投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【10/10-10/14週の世界のリスクと経済指標】〜インフレ退治の第一段階の終わり〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(26点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  -6点(38点):大幅悪化 (基準点44点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化となりました。

前週末にロシアとクリミア半島を繋ぐクリミア大橋が爆破されましたが、それをウクライナ軍によるものと見たロシア軍はウクライナ各地でミサイルによる報復攻撃を行いました。一方で今回の攻撃でロシア軍はさらに保有ミサイルの数を減らし、3分の2を使い果たしたとの推測もあり、今後はより核兵器の使用を訴えてくる可能性が高まっています。

 

また先週は国連総会が行われ、ロシアのウクライナ4州の併合に対して非難決議が行われました。結果としては賛成143、棄権35、反対5となり採択されました。これまでの4回のウクライナ侵攻に対する決議では、賛成国が141→140→93と減少傾向にありましたが、今回の「併合」という行為に対しては抵抗感が勝る結果となり、かろうじて国際社会の秩序が保たれていることが証明されました。

 

一方でG20財務相中央銀行総裁会議が開催されましたが、今回も西側諸国のロシアに対する溝により議論が深まらず共同声明を出せずに終了となりました。米国を始めとする先進国の利上げラッシュによる新興国への影響に不安が高まっていますが、危機対応の国際的枠組みとしての機能低下が顕著となってきています。ケニア中銀総裁の「富裕国の利上げで途上国は資本市場から締め出される」との発言にある様に、欧米の「自国優先」と捉えられる金融政策への風当たりも強くなってきています。それにより新興国が中露などの権威主義体制へ傾倒していく可能性も高まっており、協調して新興国を支援する仕組みが必要だと感じます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス6ポイントの悪化としました。

注目の米9月CPIは総合指数が前回8.3%、予想8.2%に対して結果8.1%と下振れを示した一方、コア指数は予想6.3%、予想6.5%に対して結果6.6%と上振れました。

ここ最近の原油価格の下落により総合指数は一旦はピークアウトしてきた様相ですが、エネルギー以外の物価上昇は引き続き根強く残っていることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数ボラティリティが激しく動きながら、週足ではまちまちとなりました。

ダウは決算発表のあった銀行株が、減益となりながらも予想を上回ったため上昇し、その他のディフェンシブ株も堅調に推移したため前週に続いて続伸しました。

また上海総合指数は、米国の中国への半導体製造装置規制を受けて下落で始まるも中国人民銀行総裁の支援強化の発言を好感し上昇して週を終えました。

 

 

〜インフレ退治の第一段階の終わり〜

先週の注目は米9月CPIでしたが、米株は13日のCPIの発表後、ナスダックが一時3%安となるなど、朝方には大きく下落しながらも一転大幅高となりました。(ダウ2.83%高、S&P500 2.6%高、ナスダック2.23%高)。

 

下記は米国CPIの総合指数とコア指数の推移です。

 総合CPIは6月の9.1%を境に明らかにピークアウトしてきた様子が伺えます。

ロシアのウクライナ侵攻後に8.5%に急上昇し、その後一旦落ち着きを見せるものの再び上昇して6月にピークをつけ、現在は侵攻開始近辺のCPIの数値に戻ってきています。

これは原油価格の伸びと同じ動きで、原油価格も3月に急騰したあと一度落ち着き、再び6月に高値をつけピークアウトしています。

つまり原油価格の落ち着きにより、ウクライナ侵攻後のエネルギーによるインフレ圧力が剥落し、インフレ対策の第一段階が片付いたとも言えます。

ショートカバーやテクニカル的な節目であったこともありますが、株式市場がCPI後に一度下落したあと急反発したのは、この心理的な安心感があった可能性が高いと考えられます。

 

 一方でエネルギーと食品以外のコア指数は、総合指数と同じように3月に6.5%と一旦ピークをつけた後、一旦落ち着くも8月から再び上昇し9月は6.6%と高抜けています。

これを受けてCPI発表後には10年債利回りは一時4%を超えながら3.95%、2年債利回りは4.46%に上昇し、FedWatchの金利先物も11月FOMCでの75bps利上げ確率が上昇しました。

まだインフレの第二段階が残っており、債券市場と金利先物市場はそれにしっかりと反応を示した形です。

ここからはエネルギーの様に価格即効性の高いインフレではなく、実需に沿った遅効性のインフレ退治のフェーズに入ってきます。

 

基本的には債券市場や金利先物市場が示すように、当面はFRBの積極的な金融引き締めが継続すると考えますし、それに伴う景気後退のリスクも高く株価はまだ下落基調にあると考えます。

一方で、インフレの第一段階が片付いたことで、ターミナルレートのピークも見え始めてきた様に感じます。

ついては、今回の様に悪い指標であっても株価が上昇する可能性を考え、これまで長期投資ポートフォリオで20%としていた株式を30%とし、強かった弱気姿勢を少し緩めました。また、現在の長期金利の高い状況の中ではナスダックがアウトパフォームすることはないと考え、最新のポートフォリオはより分散の効いたMSCIコクサイ30%、国内債券60%、現金10%としています。

 

以上