投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/13-6/17週の世界のリスクと経済指標】〜FRBが認めた外的要因の重要性〜

先週の評点:

 

リスク   33点(36点):良化 (基準点33点) 

経済指標  -12点(77点):大幅悪化 (基準点89点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス3ポイントの良化でした。

世界的なインフレが続いていますが、政治面でもインフレ抑制のために動きが活発化しています。

バイデン大統領は原油増産を促すために7月にもサウジアラビアを訪問するとされ、またエクソンシェブロンなどの石油会社7社に対して書簡を送って高収益を批判し、原油増産への圧力をかけています。

またバイデン大統領と議会民主党は物価抑制のための新経済対策を協議していると伝えられました。

外国航路の海運運賃を引き下げる新法案にも署名し、下がり続ける支持率を引き上げるためなり振り構わずインフレ抑制に動いている印象です。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス12ポイントの大幅悪化でした。

先週は各国中銀の政策金利発表がありました。

 まず米FOMCですが、事前の予想では50bpsと考えられていましたが、直前にWSJにてリークされた通り75bpsの利上げを行い、FRBの強いタカ派姿勢が示されました。また、今後の金融政策の方向性を示すドットチャートでは22年内に3.375%(前回1.875%)までの利上げが示されました。

 

また日本同様マイナス金利で緩和政策をとり続けてきたスイス銀行が予想外に50bps利上げに踏み切り、BOEも予想通り25bpsの利上げしたため、世界的な引き締め強化が示されました。

 

一方で日銀は、考慮すべきは回復途上にある日本経済であり、下押し圧力となるような引き締め政策を行う時期ではないとして緩和政策の維持を示しました。世界的な金融引き締めで円安が進んでいますが、「為替相場をターゲットとして金融政策運営はしない」としYCCも変更なく進めていくことを示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は米国をはじめとしてスイス、英国などで予想外の金融引き締めが進んだことで、主要先進国株式は大幅反落となりました。

S&P500は高値から20%以上下落し、弱気相場入りしました。

また、米国債利回りはFOMC前に10年債が3.49%、2年債が3.45%まで上昇しながらフラット化が進み、一時逆イールドが発生しました。しかしFOMCで予想外の利上げが発表されたことにより景気後退が意識され、10年債利回りは3.25%まで低下し週を終えました。

 

 

FRBが認めた外的要因の重要性〜

さて、先週は注目の6月FOMCがありました。

事前の予想では5月に続き50bpsの利上げが予想されていましたが、前週のCPIの予想外の加速によりインフレ警戒を強めたFRBは一気に75bpsの利上げに踏み切りました。

また同時に発表されたFRBメンバーによるFF金利予測では3月には1.9%だった22年のFF金利3.4%と示されました。

この数値はFRBが景気を過熱も冷やしもしないと考える中立金利2.5%程度を大幅に上回る水準であり、明確に景気を冷やしにいくというメッセージであると受け止められます。

 

同時発表されたGDP成長率予測でも22年は4.0%→2.8%→1.7%と回を追うごとに大幅に切り下げられています。

この1.7%という数値は2000年からのGDP成長率の平均値である2%を大きく下回っており、FRBメンバーとしても急速な利上げによる緩やかな景気後退を見込んでいると言えます。

 

また、失業率予測でも過去2回の予測では22年は3.5%と過去最低レベルで推移するものと見られていましたが、今回の予測では3.7%と増加し、23年、24年でも右肩上がりに大幅に増加しています。

こちらも利上げによる労働市場の過熱抑制から失業率の押し上げを見込み始めています。インフレを抑えるためには逼迫する雇用を緩和する必要がありますが、個人的にはこの程度の悪化で済むのか懐疑的に捉えています。

 

 今回のFOMC後の会見で、パウエル議長は「一層明確になってきたのは、われわれにはコントロールできない多くの要因が、その成否を決める上で極めて大きな役割を果たすだろうということだ」と発言しています。ロシアのウクライナ侵攻に絡むエネルギーや穀物価格高騰や中国のロックダウンによる供給網の混乱などの外的要因が大きく、もはやFRBの金融政策では制御しきれないと認めています。

 

 つまりは利上げにより需要サイドを冷やしても効果は限定的かもしれず、地政学的な問題が解決しない限りは期待通りにインフレ抑制できないかもしれないということだと理解します。

 

地政学的な要因を解決するには政治が重要ですが、現在の要因となっているのはエネルギーを握るロシア、サプライチェーンを握る中国であり、それぞれ米国に敵対する国々です。そうである以上は外交で何とかなる話ではなく短期的な改善は見込めません。

