投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【9/27-10/1週の世界のリスクと経済指標】〜米欧の綻びが見えた9月〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(44点):小幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  +2点(89点):小幅良化 (基準点87点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

新型コロナは世界的に新規感染者数が減少傾向になっている中で、米メルクが経口治療薬の良好な結果を発表したことで、医療資源を圧迫することなく治療できる可能性が高まりました。

 

一方で中国の統制強化の影響で電力不足が恒常化してきており、影響が拡大してきました。世界の工場である中国の製造業の稼働率が電力不足から低下しており、今後更なる供給不足からの世界的なインフレ圧力を生む可能性が出てきました。

 

また政治面ではドイツで総選挙が行われ、メルケル首相の所属するCDU・CSU中道左派SPDに第一党の座を譲ることとなりました。今後各政党による連立交渉が行われますが、SPDによる政権樹立が有力視され、内向き志向が強まる可能性が高まりました。

 

また、リストには記載していませんが、米政権の債務上限問題も依然解決されず、米債務がデフォルトとなる期限が10/18に迫ってきました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標は注目の8月PCEコアデフレーターは予想3.6%に対し3.6%と予想通りとなりました。

FRBはこれまで高いインフレ率は一時的というスタンスを主張してきましたが、4月に2%を超えて以降、5ヶ月連続で3%を超える数値が示されています。

主に半導体不足や原料高、輸送費高、人手不足などの供給サイドの目詰まりが原因となりますが、中国当局の統制強化による人為的な要因も重なり、今後もインフレ圧力が高止まりする可能性があります。

そうなると利上げタイミングが早くなり景気の下押し圧力となる可能性もあるため、引き続きインフレ指標には注意が必要です。

 

またISM製造業景況指数は前月59.9に対して予想59.6と低下が予想されていましたが、結果は61.1と意外にも堅調な数値となりました。堅調な消費需要やそれに対する在庫の増加が主な要因となり、企業が原材料の枯渇に備えて必要以上のものを購入していることが示されました。

 

次週はISM非製造業景況指数と、注目の雇用統計があります。

米金融政策の基準となる雇用統計において上乗せ給付金が9/6で終了した影響がどのように出るか注目されます。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の主要国株式指数は大きく調整しました。

先週は債券市場が「インフレは一時的なもの」とならない可能性を織り込み始めたことで長期金利が一時1.55%まで急激な上昇を見せ、その圧力に押されたハイテクグロース株が激しく下落しました。

また、中国景気の減速や電力不足、中国恒大集団などの不動産問題、米国の債務上限問題や3.5兆ドルのインフラ法案の行き詰まりなど、重しとなる課題が山積みとなり終始重苦しい雰囲気となりました。

金曜日にはISM製造業景況指数の上振れや米メルクの経口コロナ治療薬の明るいニュースでやや戻したものの、引き続き不透明感が残ります。

金利も足元では落ち着きを見せ1.5%を下回っていることから、次週は一旦は戻りを試す展開となると思われますが、雇用統計が上振れる結果となった場合は再び下目線となると思われます。

 

 

〜米欧の綻びが見えた9月〜

トランプ政権時にEUで進んだ「安全保障上の米国からの自立」議論ですが、バイデン政権が発足直後から米欧同盟重視として関係回復に努めてきたため、落ち着きを見せていました。

しかし、この9月は米国側からは「インド太平洋重視、EU軽視」、EU側からは「米国からの自立」の姿勢が公になり、両陣営の溝が再び鮮明になりました。

 

まず米国側ですが、9/15にAUKUSとして英豪との安全保障上枠組みを発表しました。

そして9/24には立て続けに日豪印とのクアッド首脳会議をワシントンで開催しました。

私はこれを見て、米国のインド太平洋戦略は、①強力な安全保障は米英豪の「AUKUS」、②豪に日印を加えたより広範囲な協力は「クアッド」とし、この二つの枠組みを中心に進めるのが基本戦略であると理解しました。

そして現在の米国にとって最重要とされているのはインド太平洋戦略であり、AUKUSでフランスが軽視されたように、優先されるのはその地域にある国々との連携である、という認識を持ちました。

すなわちインド太平洋地域からは遠く離れ、地政学的な利害が薄く対中姿勢も曖昧なEU諸国との連携は、もはや必要条件ではないのだと思います。

 

一方でEU側でもフランスを軸に動きが加速しました。

9/15にはEUのフォンデアライエン委員長が、加盟国間で安保情報を共有する新組織を立ち上げ、EUの安全保障分野での統合を進める意向を表明しました。

兼ねてから「欧州統合強化」を主張するフランスが22年前半には議長国となるため、米国に依存するNATOとは別の「EU軍」設置の議論も加速する見込みとなっています。

 

9/26にはドイツの総選挙が行われ、第二政党であったSPDドイツ社会民主党)が第一政党に躍進しました。

今後SPDを中心に連立政権樹立の交渉が行われていきますが、SPDも「欧州の強化」を公約に掲げており、ショルツ氏が首相となればマクロン大統領が重視する統合強化路線の追い風となると言われています。

 

