投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【7/11-7/15週の世界のリスクと経済指標】〜G20会議で支持されないG7の主張〜

先週の評点:

 

リスク   -9点(24点):大幅悪化 (基準点33点) 

経済指標  -10点(70点):大幅悪化 (基準点80点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス9ポイントの大幅悪化となりました。

前週の英ジョンソン首相の辞任発表に続き、イタリアのドラギ首相も主要与党である「五つ星運動」からの不信任を受け辞任を表明しました。マッタレッラ大統領は辞任を拒否し、議会で解決することとなりましたが、欧州各国の政権地盤が緩み始めており、西側諸国の結束に影響が出ることが心配されます。

またインドネシアG20財務相会合が行われましたが、ロシアへの対応を巡って意見が対立し、4月に続いて共同声明を出せない異例の状態となりました。西側諸国はロシアを批判しながら陣容拡大を強めましたが、新興国は資源や食料の高騰を強めることになる制裁に慎重となり、協調が進みませんでした。

 

またこれに先立ち、インフレからの政情不安に揺れるスリランカでは、ラジャパクサ大統領が国内逃亡し、政権が倒れる非常事態となりました。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス13ポイントの大幅悪化となりました。

注目の米6月CPIは予想8.8%(前月8.6%)に対して9.1%と加速を示しました。またPPIも同様に予想10.7%に対して11.3%と加速を示し、根強いインフレが示されました。

6月小売売上高は1.0%の増加となりましたが、CPIが前月比で1.3%の増加を示していることから、実質的には低下しているとも捉えられます。

またミシガン大学消費者信頼感指数は過去最低だった前月からは回復しましたが、5-10年先の期待インフレが前月3.1%から2.8%へと低下を示しました。

 

また中国の4-6月期GDPは、強いロックダウンの影響で0.4%と急減速が示されました。中国は22年通年の目標として5.5%成長を掲げていますが、達成が遠のいており、財政政策拡張の動きも浮上しています。

このタイミングでの中国の財政政策強化は中国の需要増を招き、さらに資源や食料の高騰を招きかねないため注意が必要です。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の主要株価指数は概ね軟調となりました。

米国の6月CPIが9.1%となったことを受けて、7月FOMCでの利上げ幅が100bpsとなる観測が強まりましたが、FRB高官が矢継ぎ早に75bps利上げを支持するを発言したため、株価は下げ幅を縮めました。

先週の株式の動きは7月FOMCの利上げ幅が75bpsは織り込み済みのため買い、100bpsは織り込んでいいないため売り、という図式で動いているような印象でした。

 

また先週はCPI発表を受けて10年債利回り低下、2年債利回り上昇となり逆イールドが加速しました。

逆イールド=景気後退とは限りませんが、限りなく近づいてきているような気がします。

 

 

G20会議で支持されないG7の主張〜

 さて、先週はG20財務相中央銀行総裁会議が開催されました。

対中露で新興国の取り込みを図る西側諸国に対して新興国が慎重になり足並みが揃わないという事態となりました。

そこには大義を振り翳しながらも、自国により苦痛を強いる様な、どこか傲慢さを感じさせる西側諸国のロジックに新興国が追従しきれない思いが表れている気がします。

 

今回のG20ではインフレや食料危機など、世界経済が直面する課題について話し合われました。日米欧のG7はロシアへの批判を強め、参加する新興国に対して制裁に参加するよう訴えましたが、更なるインフレや食糧危機を煽ることから、支持は得られませんでした。

 

現在の世界的なインフレの直接的な原因となったのはコロナ禍からの混乱とロシアのウクライナ侵攻による資源、食料高騰です。

しかし、インフレを招いたのは米国を始めとした西側諸国がコロナ禍で行った低金利政策と莫大な財政政策の結果であり、またウクライナ侵攻でのロシアに対する経済制裁の結果です。

 

もちろんロシアに対する経済制裁には侵略を防ぐという大義があります。しかし、体力のある先進国と違い新興国には余裕がありません。ロシアに対する経済制裁でインフレが加速すれば、それ自体で国民生活は枯渇し、さらには米国が行う利上げによる資金流出で通過安や債務増加を引き起こします。またインフレや流出防衛目的の利上げにより景気は後退し、いち早くスタグフレーションとなります。

先進国は苦しいならがもお金を払えば食料でもエネルギーでも買えますが、新興国はそもそもお金がないので買えません。

つまりはこれ以上インフレが進めば先進国と新興国の格差がより拡大することになります。

 

従って新興国が先進国に追従しないのは当然だと思います。追従したとしても利を得るのは先進国で、自国が受けるダメージの方が大きいからです。

しかも今回の会合前に従来からの弱い経済にインフレが重なったことにより、スリランカが政情不安となり、ラジャパクサ大統領が国外逃亡し政権が倒れるという事件が起こりました。

次は我が身だと身構えたことだと思います。

 

そいう言った意味では、金融、財政を司る会議として考えれば新興国の対応は妥当であったと思います。一方で先進国が「世界経済の運営を先進国、新興国で協力して考える」というG20財務相中央銀行総裁会議の趣旨から外れ、盲目的にロシア批判を繰り広げたことに違和感を感じました。

先進国としては、趣旨に立ち返り脆弱な新興国経済をどのように救済していくのか、金融・財政面から真剣に議論していた方が、対中露戦略上の陣容拡大には効果があったのではないかと考えます。

 

以上