外的要因が解決しないままでの急速な引き締めは、インフレが改善されないまま需要サイドを冷やし過ぎる可能性が高く、スタグフレーションに向かっていく可能性が極めて高いと感じます。

 

今回のFOMCでの内容と、S&P500が高値から20%下落して弱気相場入りしたことを受け、当面株式が上昇する局面は来ないと考え、長期投資資産の株式ポートフォリオをさらに減らしました。MSCIコクサイ20%、債券25%、現金55%とします。

 

以上



 

【6/6-6/10週の世界のリスクと経済指標】〜ECBの舵取りの難しさ〜

先週の評点:

 

リスク   3点(33点):良化 (基準点30点) 

経済指標  -5点(46点):悪化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス3ポイントの良化でした。

新型コロナは弱毒化により各国で緩和が進み、日本は外国人観光客の受け入れ開始、米国は外国からの入国者への陰性証明の提出義務を撤廃しました。また中国でも主要都市のロックダウンが緩和となり、新型コロナからの脱却が鮮明となってきました。

 

一方で民主主義国と専制主義国の対立軸の中心は、インド太平洋地域へと戻ってきました。

先週シンガポールで行われたシャングリラ会合では台湾を巡り米中国防相が非難の欧州となりました。

また米国防長官は台湾有事に備えて米軍の能力拡大を表明しました。日米首脳会談でのバイデン大統領の台湾防衛への関与明言に続き、米国の台湾への積極姿勢がより明確になりました。

これに対して中国は太平洋諸国への関与を強めており、日本から豪州へ連なる防衛線の分断を図っています。すぐに衝突につながるとは考えられませんが、出方を見ながら、少しずつ互いの領域に足を踏み入れている印象です。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス5ポイントの悪化となりました。

注目の米国の5月CPIは前月、予想共に8.3%に対して8.6%とインフレの加速を示しました。FRBは3月から利上げを行っていますが、未だインフレ抑制の効果が見えてきません。

また、ミシガン大学消費者態度指数は予想58に対して50.2と統計開始以来で最低の数値となり、インフレ懸念で消費者の景況感が急速に悪化していることが示されました。

 

また先週は豪準備銀行とECBの政策金利発表がありました。

豪準備銀行は25bpsの利上げ予想に対して50bpsとタカ派な方針を示し、インフレに対して適切な措置をとると表明しました。

ECBも政策金利はゼロ金利を据え置きとしましたが、7月には25bpsの利上げを実施すると表明し、9月には50bpsの利上げも有り得ると示唆しました。

これで日本以外の主要国中銀が利上げを行う方針となりました。

 

次週は6/15に6月FOMC、6/16にBOE政策金利発表、6/17に日銀金融政策決定会合があります。

FOMCBOEは今後の金融政策見通しが注目されます。日銀も他国が引き締め傾向を強め、円安も急進する中、従来の姿勢を崩すことになるのかどうか注目します。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価はアジア株は先週に続き堅調ながら、米国株式は国債利回りの上昇に振られて大幅反落となりました。

6/9にECBが7月、9月での利上げを示したために世界的な引き締めが意識され、米国債利回りも連動して上昇しました。加えて6/10の5月CPIが8.6%とインフレの加速を示したため、FRBが金融引き締めを強めるとの観測で短期国債利回りを中心に大きく上昇しました。

足元のFedWatchの金利予測でも9月FOMCでの75bpsの利上げ、年内金利3.00%が予想されるなど、利上げ加速観測の高まりと共に株価は大きく調整しました。

S&P500は3900.86となり5月19日の終値ベースでの年初来安値3900.79にあとわずかとなりました。

 

一方で中国株式は、主要都市でのロックダウンの緩和に加えて中国当局のハイテク企業への統制が緩和されるとの動きから2週連続で反発しました。

日経も主要国で唯一緩和を継続していることに加え、円安により割安度が増しているため欧米株式に比べて堅調に推移しました。

 

次週はFOMCを迎え、ドットチャートを含めた今後の金融政策の見通しに注目が集まります。

 

 

〜ECBの舵取りの難しさ〜

さて、先週は2016年3月からゼロ金利政策を継続してきたECBが、7月に25bpsの利上げを実施すると表明し、11年ぶりに利上げに踏み切る姿勢を示しました。また、9月には50bpsの利上げも有り得ると示唆しました。

