【1/10-1/14週の世界のリスクと経済指標】
先週の評点:
リスク -2点(34点): 悪化 (基準点36点)
経済指標 -8点(42点):大幅悪化 (基準点50点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化でした。
新型コロナのオミクロン株の拡大は依然勢いが強いものの、英国や米NY州などは既にピークアウトの兆しが見られ、収束も早い可能性が出てきており、近い将来に再び景気回復が強まる期待も高まりました。
ウクライナを巡りロシアとの緊迫が高まる欧州では、ロシアが提案する新たな欧州安保案に関してNATOとロシアによる協議が行われましたが溝は埋まらず対立解消への進展は見られませんでした。引き続き協議を継続すると擦るものの、進展しないことを理由にロシアがウクライナ侵攻を仕掛ける懸念も生まれており注意が必要です。
天然ガスの主要産出国であるロシアとの対立が深まれば、欧州を中心に資源需給にも混乱が生まれることが予想されます。
【経済指標】
先週の経済指標はマイナス8ポイントの大幅悪化となりました。
中国のCPI、PPIは高水準であるもののやや落ち着きを見せ始めており、インフレのピークアウトの兆しが見え始めました。
一方で米国CPIは依然上昇を続けており、インフレが長引いていることを示しました。
また、インフレによる市民の苦しい生活を反映してか、12月小売売上高や1月ミシガン大学消費者態度指数などの消費者需要を測る指標が予想に反して低調に推移しました。
小売売上高に関しては、昨年のクリスマス商戦が品不足懸念で前倒しで購買されていたために下がった可能性もありますが、年末商戦の数値が落ちたことは非常に気掛かりです。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株式指数は主要先進国指数は激しいボラティリティの中、週を通して見るとやや下落となりました。
特にナスダックの動きが激しく、1/10には一時3.6%安となるものの、その後戻しプラ転するなど、大きく上下することもありました。
利上げ観測が強まる中、既に崩れている小型ハイテク株に続いてGAFAMなどの大型ハイテク株もボラタイルな動きの中で徐々に崩れてきた印象です。
新興国株式としては、資源高を背景にブラジルボベスパ指数は反発しましたが、前週に続きロシアRTS指数はウクライナ侵攻やカザフスタンの動乱を巡ってリスク回避で大幅反落となりました。
〜スティープニングしないイールドカーブ〜
さて、私は前週にQT議論が出たことによってイールドカーブがスティープニングするのではないかと予想していましたが、先週は一転フラットニング傾向が強くなりました。
これは12日に発表された米CPIで予想に一致したものの7%という高い数値が出たことや、先週、パウエル議長、ブレイナード理事への議会公聴会を始め、多くのFRB高官がタカ派発言を行ったことが影響していると思われます。
下記に発言内容をまとめています。
先週はボウマン理事以外の全てのFRBメンバー14人が発言していますが、その全てが利上げについて発言しています。
これにより、ほぼ3月FOMCでの利上げが地固めされたことが認識できますが、さらに今年の利上げ回数4回以上とするメンバーが14人中5人、そしてBS縮小(QT)にまで踏み込んだメンバーも14人中4人いました。
また従来強いハト派であるシカゴ連銀のエバンス総裁さえも今年の4回の利上げおよびQTへ言及しています。
これらのことから、FRB当局者の目標が完全に雇用対策からインフレ対策に変わり、さらに前のめりとなっていることがわかります。
イールドカーブのフラットニングの動きは、これらのFRB高官の相次ぐタカ派発言で足元の利上げが強く意識され、短い年限の金利が上昇したことが伺えます。
一方で長期金利の反応は鈍く、ウィリアムズNY連銀総裁が「BS縮小は長期金利の上昇に寄与する」とQTの目的をスティープニングであると明言していましたが、あまり大きな動きは見られませんでした。
FRBはQTを使うことによって長短金利差の縮小を抑えようとしていると思いますが、今のところはタカ派への急転換が強すぎるだけに、引き締めへの焦りを示すだけになってしまっている印象です。
また先週発表された12月小売売上高、ミシガン大学消費者態度指数が低調に推移しインフレの影響による消費の停滞が見られたことから、スタグフレーションの可能性も意識され、将来の景気を表す長期金利が上昇しにくくなっているのかも知れません。
私は先週、バリューへのセクターローテーションの中で、イールドカーブのスティープニングを予想し銀行株への投資を検討していましたが、上記の通り想定通りの動きが見られなさそうであるため一旦銀行株投資は取りやめとしました。
一方で、先週は主要国でのオミクロン株拡大のピークアウトの兆しが見られたことや、産油国カザフスタンの混乱や、ウクライナを巡るNATOとロシアの対立など地政学的なリスクから原油が上昇し直近高値圏まで高騰しました。
そのためバリューの中でもより直接的なインフレの影響が大きく、テクニカル的にも新高値更新しているエネルギーセクターとして日本の総合商社の個別株にインフレヘッジとして投資を行いました。
全体としては株式30%のポートフォリオで弱気継続ながらも、大型ハイテク株の影響の大きい株式指数の停滞を補うべく5%の個別株を組み入れた形となります。
以上