投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【11/14-11/18週の世界のリスクと経済指標】~FRBの冷水~

先週の評点:

 

リスク   6点(36点):大幅良化 (基準点30点) 

経済指標  0点(74点):中立 (基準点74点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス6ポイントの大幅良化でした。

先週はG20首脳会議が開催され、中国の習近平氏がコロナ後初めて実参加した事で積極的に西側諸国との会談が行われました。米国を始めとしてフランス、豪州、韓国などとの首脳会談を重ね、関係改善に努めた印象です。またそれに続いたAPEC会議では日本の岸田首相と3年ぶりの会談を行い、こちらも「安定的かつ建設的な関係構築への努力」で一致し、冷え込んでいた関係を再構築する動きとなりました。党大会を終えた余裕からか、習近平氏が西側諸国に対して一定の歩み寄りを見せたような、印象的な週でした。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラスマイナスゼロの中立となりました。 

先週は前週の米10月CPIに続いて米10月PPIも減速を示し、米国のインフレがピークアウトした可能性を示しました。

 一方で先週発表された英国10月CPIは前月10.1%から11.1%に、日本10月CPIは前月3.0%から3.7%に加速しました。前週に発表されたユーロ圏CPIでも10.0%から10.7%に加速しており、米国以外はまだ収束が見えません。日本は問題外として、ECBもBOEFRBよりも利上げペースが遅く、米国よりも金利が低いため、インフレ抑制的な中立金利まで至っていない可能性があります。今後はこの辺りも注目して見ていく必要があります。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~FRBの冷水~

 先週の株価指数は、中国当局が打ち出した不動産セクター救済策と、米中会談での緊張が和らぐ兆しからの楽観で香港ハンセン株が大きく伸びる一方、米国株式はやや軟調な動きとなりました。

 

 米国では先週多くのFRB高官が発言しましたが、全体的にはややタカ派な印象を残しました。前週に米10月CPIにて低下が示されたことから米国株は週間で大きく反発しましたが、続く15日のPPIも低下となり更に上昇しそうだったマーケットに冷水を浴びせた印象です。

下記はそれらの発言をまとめたものです。

 中でもSF連銀のデーリー総裁は「4.75%-5.25%」、SL連銀のブラード総裁は「最低でも5%-5.25%」とターミナルレートに関して具体的にやや高目の発言をしました。ブラード総裁に至っては「5%-7% になる可能性」があるとして、かなりタカ派な見解も示しました。それが功を奏し、市場が予想するターミナルレートも前週末には5%以下に下がっていたものが5%超に戻り、株価も加熱することなく調整しました。

 

 一方でブラード総裁が示した「7%」は、個人的には現実的でないと考えます。現在の米国経済は既に住宅価格や労働指標の低下、大手企業の解雇報道など、景気抑制への変化を見せ始めています。7%に達するには、そんな状況下で更に3%近く引き締めすることとなり、明らかに行き過ぎであると捉えられます。

 FRBが政策決定する上で依拠とするのはデータあり、足元のデータが表しているのは、失業率が上昇し、CPIに続き、PPIも低下しているという事実です。それらを見る限り、「米国のインフレはピークアウトしている」と言える状況であり、現時点では再び利上げを加速する可能性は少ないと考えます。

 先週、マーケットが必要以上に過敏に反応しなかったのも、この辺りの安心感があってのことかと思います。

 

従って、引き続きポートフォリオは株式60:債券40の強気を維持します。次週は欧米PMIや11月FOMC議事要旨の発表があります。FOMC議事要旨ではターミナルレート引き上げ論の詳細が発表されますが、既に先週織り込まれているため、全体的にあまり方向感なく推移するのではないかと思います。

 

以上