投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年1/16-1/20週の世界のリスクと経済指標】〜株式市場の勇み足感〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(28点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  +5点(85点):良化 (基準点80点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス2 ポイントの悪化となりました。

ウクライナ情勢では、春先に予想されるロシアとウクライナの大規模地上戦に向けて西側各国がウクライナに供与する戦力について協議しました。重戦車の補強が重要となってきますが、欧州各国は概ね保有する戦車の供与を承諾しているものの、各国の戦車の製造国であるドイツが供与に二の足を踏んでいます。ドイツが再輸出を許可しなければ他国が保有する戦車も供与できず、「欧州を分裂させる」と批判が広がっています。

 

また中国ではゼロコロナ政策の影響で22年4QのGDP成長率が2.9%となり、通年でも3%となったため、中国当局の目標である5%を大きく下回る結果となりました。また昨年末に中国の総人口も61年ぶりに減少したことが発表されました。現在の実体経済の減速と将来の減速も予感させる結果となり、中国の成長力の低下が顕著になってきた印象です。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス5ポイントの良化でした。

暖冬でエネルギー価格が低下していることを反映してか、1月のZEW景況指数がドイツ、ユーロ圏共に大きく上振れ、欧州のセンチメントが改善していることが示されました。

 

注目された日銀金融政策決定会合では、事前に予想されたYCCの許容幅の拡大は行われず、金融緩和の維持が発表されました。日本経済にとってはひとまず安心感が得られたとして株価が上昇しました。一方で為替は127円台から131円台まで大きく動きながら、中間の129円台となって週を終えました。

 

米国指標では12月小売売上高が-1.1%と低下し、個人消費が弱含んでいることが示されました。昨年は年末商戦が前倒しされていたことに加え、消費がモノからサービスに移行しているため、モノの消費が大幅に低下していると思われます。

また、12月PPIも前月7.3%から6.2%と1%以上大幅に落ち込んでおり、急速に需要が減退していることも示されました。インフレの鈍化傾向は歓迎されるべきですが、急速すぎる低下は、行きすぎた景気悪化を心配させます。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は日銀が緩和維持を決定した日経や、ゼロコロナ政策を撤廃して景気回復が期待される中国株などアジア指数が堅調に推移しました。一方で米国株はまちまちでGSの予想外に大きい決算の取りこぼしから銀行株を中心に株価を下げ、ダウ平均が2.7%安となりました。一方でナスダックは週末に大きく反発し、プラ転して週を終えました。

 

〜株式市場の勇み足感〜

 先週は1/20に株価が大きく反発し、ナスダックはプラスに転じました。考えられる要因としては下記の通りです。

FRB高官の姿勢にやや緩みが見えるようになってきた。

②NFLXが加入者数を大幅に伸ばしたことや、MSFTが大幅なレイオフを発表したことから収益が改善すると肯定的に捉えられた。

 

下記は先週のFRB高官の発言内容です。

前週までは、5%を超える高いターミナルレートの見通しを維持するタカ派な姿勢が占めていました。しかし先週は次回FOMCでの25bpsの利上げ幅を具体的に支持する発言をするメンバーが現れ、確かにFRBメンバーの中でも考え方にバラツキが出てきた印象です。

 一方でFRBが重要視している労働市場の引き締まりは、収束が見えていません。下記は1月第2週までの新規失業保険申請件数の推移です。

昨年末から大手ハイテク企業のレイオフが多くなってきているにも関わらず堅調さを見せており、1月第2週は190千人と200千人を下回りました。インフレ指標は確実に鈍化してきていますが、労働市場の堅調さは変わらず推移しており、現時点でFRBが簡単にピボットに向けてスタンスを転換するとは思えません。

 

1/20は株式市場が大幅に反発しましたが、金利は概ね上昇しており、かつハイテク株中心の上昇であったことから株式市場の楽観が目立つ、やや違和感を残る印象でした。

NFLXは会員数は延びましたが、そもそも決算としては純利益が91%減となった上、EPSも予想に対してミスしています。またMSFTにしても好決算が出たわけでもなく、1万人の削減を発表しただけです。悪材料の出尽くしとして捉えたのか、株式市場の勇み足感は否めません。