背景には2021年5月に2%に達したHICPが足元で8.1%までオーバーシュートしていることがあります。

 

ECBは、加盟国である19カ国を包括した中央銀行として政策金利の決定やAPPやPEPPなどの債券購入プログラムなどの金融政策を駆使し、ユーロ圏における物価の安定と雇用の創出を図ってきました。

 一方で、それぞれの加盟国の財政政策は各国政府に任されており、またそれぞれの経済力はまちまちで格差を内包しているため、適切な金融政策を打ちづらいとされています。

 

一般的にはドイツ、オランダなどの中欧諸国は経済力が強く、イタリア、スペイン、ギリシャなどの南欧諸国は経済力が弱いとされています。

下記は6/11時点のユーロ圏各国の10年債利回りを低い順から並べたものです。(インターネットで情報入手できたのは19カ国中14カ国)

ECBの7月利上げ表明により各国の10年債利回りは上昇しましたが、経済力=信用力の低い国の債券は売られやすいため、中欧、北欧諸国の利回りに比べて南欧諸国の利回りは高くなっています。

現時点ではまだECBの政策金利はどの国も同様に-0.5%のマイナス金利となっているにも関わらず、これだけの差がついています。

 

 そして今後インフレ対策としてECBが利上げを急ぐと、より南欧諸国の利回り上昇を招き、元々経済力の弱いこれらの国々は資金繰りが悪くなり経済がますます弱っていきます。

一方で比較的経済の安定しているドイツ、オランダは直近CPIが7.8%、8.9%と高水準となっていながら、イタリアは6.9%とHICPより低水準となっています。(ギリシャは、経済が弱すぎるのでCPIも高く11.3%)

インフレ高進で利上げを急ぎたいドイツ、オランダに対して、インフレはまだ耐えれて利上げが困るイタリアの構図が考えられ、ECBは両方に配慮をしなければならなくなります。

つまりはインフレ抑制のために利上げを急いで南欧経済が破綻するか、南欧経済を守るために利上げを弱めインフレ加速を招くか、ECBは今後難しい選択を迫られることになります。

 

個人的にはECBの使命である「ユーロ圏の物価の安定」という原点に立ち返り、まずはインフレ抑制を強めると考えます。そうなると南欧諸国の経済が弱まることとなるため、そこをきっかけに欧州経済が綻び、景気後退する可能性が高いと思います。

今後は欧州経済の動向にもより注意を払う必要があります。

 

以上

【5/30-6/3週の世界のリスクと経済指標】〜破綻しているドットチャートの意味〜

先週の評点:

 

リスク   2点(32点):良化 (基準点30点) 

経済指標  -7点(101点):悪化 (基準点108点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス2ポイントの良化となりました。

中国がゼロコロナ政策で続けていた上海市でのロックダウンが6/1で解除されました。この2ヶ月間企業活動も含めて停止し、製造業のサプライチェーンへも影響していましたが、ようやく再開となりました。しかし、止まっていたものが急に動き出すことは難しく、ロックダウンの影響は当分残ることと思われます。

 

また、先週は中国の王毅首相が太平洋諸国8カ国を歴訪し、訪問先のフィジーで「中国・太平洋島国外相会合」を開催しました。経済振興などに向けた連携強化で一致しましたが、中国が提案していた安全保障分野の協力は参加国のうち1カ国が反対したため、合意内容に含まれませんでした。

最悪のケースは免れましたが、豪州のお膝元での中国の勢力拡大の野心と、意外にもそれを受け入れる太平洋諸国に驚きを隠せません。

中国は今後二国間での太平洋諸国との安保協定の合意を目指すと思われ、太平洋諸国を巡って豪州との対立が進む可能性が高いです。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス7ポイントの悪化となりました。

ドイツ、ユーロのCPIが共に予想を大きく上回る結果となり、欧州地域でも強いインフレが続いていることが示されました。

次週はECB政策金利の発表がありますが、既にラガルド総裁は7月に利上げの可能性を示唆しており、会見でのコメントに注目します。

 

また、米国ISM景況指数は、製造業は前月55.4から予想外に上昇し56.1となりました。新規受注が3ヶ月ぶりの高い伸びとなり、米国の需要が引き続き高い水準を保っていることが示されました。

一方で非製造業は前月57.1から55.9に低下しました。製造業での生産に相当する業況指数は2年振りの低水準に沈むものの、新規受注は上昇し、こちらも需要が保たれていることを示しました。

 

