投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/13-6/17週の世界のリスクと経済指標】〜FRBが認めた外的要因の重要性〜

先週の評点:

 

リスク   33点(36点):良化 (基準点33点) 

経済指標  -12点(77点):大幅悪化 (基準点89点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス3ポイントの良化でした。

世界的なインフレが続いていますが、政治面でもインフレ抑制のために動きが活発化しています。

バイデン大統領は原油増産を促すために7月にもサウジアラビアを訪問するとされ、またエクソンシェブロンなどの石油会社7社に対して書簡を送って高収益を批判し、原油増産への圧力をかけています。

またバイデン大統領と議会民主党は物価抑制のための新経済対策を協議していると伝えられました。

外国航路の海運運賃を引き下げる新法案にも署名し、下がり続ける支持率を引き上げるためなり振り構わずインフレ抑制に動いている印象です。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス12ポイントの大幅悪化でした。

先週は各国中銀の政策金利発表がありました。

 まず米FOMCですが、事前の予想では50bpsと考えられていましたが、直前にWSJにてリークされた通り75bpsの利上げを行い、FRBの強いタカ派姿勢が示されました。また、今後の金融政策の方向性を示すドットチャートでは22年内に3.375%(前回1.875%)までの利上げが示されました。

 

また日本同様マイナス金利で緩和政策をとり続けてきたスイス銀行が予想外に50bps利上げに踏み切り、BOEも予想通り25bpsの利上げしたため、世界的な引き締め強化が示されました。

 

一方で日銀は、考慮すべきは回復途上にある日本経済であり、下押し圧力となるような引き締め政策を行う時期ではないとして緩和政策の維持を示しました。世界的な金融引き締めで円安が進んでいますが、「為替相場をターゲットとして金融政策運営はしない」としYCCも変更なく進めていくことを示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は米国をはじめとしてスイス、英国などで予想外の金融引き締めが進んだことで、主要先進国株式は大幅反落となりました。

S&P500は高値から20%以上下落し、弱気相場入りしました。

また、米国債利回りはFOMC前に10年債が3.49%、2年債が3.45%まで上昇しながらフラット化が進み、一時逆イールドが発生しました。しかしFOMCで予想外の利上げが発表されたことにより景気後退が意識され、10年債利回りは3.25%まで低下し週を終えました。

 

 

FRBが認めた外的要因の重要性〜

さて、先週は注目の6月FOMCがありました。

事前の予想では5月に続き50bpsの利上げが予想されていましたが、前週のCPIの予想外の加速によりインフレ警戒を強めたFRBは一気に75bpsの利上げに踏み切りました。

また同時に発表されたFRBメンバーによるFF金利予測では3月には1.9%だった22年のFF金利3.4%と示されました。

この数値はFRBが景気を過熱も冷やしもしないと考える中立金利2.5%程度を大幅に上回る水準であり、明確に景気を冷やしにいくというメッセージであると受け止められます。

 

同時発表されたGDP成長率予測でも22年は4.0%→2.8%→1.7%と回を追うごとに大幅に切り下げられています。

この1.7%という数値は2000年からのGDP成長率の平均値である2%を大きく下回っており、FRBメンバーとしても急速な利上げによる緩やかな景気後退を見込んでいると言えます。

 

また、失業率予測でも過去2回の予測では22年は3.5%と過去最低レベルで推移するものと見られていましたが、今回の予測では3.7%と増加し、23年、24年でも右肩上がりに大幅に増加しています。

こちらも利上げによる労働市場の過熱抑制から失業率の押し上げを見込み始めています。インフレを抑えるためには逼迫する雇用を緩和する必要がありますが、個人的にはこの程度の悪化で済むのか懐疑的に捉えています。

 

 今回のFOMC後の会見で、パウエル議長は「一層明確になってきたのは、われわれにはコントロールできない多くの要因が、その成否を決める上で極めて大きな役割を果たすだろうということだ」と発言しています。ロシアのウクライナ侵攻に絡むエネルギーや穀物価格高騰や中国のロックダウンによる供給網の混乱などの外的要因が大きく、もはやFRBの金融政策では制御しきれないと認めています。

 

 つまりは利上げにより需要サイドを冷やしても効果は限定的かもしれず、地政学的な問題が解決しない限りは期待通りにインフレ抑制できないかもしれないということだと理解します。

 

地政学的な要因を解決するには政治が重要ですが、現在の要因となっているのはエネルギーを握るロシア、サプライチェーンを握る中国であり、それぞれ米国に敵対する国々です。そうである以上は外交で何とかなる話ではなく短期的な改善は見込めません。

外的要因が解決しないままでの急速な引き締めは、インフレが改善されないまま需要サイドを冷やし過ぎる可能性が高く、スタグフレーションに向かっていく可能性が極めて高いと感じます。

 

今回のFOMCでの内容と、S&P500が高値から20%下落して弱気相場入りしたことを受け、当面株式が上昇する局面は来ないと考え、長期投資資産の株式ポートフォリオをさらに減らしました。MSCIコクサイ20%、債券25%、現金55%とします。

 

以上