 

ついてはまだマーケットのリスクは衰えていないとして、次週も引き続き株式20%、現金80%の弱気のポジションを維持します。

 

次週は有名どころの決算としては1/24にMSFT、1/25にBA、IBM、TSLA、1/26にINTCがあります。特にレイオフを発表したばかりのMSFT、苦戦が伝わるTSLAの決算に注目します。

 

以上

【2023年1/9-1/13週の世界のリスクと経済指標】〜インフレ鈍化と景気後退の狭間〜

先週の評点:

 

リスク   +5点(35点):良化 (基準点30点) 

経済指標  +9点(42点):大幅良化 (基準点33点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス5ポイントの良化でした。

米国の12月CPIは前月7.1%から鈍化し6.5%となりました。6月の9.1%をピークに反転し、これまで順調に値を切り下げており、順調に利上げの効果が出ていることが示されました。欧州でもピークアウトの傾向が出ており、世界的な利上げによるインフレ鈍化の傾向が顕著になってきました。

 

 政治面では、先週は日本の岸田首相が欧米主要国を外遊し、各国首脳と会談を行いました。今年のG7の議長国という立場と、中国、ロシア、北朝鮮の強力な専制主義国に囲まれていることもあり、主にインド太平洋地域での安全保障に関する協力体制の強化に主眼が置かれました。周辺国の軍事力の拡大に合わせて、反撃力の獲得と軍事費をGDPの2%に増加させる策を閣議決定したばかりであり、それらへの支持を得る意味でも有意義な外遊だったと考えます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス9ポイントの大幅良化となりました。

注目の米国の12月CPIは予想に一致だったものの、前月の7.1%に対して6.5%と順調に鈍化していることが示されました。

またミシガン大学消費者マインド指数では1年先のインフレ期待が前月4.4%だったものが4.0%と大きく低下し、消費者の間でもインフレ鈍化が期待されていることが示されました。

 

次週は日銀金融政策決定会合があります。

先週は日本の10年債利回りが0.5%を超えたため、日銀は2日間で10兆円の国債購入を行わざるを得ない状況になりました。現在日銀は毎月9兆円ペースの国債購入を指針としていますが、会合を控えてそのペースを超える状況となっています。前回会合で0.5%に引き上げたことで投機筋に勢いがつき、金利操作に限界がきている印象です。さらに上限を引き上げれば実体経済への打撃が大きく、また現状維持としても投機筋の売り圧力はさらに激しくなり、混乱が予想されます。試される状況となってしまった中で日銀がどのような政策を取るのか注目します。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は主要指数は全て反発となりました。欧米株式は米国のインフレ鈍化によるFRBの引き締め姿勢の緩和が期待されハイテク株式を中心に反発しました。また中国株式やアジア株は中国のゼロコロナ政策の緩和からの景気回復期待で上昇しました。

一方で日経平均は前週末比で4.19円(-3.17%)進み127円台となった円高が重しとなり小幅反発に止まりました。

 

〜インフレ鈍化と景気後退の狭間〜

 先週は前週末の雇用統計からの楽観的な雰囲気を受け継ぎながら12日のCPIが予想に一致だったものの順調に鈍化を示したことで楽観が継続しました。

また22年4Q決算のトップバッターとして発表された大手銀行の決算も、金利上昇による純金利収入の増加により予想を上回る好決算を出したため、こちらも好感されて週を終えました。

 

しかし、今後もこのまま株価が順調に伸びていくかというと、まだ慎重にならざるを得ないと考えます。

理由は下記の2点です。

①CPIの低下は支援材料になるものの、現在市場が織り込んでいる年内利下げまではFRBが姿勢を変更していない。

②景気後退により企業業績が悪化する可能性が高い。

 

 先週も複数のFRB高官が発言し、概ねCPIの鈍化傾向を歓迎し、次回FOMCでの利上げ幅は25bpsに減速させることが適切とのコメントも見られました。その一方で、金利を長期に渡って引き上げ、水準は高止まりする可能性にも言及されました。あくまでもFRBインフレターゲットは2%であり、そこに達する見込みが明確になるまではピボットが行われない姿勢は変わっていません。今後の展開としては、当面先週の様に雇用統計やCPIの鈍化で株価は上昇するも、FOMCでのタカ派継続で上抜けを抑えられることが予想されます。

