投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年3/6-3/10週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  -7点(59点):悪化 (基準点66点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはゼロポイントの中立でした。

先週は政治的な動きの多い週でした。

同じ中東のイスラム国家でありながら長年敵対してきたイランとサウジが外交を正常化しました。衝撃だったのは、それを仲介したのがこれまでのように欧米諸国ではなく中国であったことでした。従来は米国の役割であった他国間の仲介が、中国により行われた事実は、米国の影響力の後退と中国の影響力の増長を一気に印象づけました。

 

また、中国で行われた全人代では、習近平氏の国家主席としての3選が決定し、また周辺の要職も習派の側近で固められたことで、習氏の長期政権へと独裁体制が整えられました。

 

 一方で中国を囲むインド太平洋地域では協力関係が進みました。豪州のアルバジーニー首相がインドでモディ首相と会談し、通商、国防、安全保障の分野での連携強化を協議しました。また、韓国では日韓間の大きな障壁となっていた徴用工問題に「解決策」を示したことで、中国を意識した日韓の連携が進展しそうな様相を呈してきました。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス7ポイントの悪化でした。

豪準備銀行は25bpsの利上げが決定されるも、ロウ総裁が3/8に「利上げ停止が適切になる地点に近づいている」と発言したように、利上げ停止が視野に入ってきました。また、カナダ銀行は4.5%に金利を据え置き、利上げ停止を決定しました。ここに来て実体経済への影響から利上げ停止フェーズに入ってきた国が増えてきました。

 

また米雇用統計では平均時給が前回、予想0.3%に対して0.2%、失業率も前回、予想共に3.4%に対して3.6%と鈍化を示しました。一方でNFPは前回の50.4万人からは減少したものの、予想20.5万人に対しては上振れの31.1万人と堅調さを示しました。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は米国株式を中心に軟調となりました。

先週の株式反落の考えられる要因は下記の通りです。

・パウエル議長が議会証言にて金利水準が従来の予想より高くなる可能性を示す。

・SVBが業績悪化および増資発表により取り付け騒動となり経営破綻。

・米雇用統計で、失業率と平均時給は鈍化したものの、NFPが予想を上回り雇用の強さを示す。

 

 前週はアトランタ連銀総裁のハト派発言で株式は反発しましたが、その発言を打ち消すかのように、3/6, 7に議会証言でパウエル議長がタカ派な発言を行いました。それにより一時2年債利回りが5%、10年債利回りが4%を超える水準まで上昇し、株価は反落しました。

 そして追い討ちをかけるように、3/9にはSVBが証券ポートフォリオの損失と資本増強の措置を講じたことで株価が1日で60%安と急落し、センチメントがより悪化しました。SVBは取引先企業からの預金引き出しが相次ぎ、株価に急落により資本増強も叶わなくなったことで翌3/10には経営破綻となりました。この騒動によりマーケットは動揺し、今度はリスク回避で株式反落と共に債券が買われ10年債利回りは3.7%、2年債利回りは4.59%まで低下しました。

 

 SVB破綻は思いもよらぬ衝撃でしたが、その顧客の多くは中小ハイテク企業です。冷静に考えるとこれらの企業が連鎖して破綻に追い込まれても、現在インフレに寄与しているサービス業の大多数の雇用にはさほど影響しないと思われます。また銀行と言えども、SVBはスタートアップ企業を相手にするハイリスクな地方銀行であり、金融システムを構成する大手銀行などとは違います。SVBの破綻でFRBが引き締めの手を緩めるのではないかとの観測がありますが、あくまでも現在の最大のリスクはインフレの高止まりです。それを抑制するためにFRBは淡々と仕事をしていくだけであり、FRBが引き締めの手を緩めるのはインフレが鈍化した時だけ思います。

 

雇用統計は失業率や平均時給は鈍化しながらも、NFPは予想20.5万人を上回る31.1万人と上振れました。雇用の堅調さを維持していますが、まちまちな結果となりました。

次週はCPIの発表があります。FRBがパウエル議長の発言通り、3月FOMCで利上げの手を再度強めるのかどうかの手掛かりになる最後の重要指標となるため、注目していきます。

 

以上