投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年5/22-5/26週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   1点(31点):小幅良化 (基準点30点) 

経済指標  -11点(64点):大幅悪化 (基準点75点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化となりました。

前週末にはG7サミットがあり、ウクライナのゼレンスキー大統領の登場で、稀に見る印象に残るサミットとなりました。G7サミットに招待参加していたインドのモディ首相は、その足でパプアに向かい、太平洋島嶼国の首脳会合に参加しました。接近する中国や西側諸国に対するグローバルサウスの代表者として影響力の拡大を狙ったものと思われます。現職のインド首相がパプアを訪問するのは初めてであり、徐々にインド太平洋でもインドの影響力が増してきています。一方でQUADの枠組みを持つ日米豪にとっては、インドが中立的な動きで囲い込みを行うことは対中抑止としては有効な動きであると感じます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス11ポイントの大幅悪化となりました。

欧州PMIは全体的に悪化が目立ち、高止まりするインフレにより利上げを継続せざるを得ない状況の中で、徐々に景気が悪化していることが示されました。またドイツの製造業PMIの落ち込みが酷く、こちらは中国の景気回復の鈍化具合も示していると思われます。中国は回復の遅れが目立ってきており、こちらも注目が必要です。

 

米国PMIは依然サービス業が好調を維持し、その表れとして根強いサービス需要によりPCEコアデフレーターは前月、予想4.6%に対して4.7%と加速を示しました。

 

次週は米国のJOLTS、ISM製造業景況指数、雇用統計があります。最近の指標を見る限りは、雇用は高止まりを続けあまり変化がないような気がしますが、注目しています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数はダウ平均が1%安、S&P500が0.32%の小幅高となった一方で、ナスダックは2.51%の大幅反発となりました。欧米株式指数も反落となり、ナスダック一強の様相となりました。また日経平均は7週連続の上昇となりました。

 

先週の株式市場の動きの要因は下記の通りです。

・債務上限を巡る問題が進展せず、タイムリミットが近づく中で相場全体は重い状態。

・債務上限問題の影響の少ないキャッシュリッチなGAFAMにマネーが集中。また、NVDAの好決算および好調な見通しによりAI関連銘柄が大きく伸長。

 

 先週も米国の債務上限を巡る問題は進展しませんでした。26日には合意に近づいていることを仄めかす発言が共和党陣営からありましたが、混乱が予想される重い空気が続く中、バリュー株的なダウ平均は反落しました。

 

 一方で米国債がデフォルトになっても影響の少ないと思われる、キャッシュリッチで大型ハイテク株には引き続きマネーが流入しました。銀行不安問題のでも同様の動きとなりましたが、今回もマネーの逃避先として大型ハイテク株が注目されています。恐らく先の銀行不安問題から預金保険以上の預金は不安、国債もデフォルトリスクで不安として、本来安全資産である預金、国債の信用がなくなっているのだと思います。ここ最近の金利の上昇は利上げ期待だけではないと思います。その結果、キャッシュリッチで、かつ新たなテーマであるAIも絡んで将来的な価値上昇の望めるであろう大型ハイテク株に消去法でマネーが集まってきていたのだと思います。

 

 それは同じく日本株にも言えるのではないかと考えます。日本は唯一金融緩和を続けており、企業が利上げで苦しむこともなく、かつ円安の影響で円ベースの業績は好調を維持しています。またかつての逃避先だった中国は、米中対立や当局の企業統制強化によりリスクが高い状況です。そのため、消去法で日本は一時逃避先としては安全です。大型で流動性の高い日経平均だけにマネーが集まり、小型で流動性の低いマザーズには一切マネーが入ってきていないのがその証拠です。

 

 このアウトプットを書いている最中に、米国債務上限問題にホワイトハウス共和党が暫定合意したとの報道がありました。米国マーケットは月曜日が休場なので火曜日まで米市場の反応を待つ必要がありますが、ここ最近逃避先となっていたナスダック、日経平均の上昇は落ち着く可能性もあると考えます。債務上限に関わる懸念がなくなり、ノーリスク資産で高い金利のつく米国債にマネーが還流することで、今後、一旦は相場の歪さが修正されるのではと想像します。

 

 偶発的リスクとして大きなノイズであった債務上限問題が解決されたのは大きな前進です。PCEデフレーターがやや加速を示しインフレのグズグズ感は残りますが、ゆっくりとインフレ率が低下しながら米景気は堅調に推移する可能性もあります。ついてはポートフォリオの株式の割合を10%増やし、MSCIコクサイ40%、金(ヘッジあり)5%、外国債券15%(ヘッジあり)、現金40%の中立に変更します。上述のようにナスダックや日本株は、逃避先としての役割が薄まる可能性があるためそれらを選択せず、これまで低迷していたバリュー株を含むMSCIコクサイの増加を選択します。

 

以上