投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【5/30-6/3週の世界のリスクと経済指標】〜破綻しているドットチャートの意味〜

先週の評点:

 

リスク   2点(32点):良化 (基準点30点) 

経済指標  -7点(101点):悪化 (基準点108点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス2ポイントの良化となりました。

中国がゼロコロナ政策で続けていた上海市でのロックダウンが6/1で解除されました。この2ヶ月間企業活動も含めて停止し、製造業のサプライチェーンへも影響していましたが、ようやく再開となりました。しかし、止まっていたものが急に動き出すことは難しく、ロックダウンの影響は当分残ることと思われます。

 

また、先週は中国の王毅首相が太平洋諸国8カ国を歴訪し、訪問先のフィジーで「中国・太平洋島国外相会合」を開催しました。経済振興などに向けた連携強化で一致しましたが、中国が提案していた安全保障分野の協力は参加国のうち1カ国が反対したため、合意内容に含まれませんでした。

最悪のケースは免れましたが、豪州のお膝元での中国の勢力拡大の野心と、意外にもそれを受け入れる太平洋諸国に驚きを隠せません。

中国は今後二国間での太平洋諸国との安保協定の合意を目指すと思われ、太平洋諸国を巡って豪州との対立が進む可能性が高いです。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス7ポイントの悪化となりました。

ドイツ、ユーロのCPIが共に予想を大きく上回る結果となり、欧州地域でも強いインフレが続いていることが示されました。

次週はECB政策金利の発表がありますが、既にラガルド総裁は7月に利上げの可能性を示唆しており、会見でのコメントに注目します。

 

また、米国ISM景況指数は、製造業は前月55.4から予想外に上昇し56.1となりました。新規受注が3ヶ月ぶりの高い伸びとなり、米国の需要が引き続き高い水準を保っていることが示されました。

一方で非製造業は前月57.1から55.9に低下しました。製造業での生産に相当する業況指数は2年振りの低水準に沈むものの、新規受注は上昇し、こちらも需要が保たれていることを示しました。

 

5月雇用統計はNFPは予想を上回り、平均時給と失業率はほぼ予想通りと、雇用の堅調さを示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価は、アジア株が堅調に推移する中、米株指数は反落しました。

前週に6%超の強い反発を見せ、一旦は底打ちしたかのように見えた米株指数でしたが、QTが開始され資金が収縮していることや、堅調な指標による利上げへの警戒感から、2週連続の反発とはなりませんでした。

一方で日経はQTの影響で米金利が急上昇し再び急激な円安が進んだことや、上海市のロックダウン解除に伴う中国株の上昇が好感されて大幅反発となりました。また欧州でも利上げ観測が高まる中、先進国で唯一緩和を継続していることも後押しました。

 

〜破綻しているドットチャートの意味〜

 注目の米雇用統計はADP雇用統計が下振れしたため低下を見せるかと思いましたが、予想外の堅調さを見せました。

またISM景況指数でも製造業は予想外の上振れ、また非製造業でも全体指数では低下しましたが、新規受注は上昇しており、米国の経済は堅調で需要自体はまだ落ちていないことが示されました。

そのため、6月FOMCではFRBは躊躇なく50bps利上げし、7月FOMCでの50bps利上げ、また9月FOMCでの利上げに関しても何らかの方針を示すことが予想されます。

 

また6月FOMCでは四半期ごとのドットチャートも示されるため、FRBが年内の金利水準をどのように考えているかが見えてきます。3月FOMCでは2022年は中間値として1.875%が示されていましたが、今回は中立金利として考えられる2.5%前後を超えてくるかどうかがポイントになるかと思います。

 

しかし、一方で7月にFF金利が1.75%に達しようとする中、たった3ヶ月前に示されたドットチャートは既に大きく破綻しています。FRBがインフレ率を制御できていない中では、それと同じ様に6月FOMCで示される予想が、今後の金融政策に対してどこまで信頼性があるのかわかりません。

現在市場の焦点となっているのは9月FOMCでの利上げ幅ですが、9月FOMC時点は3月から開始された利上げの効果を確認できる頃です。9月上旬に発表される8月のISM景況指数や雇用統計、CPIを確認できるタイミングであるため、何よりもそれらの指標が重要であり現時点での予想は余り意味をなさないと思います。

現時点でFRBタカ派なのかハト派なのかは関係なく、とにかく将来のインフレ率を下げなければならない状況だと思います。

従って6月FOMCでのドットチャートの重要性は従来よりも低いものだと思います。

 

QTも利上げも始まったばかりで、インフレ率も高止まりしている中ではまだまだ株式の調整は続くと考えます。何よりもインフレ指標が明確に改善し、FRBの制御下に戻ってくるまで強気にはなれません。

次週は米国の5月のCPIの発表があります。予想は前月に一致の8.3%となっていますが、徐々に利上げの効果を示されるのか注目します。

 

以上