投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【12/5-12/9週の世界のリスクと経済指標】~堅調なサービス需要と減少する財需要〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  -6点(53点):悪化 (基準点59点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

先週は中国の習近平氏がサウジを7年ぶりに訪問しサルマン国王、ムハンマド皇太子と会談、そしてエネルギーや通信技術を含む戦略的包括協定を締結しました。バイデン大統領自ら訪問し訴えた原油増産の依頼を無視した対応とは対照的な歓迎ぶりで、サウジの米国離れを印象付けました。一方で最近のサウジの対応により米国は中東離れをより加速することになると思われ、中東への西側諸国の影響力が減少することが予想されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス6ポイントの悪化となりました。

米ISM非製造業景況指数は前回値、予想共に上振れしサービス業の粘り強さを示しました。

また11月PPI指数も先月の6.8%より低下したものの、予想の5.9%よりも上振れた6.2%となり、こちらも米経済の粘り強さを見せました。

 

一方でカナダ銀行は0.5%の利上げを行なったものこれ以上の利上げ停止を示唆し、ブラジル中央銀行は利上げの停止を発表しました。米国の周辺国では徐々に利上げ停止の方向へと政策転換が示され始めました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~堅調なサービス需要と減少する財需要~

 先週の株価指数は、中国株が前週から続くゼロコロナ政策の緩和により伸長しましたが、欧米株式は概ね軟調に推移しました。

 

先週の動きで考えられる要因は下記の通りです。

①前週末の雇用統計での予想の上振れで示された米国の粘り強い雇用への懸念

②ISM非製造業景況指数が前月、予想を共に上振れ

③11月PPIが予想を上振れ

これらの堅調な指標が「良いニュースは悪いニュース」と認識され株価は下落しました。

 

これらから示されたのはサービス業の堅調さです。

①は前週にも論じた様に、米国はブルーカラーを中心にはまだ粘り強い雇用を保っており、それには7割を占めるサービス業従事者が強く影響していると想像できます。

また、③の11月PPIでは財に対する需要は前月比0.1%となる一方、サービスに対する需要は0.4%と強さを維持しています。

それらの堅調さが景況感としてISMにも現れたと考えられます。

 

一方で先週発表された11月の中国の輸出額は前年比8.7%減となり、中国から米西海岸への貨物運賃は前月比21%減となっています。中国のゼロコロナ政策による減産の影響もありますが、米国の財供給の中心地である中国からの輸出が減少していることは、米国の財への需要減少を顕著に表しています。またそれは前週のISM製造業景況指数で50を下回った事でも示されています。

つまりは、雇用の大部分を占めるサービス業の景気は維持されながらも、財の需要減少によってゆっくりとインフレが収まっていくソフトランディングのシナリオが考えられます。

 

足元では財の景気減速とサービスの堅調さが織り交ざり難しい判断を迫られる中、マーケットは引き締めの長期継続を意識して悲観的に捉えています。

しかし、パウエル議長が11/30の講演で示したように、FRB内では「ソフトランディング達成可能」ということや「引き締め過ぎリスク」も意識され始めていると考えられます。13日の11月CPI次第のところもありますが、12月FOMCでは現在の市場の織り込みのターミナルレート5%に対してやや軟化が示される可能性も高いと考えます。

 

ついては引き続き株式60%:国内債券40%の強気のポートフォリオでF12月FOMCを迎えたいと思います。

 

以上