 

また、先週の大手銀行の4Q決算では、コンセンサスを上回ったため株価は上昇しましたが、前年比で見ると総じて減益となりました。加えてJPM、バンカメのCEOの23年の見通しは保守的で「景気後退」への懸念が示されました。

FactsetによるS&P50012ヶ月後のEPS予想も229ドルと高値圏で推移しており、今後発表される決算での23年見通しでこの水準を維持できるかというと判断が難しいところです。

これまで販売好調だったテスラも世界的に一斉値下げに走り、また私の実業でも北米市場が急速に冷えているため、製造業の顧客が北米向けの設備投資を渋り始めています。利上げの影響で、予想以上に景気が急速に冷えている可能性も高まっていると感じます。

ついては足元では次週から本格化する米国企業の4Q決算、特にレイオフが激しいハイテク株の決算に注目したいと思います。

 

現在はインフレ鈍化によるポジティブと景気後退のネガティブの狭間にありながら、そこにFRBのややタカ派な姿勢が加わって、少なくともまだ楽観的にはなれない状況だと思います。

上記を受けてポートフォリオとしてはMSCIコクサイ20%、現金80%の弱気のポジションを維持します。

 

以上

【2023年1/2-1/6週の世界のリスクと経済指標】〜堅調な雇用統計から見える米国の構造的な変化〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  +14点(110点):大幅良化 (基準点96点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化でした。

年始で大きなニュースが少なかったですが、フィリピンのマルコス大統領が訪中し、中国との南シナ海での領有権の問題について友好的な協議を通じて解決する共に、資源交渉を再開する考えが示されました。就任以来、中国から距離を置いていたマルコス大統領でしたが、ここに来て中国にも接近し、米中から実利を引き出すような方針に転換しています。台湾に近く、台湾有事で地理的に重要なフィリピンの動向が注目されます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス14ポイントの大幅良化となりました。

ドイツ、ユーロ圏のCPIは2ヶ月連続で低下を示し、フランスCPIも前月ピークに鈍化を示し始めました。米国に遅れながらも、欧州でも利上げの効果が現れてきた様相です。

 

米国の雇用統計ではNFPが上振れ、失業率が下振れとなり雇用の底堅さが示された一方で、ISM景況指数では製造業、非製造業共に50を下回り、景気減速が顕著になっていることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は欧州を中心に概ね堅調に推移しました。

欧州ではドイツ、フランス、ユーロ圏のCPIが低下したことに加え、ユーロ圏のPMIの改定値で落ち込みが底打ちした兆候を示したことでDAXが大幅反発しました。

米国株式は1/6の雇用統計でNFPや失業率が堅調な雇用状況を示した一方で、平均時給の伸びが鈍化したことでFRBのピボットが期待され反発しました。

 

〜堅調な雇用統計から見える米国の構造的な変化〜

 先週の雇用統計の結果は下記で説明できると思います。

①大手ハイテク企業で働く高収入なホワイトカラーの大量レイオフにより平均時給は低下。

②一方でブルーカラーの雇用需要が落ちないことからNFPや失業率は堅調さを維持。

 

今回の雇用統計で顕著になったのが、ブルーカラーの雇用需要の強さです。ISMが50を割る水準まで低下し、ホワイトカラーは大量失職しているにも関わらず、雇用が堅調さを示しているのは、労働者層の構造的な不足が影響していると考えます。

 

下記は米国人口の自然増減数の推移です。

 2007年の1,892千人増をピークに米国の人口増減数は急激に低下しています。つまり、米国も日本同様に人口の急減時期を迎えていることがわかります。加えて20年にコロナが流行してからは、死亡者数の増加により自然増減数は更に減少度合いを強め、わずか215千人の増加に留まっており、劇的に人口の伸びが鈍化しています。