5月雇用統計はNFPは予想を上回り、平均時給と失業率はほぼ予想通りと、雇用の堅調さを示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価は、アジア株が堅調に推移する中、米株指数は反落しました。

前週に6%超の強い反発を見せ、一旦は底打ちしたかのように見えた米株指数でしたが、QTが開始され資金が収縮していることや、堅調な指標による利上げへの警戒感から、2週連続の反発とはなりませんでした。

一方で日経はQTの影響で米金利が急上昇し再び急激な円安が進んだことや、上海市のロックダウン解除に伴う中国株の上昇が好感されて大幅反発となりました。また欧州でも利上げ観測が高まる中、先進国で唯一緩和を継続していることも後押しました。

 

〜破綻しているドットチャートの意味〜

 注目の米雇用統計はADP雇用統計が下振れしたため低下を見せるかと思いましたが、予想外の堅調さを見せました。

またISM景況指数でも製造業は予想外の上振れ、また非製造業でも全体指数では低下しましたが、新規受注は上昇しており、米国の経済は堅調で需要自体はまだ落ちていないことが示されました。

そのため、6月FOMCではFRBは躊躇なく50bps利上げし、7月FOMCでの50bps利上げ、また9月FOMCでの利上げに関しても何らかの方針を示すことが予想されます。

 

また6月FOMCでは四半期ごとのドットチャートも示されるため、FRBが年内の金利水準をどのように考えているかが見えてきます。3月FOMCでは2022年は中間値として1.875%が示されていましたが、今回は中立金利として考えられる2.5%前後を超えてくるかどうかがポイントになるかと思います。

 

しかし、一方で7月にFF金利が1.75%に達しようとする中、たった3ヶ月前に示されたドットチャートは既に大きく破綻しています。FRBがインフレ率を制御できていない中では、それと同じ様に6月FOMCで示される予想が、今後の金融政策に対してどこまで信頼性があるのかわかりません。

現在市場の焦点となっているのは9月FOMCでの利上げ幅ですが、9月FOMC時点は3月から開始された利上げの効果を確認できる頃です。9月上旬に発表される8月のISM景況指数や雇用統計、CPIを確認できるタイミングであるため、何よりもそれらの指標が重要であり現時点での予想は余り意味をなさないと思います。

現時点でFRBタカ派なのかハト派なのかは関係なく、とにかく将来のインフレ率を下げなければならない状況だと思います。

従って6月FOMCでのドットチャートの重要性は従来よりも低いものだと思います。

 

QTも利上げも始まったばかりで、インフレ率も高止まりしている中ではまだまだ株式の調整は続くと考えます。何よりもインフレ指標が明確に改善し、FRBの制御下に戻ってくるまで強気にはなれません。

次週は米国の5月のCPIの発表があります。予想は前月に一致の8.3%となっていますが、徐々に利上げの効果を示されるのか注目します。

 

以上

【5/23-5/27週の世界のリスクと経済指標】〜強い富裕層と弱い低所得者層〜

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  -15点(66点):大幅悪化 (基準点81点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはゼロポイントの中立となりました。

先週はインド太平洋地域での動きが中心となりました。

東京での日米首脳会談に続き、米国が主導するIPEF(インド太平洋経済枠組み)が発足しました。IPEFはTPPより多い13カ国により始動しましたが、注目の台湾は含まれませんでした。一方で日米首脳会談の場でバイデン大統領は台湾有事への軍事関与を明言し、ちぐはぐな印象も見せました。

 

その後日米豪印首脳によるクアッド会議が行われ、中国を念頭にした「現状変更への反対」や「海洋監視での協力」を行う共同声明を発表するも、中立外交を謳うインドに配慮し中露への名指しを避けた内容となりました。一方で中露は日本海東シナ海での爆撃機の共同飛行で応じ、北朝鮮ICBMを含む三発のミサイル発射し、専制主義陣営は軍事的な手段で反発をアピールしました。

 

また、中国の王毅外相は、安保協定を結んだソロモン諸島に続いて南太平洋地域での影響力を強めるために同地域の8カ国を外遊しています。西側諸国に歩調を合わせる形で専制主義陣営でもインド太平洋地域での動きが活発化しており、舞台を欧州から同地域に移して分断が進んでいる印象です。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

欧米のPMIは押し並べて低下し、高インフレによる景気悪化を示しました。基準となる50は下回っていませんが、英国サービス業など、50まであとわずかな指標も散見されるようになりました。

 

