【4/4-4/8週の世界のリスクと経済指標】〜大胆な金融緩和から大胆な金融引き締めへ〜
先週の評点:
リスク -7点(26点): 大幅悪化 (基準点33点)
経済指標 +3点(42点):良化 (基準点39点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス7ポイントの大幅悪化でした。
ウクライナ巡っては、ロシア軍がキーウから撤退した市街地で多くの民間人の遺体が発見され、ロ軍が民間人の殺害も行っていた可能性が高まりました。そのため西側諸国はロシアへの非難を強め、G7はロシア産石炭の輸入を禁止し、石油の輸入も段階的に減少させることで制裁を加速する方針を示しました。
一方で国連総会にて、国連人権理事会でのロシアの理事国としての資格停止が可決されましたが、前回の非難決議と比較すると賛成に回る国が大幅に減り、反対・棄権・無投票の数が100ヶ国となり賛成国数を上回りました。
戦争が長引くにつれ、冷静さを取り戻した加盟国の中で徐々に一枚岩でない状況が見え始めました。
そして中国では上海市を中心に新型コロナが再拡大しています。中国当局が厳しい統制をかけているため企業活動が停滞しサプライチェーンにも影響が大きくなりそうです。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス3ポイントの量化でした。
ISM非製造業景況指数は予想には届かなかったものの前月より改善し、米国景気の底堅さを示しました。
一方で中国の3月財新サービス業PMIは大幅な悪化となり、当局の不動産やハイテク企業に対する統制で不安定だったところに新型コロナによるロックダウンの影響が重なって景気が大幅に悪化していることを示されました。
米FRBの3月FOMC議事要旨では0.5%の利上げのみならず、QTに関しても積極的に議論されていた事が判明しました。
またECB理事会の議事要旨でも早期のAPP停止及び7-9月期での利上げが議論されたことが示されました。ECBは14日理事会の結果が公表されますが、金融引き締めに関する強目の姿勢が確認される可能性があります。
豪準備銀行も政策金利は据え置きでしたが、金融引き締めに「忍耐強く」取り組むとしていた文言を削除し、ややタカ派に傾倒してきました。
従来ハト派スタンスを貫いてきた中銀が徐々に金融引き締めにスタンスを変えつつあります。
次週は米CPI、PPIの発表があります。CPIは予想では8.4%と先月からさらに0.5%上昇となっていますが、ウクライナ情勢悪化からのインフレ高進がどこまで影響するか注目しています。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
週初はテスラのイーロンマスクのTwitter株の9.2%の保有や、テスラの1Qの納車台数がこの時期の過去最高を記録したことでハイテク株を中心に大幅反発しました。しかし、4/5にFRBのブレイナード理事の5月でのQT開始のタカ派発言が伝えられ、また4/6には3月FOMCで950億ドルのQTが議論されたことが公表されると、10年債利回りが急上昇しハイテク株を中心に反落しました。
セクター別ではハイテク(情報技術、コミュニケーションサービス、一般消費財)、景気敏感セクター(資本財、素材、不動産)が下落した一方で、ヘルスケアや生活必需品、公益などのディフェンシブセクターやエネルギーセクターが伸び、セクターローテーションが行われた印象です。
〜大胆な金融緩和から大胆な金融引き締めへ〜
先週はFRBの金融政策が大きな転換期に差し掛かっていることが示されました。
従来のFRBの政策スタンスは、パウエル議長が3/21にコメントしていた「5月に0.5ポイント利上げの可能性」「QTを5月の次回会合にも打ち出す可能性があるが、まだ決定は下していない」とう内容がコンセンサスとなっていました。この時点ではQTの規模や開始時期は明確になっていませんでした。
しかし、4/5にハト派のブレイナード理事が5月にも早いペースでQTを進めることを示唆したことで、QTが予想以上に急速に押し進められることが意識されました。また翌日に発表された3月FOMCの議事要旨では、「5月会合終了後にも月額950億ドルのQT開始」と具体的な規模も議論されていたことが判明しました。
そして先週はQTがフォーカスされたことで、短い金利よりも長い金利が意識され10年債利回りが強く上昇し、イールドカーブは前週の強いフラットニングから一転して強くスティープニングしました。
今年の1月第1週にも、12月FOMC議事要旨で初めてQTに関して議論がなされたことが発表されてイールドカーブは一瞬だけ強くスティープニングしたことがありました。
https://minarai-tousan.hatenablog.com/entry/2022/01/09/215809
当時は「利上げとQTが併用されることで利上げのペースを緩める」ということが期待されFRBがまだインフレ率をコントロールしようと余裕があったように感じます。
しかし、今回の局面はその時とは違い、既にコントロールを失いかけたインフレ率に対して、利上げもQTも総動員し、なりふり構わず抑えにかからないといけないというFRBの強い焦りが感じられます。
FRBは2020年3月23日にコロナショックに対応して「何でもやる」という大胆な金融緩和策で市場を落ち着かせ、それが2年間マーケットを支えてきました。
今度はその政策を一気に逆回転し、「何でもやる」という大胆な金融引き締め策でインフレに対抗しようという姿勢が示されたと言えます。
そうなると株価にとって支援的であるとは言えません。
先週はQTによって直接的な影響を受ける10年債利回りは先週14.3%も上昇し2.7%となりました。
今後もFRBの強いタカ派転換で10年債利回りの上昇が予想され、特に金利感応度の高いハイテク株には重しになってくると思われます。
ついては長期投資ポートフォリオから、保有していた30%のナスダック100 ETFを全て売却しました。新ポートフォリオはMSCIコクサイ30%、国内債券25%、現金45%と再び弱気へと変更、様子を伺いたいと思います。
個人的には次週は米国の銀行株に注目したいと思います。
1Q決算の発表がありますし、イールドカーブのスティープニングへの転換で前週末に株価が反発していますので、今後も上昇が続くのか確認したいと思います。
以上