 また米国はこれまで不足した労働力を移民でカバーしてきました。しかし、移民にとっての米国自体の魅力の衰退や、2017年からのトランプ政権の移民対策、またコロナによる制限により、移民が急激に減少しています。2016年時点では約100万人いた純移民が21年には25万人を下回り75%減となったと言われています。

従ってかつての様な潤沢な労働力は米国にはない、ということがわかります。

 

そんな状況の中、米中の経済安全保障の問題から、半導体などの先端分野を中心に中国から米国への生産回帰が行われています。またロシアのウクライナ侵攻により、米国製の高性能な軍備への世界的な需要も高まっています。

 

そもそも構造的に減少していた労働力に対して、急激な景気回復と政治的な影響による需要の高まりが重なり、労働力不足が恒常化していると考えられます。

そして現在の政治的な影響は長期化することが考えられ、また人口の伸びの鈍化により今後さらに労働力の減少傾向が強まることで状況は簡単には改善しないと思われます。

 

既にモノや住宅価格のインフレは明確な鈍化傾向を示していますが、雇用需要だけは未だ明確な鈍化を示していません。

現在のタカ派FRBの姿勢は、雇用の明確な鈍化を求めている様に感じられます。しかし現在の構造的な労働力不足を考慮した場合、今後も雇用の堅調さは粘着性を保ち、長期化する可能性があります。そう仮定すると、今年の後半にピボットするという市場の期待は楽観的過ぎで、12月FOMCで示された今年末のFF金利予想が5.125%というのも正当性が増してきます。

 

私は年末に株式60%、国債40%の強気としていたポートフォリオを株式20%:現金80%の弱気に変更しています。FRB、ECB、BOJと主要中央銀行が立て続けにピボットを否定しタカ派姿勢を表明したことで景気後退の可能性が増し、市場から資金が抜けることを警戒して変更しました。今回の雇用統計の結果を経ても、FRBの姿勢は変わらないと判断し引き続き弱気とします。

 

 一方でこの労働者需要の堅調さの背後に、米国のポピュリズムの変化も感じています。

かつてグローバリズムによって安い労働が海外へ流出したことで仕事を無くし、取り残された人々を中心にポピュリズムが躍進してきました。しかし、コロナ禍や香港、台湾を巡る中国の野心の表面化、ロシアのウクライナ侵攻などにより世界の分断が進み、生産が米国に回帰してきました。そして労働者層が職を得て所得が向上する一方、不景気により高所得者は職を失っています。それにより長年の問題であった格差は、わずかながら縮小傾向にあると思います。11月の中間選挙で躍進すると思われていたトランプ派が苦戦したのも、労働者層の状況改善によりポピュリズムへの支持が薄まった現れかとも考えられます。コロナ禍以降に加速したグローバリズムの分断が、米国内のポピュリズムの先鋭化を抑えることになってきているのではないかと思います。

 ただ、高インフレで生活は苦しくなり、かつ景気後退の足音が聞こえている中で、労働者層の満足がどこまで持続するかはわかりません。米国経済の行方と共に米国民主主義の方向性も注視していきたいと思います。

 

以上

【12/19-12/23週の世界のリスクと経済指標】~二重の引き締めによる日本の厳しさ~

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  +2点(36点):良化 (基準点34点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラスマイナスゼロの中立でした。

先週はインドネシアのジョコ大統領がベトナムを訪問し、両国間で懸案となっていた南シナ海でのEEZ境界を画定し、協力関係を前に進めました。その背景には南シナ海でのより強力な境界問題を抱える中国に対して歩調を合わせるとされています。インド太平洋での中国の増長を抑えるためにもASEAN内での両国の協力関係の醸成は重要だと思われます。

 

また、中国では全国的な抗議デモからゼロコロナ政策を急速に緩和していましたが、それと同時に新型コロナ感染が急激に拡がってきました。一説によると一日当たりの新規感染者数は3700万人にも上り、死者数も5000人と推測されています。医療崩壊も噂されており、再び中国経済が止まり、インフレに影響してこないか懸念されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス2ポイントの良化となりました。