米国のPCEデフレーターは前回6.6%、予想6.2%に対して6.3%と予想を上回るも前月からは低下となりCPI同様低下を示しました。

また住宅着工件数も前月比16.6%減と大幅に減少し、利上げの効果が出始めていることが示されました。

 

5月FOMC議事要旨では既にコンセンサスとなっている6月、7月FOMCでの0.5ポイントの利上げで大部分の当局者が一致していたことが示されサプライズはありませんでした。

またECBのラガルド総裁は自身のブログで7月、9月の会合で0.25ポイントずつ利上げし9月にはマイナス金利が終了することを示唆しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数は米国株式が久しぶりに反発しました。

先週まで大幅な下げ相場が続いた中で一旦の反発を見せた形となりました。スナップの低調な決算で一時はハイテク株を中心に下げが拡大しましたが、百貨店メイシーズの好決算が前週のWMT、TGT決算からの景気後退懸念を打ち消し、相場を楽観させました。5月FOMC議事要旨も予想通りの内容となり、タカ派サプライズがなかったことも後押ししました。

 

 

〜強い富裕層と弱い低所得者層〜

さて、先週は百貨店ノードルストローム<JWM>とメイシーズ<M>の決算が発表され、前週のWMT、TGTの通期見通しの下方修正から一転して上方修正見通しを発表しました。

これにより、マーケットも小売全体の不調から米経済の予想以上の減速を懸念して悲観された前週から、やや楽観へと押し戻されたように感じます。

しかし、これらの決算から見えてくるのは余裕のある富裕層とインフレに苦しむ低所得者層の姿です。

JWM、Mなど百貨店の顧客は主に中流層以上であり、十分な収入を得ているため耐インフレ性が強く、強い購買意欲を維持しています。

 一方でWMT、TGTの顧客は単純労働を主とした低所得者層であり、生活必需品のインフレが生活苦へ直結する人々です。コロナ禍での失職状態から漸く仕事に復帰できたところで激しいインフレに直面しており、違った形で苦しさが継続して購買意欲が急速に削がれていると思われます。

 

今後の景気維持には、中流以上の富裕層がどこまで消費するかにかかってくると思います。

しかし、先週発表された貯蓄率は4.4%まで低下し、2008年ぶりの数値となっています。

これまでは高インフレ下でも豊富な貯蓄で消費をしていましたが、月を追うごとに貯蓄をすり減らしており、それも残りわずかとなっています。

いくら富裕層であっても無尽蔵に資金があるわけではなく、かつ自動車を毎月購入するわけでもなく限度があります。

既に低所得者層の購買意欲がインフレにより減退していると考えると、いずれ富裕層の消費も減退していくと考えられます。

 

ついては先週のJWM、Mの上昇修正見通しにはやや懐疑的であり、ファンダメンタルズに大きな変化のない現状では反発は一時的なものであり、底打ちしていないと考えます。

引き続き弱気のポートフォリオを継続します。

 

以上

【5/16-5/20週の世界のリスクと経済指標】〜WMT、TGT決算で見えたインフレの影響〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  -8点(52点):悪化 (基準点60点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

欧州情勢はフィンランドスウェーデンNATOへの正式加盟申請を行いました。主要国は概ね歓迎ムードの中、トルコは敵対するクルド人組織を支援しているとして難色を示しています。欧米からの何らかの譲歩を得るための駆け引きの可能性が高いですが、すんなりとは進まない可能性が出てきました。

また、ロシアもルーブルでの支払い拒否を理由にフィンランドに対して天然ガスの供給を停止する通告を行いました。NATOとロシアの対立関係は益々悪化する状況となっています。

 

また豪選挙で政権交代となり中国にタカ派だったモリソン首相が退任することとなりました。アルバジーニー次期首相は対中政策ではモリソン政権の路線を踏襲する方針を取っているものの不透明であり、クアッド、AUKUSなどの連携への影響が心配されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス8ポイントの悪化となりました。

米国の4月小売売上高は、予想に一致の0.9%と消費需要の底堅さを示しました。

一方でNY連銀製造業景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数は大幅な悪化を見せ、米国の景況感の一層の悪化を示しました。

 

また中国の4月小売売上高は11.1%減、鉱工業生産も前月5%増が2.9%減とゼロコロナ政策による消費活動及び生産活動の両面での強い落ち込みが示されました。

 

日本のCPIは携帯電話料金下げの影響が解消されたことで総合2.5%増、コア2.1%増となり、日銀が目標とする2%のインフレ率を達成しました。しかし、黒田日銀総裁は「安定的でない」としてYCCを中心とした緩和政策の継続を強調しました。

