投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年1/9-1/13週の世界のリスクと経済指標】〜インフレ鈍化と景気後退の狭間〜

先週の評点:

 

リスク   +5点(35点):良化 (基準点30点) 

経済指標  +9点(42点):大幅良化 (基準点33点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス5ポイントの良化でした。

米国の12月CPIは前月7.1%から鈍化し6.5%となりました。6月の9.1%をピークに反転し、これまで順調に値を切り下げており、順調に利上げの効果が出ていることが示されました。欧州でもピークアウトの傾向が出ており、世界的な利上げによるインフレ鈍化の傾向が顕著になってきました。

 

 政治面では、先週は日本の岸田首相が欧米主要国を外遊し、各国首脳と会談を行いました。今年のG7の議長国という立場と、中国、ロシア、北朝鮮の強力な専制主義国に囲まれていることもあり、主にインド太平洋地域での安全保障に関する協力体制の強化に主眼が置かれました。周辺国の軍事力の拡大に合わせて、反撃力の獲得と軍事費をGDPの2%に増加させる策を閣議決定したばかりであり、それらへの支持を得る意味でも有意義な外遊だったと考えます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス9ポイントの大幅良化となりました。

注目の米国の12月CPIは予想に一致だったものの、前月の7.1%に対して6.5%と順調に鈍化していることが示されました。

またミシガン大学消費者マインド指数では1年先のインフレ期待が前月4.4%だったものが4.0%と大きく低下し、消費者の間でもインフレ鈍化が期待されていることが示されました。

 

次週は日銀金融政策決定会合があります。

先週は日本の10年債利回りが0.5%を超えたため、日銀は2日間で10兆円の国債購入を行わざるを得ない状況になりました。現在日銀は毎月9兆円ペースの国債購入を指針としていますが、会合を控えてそのペースを超える状況となっています。前回会合で0.5%に引き上げたことで投機筋に勢いがつき、金利操作に限界がきている印象です。さらに上限を引き上げれば実体経済への打撃が大きく、また現状維持としても投機筋の売り圧力はさらに激しくなり、混乱が予想されます。試される状況となってしまった中で日銀がどのような政策を取るのか注目します。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は主要指数は全て反発となりました。欧米株式は米国のインフレ鈍化によるFRBの引き締め姿勢の緩和が期待されハイテク株式を中心に反発しました。また中国株式やアジア株は中国のゼロコロナ政策の緩和からの景気回復期待で上昇しました。

一方で日経平均は前週末比で4.19円(-3.17%)進み127円台となった円高が重しとなり小幅反発に止まりました。

 

〜インフレ鈍化と景気後退の狭間〜

 先週は前週末の雇用統計からの楽観的な雰囲気を受け継ぎながら12日のCPIが予想に一致だったものの順調に鈍化を示したことで楽観が継続しました。

また22年4Q決算のトップバッターとして発表された大手銀行の決算も、金利上昇による純金利収入の増加により予想を上回る好決算を出したため、こちらも好感されて週を終えました。

 

しかし、今後もこのまま株価が順調に伸びていくかというと、まだ慎重にならざるを得ないと考えます。

理由は下記の2点です。

①CPIの低下は支援材料になるものの、現在市場が織り込んでいる年内利下げまではFRBが姿勢を変更していない。

②景気後退により企業業績が悪化する可能性が高い。

 

 先週も複数のFRB高官が発言し、概ねCPIの鈍化傾向を歓迎し、次回FOMCでの利上げ幅は25bpsに減速させることが適切とのコメントも見られました。その一方で、金利を長期に渡って引き上げ、水準は高止まりする可能性にも言及されました。あくまでもFRBインフレターゲットは2%であり、そこに達する見込みが明確になるまではピボットが行われない姿勢は変わっていません。今後の展開としては、当面先週の様に雇用統計やCPIの鈍化で株価は上昇するも、FOMCでのタカ派継続で上抜けを抑えられることが予想されます。

 

また、先週の大手銀行の4Q決算では、コンセンサスを上回ったため株価は上昇しましたが、前年比で見ると総じて減益となりました。加えてJPM、バンカメのCEOの23年の見通しは保守的で「景気後退」への懸念が示されました。

FactsetによるS&P50012ヶ月後のEPS予想も229ドルと高値圏で推移しており、今後発表される決算での23年見通しでこの水準を維持できるかというと判断が難しいところです。

これまで販売好調だったテスラも世界的に一斉値下げに走り、また私の実業でも北米市場が急速に冷えているため、製造業の顧客が北米向けの設備投資を渋り始めています。利上げの影響で、予想以上に景気が急速に冷えている可能性も高まっていると感じます。

ついては足元では次週から本格化する米国企業の4Q決算、特にレイオフが激しいハイテク株の決算に注目したいと思います。

 

現在はインフレ鈍化によるポジティブと景気後退のネガティブの狭間にありながら、そこにFRBのややタカ派な姿勢が加わって、少なくともまだ楽観的にはなれない状況だと思います。

上記を受けてポートフォリオとしてはMSCIコクサイ20%、現金80%の弱気のポジションを維持します。

 

以上