先週は日銀金融政策決定会合が開催され、政策金利は-0.10%で維持されたものの、YCCの変動許容幅を従来の±0.25%から±0.5%に拡大する方針が示されました。防衛増税に加え、実質的な利上げとなり、今後の日本経済には打撃となりそうな政策が続きます。

 

日本のCPIも予想値の3.9%は下回ったものの、前月の3.7%よりも悪化し3.8%となりました。日本でも他の先進国に遅れながら確実にインフレが浸透してきました。

一方で米11月PCEデフレーターは予想に一致の5.5%も前月の6.1%からは減速を見せ、CPI同様インフレの鈍化を示しました。また、住宅着工件数も、減少幅は前月比で改善しましたが、3ヶ月連続の減少となり利上げによる影響が続いています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~二重の引き締めによる日本の厳しさ~

 先週の株価指数はまちまちな動きとなりました。米株指数はナスダックが下げましたが、ダウは上昇、S&P500はほぼ変わらずとハイテク株の弱さとバリュー株の堅調さが目立つ値動きとなりました。一方で日経225は、日銀がYCCの変動許容幅を±0.5%に変更したことで137円から一時130円台まで円高が進んだことで大幅反落となりました。円安を背景に業績を伸ばしていた日本企業の利益減少が意識された形です。

 

 先週の話題を攫ったのは何と言っても日銀のYCC変動幅の拡大による日銀の変心でした。16日に与党がまとめて23日に閣議決定された防衛増税に加えて、今度は実質的な利上げと、財政・金融の両面において引き締めと捉えられる政策が続いています。確かに中国・北朝鮮による有事の可能性が高まっている中では防衛力を強化することは必要です。またインフレ率が3.8%に達している状況では利上げは必要とも考えられます。

しかし、経済がコロナ禍から回復し、インフレ圧力が高まりようやく念願の賃上げに動きそうな様相の中、立て続けに経済を冷やす政策が財政、金融両面から打ち出されることに対して違和感を感じます。

 

 特にこのタイミングでの日銀のYCC変動幅の拡大はその狙いがはっきりと捉えられない印象です。日銀としては表向きは「利上げではなくYCCの歪みの是正」とし、イールドカーブで10年債利回りだけが凹んでいることを改善することとしています。このイールドカーブは企業が社債などを発行する際にもベンチマークとなるため、綺麗に右肩上がりとなることが必要、との背景があります。しかし、その是正が今このタイミングでの絶対に必要だったのかと言われると非常に違和感が残ります。

 

 日本のCPIは11月に3.8%に上昇していますので、インフレを抑えるための変更だったのかもしれません。日本のインフレ要因はコストプッシュ型で、急激に進んだ円安の影響です。実質的な利上げを行うことでドル円を引き下げ、インフレを抑えようという動き狙いもあったのかもしれません。しかし、ドル円は10月21日の為替介入以来、円安から円高トレンドに転換しており、米国の利上げのピークが見え始めている状況で更に性急に円高を加速させる必要性があったのか甚だ疑問です。

 

 今回の日銀の政策には岸田政権や財務省の圧力があったとの推測もされていますが、岸田政権にしろ財務省にしろ真の狙いがよくわかりません。

ただ、ここ2週間の出来事ではっきりしたのは、今後の日本経済の成長性は著しく失われることが予想されるため、日本株に投資する魅力が更になくなったということです。

また言い換えれば、日本に住み、日本企業に勤める我々の生活にも成長性が無くなり、成長する外国に比べて貧しくなるスピードが早くなるということです。国の政策には逆らいようがありません。しかし、せめて自らの資産と家族の生活を守るため、知識を高め自分の価値を高められるように成長していくしかないと、痛切に感じた週でした。

 

外国株式と日本国債に投資しているため、先週の日銀の政策変更による国債価格の下落と円高で、私の資産価値は下落しました。しかし、MSCIコクサイは先週はほぼ変わらず推移し、FOMCからの株価下落は落ち着きを取り戻したような気がします。インフレ指標は引き続き低下を見せているため、引き続き強気のポートフォリオを維持したいと思います。

 

以上





【12/12-12/16週の世界のリスクと経済指標】~FRBへの信頼感の喪失~

先週の評点:

 