 

次週は欧米PMI、5月FOMC議事要旨、米4月PCEデフレーターの発表に注目です。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は米国のナスダックとS&P500が7週連続の下落となりました。

米国株はコロナ後の最高値からナスダックが29%安、S&P500が18%安、ダウ平均が15%安と安値を切り下げています。

一方で先週はロシア株が経済制裁の影響は受けながらも原油高が下支えし大きく反発しました。また中国株式は中国人民銀行が住宅ローンなどの中長期の政策金利を引き下げたことを好感し、強い反発を見せました。

 

 

〜WMT、TGT決算で見えたインフレの影響〜

さて、先週は米国の小売大手企業であるウォルマート(WMT)、ターゲット(TGT)1Q決算で市場予想に対して増収減益となり、今期の見通しも下方修正が示され、株価が急落しました。

いずれも消費者の需要はまだ高水準で推移するものの、燃料価格の高騰による輸送コストの上昇や人件費拡大などのインフレの影響により利益が圧迫されたことが示されました。
WMT、TGTの大手両社が同様の結果になったことで企業固有のミスではなく、またアマゾンでも同様の結果になっていることでECでも関係ない小売業全体の傾向として捉えられます。今回の決算で、急激なインフレが企業収益に確実に害を及ぼし始めていることが浮き彫りになりました。

 

 TGTはコロナ禍からの回復で家電や家具などの高額物品の売上が下がった一方、食品や生活必需品、外出関連の商品は好調だったとしています。そのため増収は確保しましたが、今後は特に食品などの生活必需品の高騰に注意する必要があると考えます。

 

下記は米国のCPIと食品物価の推移です。

CPIがやや減少を見せている中でも世界的な穀物価格の高騰を受けて食品価格は上昇し続けています。

 

次にPPIの推移です。

PPIも足元でやや11.2→11%と減少を見せている中、食品需要は16.3%を横ばいと高水準を維持しています。

PPIの数値は数ヶ月遅れて市場に反映されてくることを考えると、今後も高水準の食品価格の上昇が予想され、食品価格はまだ上昇する余地があると考えます。

またインドが小麦、インドネシアがパーム油の輸出禁止に踏み切っており、政治的な流動性の低下も影響してきます。

 

これらの影響が顕在化してくると企業の利益がさらに圧迫されますし、また生活必需品であるため値上げが消費者の生活を直撃し、可処分所得の減少により消費全体を冷やしていくと考えます。

先週の小売企業の決算発表で、益々スタグフレーションの可能性が高まってきたと感じます。

 

4月の小売売上高が示すように、現在はまだ消費は堅調に推移していますが、今後どのタイミングで低下してくるか、指標の動向に注目したいと思います。

 

ディフェンシブ銘柄として保有していた生活必需品株コカコーラは、先週6.82%減となりその期待が崩れました。また今後は価格高騰によりコカコーラすら飲むのを控える消費者が増えてくるフェーズになると考えられるため売却しました。売却分は再びMSCIコクサイを購入し、ポートフォリオは株式(MSCIコクサイ)30%、債券25%、現金45%としました。

 

以上

【5/9-5/13週の世界のリスクと経済指標】〜欧州の指導力復活の予感〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点): 悪化 (基準点30点) 

経済指標  -8点(48点):大幅悪化 (基準点56点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

欧州情勢ではロシアのウクライナ侵攻を受けて、これまで中立を保っていたフィンランド首脳が揃ってNATO加盟申請を表明しました。また同じ中立国であるスウェーデンも加盟申請する見込みであり、ロシアが恐れていたNATOの拡大が自らの行いが原因で現実的となってきました。ロシアの反発は必死であり、今後どのような反応があるのか注意が必要です。

 

また中国のゼロコロナ政策が収束しません。上海市での新規感染者数は減少傾向にありますが、厳格なロックダウンが継続されています。北京でもロックダウンの噂が流れており、今後さらに経済活動への影響が懸念されます。先日のFOMCでも中国のロックダウンによる供給制約が高インフレに影響を及ぼすことを懸念されています。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス8ポイントの大幅悪化となりました。

注目の米国4月CPIは総合指数が前月8.5%からは低下しましたが、予想の8.1%を上回る8.3%となり、ややピークアウトの様相は見せながらもインフレが落ち着き始めるという予想が裏切られる形となりました。

また米国4月PPIも同様に前月を下回るも予想は上回る結果となり、こちらもCPI同様の結果となりました。

 

