投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【3/28-4/1週の世界のリスクと経済指標】〜逆イールドだからリセッションか〜

先週の評点:

 

リスク   1点(34点): 良化 (基準点33点) 

経済指標  -3点(96点):小幅悪化 (基準点99点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス1ポイントの良化としました。

ウクライナとロシアの停戦協議でロシアのキーウでの軍事作戦縮小の方針が伝えられていましたが、ウクライナ政府はキーウ州全域をロシア軍から奪還したと発表しました。一方でロシアは東部のドンバス地域や南東部に軍を再配置し、同地域の制圧し5月初めに勝利宣言することに注力すると伝えられています。クリミアに続き、またしても領土をロシアに奪われることになりそうですが、ウクライナ全土での攻撃は収束する可能性が高いです。どんな形であれ、そろそろ一旦の戦争休戦の形が見えてきそうです。

 

新型コロナは世界的には減少傾向となり規制緩和へ向かっていますが、中国内での感染が拡がっており、ゼロコロナ政策の外出禁止令の影響で職場へ向かえず、生産現場の停止が増えてきました。収束せずに感染拡大が続けば、再び世界のサプライチェーンにも影響が出てくることが心配されます。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス3ポイントの小幅悪化としました。

2月のPCEデフレーターは6.4%となりインフレの高進が示された一方、個人消費支出(PCE)は前月2.1%、予想0.5%に対して結果0.2%と物価高による支出の減速が示されました。

またISM製造業景況指数は前月58.6、予想59に対して結果57.1と下振れ、仕入れ価格指数が11.5ポイント上昇の87.1となり原材料高が示された一方、新規受注や生産指数は低下しました。

これらの指標からは、インフレによる不透明感の高まりから需要が軟化していることが示されました。

 

米国雇用統計ではNFPが予想49万人に対して43.1万人と下振れしましたが、失業率が3.6%と上振れ、平均時給も0.4%上昇し、完全雇用を達成していることを示しました。これによりFRBがインフレ対策を躊躇なく行うことが改めて正当化されました。

 

また、他の中央銀行に連れて日本の10年債利回りが上限の0.25%に近づいたため、再び日銀が連続指値オペで金融緩和措置を行いました。利回り上昇は抑えられましたが、その副作用で円安が進み一時ドル円が125円にタッチしました。

一方でユーロ圏のHICPが7.5%と急進したことから、ECB高官からも9月までにQEを終了させ利上げを行う議論が出てきました。

欧米と日本の金融政策の違いが浮き彫りになった週となりましたが、日本のインフレ指標も4月からは上昇することが予想され、今後も同様の事態となった際に緩和策を続けられるか疑問が残ります。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週のダウ、ナスダック、S&P500の主要米国株式指数は3週連続でプラスに推移しました。

先週はウクライナでの停戦交渉の進展を巡って一喜一憂しつつ、PCEデフレーターや雇用統計などの指標によって金融正常化のペースを探る展開となりました。

また原油は中国のロックダウンによる需要減や、米国が5月以降、半年に渡る戦略石油備蓄の放出を決定したために大幅に下落し、先週末に比べて14ドル安の99ドルとなりました。

 

〜逆イールドだからリセッションか〜

 先週の雇用統計では失業率が前回3.8%から3.6%と改善し、完全雇用状態が示されました。

これを受けてFRBがインフレ対策を躊躇なく行えるとして、5FOMCでの0.5%の利上げ観測が高まり短い金利が上昇してフラット化、2年最利回りと10年債利回りが逆転し逆イールドが発生しました。

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FRBはまだ利上げを開始したばかりですが、インフレ率が高すぎるために金融引き締めが急激になるとの観測から将来の景気後退が織り込まれ、短期金利は上昇、長期金利は低下しています。

 

下記は米国10年債利回りから2年債利回りを引いた金利差の過去からのチャートです。

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 金利差ゼロのピンクのラインを下に突っ込むと逆イールドを意味しますが、過去の発生時の2年以内に必ずリセッションとなっています。そして現在、「逆イールドが発生した」という事実がそのアノマリーに該当することから、リセッションが近いと考えられています。

 

 これまでの逆イールド発生時は利上げがかなりの段階まで進んだあと、「これ以上の利上げは許容できない」というシグナルとして起こっていました。しかし今回は3月にゼロ金利からの利上げを開始したばかりであり、強すぎるインフレからのスタグフレーションを懸念して起こっています。

つまりはまだ何も見えていない利上げの効果を悲観して起こっているのであり、それはこれからどうなるかまだわかりません。そこに大きな違いがあると考えます。

 

 株価は3/17の3月FOMC後に一旦底を打ったことから、既にFRBが強い姿勢で金融正常化に立ち向かうことは織り込まれています。4/1の雇用統計でも、良好な結果から改めてFRBの強い金融正常化を正当化されることなりましたが、株価はプラスで終えたことでそれが証明されています。

ここからは正常化の結果、一定の景気を維持しながらインフレ率を抑え込んでいけるかどうかが重要な指標となってきます。そしてその結果が出るのは半年先です。

その間、ISM製造業景況指数が直近5年の平均値である56程度、非製造業景況指数が57程度の水準を維持できるかどうかにも注目しながら、インフレ指標を見守る必要があります。

 

逆イールドの発生はシグナルとしては警戒すべきものだと思いますが、それは現時点での重要なインジケーターではありません。

 

ついては現時点では少なくとも半年先までのリセッションはないと想定し、次週も引き続き強気のポートフォリオを継続します。

 

以上