投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/16-5/20週の世界のリスクと経済指標】〜WMT、TGT決算で見えたインフレの影響〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  -8点(52点):悪化 (基準点60点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

欧州情勢はフィンランドスウェーデンNATOへの正式加盟申請を行いました。主要国は概ね歓迎ムードの中、トルコは敵対するクルド人組織を支援しているとして難色を示しています。欧米からの何らかの譲歩を得るための駆け引きの可能性が高いですが、すんなりとは進まない可能性が出てきました。

また、ロシアもルーブルでの支払い拒否を理由にフィンランドに対して天然ガスの供給を停止する通告を行いました。NATOとロシアの対立関係は益々悪化する状況となっています。

 

また豪選挙で政権交代となり中国にタカ派だったモリソン首相が退任することとなりました。アルバジーニー次期首相は対中政策ではモリソン政権の路線を踏襲する方針を取っているものの不透明であり、クアッド、AUKUSなどの連携への影響が心配されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス8ポイントの悪化となりました。

米国の4月小売売上高は、予想に一致の0.9%と消費需要の底堅さを示しました。

一方でNY連銀製造業景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数は大幅な悪化を見せ、米国の景況感の一層の悪化を示しました。

 

また中国の4月小売売上高は11.1%減、鉱工業生産も前月5%増が2.9%減とゼロコロナ政策による消費活動及び生産活動の両面での強い落ち込みが示されました。

 

日本のCPIは携帯電話料金下げの影響が解消されたことで総合2.5%増、コア2.1%増となり、日銀が目標とする2%のインフレ率を達成しました。しかし、黒田日銀総裁は「安定的でない」としてYCCを中心とした緩和政策の継続を強調しました。

 

次週は欧米PMI、5月FOMC議事要旨、米4月PCEデフレーターの発表に注目です。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は米国のナスダックとS&P500が7週連続の下落となりました。

米国株はコロナ後の最高値からナスダックが29%安、S&P500が18%安、ダウ平均が15%安と安値を切り下げています。

一方で先週はロシア株が経済制裁の影響は受けながらも原油高が下支えし大きく反発しました。また中国株式は中国人民銀行が住宅ローンなどの中長期の政策金利を引き下げたことを好感し、強い反発を見せました。

 

 

〜WMT、TGT決算で見えたインフレの影響〜

さて、先週は米国の小売大手企業であるウォルマート(WMT)、ターゲット(TGT)1Q決算で市場予想に対して増収減益となり、今期の見通しも下方修正が示され、株価が急落しました。

いずれも消費者の需要はまだ高水準で推移するものの、燃料価格の高騰による輸送コストの上昇や人件費拡大などのインフレの影響により利益が圧迫されたことが示されました。
WMT、TGTの大手両社が同様の結果になったことで企業固有のミスではなく、またアマゾンでも同様の結果になっていることでECでも関係ない小売業全体の傾向として捉えられます。今回の決算で、急激なインフレが企業収益に確実に害を及ぼし始めていることが浮き彫りになりました。

 

 TGTはコロナ禍からの回復で家電や家具などの高額物品の売上が下がった一方、食品や生活必需品、外出関連の商品は好調だったとしています。そのため増収は確保しましたが、今後は特に食品などの生活必需品の高騰に注意する必要があると考えます。

 

下記は米国のCPIと食品物価の推移です。

CPIがやや減少を見せている中でも世界的な穀物価格の高騰を受けて食品価格は上昇し続けています。

 

次にPPIの推移です。

PPIも足元でやや11.2→11%と減少を見せている中、食品需要は16.3%を横ばいと高水準を維持しています。

PPIの数値は数ヶ月遅れて市場に反映されてくることを考えると、今後も高水準の食品価格の上昇が予想され、食品価格はまだ上昇する余地があると考えます。

またインドが小麦、インドネシアがパーム油の輸出禁止に踏み切っており、政治的な流動性の低下も影響してきます。

 

これらの影響が顕在化してくると企業の利益がさらに圧迫されますし、また生活必需品であるため値上げが消費者の生活を直撃し、可処分所得の減少により消費全体を冷やしていくと考えます。

先週の小売企業の決算発表で、益々スタグフレーションの可能性が高まってきたと感じます。

 

4月の小売売上高が示すように、現在はまだ消費は堅調に推移していますが、今後どのタイミングで低下してくるか、指標の動向に注目したいと思います。

 

ディフェンシブ銘柄として保有していた生活必需品株コカコーラは、先週6.82%減となりその期待が崩れました。また今後は価格高騰によりコカコーラすら飲むのを控える消費者が増えてくるフェーズになると考えられるため売却しました。売却分は再びMSCIコクサイを購入し、ポートフォリオは株式(MSCIコクサイ)30%、債券25%、現金45%としました。

 

以上