また9/28には仏がギリシャに対してフリゲート艦を供給する契約を結んだと発表しました。

その席上でマクロン大統領は、欧州は国防の自律性を高めるべきであると発言し、米国依存からの脱却を示唆しました。
NATOに加盟するギリシャとトルコは東地中海でのエネルギー資源で対立していますが、 フランスがEU加盟国であるギリシャを優遇することは、NATOよりもEU重視を示唆するものとなります。

 

今回の両陣営の綻びは、アフガン撤退を始めとした米国のEUに対する配慮に欠けた行動に端を発すると思われます。しかし、それに対抗してEU側でもフランスに煽られる形で米国依存からの自立への動きは止まらなくなっています。

そうなると今後、お互いにNATOとしての同盟が軽視されることで対中政策で足並みが揃わなくなる可能性があり、中国に対する西側諸国としての圧力が弱まることは間違いありません。

 

戻りかけた西側諸国の連携に再び綻びが見え始め、国際政治の難しさを意識させられた月となりました。

 

以上

【9/20-9/24週の世界のリスクと経済指標】〜国際問題の舞台と化したTPP〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(42点):悪化 (基準点45点) 

経済指標  -15点(72点):大幅悪化 (基準点87点)

 

 

【リスク】

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※新型コロナ関連を項目1にまとめ、新たなリスクとして中国の統制強化を項目2に加えました。

 

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

不動産開発大手の中国恒大集団の社債に対する利払いが行われず、デフォルトリスクが高まりました。

仮にデフォルトしたとしても影響は限定的で、世界的な金融危機には繋がらないとの見方が大勢ですが、中国当局の関与も見えづらいなか、同様に負債を抱える他の不動産開発会社へ波及が心配されます。

 

米欧関係では、欧州軍の創立への支持を条件に、国連安保理常任理事国のポストをEUに引き渡すことを仏大統領が検討しているとの報道がありました。

仏政府は即座に否定しましたが、そのような報道が出るほど仏政府の米国からの独立志向が高まっています。

今週はドイツで総選挙が行われますが、下馬評通りSPDドイツ社会民主党)が第一党となった場合、ドイツでも欧州軍の創立に向けた動きが活発化してくると思われます。

 

また前週に中国がTPPへの参加申請を表明しましたが、先週は台湾も表明し、一気に国際問題化してきました。※こちらは後述します。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

欧米PMIが全て下振れとなり、足元での景気減速が鮮明となりました。

特にドイツのPMIの低下が大きく、半導体不足からの自動車減産の影響や中国景気の急減速が示されました。

 

注目の米FOMCは、次回11月FOMCでのテーパリング決定、22年半ばでの完了の可能性が示唆されました。またFRB当局者の金利見通しのドットチャートでは、22年中の利上げ予想者が半数となり前回より利上げ時期が前倒しとなりました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、週明けに中国恒大集団に対するデフォルト懸念から株価が下落し、S&P500は50日線を大きく割りましたが、その後反発し終わってみれば堅調に推移しました。

心配されたFOMCもほぼコンセンサス通りとなったため、株価指数は大きく反発し無難に乗り切った印象です。

一方で中国恒大集団などの不動産株を中心に売りが激しかった香港ハンセン指数は、2週連続で大幅安に沈みました。

 

今回のFOMCでは、テーパリングに関する時期が11月開始、22年半ばに終了と明確化されたにも関わらずマーケットの反応は下向きではありませんでした。そのことから当面の不透明感が払拭されテーパリングが織り込まれたと解釈しました。

そのため長期投資では、待機資金としていた現金20%のうち10%分を、FOMC後にMSCIコクサイインデックスへ振り分けました。

今後長期金利が急激に上昇する場面には気を付ける必要はありますが、基本的にはまだ金融相場であり、FRBによる利上げ発表までは株式60%のポートフォリオを維持、また下押しする場面では押し目を拾ってもう少し株式の割合を増やしていきたいと思います。

 

 

〜国際問題の舞台と化したTPP〜

さて、9/16に中国がTPPへの加入申請を正式表明しましたが、続いて9/23に台湾も加入申請表明を行いました。そのため、TPPが一気に複雑な国際問題の舞台と化してきた印象です。

 

TPPへの参加は全加盟国の承認が必要ですが、加盟国は両国に対する態度を明確化しなればならず、対立する中国、台湾のどちらを取るか「踏み絵」状態となっています。

9/25時点での各加盟国の中国、台湾の加盟申請に対する反応は下記の通りです。

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日本、豪州などの中国と距離のある国は台湾を歓迎しながらも中国の参加には慎重な姿勢を示しています。

一方で中国と関わりの深い東南アジアの国々は、意外にも中国を歓迎しています。

 

台湾の参加表明は、中国の参加表明に釣られた感じありますが、そもそも中国のこのタイミングでの参加表明も目的が見えづらい状況です。

 

以前も書き記したRCEPTPPの関係性をまとめたものを添付します。

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 中国は自らが主導しながら既にRCEPの枠組みを作り上げていますが、そのRCEPでカバーできていないTPP加盟国はカナダ、ペルー、チリ、メキシコの4カ国です。

