投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/23-5/27週の世界のリスクと経済指標】〜強い富裕層と弱い低所得者層〜

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  -15点(66点):大幅悪化 (基準点81点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはゼロポイントの中立となりました。

先週はインド太平洋地域での動きが中心となりました。

東京での日米首脳会談に続き、米国が主導するIPEF(インド太平洋経済枠組み)が発足しました。IPEFはTPPより多い13カ国により始動しましたが、注目の台湾は含まれませんでした。一方で日米首脳会談の場でバイデン大統領は台湾有事への軍事関与を明言し、ちぐはぐな印象も見せました。

 

その後日米豪印首脳によるクアッド会議が行われ、中国を念頭にした「現状変更への反対」や「海洋監視での協力」を行う共同声明を発表するも、中立外交を謳うインドに配慮し中露への名指しを避けた内容となりました。一方で中露は日本海東シナ海での爆撃機の共同飛行で応じ、北朝鮮ICBMを含む三発のミサイル発射し、専制主義陣営は軍事的な手段で反発をアピールしました。

 

また、中国の王毅外相は、安保協定を結んだソロモン諸島に続いて南太平洋地域での影響力を強めるために同地域の8カ国を外遊しています。西側諸国に歩調を合わせる形で専制主義陣営でもインド太平洋地域での動きが活発化しており、舞台を欧州から同地域に移して分断が進んでいる印象です。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

欧米のPMIは押し並べて低下し、高インフレによる景気悪化を示しました。基準となる50は下回っていませんが、英国サービス業など、50まであとわずかな指標も散見されるようになりました。

 

米国のPCEデフレーターは前回6.6%、予想6.2%に対して6.3%と予想を上回るも前月からは低下となりCPI同様低下を示しました。

また住宅着工件数も前月比16.6%減と大幅に減少し、利上げの効果が出始めていることが示されました。

 

5月FOMC議事要旨では既にコンセンサスとなっている6月、7月FOMCでの0.5ポイントの利上げで大部分の当局者が一致していたことが示されサプライズはありませんでした。

またECBのラガルド総裁は自身のブログで7月、9月の会合で0.25ポイントずつ利上げし9月にはマイナス金利が終了することを示唆しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数は米国株式が久しぶりに反発しました。

先週まで大幅な下げ相場が続いた中で一旦の反発を見せた形となりました。スナップの低調な決算で一時はハイテク株を中心に下げが拡大しましたが、百貨店メイシーズの好決算が前週のWMT、TGT決算からの景気後退懸念を打ち消し、相場を楽観させました。5月FOMC議事要旨も予想通りの内容となり、タカ派サプライズがなかったことも後押ししました。

 

 

〜強い富裕層と弱い低所得者層〜

さて、先週は百貨店ノードルストローム<JWM>とメイシーズ<M>の決算が発表され、前週のWMT、TGTの通期見通しの下方修正から一転して上方修正見通しを発表しました。

これにより、マーケットも小売全体の不調から米経済の予想以上の減速を懸念して悲観された前週から、やや楽観へと押し戻されたように感じます。

しかし、これらの決算から見えてくるのは余裕のある富裕層とインフレに苦しむ低所得者層の姿です。

JWM、Mなど百貨店の顧客は主に中流層以上であり、十分な収入を得ているため耐インフレ性が強く、強い購買意欲を維持しています。

 一方でWMT、TGTの顧客は単純労働を主とした低所得者層であり、生活必需品のインフレが生活苦へ直結する人々です。コロナ禍での失職状態から漸く仕事に復帰できたところで激しいインフレに直面しており、違った形で苦しさが継続して購買意欲が急速に削がれていると思われます。

 

今後の景気維持には、中流以上の富裕層がどこまで消費するかにかかってくると思います。

しかし、先週発表された貯蓄率は4.4%まで低下し、2008年ぶりの数値となっています。

これまでは高インフレ下でも豊富な貯蓄で消費をしていましたが、月を追うごとに貯蓄をすり減らしており、それも残りわずかとなっています。

いくら富裕層であっても無尽蔵に資金があるわけではなく、かつ自動車を毎月購入するわけでもなく限度があります。

既に低所得者層の購買意欲がインフレにより減退していると考えると、いずれ富裕層の消費も減退していくと考えられます。

 

ついては先週のJWM、Mの上昇修正見通しにはやや懐疑的であり、ファンダメンタルズに大きな変化のない現状では反発は一時的なものであり、底打ちしていないと考えます。

引き続き弱気のポートフォリオを継続します。

 

以上