投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年3/20-3/24週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  -2点(88点):小幅悪化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

先週は日本、中国の両首脳が外交で活躍しました。

まず、中国の習近平主席がロシアでプーチン大統領と首脳会談を行い、ロシアのウクライナ侵攻に対して対話での解決を求め、両国の仲裁役を買って出るかのような行動を示しました。サウジアラビアとイランの外交正常化を仲介したことに続き、ロシアとウクライナでもその存在感を高めようという意図が見えます。

 

 一方で、日本の岸田首相も存在感を示しました。まず中露に対抗するために重要な「グローバルサウス」の代表格であるインドに訪問しました。モディ首相と会談しFOIPを推進と共にインド太平洋地域の国々への経済支援を表明しました。また習近平主席が訪露する最中に、その足でウクライナへ電撃訪問しました。習氏のウクライナ訪問も噂される中で、同氏の訪露と同じタイミングで初訪問は、西側諸国の存在感を示すメッセージとなり、強烈なインパクトを残した印象です。

 

 先週はサウジとシリアも今度はロシアの仲介で外交正常化へ向かうとの報道も行われ、ここ最近、第二極である中露陣営の他国への影響力の拡大が目立ってきました。これはバイデン政権の失策によるものが大きいですが、最早米国一国では全世界的な衝突に太刀打ちできない現れだと考えられます。そんな中で、今回の岸田首相のウクライナ訪問は、中国と同じ東アジアの大国が、米国を補完して世界の紛争にも積極的に関わっていくことを示したという意味で評価したいと思います。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス2ポイントの小幅悪化となりました。

先週は足元の銀行不安が広がる中でのFOMCでのFRBの金融政策の変化が注目されましたが、予想通り25bpsの利上げとなりました。またドットチャートでは23年末金利5.125%と前回の水準をほぼ維持した形となり、極力刺激を抑えながらもしっかりと利上げを行う無難な対応となりました。

 一方で米国PMIではサービス業は前月に続き50を超える53.9と好調を維持、製造業も前月47.3に対して49.3と回復を見せ、景気の堅調さが示されました。足元での銀行不安より、次回FOMCの5月までにこの辺りの景況感がどこまで低下するか注目されます。

 

また、英国では2月CPIが10.4%と再加速を見せる中、BOEは25bpsの利上げと利上げ幅を縮小しました。米国での銀行不安が欧州にも飛び火する中でもインフレ率は高止まりを続けており、米国に比べてより難しい政策運営となりそうです。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね堅調を維持しました。

先週の株式反発の考えられる要因は下記の通りです。

 

・前週末に発生したクレディスイス銀行に対する銀行不安がUBSによる買収で収束。

・予想通りの25bpsの利上げとドットチャートに変化がなかったことでFOMCを無難に通過。

・銀行不安による信用供与の低下での景気後退を織り込み金利が大幅低下し、引き続き大型ハイテク株への資金の逃避が続く。

 

 先週も前週にSVB破綻から発生した世界的な銀行不安を引き摺りながらスタートしました。しかし、クレディスイスの株価急落に対してはスイス政府当局が機敏に介入に動き、同じくスイスのG-SIBsであるUBSによる買収を成立させました。AT1債の無価値化などの議論は発生したものの、最悪のケースは免れました。また、イエレン財務長官が再度事態が悪化した場合のすべての銀行預金の保護を示唆したことで、一連の銀行不安が一旦緩和を見せた状態でFOMCを迎えました。

 

 FOMCでは予想通り25bpsの利上げが表明され、注目のドットチャートでは24年末の中間値が4.125%から4.25%に上昇したのみで、ほぼ変化が示されませんでした。3月上旬のパウエル議長の議会証言ではドットチャートの上昇が予想されていましたが、足元の銀行不安に配慮された形となりました。また「家計と企業に信用状況の引き締まりをもたらす可能性が高く、そうなれば経済にも影響が広がる」と信用供与の縮小による引き締めの相乗効果にも言及されました。このFOMCでの示唆からも、今後本格的に景気後退のフェーズに入ってきたと考えられ、マーケットもそれを受けて現水準で利上げは打ち止め、年末までに1%の利下げを織り込んでいます。

 

 この利下げ期待の動きを受けて金利が下がってきたことにより、先週もキャッシュフローが潤沢な大型ハイテク株を中心に株価が反発しました。NFLXは8.2%高、TSLAは5.71%高、NVDAは4.1%高、GOOGLは3.76%高と勢いが落ちません。

 債券市場は景気後退を織り込んで利回りの低下が顕著ですが、一方で株式市場はさらにその先の利下げを織り込み堅調を維持しています。しかし、この2週間でGOOGL、NVDAは16%高、MSFTは12%高と大型株がここまで堅調なのも、やや利下げを織り込み過ぎだと違和感を感じます。

 

 今回のFOMCにて利上げ打ち止め観測が見えれば、見通しを変更することも想定していましたが、ドットチャートではもう1回の利上げを示されたままとなりました。またPMIでも回復が示され、本格的な景気後退が指標に見えて来ないことから、もう少し弱気のポートフォリオで様子を見ることとしたいと思います。

 しかし、今回の銀行不安により、確実に景気後退が近づいたと考えられ、インフレ率の低下も時間の問題だと思われます。見通しを強気に転換する日が近付いてきていると考えます。これから発表される指標をじっくりと確認し、その反転の時期を探っていきたいと思います。

 次週はPCEデフレーターが発表されます。まずは前月の上昇が一時的なものであって、再び低下を示すのか注目したいと思います。

 

以上