投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/27-7/1週の世界のリスクと経済指標】〜進む分断と高インフレの継続〜

先週の評点:

 

リスク   36点(33点):良化 (基準点33点) 

経済指標  -10点(68点):大幅悪化 (基準点78点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス3ポイントの良化としました。

先週はG7サミットに続きNATO首脳会議が行われ、欧州を中心に西側諸国の結束を強める動きとなりました。

NATO首脳会議では、これまでフィンランドスウェーデンNATO加盟を拒否していたトルコがテロ容疑者を引き渡す法的な枠組みを確立するなどの合意が成立したことで、一転容認しました。これにより北欧地域へのNATOの拡大が前進しました。

また、採択された「戦略概念」では、過去には「戦略的パートナーシップ」と称していたロシアを「最も重要で直接的な脅威」とし、中国に関しても「体制上の挑戦を突きつけている」として初めて明記し、中露との対抗姿勢を明確にしました。

加えて今回のNATO首脳会議には日本、韓国、豪州、NZのインド太平洋地域の主要国も招かれ、同地域の民主主義国との連携強化の姿勢も明確にしました。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス10ポイントの大幅悪化としました。

米国の消費者信頼感指数や個人消費支出などの消費系指数は軒並み悪化、ISM製造業景況指数も悪化と景気悪化が徐々に織り込まれてきました。

ドイツでは失業率も上昇を示し始めました。

ドイツCPIは政府の一時的な支援策によって低下を見せましたが、ユーロ圏、仏、スペインなどの他の国では軒並み上昇を示し、欧州でのインフレ加速が示されました。

 

次週はISM非製造業景況指数、6月FOMC議事要旨、雇用統計です。特に平均時給や失業率が利上げや景気後退を織り込んで変化するのか注目したいと思います。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は、米国を中心に景気を示す経済指標が軒並み低下を示したため、景気後退が意識されて再び大幅反落となりました。

特に先週はマイクロンテクノロジーが6-8月期の見通しが市場予想を下回ったことや、NVDAのグラフィックカードの需要減が伝えられたことで半導体関連株が大きく反落しました。これまで供給不足が伝えられた業界での減速が見えてきたことにより、景気後退の兆しが見えてきました。

債券利回りも景気後退を織り込んで前週からさらに大幅に低下し、10年債利回りも3%を割り込みました。

 

〜進む分断と高インフレの継続〜

さて、先週は先進7カ国によるG7サミットやNATO首脳会議がドイツで行われました。

G7にはインド、セネガルインドネシア南アフリカ、アルゼンチン、NATO首脳会議には日本、韓国、豪州、NZが招待され、西側諸国の結束と共に主要新興国を巻き込んだ中露への対決姿勢を明確にしました。

西側諸国としてはここで民主主義陣営としての結束を示し、中立の立場を示す国々に対してアピールすることでロシアへの経済制裁の効果を強める狙いがあったと思われます。

 

一方でこのG7サミット、NATO首脳会議前には中国が主宰するBRICSの首脳協議が行われ、また期間中にはロシアのプーチン大統領中央アジアの親ロシア国を歴訪し、カスピ海沿岸5カ国((露、カザフ、トルク、タジキ、イラン)の首脳会議に参加しています。

BRICS首脳会議では拡大会合も行われ、イラン、カンボジアインドネシア、マレーシアなども参加し、イランとアルゼンチンがBRICS加盟申請をしたと明らかになっています。

西側の民主主義国が結束を強める一方で、同様に中露を中心とした専制主義国も結束を強め、また仲間を増やすことで西側諸国の狙った効果を打ち消しています。

 ロシアのウクライナ侵攻に対して、世界が一丸となってロシアを非難し、制裁によって侵攻を早期終結させるかと思いましたが、中国がロシアに寄り添ったことによってそれは叶いませんでした。むしろその行為に対抗し経済制裁を強めたのは西側諸国だけで、以前から浮かび上がっていた西側諸国と専制主義国の分断が進んだだけでした。

 

グローバリズムの下、これまで西側諸国はロシアの安いエネルギーと中国の安い労働力に頼って低インフレの時代を過ごしてきました。しかし、ここまで対決姿勢を明確にした分断は、西側諸国が最早それらを当てにすることができないということを示しています。

 

 中露との協力関係を保つ国、または中立姿勢を貫く国は、今後もロシアの安いエネルギーと中国の安い労働力に頼り、高い経済成長を享受することができるかも知れません。しかし、少なくとも西側諸国がそれを享受できる時代は終わった可能性があります。そうなると西側諸国は自らと、一部の中立国の中で需要を満たしていかなければならず、高インフレと低成長が恒常化する可能性があります。

 

我が国日本でもプーチン大統領がサハリン2の権益を新事業体に移す大統領令に署名したため、ロシア側の出方次第ではLNGの10%の供給を失い、さらにインフレが進む可能性が出てきました。

また今後台湾を巡って中国との関係が悪化すれば、中国で製造した安い製品の供給にも影響が出てくることが考えられ、モノが安い時代は終わった可能性があります。

 

時代が大きく変わったかも知れないことをしっかりと認識し、それに耐えるような投資戦略を考え、それと共に自らの生活を守るために給与所得の向上を求めていきたいと思います。

 

以上