投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/15-8/19週の世界のリスクと経済指標】~FRBと市場の対話の不一致~

先週の評点:

 

リスク   -2点(31点):悪化 (基準点33点) 

経済指標  -12点(64点):大幅悪化 (基準点76点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化としました。

米国はガソリン価格などの価格が落ち着いてきたため、CPIは減速が示されましたが、英国の7月CPIは10.1%と10%を超える加速を見せています。また欧州の天然ガス価格が再び高騰しており、3月の高値を超えて250ドル近辺で推移ししています。全世界的にインフレありながらも欧州はエネルギー調達に苦労しているため、特にしつこいインフレが残りそうな印象です。

 

インド太平洋情勢では、ペロシ米下院議長に続き、米超党派議員団が訪台しました。また米国と台湾の貿易イニシアチブで交渉が開始されました。8月に入ってからの米国の台湾への関与のレベルが1段上がった印象があり、台湾支援が本格化してきました。

一方で中国は反発を強めており、台湾を巡った米中関係のさらなる悪化が懸念されます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス12ポイントの大幅悪化でした。

米国のNY連銀製造業景況指数は-31.3と大幅マイナス、7月住宅着工件数も-9.6%と大幅マイナス、中古住宅販売件数も-5.9%で6ヶ月連続減少と景気の強さを表す指標が大きく崩れました。

一方で8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数はプラス6.2、鉱工業生産は前月比0.6%増、小売売上高は横ばいと、まだ踏みとどまっている指標も示されました。

 

一方で欧州では英国の7月CPIが10.1%と加速を示し、またドイツの7月PPIも予想0.6%に対して5.3%と加速を示しました。これを受けて欧州各国の10年債利回りが再び急上昇しました。

ドイツは7月CPIでは減速を示しましたが、電気料金に対する再生可能エネルギー賦課金が廃止されたためであり、欧州でのインフレ圧力は衰えていないことが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~FRBと市場の対話の不一致~

 先週の株式指数は欧米株を中心に概ね軟調に推移しました。

 FRB高官による株式市場の楽観を諫めるような発言が目立ち、それによって長期金利が上昇したため、特に金利感応度の高いナスダックが2.62%と崩れました。

 

下記に最近のFRB高官の発言内容をまとめています。

ここに来て強いタカ派だったカンザスシティ連銀総裁がやや慎重さを見せていますが、それ以外のFRB高官は概ね「インフレ率はまだ高く、利上げの手を緩める段階ではない」というスタンスを見せています。

特に従来は緩やかなハト派であったバーキン総裁は19日に「リセッションと引き換えにしてもインフレを抑制する必要がある」とかなり強い姿勢を示しています。

 

次週はジャクソンホール会議がありますが、これまで同会議ではパウエル議長から節目となる大きな発言が出てきています。

一昨年は雇用最大化の追求のために一時的な2%を超えるインフレを容認する方針を示しました。昨年は年内のテーパリング開始を示唆しました。ここ数年、パウエル議長はジャクソンホールで重要な発言をしつつも、市場との対話をうまく乗り切っている印象です。昨年のテーパリング開始の示唆は、株価にマイナスの影響を及ぼす内容でしたが、事前に多くのFRB高官からタカ派発言が相次ぐ中で「テーパリング終了即利上げではない」とコメントし、無難に市場に受け入れさせました。

 

しかし、今回はそううまく行かないと考えています。

現在、市場は景気後退懸念を受けて23年早々の利下げ転換を織り込んでおり、「景気悪化が深刻になればFRBが景気刺激を優先してくれるはず」という当てのない楽観に包まれています。

しかし、バーキン総裁の「リセッションと引き換えにしてもインフレを抑制する必要がある」という発言は明らかに市場に対する牽制であり、市場とFRBとの対話がそもそも噛み合っていません。

 

そのため今回のジャクソンホールにおいて、パウエル議長はその不一致を修正しにかかるのではないかと考えています。

つまりは景気後退という痛みがあったとしても、2%の物価目標に向けて金融引き締めをやり通すという覚悟が示されるのではないかと思います。

そして市場とFRBの不一致が修正されるということは、株価も下方向に修正されるのではないかと考えています。

 

引き続き、弱気のポジションを保ちながらジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言に注目したいと思います。

 

以上