 ドイツ、ユーロのZEW景況感指数も前回数値よりは改善しましたが、引き続き大幅なマイナスを示し、欧州の景気悪化の状況を示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週は米国株式が6週連続の反落となりました。

週明けから多くのFRB高官から「6月、7月FOMCでの0.5ポイント利上げ」への支持と共にインフレ抑制のために「痛みを伴う」ことが示されました。そのためFRBがよりタカ派に傾倒していることが意識され株価に重しとなりました。

また4月CPIが事前予想ほど落ち着かなかったことから、FRBタカ派傾倒が正当化され、それによる景気後退が意識されたことにより株価は大幅に反落しました。

リスクオフから債券への逃避が行われたため、10年債利回りも前週の3.12%から一時2.84%まで低下しながら2.93%で週を終えました。それに連れて為替も大きく動き、ドル円は131円台から127円台までボラティリティの高い週となりました。

 

前日にナスダック100が12000、S&P500が4000、ダウ平均が32000と揃って節目割れて割高感が薄れたことと、パウエル議長が0.75ポイントの利上げ改めて否定したことで5/13には大幅に反発して週を終えました。
しかし、FRBが、多少の痛みがあろうがインフレを抑えるためになりふり構わず行動する姿勢を見せている以上は、今後より引き締めを強める可能性があります。まずは複数月に渡って明確にインフレが落ち着くのが確認されることが重要だと考えます。

従って引き続き次週も弱気ポートフォリオを継続します。

 

 

〜欧州の指導力復活の予感〜

さて、先週はEUのミシェル大統領とフォンデアライエン委員長、フィンランドのマリン首相が訪日し、岸田首相と首脳会談を行いました。

ここ最近、欧州が中心となった積極的な民主主義陣営の連携強化への動きが急速に活発化している印象です。

特に日本への傾倒、またインドへの傾倒が目立ってきている印象です。

 

以下は日本とインドに対するここ最近の欧州各国の首脳会談の動きです。

まず対日本として、強い印象を残したのは独ショルツ首相の訪日でした。

メルケル首相時代は、親中国として中国の行動に対して明確な批判をしてこなかったドイツですが、政権交代後のアジア初の外遊先を中国でなく日本にを選んだことで、中国から日本シフトへのアジア戦略の変化が鮮明となりました。

また同じくG7で唯一中国の「一帯一路」構想へ署名していたイタリアにおいても、訪伊した岸田首相とドラギ首相が会談し同じ民主主義国家としての価値観を共有しました。そして「自由で開かれたインド太平洋」構想でも協力を約束しました。

イギリスもジョンソン首相が来日し、力による現状変更への反対とともに安全保障協力を強化すると合意しています。

 

一方、対インドでは3月の岸田首相の訪印に続き、イギリス、EU、ドイツ、フランスと欧州の主要国が相次いでインドのモディ首相と会談し、経済支援を含めた様々な協力関係を構築しています。

アジアの大国であるインドを民主主義陣営に引き入れることは、対露、対中戦略に取っても重要であり、積極的な外交が行われています。

 

元々中国に対抗するための「自由で開かれたインド太平洋」構想は、「クアッド」として日米豪印が主体となったものであり、欧州からすれば遠い場所での話でした。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻を経て強権国家の力による現状変更を目の当たりにしたことで欧州の危機意識が刺激され、今後、インド太平洋地域で懸念される中国の現状変更に対しても対抗意識が高まっていると考えられます。

 

これはイギリスのブレグジットを始めとして保護主義が蔓延し、欧州自体でもまとまりに欠けて存在感を失くしていた欧州が、再び結束を見せ西側世界での指導力を取り戻そうとしているように見えます。

ロシアのウクライナ侵攻は西側諸国に衝撃と惨劇を与えましたが、一方で欧州の結束力と積極性を復活させ、弱体化する米国の指導力を補完するものとして歓迎すべき変化を与えたとも感じています。

 

日本も含め、中露に対抗した西側諸国の今後の連携の深化に期待したいと思います。

 

以上

【5/2-5/6週の世界のリスクと経済指標】〜景気後退の兆し〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点): 悪化 (基準点30点) 

経済指標  -23点(72点):大幅悪化 (基準点96点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化でした。

ロシアのウクライナ侵攻は戦況が膠着しており大きな変化はありませんが、EUがロシア産原油を向こう6ヶ月で段階的に輸入禁止とする方針を示しました。ここ最近は中国の景気後退観測で原油価格が落ち着いていましたが、再び上昇基調に戻ってきました。

