投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/2-5/6週の世界のリスクと経済指標】〜景気後退の兆し〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点): 悪化 (基準点30点) 

経済指標  -23点(72点):大幅悪化 (基準点96点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化でした。

ロシアのウクライナ侵攻は戦況が膠着しており大きな変化はありませんが、EUがロシア産原油を向こう6ヶ月で段階的に輸入禁止とする方針を示しました。ここ最近は中国の景気後退観測で原油価格が落ち着いていましたが、再び上昇基調に戻ってきました。

ロシアのウクライナ侵攻以降、原油価格は単純な需給ではなく政治的な措置に左右されることが大きくなっており、政治が経済に与える直接的な影響が大きくなってきています。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標は各指標の悪化が目立ち、マイナス23ポイントの大幅悪化となりました。

注目の米FOMCは予想通りの0.5%の利上げ、6月からのQT開始(当初は475億ドル→3ヶ月かけて950億ドルに拡大する見通し)となり、ほぼ市場の予想通りとなりました。一方で今後の引き締めペースに関してはパウエル議長が6月会合での0.75ポイントの利上げに否定的な姿勢を示し大幅利上げ観測が後退しました。

 

米雇用統計では平均時給の前年同月比が予想に一致の5.5%と引き続き強い賃金インフレが示されました。

またISM製造業景況指数、非製造業景況指数は共に前回値、予想に対して下振れとなりました。

 

豪準備銀行は予想よりも強い利上げ幅の0.35%とし、BOEも予想通り1.00%へ利上げとなりました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数も全体的に軟調となりました。

米株指数はFOMCでパウエル議長により0.75ポイントの利上げが否定されたことが好感され、一時ナスダックが4.99%など強く反発する場面がありました。しかし逆に0.75ポイントの利上げが否定されたことでFRBが高止まりするインフレに歯止めをかけられるか疑念が拡大し、結局は週後半にかけて反落して終えました。

これで米株は5週連続反落となりました。

一方で日経225は先週は小幅反発となり、底堅さを見せています。金融緩和の継続とそれに伴う円安のプラスの効果で好調な企業業績も目立ちます。

しかしさらに円安が進んだ際にはマイナスの効果も目立ってくることが考えられ、急に崩れることも考えられ注意が必要だと考えます。

 

 

〜景気後退の兆し〜

さて、先週はFOMCでの0.5ポイントの利上げ+QT開始で倍速の金融正常化が示されました。それと共に雇用の強さを維持しながら引き締めでインフレを抑えていく「ソフトランディング」が可能との見通しも示されました。しかし、世界的に景気後退の足音が聞こえ始めており、本当にソフトランディングできるのか私は懐疑的に考えています。

 

先週発表されたISM製造業景況指数、非製造業景況指数は景気の本格的な悪化を示す50以下にはなっていませんが、一時の勢いはなく共に下降を続けています。

 また、5/5に発表された1Q米非農業部門労働生産性が前期比7.5%減(前回6.6%、予想5.4%減)、1Q単位労働コストが11.6%増(前回0.9%、予想9.9%)と想定以上の人件費の増加が示されました。

4月雇用統計では平均時給の増加は前月比0.3%と小幅に改善しましたが、既に1Qに人件費だけでこれだけ増加していることを考えると、米国企業の利益を急速に圧迫していると考えられます。

 

 米国以外でも相次いで景気後退のシグナルが出ています。

 イギリスでは5/5にBOE政策金利が発表され予想通り1.00%へ利上げされましたが、同時にベイリー総裁はインフレリスクが上振れる認識を示しました。そして引き締めをさらに強める必要があるため23年4Qには1%近いマイナス成長となる見通しを示しました。

最近ではここまで明確に主要国中銀がリセッションへの警告を発したことは記憶になく、インフレ高進からの金融引き締めによるスタグフレーションが現実味を帯びてきたと感じました。

 

 ドイツでは3月小売売上高が予想0.5%減に対して5.4%減、3月鉱工業生産が前月比予想1.3%減に対して3.7%減となり、個人消費と企業生産の両方で急減速が示されました。

 

 中国の減速感も加速しています。

より民間企業の動向が反映されやすい財新PMIでは製造業が46、サービス業PMI36.2と新型コロナ発生直後の20202月以来の低さに低下しています。

各国の様々な事情がありながらも、世界的に景気後退の兆しが見え始めてきたと感じます。

既にナスダックは最高値から24%減、S&P500は14%減となっていますが、景気後退は織り込みはこれからと考えられ、インフレ率が適正なレンジである2〜3%程度に落ち着くまで株価にとっては厳しい状況が続くと考えます。

当分弱気スタンスを維持しながら日々買い場を考えて行きたいと思います。

 

次週は米国のCPIの発表があります。前回8.5%に対して予想8.1%と鈍化が見込まれていますが、順調に鈍化するとは思えません。他にも米国PPI、中国CPI、PPIもありますので注目していきたいと思います。

 

以上