リスク   7点(37点):大幅良化 (基準点30点) 

経済指標  -3点(138点):小幅悪化 (基準点141点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス7ポイントの大幅良化でした。

米国の11月CPIは前月値、予想値共に下回って7.1%となり、6月の9.1%をピークに鈍化傾向が顕著になってきました。米国のインフレは順調に落ち着いてきていることが示されています。

 

また政治面では米国が8年ぶりにアフリカ連合AU)首脳をワシントンに招き、会合を行いました。この会合で米国は今後3年間で550億ドルのアフリカへの投資計画やAUG20への参加支援、アフリカからの国連安保理常任理事国への後押しなどを表明しました。アフリカ地域では中国やロシアの関与が先行していますが、中露へ対抗する上では同地域の国々の取り込みが重要であり、米国もようやく重い腰を上げました。

 

そしてインド太平洋地域では日本政府が外国からの攻撃に対する反撃能力の保有閣議決定しました。中国や北朝鮮、ロシアへの対抗を念頭に置き、戦後の日本の安保政策の大きな転換点となりました。一方でその財源を巡って一部を増税で賄うことに対して議論が紛糾しています。今回の政策転換の本質である反撃能力保有の是非ではなく、増税議論にすり替えられてしまっているところに、マスコミの姿勢を含めて疑問を感じます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス3ポイントの小幅マイナスとなりました。先週は重要指標が目白押しでした。

米11月CPIは前月7.7%、予想7.3%に対して結果7.1%と下振れし、インフレの鈍化が示されました。一方、CPIの結果により政策転換が期待されたFOMCでは、利上げ幅は75bpsから50bpsに減速されたものの、ドットチャートはタカ派に振れました。

また翌日のECB政策金利発表でも利上げ幅は縮小されたものの、ラガルド総裁は「ECBは方向転換したわけではなく揺らいでもいない」とこちらもタカ派継続の姿勢を示しました。

 

一方でPMIは、欧州は低い中でもやや持ち直しが示されましたが、米国は製造業、非製造業共に大きく悪化を示しました。

欧州はともかく、既に利上げで先行し、インフレ鈍化が顕著な米国は利上げ不況が心配されます。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~FRBへの信頼感の喪失~

 先週の株式指数は世界的に大幅反落の動きとなりました。

13日の米国11月CPIは総合指数、コア指数共に前月値、予想値を下回って米国のインフレの鈍化を示しました。しかし、翌日の米FOMCでは利上げ幅は50bpsに減速となりましたが、ドットチャートでは前回4.625%だった23年末の予想金利は5.125%に修正されました。また記者会見では23年中の利下げを否定し、タカ派な姿勢が示されました。

 

 FRBタカ派姿勢維持は、利上げ幅を減速した上に更に緩和を示すと、夏の株価上昇の様に、マーケットが楽観して再びインフレを加速しかねないという危機感が働いたからとも推測されます。

しかし、6月から8月の上昇時はFF金利はまだ2.25%でしたが、現在は4.25%です。CPIは6月をピークに減速を続けています。雇用統計も急速な減速ではないですが、確実に切り下がっています。ISMも非製造業は強さを残していますが、製造業は好不況の基準となる50を下回り、PMIは製造業、非製造業共に50を大きく下回っています。

ロジカルに考えれば現在は当時とは明らかに状況が違います。

 

 マーケットに過度な楽観を与えないように、牽制の意味合いが強いのかも知れません。しかし今回のFOMCとそれに続くFRB高官の発言は、やや強すぎる、バランスを欠いた姿勢のような印象です。

それに対してマーケットはFRBの示唆を無視して、データに基づく状況を織り込もうとしています。マーケットが示す23年末のFF金利先物は年央に4.75-5.00%まで上昇したのち、年末までに50bpsの利下げし4.25-4.50%としています。つまりはFRBとマーケットの姿勢に溝が生まれています。

 