そして中国は、ペルー、チリとは既に二国間FTAを締結済みで必要ありません。

残るはカナダとメキシコですが、こちらは2018年11月に締結されたUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)によって「非市場経済国」(=中国)とのFTA締結を制限されています。

米国との関係性を考えると両国が中国とのTPPを含めたFTAを締結することは有り得ないと思います。

そう考えると、現状中国がなし得る貿易協定としてはRCEPの枠組みで十分であり、実務的には中国にとっても加盟国にとっても加入するメリットが見当たりません。

 

また、そもそもTPPは国有企業の優遇を禁止していますが、中国は国営企業重視の経済へと転換を図ろうとしている最中であり、そのルールとは逆行している状況です。

つまり今回の中国のTPP参加表明は実務的な需要はなく、単なる政治的なアピールであることは明白です。

 

中国のTPP参加表明に前後して、AUKUSにより豪州の原潜配備が発表され、EUもインド太平洋戦略を発表し、台湾との通商交渉や海路の確保を行うとされました。

恐らく、遠い西側諸国からの対中包囲圧力が徐々に拡大していることに反発し、「インド太平洋地域は中国の縄張りである」と主導権をアピールするためにTPPという枠組みが使われたのだと考えます。

 

そこに中国にとって最もセンシティブな台湾が予想外に参画したことによって、加盟国の支持獲得争いの様相を呈しています。

 

しかし、原点に立ち返れば、西側諸国にとっては対中包囲網の一環として作り上げたTPPであるため、日豪NZ、カナダ(メキシコ)の西側の国々は冷静に「中国はTPPのルールに適さない」と示し合わせて承認しなければ良い話だと思います。

 

同時に台湾に対しても、各国が取る「一つの中国」という原則に基づき、中国と合わせて「両国を承認しない」という選択肢が一番妥当だと考えます。

 

以上

【9/13-9/17週の世界のリスクと経済指標】〜AUKUSで広がった米欧の亀裂〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(43点):小幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -2点(52点):小幅悪化 (基準点54点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの小幅悪化となりました。

先週は政治的な動きが多かった週でした。

まず米英豪が新たな安全保障の枠組みである「AUKUS/オーカス」を発表し、同時に米英が豪に対して原子力潜水艦の技術を供与し、インド太平洋での中国抑止の強化に乗り出しました。

一方で2016年に豪州との潜水艦の共同開発者として選ばれていたフランスは突然の出来事に激怒し、マクロン大統領が駐米、駐豪大使の召還を指示する事態となっています。

 

EUも正式に「インド太平洋戦略」を発表し、EUとして対中を意識して同地域の安全保障に関わっていくことを示しました。

 

一方で中国はロシアと主導する上海協力機構の首脳会議で同枠組みでへのイランの加盟手続きを進めることを決め、インド、パキスタンなど含めた中央アジア地域での協力体制を強化しました。

また、TPPへの参加も表明しました。

 

積極的に外交を展開するも互いにギクシャクする欧米に対し、自らの協力体制を着々と拡大する中国が対照的な印象でした。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス2ポイントの小幅悪化となりました。

米8月CPIコア指数は予想4.2%に対して4.0%と下振れし、6月の4.5%をピークに7月4.3%、8月4.0%とピークアウトの様相を呈してきました。

しかし、絶対的に強い数値であるのは変わりなく、9月FOMCを前にどのように解釈されるか判断が難しいところです。

また、8月の小売売上高はデルタ株蔓延から-0.8%と減少が予想されていましたが、0.7%とポジティブサプライズとなりました。

 

次週はいよいよ9月FOMCが開催されます。

「パウエル議長によるテーパリング開始時期の言及」と「FRB当局者による利上げ予想時期のドットチャート」に注目です、

テーパリングのコンセンサスとしては9月FOMCでの決定はなされず11月FOMCまで持ち越しされることが予想されていますが、前週に論じたようにインフレ圧力の継続と求人環境の回復を背景に、9月FOMCでのテーパリング決定のサプライズも十分にあり得ると思います。

ドットチャートは「23年末までに少なくと1回の利上げが半数以上」となった前回予想がさらに前倒しとなりタカ派に転ずるのか注目です。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の株価指数は、前週に続き米国の9月FOMCを前にテーパリングが意識され、弱含みで推移しました。

米株式指数は9/3の米雇用統計をピークに2週連続で下落となりました。

また、中国・香港株は中国恒大集団の債務問題の影響が波及するとの懸念で不動産株や銀行株を中心に売られました。香港ハンセン指数は9/16には10ヶ月振りの安値を記録しました。

 

次週は米FOMCを迎え、為替、株価共に大きく動くと予想します。

タカ派に出た場合はドル高株安でナスダックの下げが大きく、ハト派に出た場合はドル安株安でダウの下げが大きいと予想します。

ここ最近のグズグズした値動きを見る限りテーパリングを消化できておらず、短期的にはどちらに転んでも株安につながると考えています。

 

 

〜AUKUSで広がった米欧の亀裂〜

さて、先週はインド太平洋地域を巡り、西側諸国での重要な安全保障上の政策が発表されました。

 

