【10/17-10/21週の世界のリスクと経済指標】〜混ざり始めたハト派〜
先週の評点:
リスク 1点(31点):小幅良化 (基準点30点)
経済指標 0点(51点):中立 (基準点51点)
【リスク】
先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化となりました。
英国ではトラス新政権の大規模減税政策により混乱が続いていましたが、まず17日にハント新財務相がほとんど全ての減税政策の撤回を発表し、続いて20日にはトラス首相自身が辞任を発表しました。これによりトラス政権の政策による英国経済混乱のリスクが解消しました。一方で10%を超える高いインフレ率やブレグジットによる経済的ダメージからの回復は何も解決しておらず、後任首相には引き続き難しい政権運営が待ち構えていると思われます。
変わって中国では中国共産党大会が行われ、習近平総書記の3期目続投が確定しました。習氏と距離のある李克強首相が、七人からなる最高指導部から退任し、新たに習氏に近い人物が登用される見込みであることからも習氏への権力集中が加速が示されました。また閉幕式中に胡錦濤前総書記が突然途中退席させられる場面があり、こちらも続投に反対した胡錦濤氏を排除したという観測もあり物議を醸しています。
「台湾独立反対」も党規約に盛り込むことが決定され、台湾を巡っても一歩踏み込んだ姿勢が示されました。
権力を手にした習氏が、念願の台湾併合に向けて動く舞台が揃ったと考えられ、警戒が必要です。
そういう意味ではこのタイミングでの岸田首相の豪アルバジーニー首相との首脳会談と、中国との衝突を警戒した安保宣言は一定の効果があったと思います。
【経済指標】
先週の経済指標はプラスマイナスゼロの中立となりました。
目立った重要指標はありませんでしたが、日本の9月CPIが前月に続き3%を超え、円安による円ベースでのエネルギー、食糧高が徐々に実感として現れてきた印象です。
次週はECB政策金利発表、米PCEコアデフレーター、日銀金融政策決定会合があります。
先週は21日に151円台後半まで円安が進行する中、日本政府の介入により146円台前半まで円が急進しました。黒田総裁もことあるごとに「緩和継続」と言い続けていることから、次週の政策金利発表にサプライズはないと思われます。一方で米政策金利の天井がうっすらと見え始めた中で、為替介入があった直後であり、これまでの様な円安基調が続くのかどうか注目されます。
【先週のマーケットの振り返りと考察】~混ざり始めたハト派~
先週の株価指数は欧米市場を中心に大きく反発しました。
ダウは4.89%高と3週連続のプラス、ナスダックは5.22%高、S&P500は4.74%高の2週振りのプラスとなりました。
先週の株高の理由をまとめると下記の通りです。
①英政府の減税政策の撤回発表やトラス首相の辞任発表による英国経済の混乱リスクの後退。
②MS以外の大手銀行やNFLXなどが堅調さを見せ思ったより悪くない米企業決算。
③WSJのニックの記事や複数の連銀総裁の発言による「12月FOMCでの利上げ幅の減速」観測。
特に③のWSJの記事は明らかにアドバルーン記事でしたが、10/21の米国時間の朝に「FRB利上げの行方、12月ペース減速が焦点に」という題名で発表され、それまでのFRB高官のタカ派スタンスを覆す内容となりました。
それに続いてSL連銀のブラード総裁が「適切な水準から先は”小幅な調整”で良い」、SF連銀のデーリー総裁も「利上げ幅の縮小を計画し始めるべきだ」と発言し、強いタカ派姿勢からの緩和を示し始めました。
10月に入ってからは連日の様にFRB高官がタカ派発言を繰り広げており、先週もカシュカリ総裁やハーカー連銀総裁がタカ派発言を行なっていたばかりでした。10/5にはデーリー総裁も「利上げペースの減速には高いハードル」「コアインフレ減速や雇用の落ち着きなしではシフトダウン困難」と指摘していました。またブラード総裁は元々タカ派の急先鋒として有名でした。
それだけに今回のWSJ記事の内容や両連銀総裁の発言はやや唐突な印象です。
とは言え、これまで口を揃えてタカ派姿勢を貫いていたFRBに、ややハト派姿勢が混ざってきたことは、株式市場にとっては歓迎すべき事実であると考えます。
11月FOMCで予想通りの75bpsの利上げとなれば政策金利は3.75%-4.00%となり、9月にドットチャートにて示された23年の4.625%が現状の天井だとすると、その影がうっすらと見え始めてきています。デフォルトとなりつつある75bpsの利上げ幅にそろそろ減速の議論が出てくるのも当然の流れかもしれません。
次週は米国企業決算発表が本格化し、25日(火)にGOOGL、MSFT、26日(水)にMETA、27日(水)にAMZN、AAPLと大型テック株も発表となります。先週末のWSJの記事とFRB高官の発言により、市場の注目が12月の利上げ幅に移り、既に11月FOMCでの75bps 上げが織り込まれています。そんな中、次週の決算発表も全体的にまずまずの結果となれば、短期的に株価は上昇しやすいと考えます。
そうなると10月13日の米9月CPI発表を転機に株価は底打ちした可能性が高いと考えられます。
一方でまだ高インフレの状況にあり不確実性が残っています。FRBのハト派転換もデータ次第であるため、しっかりと指標を確認しながら株式の割合を増やす時期を探っていきたいと思います。
以上