投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/1-8/5週の世界のリスクと経済指標】〜リセッションと利下げ織り込みで漂う楽観〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(32点):小幅悪化 (基準点33点) 

経済指標  +8点(89点):大幅良化 (基準点81点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化としました。

先週行われたOPECプラス会合では9月からの増産幅が日量10万バレルと小幅に留まったことから原油価格の上昇が予想されました。しかしそれよりも米国内での原油在庫の積み上がりからガソリン需要の減少が示されたため、原油価格は下降を続けロシアのウクライナ侵攻以降で初めて90ドルを割る水準まで戻ってきました。足元のガソリン価格も4.192ドル/ガロンまで低下し、ガソリン価格の落ち着きを窺わせる状況となっています。

 

一方で、先週はペロシ米下院議長が訪台し蔡英文総統と会談、台湾の支援を訴えたことで中国側が猛反発し、台湾を巡る地政学リスクが一気に高まりました。中国は台湾を囲む海域で実弾を伴った軍事演習を開始し、日本のEEZ内へもミサイルが着弾するという事態になっています。

今回の訪台はペロシ氏の個人的な意図なのか米政府の意図なのかわかりませんが、中国への牽制のつもりが中国側を過剰に刺激し、米中両国のみならず日本を含むG7と中国の関係も悪化させています。

中間選挙に向けて功を急ぐ米バイデン政権の焦りなのかわかりませんが、アルカイダ指導者の暗殺も含め、米政権のやや軽率な行動が目立ってきた印象です。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス8ポイントの大幅良化となりました。

注目の米ISM景況指数及び雇用統計でしたが、予想外の底堅さを見せました。

ISM製造業景況指数は前月よりも低下したものの予想の52を上回る52.8と踏みとどまり、非製造業景況指数は前月、予想を上回る56.7と強い上昇を見せました。

 また雇用統計も前月からの減少が予想されたNFPは52.8万人増、失業率も3.6%から3.5%に低下とポジティブサプライズとなりました。

サービス業を中心とした米国経済の底堅さが示された形となりました。

 

一方で企業決算では小売業の不調が示されており、足元のガソリン価格や原油価格の落ち着きも含めて次週のCPIにどのように影響を与えるのか、注目したいと思います。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数はまちまちでしたが、景気後退懸念で米長期金利が低下していることや、思ったよりも悪くないハイテク株の決算を受けて、ナスダックが2.15%高と強く伸長しました。

 

 

〜リセッションと利下げ織り込みで漂う楽観〜

さて、先週は①FRB高官の相次ぐタカ派発言、②ISM景況指数、③雇用統計のイベントがありました。

下記は7FOMC後にあったFRB高官の発言内容をまとめたものです。

7月FOMCでの記者会見でパウエル議長が「ある時点で利上げ速度を緩める事が適切であるだろう」と発言したことで来年の利下げが期待されていますが、そのマーケットの勇み足的な観測に警告を送るかのようにタカ派発言が相次ぎました。

 

これに加えてISM製造業景況指数は前月の53.0よりも低下したものの予想の52.0を上回る52.8に踏みとどまり、非製造業景況指数は前月55.3、予想53.5を上回る56.7と強い上昇を見せました。

WALMARTやベストバイなどの小売の不調や、大量の在庫が倉庫や港湾に積み上がる情報が伝えられている中で、モノの消費には翳りが見えている印象です。一方で消費者の嗜好がサービスに移ったことでサービス業は好調を維持している状況が見えてきます。

 

また雇用統計ではNFPが前月と予想を大幅に上回り52.8万人増となりました。

中でもサービス業が40万人の伸びとなり強さを見せました。

米国では5月頃からハイテク企業を中心にテスラ、オラクル、ツイッターロビンフッドなどで有名企業でもレイオフの報道が多く流れ雇用減が心配されましたが、これらは恐らく高収入のホワイトカラーです。

一方でハイテク企業のレイオフを吸収してなお強い増加を見せていることから、層の厚いサービス事業現場での低収入のブルーカラーの雇用はまだ相当底堅いということが示されているのだと思います。

 

先週はこれらの出来事から再びFRBが積極的な正常化を進めることが懸念されました。

長期金利は再び上昇、為替もドル高で反応しました。特にドル円は一時130円台まで円高が進みましたが、週末には135円に戻して反応しています。

 

しかし株式はFRB高官のタカ派発言にも、ISM、雇用統計への反応は限定的で、ナスダックに至っては週を通して2.15%高となりました。

FOMC以降、リセッションと利下げが織り込まれたことにより、利上げ=下げというセオリーが崩れ、マーケットに異様な楽観的な雰囲気が漂っているように感じます。

最近の株式市場は、指標が良ければソフトランディング期待でポジティブ、悪くても金融引き締め緩和期待でポジティブとなっており違和感を感じます。

 

現実にはまだインフレのピークアウトすら見えていません。仮に次週のCPIでピークアウトを見せたとしてもFRBが目標とするインフレ率2%はまだ遠い先の話です。

マーケットはリセッション懸念から来年での利下げを織り込んでいますが、確実にインフレが落ち着くまで恐らく利下げはありません。

株式は足元では6月末以降反発しており違和感は続きますが、まだまだ買い場ではないと判断します。

 

以上