まず15日に米英豪による新しい安全保障の枠組みである「AUKUS/オークス」の発表されました。

米英の技術供与により豪州に原子力潜水艦が配備され、インド太平洋地域における中国に対しての抑止力が強化されることとなりました。

 

時をほぼ同じくして、16日にはEUから「インド太平洋戦略」が正式に発表されました。

「中国の軍事力の増強による緊張の高まりでヨーロッパの安全保障に直接的な影響を及ぼす可能性がある」との認識を示し、「海上交通路の安全確保のために、加盟国による海軍配備に力を入れる」という姿勢が示されました。

 

米英豪、EUが西側諸国として、安全保障上の対中政策を前進させたのは歓迎すべき出来事です。

しかし、その背景を見ると西側諸国の連携が徐々に一枚岩ではなくなってきていることに危機感を感じます。

アフガニスタン撤退を境に、米バイデン政権の欧州同盟国軽視が目立ち、欧州の米国離れが加速しています。

 

今回のAUKUSでの豪州への原潜技術供与に関しても、通常潜水艦の技術供与の豪州との契約を破棄されたフランスには、米英豪から事前に充分な説明や協議がなされなかった模様です。

激怒したフランスのマクロン大統領は、駐米大使、駐豪大使の召還を指示する事態となりました。

 

また、EUにも事前に相談はなかった様で、今回のAUKUSの発表を受けて「EUは独自の防衛・安全保障戦略を策定する必要がある」との認識が表明されることとなりました。

元々アフガン撤退において、欧州の延期要請を顧みずに米国が部隊撤収を断行したことで、EUでは米国に依存しないEUの独自部隊の創設が叫ばれる様になっていましたが、それを煽る形となりました。

 

フランスを含め多くのEU加盟国はNATOの枠組みの中で米国とは同盟国です。

それを軽視した今回の行為は、アフガニスタン撤退で失ったバイデン政権の欧州からの信頼をさらに失墜させるものです。

これでEUは安全保障における米国との共同路線から距離を置くことになると思われます。

 

トランプ政権時代に同盟国との協力体制がないと中国に対抗できないと理解し、バイデン政権は発足から欧州の同盟国との関係改善に努めてきたはずです。

しかし、ここ最近のバイデン政権の稚拙な政策の進め方は理解ができません。

多国間の繋がりである以上は細部へ配慮し、ある程度の合意を得てから動くことが必要なはずですが、短期的な成果を急ぐあまり、その配慮がすっぽり抜け落ちているような気がします。

 

多国間では物事が拙速に政策決定できないのは分かりますが、合意形成を否定することはそもそも民主主義を否定することにもなりかねません。

米国には民主主義陣営のリーダーとして、より同盟国に配慮しながらの行動が求められます。

 

以上

【9/6-9/10週の世界のリスクと経済指標】〜9月FOMCでのテーパリング決定の可能性〜

先週の評点:

 

リスク   1点(46点):小幅良化 (基準点45点) 

経済指標  0点(56点):中立 (基準点56点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化としました。

政治面では米中首脳が7ヶ月ぶりに電話会談を行いました。米中対立が激しさを増していますが、形式上は「お互いに緊張緩和に向けて努力する」ということで一致し、途絶えていた米中の対話ルートが回復したことでやや安心感を生みました。

 

一方でアフガン撤退での米軍の混乱を機に、EUではNATOに頼らない独自の防衛機能の態勢強化が謳われるようになりました。バイデン政権誕生以来、欧州との協力関係の強い回復が見られていましたが、アフガン撤退で米軍に対する信頼感が揺らいだことを早速示す形となっています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラスマイナスゼロの中立となりました。

中国では先月に続き、CPIは1.0%と低調ながら、PPIは9.5%と上振れ生産者サイドの強いインフレ圧力が継続していることが示されました。主に中小企業で構成される中間業者のコスト吸収力に厳しさが増す中、中国人民銀行は5兆円に上る中小企業支援枠を設定し、低利での借り換えを促すと発表しました。

 

 米国でもPPIが上振れて6.7%となり、こちらも生産者側からの強いインフレ圧力が継続していることを示しました。次週は9/14に米CPIの発表がありますが、後述の考察も含めて注目したいと思います。

 

また、ECB、カナダ銀行による政策金利発表がありました。

ECBは「テーパリングでない」としながらもPPEPの購入ペースを減速させることを表明、カナダ銀行は7月に減額決定した国債購入額を20億ドルのまま維持することを表明しました。

引き締めに傾きながらもデルタ株の影響に配慮し、強くは踏み込まない政策となりました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の株式指数は欧米指数が軒並み軟調に推移する中、日経平均と中国株は前週に続き大きく伸びました。

日経平均は新政権の財政政策期待で買いが買いを呼び、8/20の直近底値から15営業日で12.47%の上昇となりました。

上海総合指数は、中国人民銀行の5兆円規模の中小企業に対する借換え融資枠設定や、預金準備率の更なる引き下げなどの金融緩和政策が続く期待から内需関連株を中心に伸び、7ヶ月振りに年初来高値を更新しました。

