【2/7-2/11週の世界のリスクと経済指標】〜日本にも迫る高インフレの兆し〜
先週の評点:
リスク -4点(32点): 悪化 (基準点36点)
経済指標 -1点(35点):小幅悪化 (基準点36点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化となりました。
緊張が続くウクライナ情勢は、米独が首脳会談を行い、またプーチン露大統領とマクロン仏大統領の5時間に渡る首脳会談を行ってロシアに対する圧力と交渉が続きました。しかしながら、事態は好転せずロシアはベラルーシとも共同軍事演習を開始し、実質的にベラルーシ国内にも軍の展開を開始しました。
11日にはサリバン米大統領補佐官が北京五輪開催中のロシアのウクライナ侵攻の可能性に言及し、ウクライナに滞在する米国人に48時間以内に退避するように勧告したため、一気に緊張が高まりました。
アメリカ時間12日に急遽バイデン大統領がプーチン大統領と電話会談しましたが、米国はこれまでのように経済制裁の警告を繰り返しただけで事態は解決の方向へ向かっていません。
今度は15日にショルツ独首相がプーチン大統領と会談予定ですが、NATOとしての何らかの譲歩の方針を固めない限り各国首脳が単独で会談しても意味をなさないと思います。
【経済指標】
先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。
注目の1月の米CPIは予想7.3%に対して7.5%、CPIコアは予想5.9%に対し6.0%となり、上振れしました。これにより、2年債利回りは一時1.6%、10年債利回りも2%を超え、さらにイールドカーブはフラットニングを強め、金利が上昇する前から将来の景気後退を織り込みました。
インフレはまだ収まりを見せず、今後の金融引き締めに対するFRB当局者のタカ派姿勢を強める結果となりました。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数は好調な決算発表を受けて2/10の米CPIまでは堅調に推移しましたが、強い米CPIの結果により米国債利回りが金利が急上昇、それを受けてハイテク株を中心に大幅に売られました。
加えて2/11のNY時間にロシアのウクライナ侵攻の可能性が高まったことにより米株指数は大きく売られ、米国株のみ指数を大幅に下げ週を終えました。
先週は米CPIからの金利の上昇とウクライナ情勢の悪化のダブルパンチとなり、激動の1週間となりました。
次週もウクライナ情勢の動静により神経質な展開が続くと思われます。
〜日本にも迫る高インフレの兆し〜
さて、先週は日本国債利回りがYCCの上限である0.25%に達したことから、日銀が無制限買いオペ発動を発表し、利回り上昇を抑えにかかる緩和姿勢を示しました。
一方で米国では強いCPIの発表を受けてFRB当局者からも利上げペースの加速が叫ばれており、日本ではCPIが上昇しないとの理由で緩和傾向が続いていることにやや違和感を覚えます。
先週金曜日に発表された日本の企業物価指数を見ると、前月比+0.6%、前年比+8.6%と大きく上昇しています。
下記はここ1年間の企業物価指数の推移です。
綺麗に右肩上がりで上昇しており、特に昨年10月からは世界的なインフレ高進から水準が一段上がっています。こう見ると日本もしっかりと影響は受けています。
一方で下記は消費者物価指数の推移です。
日本は良いものを安く提供することが是とされる文化であるため、一般的には消費者への価格転嫁が難しいと言われています。
消費者物価指数は右肩上がりに回復して来ているものの、未だ目標である2%を大きく下回って低水準で推移しています。
従って現在は、企業はかなり強いコスト上昇圧力にさらされているものの、企業努力によって消費者市場にはまだそれが転嫁されていないと言えます。
もしくは、2020年4月からの携帯電話料金値下げの効果で21年10-12月の3ヶ月は毎月通信費が前年同月比53.6%減と足を引っ張っているため実態通りに反映されていない可能性があります。
しかし世界的な資源高、穀物高の影響から、足元ではインフレが私たちの実生活を徐々に侵食してきています。
原油高からガソリン価格は21年2月に136.1円だったものが22年2月には165.6円で21.6%上昇しています。また穀物高から近所のスーパーで買う食パンも、以前は高くても128円だったものが158円以下に値段が下がらなくなっています。
また外国人労働者が流入してこない中で、単純作業分野で人手不足となり、アルバイトの人件費も上昇してきました。
今後もコスト上昇に耐えきれなくなった企業は、急激に消費者に転嫁し値上げしてくるでしょう。
今回日銀が示した無限買いオペでの緩和姿勢は、ゼロ金利に慣れてしまった日本の経済状況を考えると金利上昇の負の影響に対して正当化されるため、それはそれで正しい判断であると思います。
しかし、他国が利上げ傾向にある中での緩和は長期的な円安を招き、その対価として輸入物価の上昇でコストプッシュインフレを加速すると思います。
現時点では日本のCPIは低位で推移していますが、世界的に強いインフレ状況にある中、この状態がこのまま続くとは思えず、隠れていたものが急に表面化してくるのは時間の問題だと思います。
対岸の火事だと思っていた米国や欧州でのインフレが、いよいよ我々の間近にも迫ってきた感じがあります。他国同様、一般市民の生活は苦しくなる可能性が高いです。しかも日本の場合は賃金上昇が追いついていません。しかし、耐えるしかありません。
今後は日本の指標の変化にも注意を払いながら、政府や日銀の政策を注意深く見守っていきたいと思います。
まずは2月18日の日本のCPIに注目です。
以上