投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【1/17-/1/21週の世界のリスクと経済指標】〜崩れた逆相関〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -4点(56点):悪化 (基準点60点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化としました。

中国当局は、2月に開催する北京五輪に向け、参加選手のウイグルなどの人権問題への言及を処分の対象とすることを示唆し、言論統制を強める方針としています。

北京市内でのオミクロン株感染も確認され「ゼロコロナ」政策が展開される中、欧米諸国の外交的ボイコットや言論統制も加わり、2008年の前回北京五輪とは全く違った雰囲気での開催となりそうです。

 

 欧州情勢では、バイデン大統領は露がウクライナを侵攻するだろうと述べ、侵攻の際には露の銀行との米ドル取引を停止する方針を示しました。

また米国は露のNATO東方拡大停止要求に対してそれを固辞し、代わりに軍事演習制限を提示する方針としています。

恐らく露はその提案を拒否すると思われるため協議は平行線を辿り、不安定な状況が継続すると思われます。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス4ポイントの悪化となりました。

中国の10-12月期GDPは予想3.7%は上回ったものの前回の4.9%より大幅に減少した4.0%となり、不動産に対する規制や強いコロナ規制により中国経済の成長が鈍化していることが示されました。

その一方で中国人民銀行政策金利に当たるLPRを0.1%引き下げ3.7%とし、緩和することを発表しました。

世界がインフレ対策から利上げ傾向となる中での金融緩和は異質で、中国のインフレ率が今後どうなっていくのか注目が集まります。

 

次週は1月の米FOMCがあります。

3月に始まるとされている今年の利上げペース(3回か4回)とQTの開始時期に関してどのような言及を行い、インフレに対するFRBの焦りをどこまで見せるのか注目したいと思います。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週は米株指数が大幅に反落しました。

前週はボラタイルながら何とか小幅下落で耐えていましたが、先週は米国の休場明けの1/18から、ハイテク株(ナスダック)、小型株(Russel2000)を中心に堰を切ったかのように下落しました。

欧州株や日経平均も下落はしていますが米国株と比較すると小幅な動きとなり、バリュエーションの高い米国株を中心にマネーが流出したことが示されました。

 

また、一方で中国は世界の潮流に逆らいLPRを0.1%利下げしたことで上海総合指数や香港ハンセン指数は反発しました。中央銀行の引き締め、緩和の政策の違いによってはっきりと明暗が分かれました。

 

 

〜崩れた逆相関〜

 さて、先週は米国株式に大幅調整が起こり、QT議論を示した1/5の12月FOMC議事要旨の発表を境に、マーケットが転換したことが明確に示されました。

私は10月以降、折りを見て米国債イールドカーブの動きを見ながら、債券市場がマーケットをどのように捉えているかを確認し指標としてきました。

下記はS&P500米国債の長短金利差(30年債利回りー2年債利回り)のチャートを重ねたものです。

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この青色線の米国債の長短金利差は縮小して低下するほどフラットニング、上昇し拡大するほどスティープニングとなります。

スティープニング長期金利の上昇によって将来の景気回復を意味しますが、フラットニングは足元の短期金利が利上げ観測により強く上昇しながらも、将来の景気減速を織り込んで長期金利の伸びが鈍化することを意味します。

 

長短金利差は21年3月頃をピークに縮小トレンドにありましたが、特に10月からは急速に利上げ観測を強めフラットニングを強めてきました。

一方でそれと同時期からS&P500は逆に拡大傾向を強め、インフレは一時的であり業績相場に移行すると楽観し、1/3にピークをつけるまで約11%上昇しました。

 

それが1/5を境に、長短金利差もS&P500も両方とも下方向へ動き、逆相関が順相関に変わりました。

利上げだけでなく投資家の予想を超えてQTまで議論されていたことが判明し、FRBの焦りに対して株式市場でも反応が示された形となりました。

この3ヶ月間、イールドカーブを見続けてきた中で逆相関には違和感がありましたが、株式市場が見ていた楽観が行き過ぎたものであり、債券市場が見ていた悲観が正しかったことが証明されました。

 

これらのことから、やはり債券市場の動きはとても重要で、特にインフレの高まりから利上げ観測が出るタイミングでのイールドカーブの動きには注意を払う必要があると感じています。

 

この先、先週のように大幅な下げが続くのかはわかりませんが、まだ米国株はバリエーションが高い水準であるため、実際に利上げが始まってすらいない現状では少なくともまだ買い向かえる状況ではないと思います。

 

引き続き弱気のスタンスを維持しつつ、日々のニュースを追いかけながら次の買い場が来るのを待ちたいと思います。

 

以上