欧米株は金融引き締めに向け利確売りされる中、日中は財政、金融の緩和期待で資金が流れる構図となっています。

ただ、既に日経平均も年初来高値を狙えるポジションにあり、これ以上を臨むには更なるエネルギーが必要だと思われ、欧米株が軟調に推移する状況では難しいように思います。

 

 

〜9月FOMCでのテーパリング決定の可能性〜

 9/3の米雇用統計のネガティブサプライズによって、9月FOMCでのテーパリング決定が遠のいたと想定されましたが、予想に反して先週もFRB高官による早期テーパリング開始を肯定する発言が相次ぎました。

特にパウエル議長に倣いこれまでハト派として見られていた、NY連銀総裁とボウマン理事が初めて年内テーパリングを容認する発言を見せました。

 これを見て、私は9月FOMCでのテーパリング決定の可能性も低くはないと思い始めました。

 

データで現状を振り返ってみます。

下記は米CPIコア指数を1年前まで遡り平均したものです。

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 現在、FRBは「期間平均で2%をやや超えることを容認する」という政策を取っていますが、その「期間平均」が1年であると仮定して表にしてみるとこのような推移となります。

既に1年平均では目安である2%は超えており、仮に8月のCPIコア指数が予想値である4.3%で推移すると、さらにその上昇傾向は強くなります。(4.3%だと2.57%)

 

また先週、CPIに先んじて生産者側から見た物価指数である8月PPIコア指数が発表されましたが、前回6.2%、予想6.6%に対して結果6.7%と強い数値となっています。

下記は米CPIコア指数とPPIコア指数の推移を並べてみたものです。

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足元では7月のCPIコア指数は減速傾向を見せていますが、PPIコアは強い右肩上がりを続けています。
PPIコアの数値がそのままCPIコアの数値に繋がるわけではありませんが、生産者の出荷時点での価格が上昇していることは、コスト起因の好ましくないインフレ圧力が継続することを意味していると考えられます。

 

また、先週発表されたJOLT求人件数からは、求人数は急増しているものの採用者数が追従していない、求人と採用のアンマッチが拡大していることが示されました。

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求人数と採用者数のアンマッチから、9/3の雇用統計の弱さは、南部でのデルタ株の蔓延や現在失業者の多くが受けている緊急パンミック失業者支援による一時的なもの、と考えられます。

特に失業者支援は9月に終了することを考えると今後は労働者が雇用市場に戻り、徐々に改善されると考えられます。

 

すなわち現在の状況は様々なノイズによって正確に捉えにくいものの、インフレ圧力は継続し、かつ雇用需要も順調に回復しており、テーパリングへの環境が整いつつあると言えます。

 

9/3の雇用統計の予想外に弱かったことから、現在は9月FOMCでのテーパリング開始決定がないことが市場のコンセンサスとなっている気がします。

しかし、上記に述べた指標的な環境と、止まらないFRB高官のテーパリング発言から、私は9月FOMCでのテーパリング決定、10月ないし11月開始のサプライズも十分有り得るのではないかと思います。

 

これらのテーパリング懸念を反映してか、堅調に推移すると思われた欧米株式は軟調となっています。日本株が好調さを見せていますが、FRBがテーパリング決定を発表すれば日本株も調整となると思われ、敢えてリスクを取りに行く必要はないと考えます。現状の先進国株式50%、債券30%、現金20%のポートフォリオを維持して様子を見たいと思います。

 

以上

【8/30-9/3週の世界のリスクと経済指標】〜雇用統計内容から考える長期金利上昇の理由〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(42点):悪化 (基準点45点) 

経済指標  -6点(108点):悪化 (基準点114点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

米軍がアフガンが撤退を完了し、バイデン大統領はテレビ演説でその混乱の責任をトランプ前大統領に転嫁し、自らの決定を正当化しました。

しかし、その稚拙な撤退方法により、バイデン政権は政権発足以来関係を取り戻してきた同盟国や民主主義諸国からの信頼を損なう結果となりました。

そしてそれを払拭するためか、米国は同盟国ではないウクライナに対して関係強化を訴えました。

 

 また日本では政局が動きました。

ここ最近デルタ株の蔓延により支持率を落としていた菅首相が、次期総裁選には出馬しない方針を示したため、次期総裁を巡って自民党内での動きが活発になりました。

一時は与党の力が弱まっていましたが、与党が新体制で衆院選挙を戦うこととなり、政権を維持する可能性が高まりました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス6ポイントの悪化となりました。

中国の財新PMIは製造業、サービス業共に50を下回る結果となり、中国当局の統制強化の影響もあり景気悪化を示しました。

 

 米国は消費者動向を示す消費者信頼感指数が6ヶ月振りの水準まで低下し、デルタ株の蔓延や物価上昇の影響による短期的な消費の鈍化を示しました。

またISM景況指数は、製造業が上昇して堅調さを示した一方、非製造業は前回64.1から61.7へ大幅に低下し、こちらもデルタ株の影響からサービス業が苦しい状況に陥っていることを示しました。

 

雇用統計に関しては後述するので詳細は割愛しますが、NFPが予想75万人に対して23.5万人とネガティブサプライズとなり、米国内でのデルタ株の蔓延により雇用も一旦落ち着きを見せていることが示されました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の欧米の株価指数は米雇用統計を控えまちまちでした。