ロシアのウクライナ侵攻以降、原油価格は単純な需給ではなく政治的な措置に左右されることが大きくなっており、政治が経済に与える直接的な影響が大きくなってきています。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標は各指標の悪化が目立ち、マイナス23ポイントの大幅悪化となりました。

注目の米FOMCは予想通りの0.5%の利上げ、6月からのQT開始(当初は475億ドル→3ヶ月かけて950億ドルに拡大する見通し)となり、ほぼ市場の予想通りとなりました。一方で今後の引き締めペースに関してはパウエル議長が6月会合での0.75ポイントの利上げに否定的な姿勢を示し大幅利上げ観測が後退しました。

 

米雇用統計では平均時給の前年同月比が予想に一致の5.5%と引き続き強い賃金インフレが示されました。

またISM製造業景況指数、非製造業景況指数は共に前回値、予想に対して下振れとなりました。

 

豪準備銀行は予想よりも強い利上げ幅の0.35%とし、BOEも予想通り1.00%へ利上げとなりました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数も全体的に軟調となりました。

米株指数はFOMCでパウエル議長により0.75ポイントの利上げが否定されたことが好感され、一時ナスダックが4.99%など強く反発する場面がありました。しかし逆に0.75ポイントの利上げが否定されたことでFRBが高止まりするインフレに歯止めをかけられるか疑念が拡大し、結局は週後半にかけて反落して終えました。

これで米株は5週連続反落となりました。

一方で日経225は先週は小幅反発となり、底堅さを見せています。金融緩和の継続とそれに伴う円安のプラスの効果で好調な企業業績も目立ちます。

しかしさらに円安が進んだ際にはマイナスの効果も目立ってくることが考えられ、急に崩れることも考えられ注意が必要だと考えます。

 

 

〜景気後退の兆し〜

さて、先週はFOMCでの0.5ポイントの利上げ+QT開始で倍速の金融正常化が示されました。それと共に雇用の強さを維持しながら引き締めでインフレを抑えていく「ソフトランディング」が可能との見通しも示されました。しかし、世界的に景気後退の足音が聞こえ始めており、本当にソフトランディングできるのか私は懐疑的に考えています。

 

先週発表されたISM製造業景況指数、非製造業景況指数は景気の本格的な悪化を示す50以下にはなっていませんが、一時の勢いはなく共に下降を続けています。

 また、5/5に発表された1Q米非農業部門労働生産性が前期比7.5%減(前回6.6%、予想5.4%減)、1Q単位労働コストが11.6%増(前回0.9%、予想9.9%)と想定以上の人件費の増加が示されました。

4月雇用統計では平均時給の増加は前月比0.3%と小幅に改善しましたが、既に1Qに人件費だけでこれだけ増加していることを考えると、米国企業の利益を急速に圧迫していると考えられます。

 

 米国以外でも相次いで景気後退のシグナルが出ています。

 イギリスでは5/5にBOE政策金利が発表され予想通り1.00%へ利上げされましたが、同時にベイリー総裁はインフレリスクが上振れる認識を示しました。そして引き締めをさらに強める必要があるため23年4Qには1%近いマイナス成長となる見通しを示しました。

最近ではここまで明確に主要国中銀がリセッションへの警告を発したことは記憶になく、インフレ高進からの金融引き締めによるスタグフレーションが現実味を帯びてきたと感じました。

 

 ドイツでは3月小売売上高が予想0.5%減に対して5.4%減、3月鉱工業生産が前月比予想1.3%減に対して3.7%減となり、個人消費と企業生産の両方で急減速が示されました。

 

 中国の減速感も加速しています。

より民間企業の動向が反映されやすい財新PMIでは製造業が46、サービス業PMI36.2と新型コロナ発生直後の20202月以来の低さに低下しています。

各国の様々な事情がありながらも、世界的に景気後退の兆しが見え始めてきたと感じます。

既にナスダックは最高値から24%減、S&P500は14%減となっていますが、景気後退は織り込みはこれからと考えられ、インフレ率が適正なレンジである2〜3%程度に落ち着くまで株価にとっては厳しい状況が続くと考えます。

当分弱気スタンスを維持しながら日々買い場を考えて行きたいと思います。

 

次週は米国のCPIの発表があります。前回8.5%に対して予想8.1%と鈍化が見込まれていますが、順調に鈍化するとは思えません。他にも米国PPI、中国CPI、PPIもありますので注目していきたいと思います。

 

以上