これまではインフレを低下させるべく景気後退しても、FRBが適切に金利をコントロールし、過度な冷え込みがないようにサポートするだろうという信頼感がありました。そのため「悪いニュースは良いニュース」との認識が共有されていました。しかし、今回FRBがインフレ指標が下がってきてもタカ派姿勢を貫いたことでその信頼が崩れました。そしてマーケットは「悪いニュースは悪いニュース」と捉え「利上げ不況」を懸念するようになった気がします。週末にかけて株価が大きく崩れたのは、小売売上高、PMIなどの悪化が素直に「悪いニュース」と捉えられたことも関係していると考えます。

 

そうなると少なくとも次回2月FOMCまでは、FRBとマーケットの溝が残り、指標をどう捉えたら良いか分からず、方向感のないまま上値の重い相場が続くと思われます。

ただ、「インフレが鈍化している」という強いファンダメンタルの事実がある以上は10月の底値を割る様なことは考えにくく、弱気転換の必要はないと思います。

警戒は必要ですが、引き続き株式60%、国内債券40%のポートフォリオを維持しながら様子を見たいと思います。

 

以上

【12/5-12/9週の世界のリスクと経済指標】~堅調なサービス需要と減少する財需要〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  -6点(53点):悪化 (基準点59点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

先週は中国の習近平氏がサウジを7年ぶりに訪問しサルマン国王、ムハンマド皇太子と会談、そしてエネルギーや通信技術を含む戦略的包括協定を締結しました。バイデン大統領自ら訪問し訴えた原油増産の依頼を無視した対応とは対照的な歓迎ぶりで、サウジの米国離れを印象付けました。一方で最近のサウジの対応により米国は中東離れをより加速することになると思われ、中東への西側諸国の影響力が減少することが予想されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス6ポイントの悪化となりました。

米ISM非製造業景況指数は前回値、予想共に上振れしサービス業の粘り強さを示しました。

また11月PPI指数も先月の6.8%より低下したものの、予想の5.9%よりも上振れた6.2%となり、こちらも米経済の粘り強さを見せました。

 

一方でカナダ銀行は0.5%の利上げを行なったものこれ以上の利上げ停止を示唆し、ブラジル中央銀行は利上げの停止を発表しました。米国の周辺国では徐々に利上げ停止の方向へと政策転換が示され始めました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~堅調なサービス需要と減少する財需要~

 先週の株価指数は、中国株が前週から続くゼロコロナ政策の緩和により伸長しましたが、欧米株式は概ね軟調に推移しました。

 

先週の動きで考えられる要因は下記の通りです。

①前週末の雇用統計での予想の上振れで示された米国の粘り強い雇用への懸念

②ISM非製造業景況指数が前月、予想を共に上振れ

③11月PPIが予想を上振れ

これらの堅調な指標が「良いニュースは悪いニュース」と認識され株価は下落しました。

 

これらから示されたのはサービス業の堅調さです。

①は前週にも論じた様に、米国はブルーカラーを中心にはまだ粘り強い雇用を保っており、それには7割を占めるサービス業従事者が強く影響していると想像できます。

また、③の11月PPIでは財に対する需要は前月比0.1%となる一方、サービスに対する需要は0.4%と強さを維持しています。

それらの堅調さが景況感としてISMにも現れたと考えられます。

 

一方で先週発表された11月の中国の輸出額は前年比8.7%減となり、中国から米西海岸への貨物運賃は前月比21%減となっています。中国のゼロコロナ政策による減産の影響もありますが、米国の財供給の中心地である中国からの輸出が減少していることは、米国の財への需要減少を顕著に表しています。またそれは前週のISM製造業景況指数で50を下回った事でも示されています。

つまりは、雇用の大部分を占めるサービス業の景気は維持されながらも、財の需要減少によってゆっくりとインフレが収まっていくソフトランディングのシナリオが考えられます。

 

足元では財の景気減速とサービスの堅調さが織り交ざり難しい判断を迫られる中、マーケットは引き締めの長期継続を意識して悲観的に捉えています。

しかし、パウエル議長が11/30の講演で示したように、FRB内では「ソフトランディング達成可能」ということや「引き締め過ぎリスク」も意識され始めていると考えられます。13日の11月CPI次第のところもありますが、12月FOMCでは現在の市場の織り込みのターミナルレート5%に対してやや軟化が示される可能性も高いと考えます。

