【1/3-1/7週の世界のリスクと経済指標】〜QTによるイールドカーブの変化の兆し?〜
先週の評点:
リスク -6点(36点): 悪化 (基準点36点)
経済指標 +9点(114点):良化 (基準点105点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。
オミクロン株は重症化率は低いものの、高い感染率により企業や公共サービスの担い手が大量に隔離されることで新たな供給制約につながる可能性が懸念されます。一方でコロナとの共存政策をとる英国では、新規感染者数がピークから2割減少しピークアウトが鮮明となってきました。南アフリカ同様、感染スピードが早い分ピークアウトも早い傾向も出てきました。
地政学リスクでは、ロシアからのNATOの拡大停止を求める欧州安保案を拒否する構えを打ち出しました。ウクライナ国境付近ではまだ10万人規模の露軍が展開していると見られ、さらに先週は燃料価格高騰によるデモ鎮圧のためにカザフスタン内にCSTOとして露軍が展開を始めています。
旧ソ連圏を中心に欧州での露軍の展開が加速しており、12日のロシアとNATOとの会合の結果如何では新たな展開も考えられるため注意が必要となっています。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス9ポイントの良化となりました。
先週は、指標でありませんが12月FOMCの議事要旨が発表され、テーパリングの加速および22年の3回の利上げと共にQTまで議論されていたことが判明し、予想以上にFRB当局者の考えがタカ派に振れていることを示しました。
またその後の米雇用統計で、非農業部門雇用者数変化が予想400Kに対して190Kと届かずも、失業率は予想4.1%に対して3.9%、平均時給は予想0.4%に対して0.6%となり、雇用の逼迫し完全雇用に近い状態であることを示し、FRBのタカ派を正当化しました。
次週は米12月CPIの発表に注目します。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価は米長期金利の上昇やFRBのQT議論を受け、バリュエーションの高いナスダックが大きく下落しました。一方でFOMC議事要旨発表前の週前半に大きく上昇していたこともあり、ダウ平均、欧州株指数、日経平均への週を通しての影響は限定的でした。
またロシアRTS指数は、原油価格上昇が追い風にならず、ウクライナ侵攻リスクやカザフスタンでの騒乱を受け、リスク回避の動きが高まり大きく下落しました。
〜QTによるイールドカーブの変化の兆し?〜
12月FOMC議事要旨でテーパリングの加速、22年の利上げ回数3回の見通しだけではなくQT(量的引き締め)まで議論されたことが明らかになり、マーケットが想定していたよりもFRB当局者がタカ派となっていることが示されました。
それに伴い利上げが意識されやすい短い年限の利回りが強く上昇しフラットニングしました。
また金曜日の1月雇用統計では、失業率、平均時給が大きく改善し完全雇用状態と共に賃金インフレが続いていることを示され、FRBのタカ派傾倒が正当化されました。
しかし、それに伴いこの日は2年債利回りはやや低下しながらも、中長期の年限の利回りを中心に上昇しスティープニングしました。
QTに関しては、過剰流動性を直接的に低下させてマーケットを冷やすと同時に、12月にFRBのウォラー理事が発言していた様に利上げと併用されることによって利上げペースを緩める効果があると考えられます。
またそれによってイールドカーブのフラットニングを抑え、将来的な景気を冷え込ませないというFRBの狙いもあると考えます。
そのため、雇用統計の結果で上昇するかと思われた2年債利回りの低下は、QTによる効果を早速反映した可能性があると思います。
週を通しても、ややベアスティープニング傾向となりました。
利上げに加え、QTも想定されるとなると資金の流動性は低下し、これまでの様な何でも買われるカネ余り相場は終焉することを意味します。
今後、インフレ指標が落ち着かない限りは長期金利はさらに上昇すると思われ、QEによる過剰流動性で膨れ上がったハイグロ株などのリスク資産にとっては向かい風となることが予想されます。
また、S&P500、MSCIコクサイなどのインデックス指数も、加重平均のため割合の大きいハイグロ株の影響を受けやすく、今後じわじわ調整が続く可能性が高いと考えます。
一方で先週はグロース株の多いセクターは下落する一方、素材、金融、エネルギーなどのシクリカルセクターの下落は限定的、もしくは上昇しておりセクターローテーションしたとも言えます。
先述の通り、FRBのQTの狙いの一つがイールドカーブのスティープニングであるならば、長短金利差で稼ぐ銀行株にはより有利となると思います。
先週、金利の急上昇を受けて長期投資ポートフォリオのMSCIコクサイの割合を30%から25%に減らしましたが、今後のイールドカーブの動向を確認しながら、減らした5%分での個別銀行株への投資を検討したいと思います。
また1/14から銀行株の決算発表が始まりますが、金利がやや上昇傾向にあった4Qでの業績内容にも注目したいと思います。
以上