投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年1/30-2/3週の世界のリスクと経済指標】~FRBへの信任~

先週の評点:

 

リスク   -2点(28点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  +9点(140点):大幅良化 (基準点131点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化でした。

インドネシアでのG20会議での米中首脳会談で対話の継続に合意し、その一環としてブリンケン国務長官が訪中する予定でしたが、米国上空で中国の偵察気球が発見されたことにより急遽延期になりました。中国の戦狼姿勢も軟化傾向にあり、米中関係が対話に向かうかと思われた矢先の出来事で、米国の姿勢が急遽硬化しています。米国の安全保障に関わる問題であり米中対立の新たな火種になる可能性があります。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス9ポイントの大幅良化となりました。

先週は重要指標が盛りだくさんとなりました。

米国FOMCでは事前の予想通り利上げが幅が縮小され25bpsの利上げとなりました。

一方でBOE、ECBは米国よりも高いインフレ水準を維持していることから50bpsの利上げとなりました。

また、米雇用統計はNFPが予想外の51万人増、失業率が3.4%と53年ぶりの低水準となり米国の雇用の強さが際立ちました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~FRBへの信任~

 先週の株価指数は欧米株式が前週に続いて大幅に反発しました。特にハイテク株が伸び、ナスダックは3.31%高となりました。

 

株式は今年に入ってから強く上昇を続けており、特にナスダックは昨年末比14.72%高となっています。

米国のインフレ率がピークをつけて毎月鈍化を示していることが大きな背景だと考えますが、ここまでの反発にはやや驚きを隠せません。

 

12月FOMCを通過した頃から、インフレに警戒を強めるFRBとインフレの鈍化を楽観するマーケットとの乖離が生まれていました。

今回のFOMCでも、利上げ幅は25bpsに縮小されましたが、パウエル議長は「あと複数回の利上げが必要」として、マーケットが期待する年内の利下げを否定しました。

しかし、マーケットは「インフレとの戦いで進展した」という見解を楽観し、年内利下げを織り込んで株高で反応しました。

 

下記は直近安値である12/28、直近高値だった2/2イールドカーブを示したものです。

 直近安値の12/28のイールドカーブも全ての利回りがFRBFF金利である4.25-4.50%を大きく下回っています。しかし、直近高値の2/2ではFF金利が4.50-4.75%に上昇したにも関わらず更にイールドカーブ全体が下押しされています。本来であれば利上げによってイールドカーブ全体が上方向に移行し、金融環境が引き締まっていくべきですが、むしろ緩和の方向に向かっています。

これは緩和を長引かせてインフレを悪化させたFRBに対してマーケットからの信任が失われていることが要因だと考えられます。ここ最近の状況は、FRBが引き締めを維持しようとしても、それを信用しないマーケットが勝手に緩和状態を作り出していると言えると思います。それが緩和時に強いハイテク株が伸びている原因となっていると考えます。しかし、これはFRBの意図する状況ではなく、足元では引き締めの効果が薄まっている可能性があります。

 

2/3の雇用統計やISM非製造業景況指数では、予想外に強い雇用や好調な景気が示され、引き締め効果が順調に出ていないことが示されました。それは今後インフレ鈍化が鈍化する可能性を示しています。そうなるとFRBは今後も引き締めを高水準に保ったまま継続する必要があり、現在マーケットが想定しているような年内利下げ局面は難しいのではないかと思います。

 

FRBが信任されないことによる乖離がマーケットの先走りを産み、それがインフレ鈍化の鈍化の要因の一つとなり、さらなる混乱を産むのではないかと危惧しています。そういう意味では、今後FRBタカ派姿勢通りとなり、マーケットが負けることで再びFRBがマーケットの信任を勝ち取ることが非常に重要だと感じます。

 

ついては引き続き弱気のポートフォリオを維持します。

 

以上