投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【3/21-3/25週の世界のリスクと経済指標】〜ウクライナ難民の周辺国への影響〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  0点(60点):中立 (基準点60点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化でした。

先週もウクライナ情勢は膠着が続きましたが、週末にロシアが軍事作戦の第一段階を完了し、ドンバス地域の開放に焦点を当てると方向転換の姿勢を見せました。ややロシアが後退した印象ですが、一方で決定打がないまま戦闘が長引く様相になってきました。

 

また先週は岸田首相が訪印し、モディ首相に対ロシアで協調を促しましたが、日印共同宣言ではロシアに関する言及はありませんでした。一方で中国の王毅外相もインドを電撃訪問し、対ロシアで「対話重視」とすることで一致したと報道がありました。ロシアに対して制裁を強める日米欧に対して距離を置く中印の姿勢が鮮明となりました。インドの中立姿勢は今後のインド太平洋安保にも影響してくると思われ、動向に注意が必要です。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標は0ポイントの中立でした。

欧米PMIが発表されましたが、欧州ではウクライナ情勢の悪化を反映してやや悪化の傾向となりました。一方で米国PMIは製造業、サービス業共に上振れとなり米国景気の底堅さを印象付けました。

 

次週は米国PCEデフレーター、雇用統計、ISM製造景況指数の発表があります。

雇用統計で前月に落ち着きを見せた平均時給の伸びが再び上昇するのか、また先週のPMIで底堅さを示した米国景気がISM製造業景況指数でも底堅さを見せるのか、注目しています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は概ね堅調に推移しました。

欧米株式は先週に比べるとさすがに推進力が落ちた印象ですが、日経平均は9連騰となり、4.93%高と強い伸びを見せました。米長期金利が2.48%まで上昇したことと日銀の緩和政策継続により円安が進み、1週間でドル円は119円→122円となりました。それを背景に輸出銘柄を中心に日経平均は大きく続伸しました。

米株指数はS&P500が日足200MAを明確に抜け、ここをサポートにして次は2月に2回ほとトライして抜け切れなかった4600辺りを狙った動きとなると思います。

一方でここ最近米株に先んじた動きを見せていた独DAXがやや足踏みしており、米国株も今週は足踏みの展開を予想します。

 

 

ウクライナ難民の周辺国への影響〜

さて、ロシアがウクライナへ侵攻開始してから1ヶ月が経ちましたが、西側諸国からのウクライナへの軍事支援もあり膠着状態が続いています。

一方でこの1ヶ月で戦禍を逃れるため、ウクライナから370万人以上の難民が主に東欧諸国を中心として発生しています。

 

下記はウクライナ難民の流出先をまとめたものです。

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基本的に周辺国への流出していますが、中でも圧倒的に多いのがポーランドです。ポーランドを経由して20万人程度が中欧諸国へ向かったと言われていますが、それでもポーランドには半数以上の200万人程度が留まっていることとなります。

また自国民の人口に対する流入難民の割合が多いのはモルドバで、総人口262万人の小国でありながら38万人の難民が流入しています。

 

ウクライナの近隣各国は人道的見地から避難民の受け入れを積極的に続けており、戦闘の激化が進むにつれ、今後も増加していくと思われます。

ここで気になるのが、受け入れる側の近隣各国の状況です。

戦争が長引くにつれ、今後予想されるのは避難民の避難先での生活基盤の構築です。

そして、それにはウクライナ避難民が避難先での職を必要とすることになります。

 

現在、コロナ禍からの回復での人手不足から東欧各国は比較的失業率が低い状況にあり、足元ではウクライナ難民が職を求めても労働力として許容する能力は高いと思われます。

避難民は女性と子供が中心とされていますので、実際に就労可能なのは半分以下かと考えられます。仮にポーランドにおいて200万人の半分の約100万人の避難民が職を求めると、1,743万人のポーランドの就業人口に約5.7%の労働力が追加されることになります。モルドバに至っては14.5%の追加になります。

また、ウクライナの一人当たりGDPは3,741ドルと周辺諸国と比較すると圧倒的に低いです。

そして女性や子供が多いことからサービス業などの軽作業が主体となることが考えられます。

つまり、周辺各国の底辺層の雇用がウクライナ難民によって大きな影響を受けることが考えれます。

 

2010年から欧州に大量に流入したシリアを中心とした難民により、欧州社会にはイスラムを中心とした異文化による自らの伝統の破壊や雇用の喪失に対する恐れが発生しました。それが欧州でのポピュリズムの台頭を増長させた訳ですが、今回のウクライナ難民の大量流入も東欧での同様の流れを作る可能性を否定できないと推測します。

もちろん、シリア難民とは違い、ウクライナと東欧諸国は民族的、言語的にも近くかつ宗教も東方正教会をベースとしていることから、文化的な障壁は低いと思います。しかし今後、景気後退も予想される中で、自国民の雇用の喪失が意識され始めると、避難民に対する反対意識も生まれてくると想像します。

 

今回の東欧諸国を中心とした避難民の受け入れは、人道的見地から称賛されるべき行動であることは間違いありません。しかし一方で東欧諸国が急に大量の新たな住人を抱えることとなってしまったことは事実であり、その影響も考える必要があると思います。

個人的にはEU全体で分散し、東欧諸国への影響を薄めていくしかないと思います。しかし、避難民の祖国の近くに留まりたいという意志や、経済的な格差や文化的な違いがさらに拡がる西欧、南欧地域での受け入れがどこまで進むか未知数な部分も多いと考えます。

難しい問題ですが、その課題を今後欧州がどのように受け入れ、どのように変化していくのか注目したいと思います。

 

以上