景気敏感株が奮わない一方、ナスダックはGAFAMを中心に大手ハイテク株に買いが集まり、前週に続いて強く続伸しました。

 

また日経平均は、政府与党内での政局の動きに反応し、「解散は買い」のアノマリー菅首相の退任発表により、次の衆院選での与党政権の堅持や新たな財政政策が期待されて大きく上昇しました。
これまで割安ながらも伸び悩んでいた日経平均のこの勢いは週明けも続くと思われます。

 

 中国株もPMIの指標が冴えなかったことから中国当局が景気刺激策を打ち出すとの期待が浮上し上昇を見せました。

 

 

〜雇用統計内容から考える長期金利上昇の理由〜

 さて、先週は9月雇用統計の発表があり、前回105.3万人/予想75万人に対して23.5万人に大幅に減少しネガティブサプライズとなりました。

今回の雇用統計で強い雇用回復を確認し9月FOMCでのテーパリング決定が見込まれていましたが、その前提が崩れ早期テーパリング観測が後退した安心感からナスダックは最高値を更新しました。

一方でセオリー通りであれば長期金利が低下することが予想されましたが逆に上昇し、株式と債券でちぐはぐな動きとなりました。

 

これが意味することは、株価は早期テーパリング観測の後退を素直に織り込みましたが、債券市場は逆に早期テーパリングの開始を織り込んだということだと思います。

 

雇用統計の内容を細かく見ていきます。

今回の非農業部門雇用者数ではここ数ヶ月雇用増を牽引してきたレジャー・ホスピタリティ分野で増加がゼロとなっています。

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これはサービス業の雇用が止まっていることを意味しています。

 

次に失業率を人種別に見ていきます。

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白人、アジア人、ヒスパニック系が順調に失業率を下げてきているにも関わらず、唯一黒人は前月比で8.2%→8.8%と増加しています。

 

次に新型コロナの新規感染者数の多い地域と人種別の人口の多い地域をを示したマップです。

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南部に感染者の多い赤色が多いですが、フロリダ、テキサス、ミズーリアーカンソールイジアナアラバマミシシッピの7州ではワクチン接種率が低く、感染拡大が特に強い地域となっています。

そしてその7州は、赤線で囲んだ様に賃金の安いサービス業の担い手として黒人が多く居住する地域と重なります。

 

つまり、今回の雇用統計の下振れは、南部の新型コロナの感染拡大が強い地域でのサービス業者=黒人の雇用減少による影響が強かったと考えられます。

 

一方で8/24にファイザー製ワクチンがFDAにて正式承認され、モデルナも正式承認に向け申請を完了しています。

今後はワクチンの正式承認によって組織や団体においてワクチン接種を加速しやすい状況が整いつつあると思われ、今回の下振れの原因となったと思われる南部での感染状況の改善余地は大きいと考えられます。

 

従って、南部の感染状況が改善すればサービス業での雇用の改善にもつながることが予想され、今回の下振れが一時的となる可能性は高いと考えられます。

実際に南部7州では感染者数がややピークアウトしつつある状況も見られます。

 

また9月から失業保険の追加給付もなくなり子供の登校も始まるため、より雇用回復に後押しとなると思います。

従って9月FOMCでのテーパリング決定は無いと思いますが、10月雇用統計では再び強い回復を見せることも考えられ、11月FOMCでのテーパリング決定の可能性は高いと思います。

 

今回債券が売られ金利が上昇したのは、下振れは一時的でありテーパリングは近いうちに必ず来ると債券投資家が考えた背景があるのではないかと思います。

 

とはいえ、一時的にテーパリングが棚上げとなることが予想されるため、次回の10月雇用統計までは株価は堅調に推移するのではないかと考えます。

 

以上

【8/23-8/27週の世界のリスクと経済指標】〜マーケットとの対話巧者のFRB「二歩進んで一歩下がる」〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(39点):大幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -14点(64点):大幅悪化 (基準点78点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス6ポイントの大幅悪化となりました。

新型コロナではデルタ株感染拡大で、米国でもICUの使用率が高まり、1月のピークの8割に迫っています。今のところ景気回復が大きく減速する兆候はありませんが、今後再び経済封鎖などの措置になる可能性もあり、懸念が広がります。

一方でファイザー製ワクチンが正式承認されたため、企業や自治体などでもワクチン接種義務化が進みやすくなったため、接種率の上昇に寄与すると期待されています。

 

地政学面では欧米各国が退避を進める中、カブール空港にてISIS-K(イスラム国ホラサン州)による自爆テロがあり、米兵14人を含む95人が亡くなりました。月末の退避期限が迫り、欧米各国が退避作業を急ぐ中での爆破行為により大きな混乱が生じたため、独仏加などの西側諸国は期限を前にして退避作業の終了を余儀なくされる事態となりました。

この事件は現地協力者などを十分に退避させたとは言えない状況に追い込まれ、民主主義諸国に対する信頼をさらに低下させることとなりました。

 

 

【経済指標】

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 経済指標はマイナス14ポイントの大幅悪化となりました。

