投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年10/9-10/13週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク      -4点(26点):悪化 (基準点30点) 

経済指標    -1点(32点):小幅悪化 (基準点33点)

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化となりました。

前週末に始まったイスラエルハマスの紛争はイスラエルの報復攻撃から激しさを増し、両地域で3000人近い死者を出す状況になっています。またイスラエル軍がガザへの地上戦を開始するために、軍隊をガザ地区周辺に展開しており、ガザ地区側に更に被害がエスカレートしそうな勢いです。イスラエルが地上戦に出た場合にはイランの介入も示唆されており、予断を許さない状況です。

また先週は米英独仏伊の欧米各国は早々にイスラエル支持を表明し、一方でサウジアラビアを含めたアラブ諸国パレスチナとの連帯を深めています。ロシアと中国も中立ながらもややハマス寄なスタンスを取っており、今後イスラエルがなりふり構わない過激な行動に出た場合は、西側諸国VSアラブ諸国+中露という対立軸にも発展しかねない状況になってきています。更に混乱が増していきそうです。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス1ポイントの小幅悪化となりました。

先週は米国の9月CPIの発表がありましたが、総合指数は前月3.7%、予想3.6%に対して3.7%と上振れましたが、コア指数は前月4.3%、予想に一致の4.1%と鈍化を示し、まちまちな結果となりました。ただ、総合指数の上振れは、直近の原油価格が上昇していたことからある程度予想できていたことであり、コア指数の順調な鈍化の方を注目すべきであると考えます。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数は米国3指数はナスダックが3週ぶりにわずかに反落しながらも、ダウ、S&P500は反発しまちまちとなりました。一方で日経平均は前週末に大幅に下げた反動もあり大幅な反発となりました。

 

先週の株価の動きの要因は下記の通りです。

FOMC後からの長期金利の急上昇により、FRB高官から「追加利上げ不要」のハト派コメントが出たため利上げ観測が緩む。

・米9月CPIは、コア指数が予想に一致の4.1%となるも、総合指数が予想に上振れの3.7%となったため、利上げ観測が高まる。

イスラエルガザ地区内での「局地的な奇襲」を実施したと発表したことで地上侵攻するとの観測が高まりリスクオフ。

 

 前週末にハマスイスラエルへの奇襲影響が発生しましたが、週明けの金融市場への影響は限定的でした。

先週はそれよりも複数のFRB高官から、FOMC以後の長期金利の急上昇により「金融環境が引き締まっている」という内容の、今後の利上げ不要論を匂わす発言が相次ぎました。それにより長期金利も落ち着きを見せ、30年債利回りは4.75%、10年債利回りも4.61%に低下し、株式は一転反発しました。

 12日に発表された9月CPIでは総合指数が予想3.6%に対して3.7%と上振れましたが、これは足元の原油価格の上昇が反映されたものであり想定の範囲内と考えます。一方でコア指数は予想に一致の4.1%となりながら前月4.3%からは鈍化を見せているため、インフレ率は順調に鈍化していると言えます。

長期金利の上昇により金融環境が引き締まっていることをFRB当局者も公に発言し始め、且つ重要なコアインフレ率が鈍化傾向を維持しているため、ファンダメンタルには大きな変化はありません。

 また先週は3Q決算シーズンとなり、C、JPM、WFCの大手銀行の決算発表がありましたが、どちらも予想を上回る好決算でスタートしています。次週も今後本格化する3Q決算を見守りながら、強気のポートフォリオを変更せずに維持します。

 

 中東情勢はやや気掛かりです。イスラエルと敵対関係にあり、ハマスを支援していると言われるイランとの対立に拡大すると、マーケットにもリスク回避の動きが広がる可能性があります。イランは、イスラエル軍がガザへ侵攻し、地上戦を開始した場合には何らかの行動を取るとして介入を示唆しています。仮にこのままイスラエルガザ地区への地上戦を開始し、イランが介入するとなれば事態がイスラエルハマスの内紛から敵対する国家間の戦争に発展します。つまりそれは中東に緊張を産み短期的なインフレ要因となるエネルギー価格を上昇させ、インフレ鈍化のペースを遅らせるかも知れません。

 ただ、ロシアのウクライナ侵攻で戦争が勃発してもすぐに株式が反発したように、やはり欧米マーケットへの影響は限定的だと考えます。当時は一旦の反発のあと株価は下落していきましたが、それはインフレ上昇真っ只中で、ちょうどFRBがゼロ金利を解除したところであり、金融引き締めが大きな理由でした。現在は既に政策金利はターミナルレートに近く、高い金利水準がやや長期化する可能性はあれども、何かをきっかけで大きなショックが起こったとしてもFRBはいつでも利下げで下支えが可能です。

 金融的には過度に反応する必要はないと考えますが、地政学的、人道的にはイスラエルパレスチナでの衝突は懸念するべき事象であり、ニュースをウォッチし続けたいと思います。

 

以上