投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年9/25-9/29週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -5点(25点):大幅悪化 (基準点30点) 

経済指標  +9点(59点):良化 (基準点50点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス5ポイントの大幅悪化となりました。

先週は米国のつなぎ予算が成立せず政府機関が閉鎖される懸念が高まっていましたが、土壇場で成立となり政府機関の閉鎖は回避されました。一方でUAWと自動車メーカーでの労使交渉では、バイデン大統領がUAWを支持するなど、大統領選挙を意識して従来の大統領がしなかった行動を取っているため、更に混乱が広がる可能性があります。

 また国際情勢では、カナダで起きたシーク教系指導者の殺害へのインド政府の関与を巡って、カナダとインドの関係が悪化しています。お互いの外交官を退去させる措置に出ており、対中政策でインドを巻き込みたいG7の戦略の足並みが乱れる可能性があります。元々、人権を重視しないインドであるため、今後も同様のケースが出てくる可能性もあり、G7の一角としてのカナダの対応が注目されます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス9ポイントの良化となりました。

先週はドイツ、フランス、ユーロ圏のCPIの発表がありましたが、どれも大きくインフレの低下を示しました。欧州は中国の景気悪化の影響も受けて景気の悪化が著しく、それを表してか急速にインフレ率が鈍化して来ています。景気鈍化の度合いを考えると、比較的景気の根強い米国よりも欧州の方が利下げタイミングが早い可能性が見えて来ました。

 また米国の8月PCEデフレーターは、総合指数が前月よりも加速したものの、コア指数は順調に前月よりも低下を見せました。また前月比でも予想0.2%増に対して0.1%増とこちらも鈍化傾向を強めました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数は全般的には軟調な動きで、米国3指数ではダウ平均、S&P500は前週に続いて反落しましたが、ナスダックはかろうじてプラスとなりました。

 

先週の株式指数の動きの要因は下記の通りです。

・前週のFOMCからの長期金利の上昇が続く。

UAWと自動車メーカーの労使交渉で折り合いがつかずストライキが拡大。

・米政府のつなぎ予算がまたもや政党間の政治的な動きで成立せず、米政府機関閉鎖が懸念された。

 

 先週のFOMC以前はFRB政策金利を反映する2年債利回りに連動して動いていた10年債利回りですが、FOMC以降はより長期な30年債利回りの動きに連動するようになって来ています。そのため、先週は30年債利回りが4.8%にタッチするのに連動して10年債利回りも4.68%と2007年10月以来の水準まで上昇しました。

長期金利は将来の経済成長期待やインフレ期待を織り込みます。つまり先週のFOMC以降の長期金利の上昇は、今後はインフレ率が高水準で推移し、また経済成長も高水準で維持されることが織り込まれたと考えられます。

 一方で先週は長期金利が大きく上昇した割には株価への影響も少なかったように思います。前週はFOMCで予想外のタカ派姿勢を見せられた驚きで10年最利回りが22年10月の直近高値を一気に超えました。そのため瞬発的に株価は反応し、金利感応度の高いナスダックは週間で3.62%安と強く反落しました。

 しかし、先週も前週同様、長期金利が大きく動いた割には株価への影響が少なかった印象です。ナスダックはわずかにプラスで終えました。それはやはり、マーケットが高インフレと共に高成長の時代が来ることを想定し、過度に悲観的になっていないという証左だと思います。また先週はどちらかというとUAWのスト拡大や政府機関閉鎖への懸念の方が金利上昇を後押ししていたように思います。

 足元では原油高でガソリン価格が再び上昇しており、インフレ鈍化のペースは落ちる可能性がありますが、PCEコアデフレーターで示されたように、コア指数は確実に低下して来ています。このトレンドが大きく崩れる可能性は低く、あとは時間が必要なだけだと考えます。

 先週の金利上昇で2年債利回りが大きく動いていないことや、長期金利の上昇で高インフレ下の経済も受け入れつつあるように、徐々にマーケットのメインテーマがインフレから変わりつつあると言えます。ついては当面株価が大きく下落する可能性は少ないと判断し、前週に増加した株式60%の強気のポートフォリオを維持します。

 一方で、30年債利回りが先週タッチした4.8%を再び上抜けると次は5%を目指すこととなり、流石に株式にも売り圧力となると思われるため、長期金利の動きは引き続き注意していきたいと思います。

 

以上