欧米PMIはデルタ株の再拡大や供給不足の問題が影響してか軒並み低下となりました。

特にこれまで好調を維持していたドイツの製造業PMIが予想に反して下振れしたことは、やはり中国景気の鈍化を連想させます。

 

米PCEコアデフレーターは前年同月比は前回、予想と変わらず3.6%と高水準だったものの、前月比だと0.5%だった6月に比べると0.3%とやや鈍化を示しました。

 

また注目のジャクソンホール会議でのパウエル議長発言はテーパリングの年内開始を示唆するも、それが近いうちの利上げに繋がるシグナルではないとしました。

ジャクソンホールに関しては後述します。)

 

先週は韓国中央銀行も不動産高騰抑制のために利上げに踏み切り、0.5%→0.75%としました。

 

次週は中国PMI、米ISM景況指数、米雇用統計があります。

特に米雇用統計はテーパリング開始の裏付けとなるため注目しています。予想通りもしくは予想以上となればテーパリングは9月FOMCで開始が発表される可能性があり、下回れば開始時期が後ろにズレ込む可能性もあると考えます。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の米国株価指数は、アフガンでの欧米各国の退避行動中に起きたカブール空港での自爆テロ地政学的リスクが高まりましたが、米FDAファイザー製ワクチンを正式承認したことでの景気回復期待や、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言がハト派な内容だったことが好感されて堅調に推移しました。S&P500とナスダックは再び最高値を更新しました。

上海総合指数や香港ハンセンなどの中国株式も前週の下落の反動で買いが先行し、同様に日経平均も反発しました。

 

 

〜マーケットとの対話巧者のFRB「二歩進んで一歩下がる」〜

さて、先週は注目のジャクソンホール会議(以後略称:J/H会議)がありました。

パウエル議長は7月末のFOMCよりも一歩踏み込み、年内のテーパリング開始を示唆しました。一方でテーパリング終了=利上げということには簡単には繋がらず、利上げに関してはより厳格な基準をクリアしないと開始しないと発言しました。

この利上げに関する発言をハト派と受け止め、マーケットは早期利上げに対する不安感を和らげ、株高、ドル安、コモディティ高で反応しました。

つまりパウエル議長はまたもや注目されたイベントをマーケットに混乱を呼ぶことなく無事に通過しました。

 

ここ最近、インフレ圧力の上昇とともにFRBの政策発表の場が注目されていますが、全て無難に乗り切っている印象があります。

そしてその中にも「二歩進んで一歩下がる」と言う一定のパターンがあるような気がします。

 

今回のJ/H会議前にはFRB高官による強いタカ派発言が相次ぎました。

前回の7月FOMC(7/27-28)から今回のJ/H会議までの期間中のFRB高官の発言回数とその内容をカウントしてみると以下の結果になりました。

※私がニュースから集計しているので漏れがある可能性もあります。

 

[7月FOMC-J/H会議間のFRB高官発言]

述べ発言回数:30回  うちタカ派発言回数:26回

発言高官人数:15人  うちタカ派発言人数:12人

 

かなりのFRB高官がタカ派に傾き、かつJ/H直前には6人の高官が相次いで発言し、早期のテーパリング終了時期までも要求するような発言を行いました。

参考:クラリダFRB副議長、年内のテーパリングを支持-米金融当局者発言
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-08-27/QYI0M3T0AFB401?srnd=cojp-v2

 

このように、FRB全体としてはJ/H会議を前にかなり強めのタカ派のコンセンサスを示し会議に臨みました。

 ところがパウエル議長の発言内容は、テーパリングの年内開始を示唆し、コンセンサス通り従来よりアクセルを踏み込むもののその時期は明言せず、かつテーパリング終了後に行われる利上げに関しては「簡単には行わない」とアクセルを緩めて含みを持たせ、マーケットはそれを「ハト派」と受け止めました。

 

この「FRB高官が強めのタカ派発言で地ならし(二歩進む)→パウエル議長が一歩前に踏み込むも、二歩目は踏み込まないハト派の印象付け」と言うやり方でパウエル議長は非常に巧みにマーケットと対話しました。

 

このパターンは7月FOMCでも使用されており、やはり7月FOMC前もその前の6月FOMC後にタカ派発言が徐々に増やされました。

 

[6月FOMC-7月FOMC間のFRB高官発言]

述べ発言回数:27回  うちタカ派発言回数:15回

発言高官人数:16人  うちタカ派発言人数:10人

※6月FOMC前はタカ派発言人数は6人

 

その際にもFRB高官のテーパリング開始を印象付けるタカ派発言を増やしていきながら、FOMC後の会見では「テーパリングへと経済は進展したが、その時期はまだ先」として一歩進みながらもハト派な印象付けでマーケットを失望させませんでした。

 

恐らく結果論としてのチームプレイだと思いますが、マーケット心理を巧みに操りながら歩を確実に進める戦術は見事と言うしかありません。

 

今回のJ/H会議でテーパリング年内開始のコンセンサスは形成できたので、次はペースと終了時期、そして利上げ時期の示唆となりますが、そこでも巧みに乗り越えてくれると期待しています。