 

ついては引き続き株式60%:国内債券40%の強気のポートフォリオでF12月FOMCを迎えたいと思います。

 

以上

【11/28-12/2週の世界のリスクと経済指標】~粘い強い雇用とソフトランディング~

先週の評点:

 

リスク   -1点(29点):小幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  +5点(103点):良化 (基準点98点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化でした。

先週は中国において、当局の厳しいゼロコロナ政策に対して各地で若者を中心に代金ボナ抗議デモが発生し、かつ世界各地の在外中国人も抗議活動に参加する事態となりました。ここ最近は習近平氏の強い独裁体制により目立った抗議活動はなく、現体制に対する不満が噴出した形となりました。当局はゼロコロナ政策の緩和を示したため一旦の落ち着きを見せそうですが、若者の経済的不安が解消したわけではなく、不満は燻りそうです。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス5ポイントの良化となりました。

ドイツ、ユーロ圏のCPIも減速を示し、米国に続き漸くピークアウトの兆しを見せ始めました。ユーロ圏PPIも前回41.9%から30.8%と大幅に減速を示しました。

 

米国指標ではISM製造業景況指数は2020年5月以来の50割れで景気縮小となりました。

一方で注目の11月雇用統計では、NFPが予想20万人は上回りながら前月28.4万人から減少、失業率は3.7%と横ばいとなりました。一方で平均時給は予想0.3%に対し0.6%と上振れとなり、雇用の粘り強さを印象付けました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~粘い強い雇用とソフトランディング~

 先週の株価指数は、概ね堅調に推移しました。日経は週間で139円台から134円台へと3.46%(4.82円)円高となった影響もあり反落しました。一方で米国株式は11/30の講演にてパウエル議長が「早ければ12月にも金融引き締めペースを落とす可能性が高い」と示唆したことが影響し反発して週を終えました。

 

 週末の雇用統計では平均時給が前月0.5%、予想0.3%に対して結果0.6%と上振れし、NFPが予想20万人に対して26.3万人と上振れしました。ここ数ヶ月の景況感や住宅価格指数などソフトデータの悪化を受けて、マーケットは明確な雇用の減速を期待していたため、やや消化不良となった印象です。12/2の株式市場も雇用統計直後に一時ドル高株安で反応していたのはその表れだと思います。

 一方でNFPに関しては、今回も前回値の修正が入っており、それらを考慮して推移をグラフ化すると下記になります。

やや緩やかではありますが、確実に雇用者数は減速しています。

そもそも、雇用指標は遅行指標であり、先行指数であるISM景況指数は今月に入って漸く50を割り景気縮小を開始したばかりです。雇用指標の悪化は今後徐々に現れてくるものであり、ゆっくりと減速していくことはあってもこれから改善するとは考え難いです。基本的には今後も雇用は減速基調で推移すると思われます。

 

 また平均時給は増加していますが、現在レイオフのニュースとして流れてくるのは低金利下+コロナ禍で効率度外視で拡大を続けてきたハイテク企業の従業員、所謂ホワイトカラーです。一方で母数が大きく平均時給に大きく影響するブルーカラーレイオフに関してはまだ余り聞こえてきません。コロナ禍での死者が110万人にも上っていることや移民の流入減、現役世代の早期引退など、そもそも現在の経済規模に拡大に対して構造的に労働人口数がついていけていない可能性もあります。(米国の人口増加率は2020年には2.68%増加していましたが、21年には0.95%、22年には0.83%と低下傾向)

 

つまりは雇用は減速基調ながらも、粘り強さと共にゆっくりと縮小しながら落ち着いてくるソフトランディングの可能性が出てきたと考えられます。それはポジティブに捉えられます。

 

ついては引き続きマーケットに強気な株式60%、国内債券40%のポートフォリオを維持します。

保有株式資産がMSCIコクサイであるため、円ベースにすると株価の値上がりが円高に吸収されて増加せず我慢の時期となっています。しかし、日米金利差及び経済力の差がある上、テクニカル的にも日足200MAに到達しており、そろそろドル円ボラティリティが落ち着いてくるのではないかと推測します。

 

以上