や原料高の影響が少なく、長期金利安が好感されるナスダックの大型ハイテク株は楽観的で高値を追いかけました。
一方でラッセル、ダウなどの景気敏感株は、労働者賃金高や原料高、長期金利安の影響を受け景気後退を悲観し下落しました。
先週発表された米銀行大手のS&P500の22年末の見通しでも、モルガン・スタンレーは利益成長の鈍化と金利の上昇で4400ポイントに下落すると弱気を示しましたが、GSは21年よりも上昇率は鈍化するものの5100ポイントと強気の姿勢を示しました。
モルスタ:https://jp.reuters.com/article/usa-stocks-morganstanley-idJPKBN2I01YU
GS: https://jp.reuters.com/article/usa-stocks-goldman-sachs-idJPKBN2I11TS
また先週はFRB高官のタカ派発言が目立ちましたが、利上げを急ぐスタンスと慎重なスタンスで割れている印象です。
11月FOMCからのメンバーの発言をまとめると、おおよそ半分半分になっています。
こうして見ると、現在の状況はマーケットに対して悲観と楽観の両方の捉え方が同じように混在し、より見通しが立ちにくい状況であることを改めて示しています。
私自身はインフレ高止まり継続と早期利上げで景気後退が起こると考え、10月初旬以降弱気スタンスを貫いていますが、その間は楽観が勝ちS&P500は9%上昇し見通しは外れています。
ここで挙げている内容同様、見通しの難しさを痛感しています。
しかし、その楽観も10月CPI以降勢いに陰りを感じられ、主要企業決算の終了と共に当面良材料がなくなるため調整するのではないかと考えます。
いくら企業決算が好調と言えども、目標2%に対して6.2%という高過ぎるインフレ指標が出ている状況では経済が正常に推移しているとは考えられません。
従ってそろそろ悲観が勝る可能性が高いと考え、引き続き弱気スタンスを継続していきます。
以上