 

以上

【8/16-8/20週の世界のリスクと経済指標】〜テーパリングに対するFRBの迷い〜

 

先週の評点:

 

リスク   -9点(36点):大幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -5点(52点):小幅悪化 (基準点57点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス9ポイントの大幅悪化としました。

ワクチン接種は拡大していますが、デルタ株の未接種の人への感染やブレークスルー感染により拡大が続いています。加えて米国では5人に1人が子供の感染者となり、デルタ株はこれまでのコロナとは違い子供が媒介となる可能性が高く、夏休みを終え学校に集まる子供を中心に更に拡大することが心配されます。

 

 また、アフガンではあっという間にタリバンが首都カブールも制圧しアフガン政府が崩壊、タリバンが20年振りに政権を奪取しました。

米軍の撤退は前政権から計画されていたことですが、ここ最近のタリバンの制圧スピードが凄まじく、欧米各国は予想外の混乱を伴った撤退作業を余儀なくされました。

そしてそれは「失敗」という印象を強く残し、バイデン政権に対する信頼性を低下させることとなりました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス5ポイントの悪化でした。

先週は指標の悪化が見られるようになり、景気回復の鈍化が確認されました。

中国では小売売上高と鉱工業生産が共に前回/予想に比べて悪化となり、中国景気の減速を示しました。

また、米国も小売売上高や住宅着工件数も大きく悪化を示し、一旦の景気のピークアウトを示しました。

 

NZ準備銀行の政策金利は0.25%の利上げが予想されていましたが、前日の17日にコロナ感染者発生を理由に全土のロックダウンが決定したために一時的な景気減速が懸念され、金利据え置きとなりました。

 

足元での供給不安やデルタ株の感染拡大から、指標的にも頭が重い状況が示され始めました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週は前週末のアフガンでのタリバン制圧のニュースで重い雰囲気の中で始まり、FOMC議事要旨の発表で、大半の当局者が年内のテーパリング開始を予想していたことが示唆されて弱含みで推移しました。

特に上海総合や香港ハンセンは、相次ぐ中国当局の規制強化に欧米の重い雰囲気が重なり、大幅に下落しました。

また日経も欧米、中国の下落に加えて、トヨタが9月の生産を4割減産する発表をしたことから景気敏感セクターが大きく売られ一時27,000円を割るところまで反落しました。

WTI原油先物も中国の減速気運の高まりから需要減を見込み10%近く下落しました。

 

〜テーパリングに対するFRBの迷い〜

さて、先週は様々な要因により市場がやや重い雰囲気となった週でした。

要因としては下記が挙げられます。

 

①各地でのデルタ株の蔓延(米国でも8/16に瞬間的に25万人の新規感染者発生)

FOMC議事要旨からのFRBの予想以上のタカ派化の確認

③中国の規制強化(中国恒大集団への当局の介入及び個人情報保護法の成立)

④供給不安(半導体不足、コロナでのサプライチェーンの停止によるトヨタの減産発表)

 

特に②FOMC議事要旨からのFRBタカ派化に関しては、7月末のFOMC以降多くのFRB高官が公の場でテーパリングを肯定する発言が増えていましたが、FOMCの議事要旨はそれを裏付ける内容となりました。

8/17にはFRBメンバーで最もハト派ミネアポリス連銀総裁までもがテーパリング容認を発言しています。

そのため、ダウはFOMC議事要旨の日は久しぶりの1%の下落となりました。

 

 しかし、そんな中、8/20に突如FRBメンバーのダラス連銀総裁が「デルタ株の感染拡大が収まらず経済の進展に悪影響を及ぼすようであれば、これまでの自身の見解を調整する可能性を否定しない」と発言しました。

ダラス連銀総裁はこれまでタカ派の急先鋒としてかなり早い段階から早期テーパリングの必要性を訴え続けてきた人物ですが、ここに来て急にアクセルを緩める発言をしています。

 

ここまで中国や欧米を中心とした景気回復により強いインフレ圧力が生じていたため、それに対応してテーパリング議論が進んできましたが、足元は中国景気の減速感から商品価格も落ち着きを見せています。

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期待インフレ率を表す米国のBEI指数も5月のピーク以降2.27%と落ち着いています。

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 経済指標的にも、足元の景気の先行指数である連銀指数や住宅着工件数などで下振れが目立ち景気のピークアウト感が出始めており、景気の減速も意識され始めています。

また、なんと言ってもテーパリングが現実味を帯びてきているにも関わらず、長期金利は1.2%台と3月末のピークから低下し続け、上昇の兆しが見えません。

 

そんな中でのダラス連銀総裁の発言は、足元での景気楽観論への影に対する迷いを感じさせます。

基本的にはテーパリングが年内に開始されることはコンセンサスとなっており、ほぼ間違いないと思います。

一方で先週NZ準備銀行が確実視された利上げをロックダウンを理由に延期したように、その開始時期に関して予想される10月から若干のずれが発生する可能性を連想させます。

 

いずれにしても次週の米国Markit PMI、PCEコアデフレーターの経済指標、そしてジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言にサプライズがあるのか注目します。

 

以上